黒崎幸吉著 註解新約聖書 Web版

新共同訳サムエル記下第15章

◆アブサロムの反逆

15章1節 その後、アブサロムは戦車と馬、ならびに五十人の護衛兵を自分のために整えた。

15章2節 アブサロムは朝早く起き、城門への道の傍らに立った。争いがあり、王に裁定を求めに来る者をだれかれなく呼び止めて、その出身地を尋ね、「僕はイスラエル諸部族の一つに属しています」と答えると、

15章3節 アブサロムはその人に向かってこう言うことにしていた。「いいか。お前の訴えは正しいし、弁護できる。だがあの王の下では聞いてくれる者はいない。」

15章4節 アブサロムは、こうも言った。「わたしがこの地の裁き人であれば、争い事や申し立てのある者を皆、正当に裁いてやれるのに。」

15章5節 また、彼に近づいて礼をする者があれば、手を差し伸べて彼を抱き、口づけした。

15章6節 アブサロムは、王に裁定を求めてやって来るイスラエル人すべてにこのようにふるまい、イスラエルの人々の心を盗み取った。

15章7節 四十歳になった年の終わりにアブサロムは王に願った。「主への誓願を果たすため、ヘブロンに行かせてください。

15章8節 僕はアラムのゲシュルに滞在していたとき、もし主がわたしをエルサレムに連れ戻してくださるなら主に仕える、と誓いました。」

15章9節 王が「平和に行って来るように」と言ったので、アブサロムは立ってヘブロンに向かった。

15章10節 アブサロムはイスラエルの全部族に密使を送り、角笛の音を合図に、「アブサロムがヘブロンで王となった」と言うように命じた。

15章11節 このときエルサレムから二百人の者がアブサロムと共に出かけたが、招きに応じて同行しただけで、何も知らされてはいなかった。

15章12節 いけにえをささげるにあたって、アブサロムは使いを送り、ダビデの顧問であるギロ人アヒトフェルを彼の町ギロから迎えた。陰謀が固められてゆき、アブサロムのもとに集まる民は次第に数を増した。

15章13節 イスラエル人の心はアブサロムに移っているという知らせが、ダビデに届いた。

15章14節 ダビデは、自分と共にエルサレムにいる家臣全員に言った。「直ちに逃れよう。アブサロムを避けられなくなってはいけない。我々が急がなければ、アブサロムがすぐに我々に追いつき、危害を与え、この都を剣にかけるだろう。」

15章15節 王の家臣たちは言った。「主君、王よ、僕たちはすべて御判断のとおりにいたします。」

15章16節 こうして王は出発し、王宮の者が皆、その後に従った。王は王宮を守らせるために十人の側女を残した。

◆ダビデとイタイ

15章17節 王が出発し、人々は皆、その後に従った。一行は、まず離宮のところで歩みを止めた。

15章18節 家臣がまず王の傍らを通り、次いでクレタ人全員とペレティ人全員、それに続いてガトからダビデに従って来た六百人のガト人が王の前を通った。

15章19節 王はガト人イタイに言った。「なぜあなたまでが、我々と行動を共にするのか。戻ってあの王のもとにとどまりなさい。あなたは外国人だ。しかもこの国では亡命者の身分だ。

15章20節 昨日来たばかりのあなたを、今日我々と共に放浪者にすることはできない。わたしは行けるところへ行くだけだ。兄弟たちと共に戻りなさい。主があなたに慈しみとまことを示されるように。」

15章21節 イタイは王に答えて言った。「主は生きておられ、わが主君、王も生きておられる。生きるも死ぬも、主君、王のおいでになるところが僕のいるべきところです。」

15章22節 ダビデは、「よろしい、通って行きなさい」と言い、ガト人イタイは大人も子供も、共にいた者全員を率いて通った。

15章23節 その地全体が大声をあげて泣く中を、兵士全員が通って行った。王はキドロンの谷を渡り、兵士も全員荒れ野に向かう道を進んだ。

◆ツァドク、アビアタルと神の箱

15章24節 ツァドクをはじめレビ人全員が神の契約の箱を担いで来ており、兵士全員が都を去るまで神の箱を降ろしていた。アビアタルも来ていた。

15章25節 王はツァドクに言った。「神の箱は都に戻しなさい。わたしが主の御心に適うのであれば、主はわたしを連れ戻し、神の箱とその住む所とを見せてくださるだろう。

15章26節 主がわたしを愛さないと言われるときは、どうかその良いと思われることをわたしに対してなさるように。」

15章27節 王は祭司ツァドクに向かって言葉を続けた。「分かったか。平和にエルサレムに戻ってもらいたい。息子のアヒマアツとアビアタルの子ヨナタン、この二人の若者を連れて帰りなさい。

15章28節 分かったか。わたしはあなたたちからの知らせを受けるまで、荒れ野の渡し場で待っている。」

15章29節 ツァドクとアビアタルは神の箱と共にエルサレムに戻り、そこにとどまった。

◆ダビデとフシャイ

15章30節 ダビデは頭を覆い、はだしでオリーブ山の坂道を泣きながら上って行った。同行した兵士たちも皆、それぞれ頭を覆い、泣きながら上って行った。

15章31節 アヒトフェルがアブサロムの陰謀に加わったという知らせを受けて、ダビデは、「主よ、アヒトフェルの助言を愚かなものにしてください」と祈った。

15章32節 神を礼拝する頂上の場所に着くと、アルキ人フシャイがダビデを迎えた。上着は裂け、頭に土をかぶっていた。

15章33節 ダビデは彼に言った。「わたしと一緒に来てくれてもわたしの重荷になるだけだ。

15章34節 都に戻って、アブサロムにこう言ってくれ。『王よ、わたしはあなたの僕です。以前、あなたの父上の僕でしたが、今からはあなたの僕です』と。お前はわたしのためにアヒトフェルの助言を覆すことができる。

15章35節 都には祭司ツァドクとアビアタルもいて、お前と共に行動する。王宮で耳にすることはすべて祭司のツァドクとアビアタルに伝えてほしい。

15章36節 また、そこには彼らの二人の息子も共にいる。ツァドクの息子アヒマアツ、アビアタルの息子ヨナタンだ。耳にすることは何でもこの二人を通してわたしのもとに伝えるようにしてくれ。」

15章37節 こうしてダビデの友フシャイは都に入った。アブサロムもエルサレムに入城した。


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