黒崎幸吉著 註解新約聖書 Web版

新共同訳サムエル記下第1章

◆ダビデ、サウルの死を知る

1章1節 サウルが死んだ後のことである。ダビデはアマレク人を討ってツィクラグに帰り、二日過ごした。

1章2節 三日目に、サウルの陣営から一人の男がたどりついた。衣服は裂け、頭に土をかぶっていた。男はダビデの前に出ると、地にひれ伏して礼をした。

1章3節 ダビデは尋ねた。「どこから来たのだ。」「イスラエルの陣営から逃れて参りました」と彼は答えた。

1章4節 「状況はどうか。話してくれ」とダビデは彼に言った。彼は言った。「兵士は戦場から逃げ去り、多くの兵士が倒れて死にました。サウル王と王子のヨナタンも亡くなられました。」

1章5節 ダビデは知らせをもたらしたこの若者に尋ねた。「二人の死をどうして知ったのか。」

1章6節 この若者は答えた。「わたしはたまたまギルボア山におりました。そのとき、サウル王は槍にもたれかかっておられましたが、戦車と騎兵が王に迫っていました。

1章7節 王は振り返ってわたしを御覧になり、お呼びになりました。『はい』とお答えすると、

1章8節 『お前は何者だ』とお尋ねになり、『アマレクの者です』とお答えすると、

1章9節 『そばに来て、とどめを刺してくれ。痙攣が起こったが死にきれない』と言われました。

1章10節 そこでおそばに行って、とどめを刺しました。倒れてしまわれ、もはや生き延びることはできまいと思ったからです。頭にかぶっておられた王冠と腕につけておられた腕輪を取って、御主人様に持って参りました。これでございます。」

1章11節 ダビデは自分の衣をつかんで引き裂いた。共にいた者は皆それに倣った。

1章12節 彼らは、剣に倒れたサウルとその子ヨナタン、そして主の民とイスラエルの家を悼んで泣き、夕暮れまで断食した。

1章13節 ダビデは、知らせをもたらした若者に尋ねた。「お前はどこの出身か。」「わたしは寄留のアマレク人の子です」と彼は答えた。

1章14節 ダビデは彼に言った。「主が油を注がれた方を、恐れもせず手にかけ、殺害するとは何事か。」

1章15節 ダビデは従者の一人を呼び、「近寄って、この者を討て」と命じた。従者は彼を打ち殺した。

1章16節 ダビデは言った。「お前の流した血はお前の頭に返る。お前自身の口が、『わたしは主が油を注がれた方を殺した』と証言したのだから。」

◆哀悼の歌「弓」

1章17節 ダビデはサウルとその子ヨナタンを悼む歌を詠み、

1章18節 「弓」と題して、ユダの人々に教えるように命じた。この詩は『ヤシャルの書』に収められている。

1章19節 イスラエルよ、「麗しき者」は/お前の高い丘の上で刺し殺された。ああ、勇士らは倒れた。

1章20節 ガトに告げるな/アシュケロンの街々にこれを知らせるな/ペリシテの娘らが喜び祝い/割礼なき者の娘らが喜び勇むことのないように。

1章21節 ギルボアの山々よ、いけにえを求めた野よ/お前たちの上には露も結ぶな、雨も降るな。勇士らの盾がそこに見捨てられ/サウルの盾が油も塗られずに見捨てられている。

1章22節 刺し殺した者たちの血/勇士らの脂をなめずには/ヨナタンの弓は決して退かず/サウルの剣がむなしく納められることもなかった。

1章23節 サウルとヨナタン、愛され喜ばれた二人/鷲よりも速く、獅子よりも雄々しかった。命ある時も死に臨んでも/二人が離れることはなかった。

1章24節 泣け、イスラエルの娘らよ、サウルのために。紅の衣をお前たちに着せ/お前たちの衣の上に/金の飾りをおいたサウルのために。

1章25節 ああ、勇士らは戦いのさなかに倒れた。ヨナタンはイスラエルの高い丘で刺し殺された。

1章26節 あなたを思ってわたしは悲しむ/兄弟ヨナタンよ、まことの喜び/女の愛にまさる驚くべきあなたの愛を。

1章27節 ああ、勇士らは倒れた。戦いの器は失われた。


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