黒崎幸吉著 註解新約聖書 Web版

新共同訳列王記上第8章

◆契約の箱の安置とソロモンの祈り

8章1節 ソロモンは、そこでイスラエルの長老、すべての部族長、イスラエル人諸家系の首長をエルサレムの自分のもとに召集した。「ダビデの町」シオンから主の契約の箱を担ぎ上るためであった。

8章2節 エタニムの月、すなわち第七の月の祭りに、すべてのイスラエル人がソロモン王のもとに集まった。

8章3節 イスラエルの全長老が到着すると、祭司たちはその箱を担ぎ、

8章4節 主の箱のみならず臨在の幕屋も、幕屋にあった聖なる祭具もすべて担ぎ上った。祭司たちはレビ人たちと共にこれらのものを担ぎ上った。

8章5節 ソロモン王は、彼のもとに集まったイスラエルの全共同体と共に、その箱の前でいけにえとして羊や牛をささげた。その数はあまりにも多く、調べることも数えることもできなかった。

8章6節 祭司たちは主の契約の箱を定められた場所、至聖所と言われる神殿の内陣に運び入れ、ケルビムの翼の下に安置した。

8章7節 ケルビムは箱のある場所の上に翼を広げ、その箱と担ぎ棒の上を覆うかたちになった。

8章8節 その棒は長かったので、先端が内陣の前の聖所からは見えたが、外からは見えなかった。それは今日もなおそこに置かれている。

8章9節 箱の中には石の板二枚のほか何もなかった。この石の板は、主がエジプトの地から出たイスラエル人と契約を結ばれたとき、ホレブでモーセがそこに納めたものである。

8章10節 祭司たちが聖所から出ると、雲が主の神殿に満ちた。

8章11節 その雲のために祭司たちは奉仕を続けることができなかった。主の栄光が主の神殿に満ちたからである。

8章12節 ソロモンはそのときこう言った。「主は、密雲の中にとどまる、と仰せになった。

8章13節 荘厳な神殿を/いつの世にもとどまっていただける聖所を/わたしはあなたのために建てました。」

8章14節 王は振り向いて、イスラエルの全会衆を祝福した。イスラエルの全会衆は立っていた。

8章15節 王は言った。「イスラエルの神、主はたたえられますように。主は自ら語り、わが父ダビデに約束なさったことを御手をもって成し遂げ、こう仰せになった。

8章16節 『わが民イスラエルをエジプトから導き出した日からこのかた、わたしの名を置く家を建てるために、わたしはイスラエルのいかなる部族の町も選ばなかった。わたしはただダビデを選び、わが民イスラエルの上に立てた』と。

8章17節 父ダビデは、イスラエルの神、主の御名のために神殿を建てようと心掛けていたが、

8章18節 主は父ダビデにこう仰せになった。『あなたはわたしの名のために家を建てようと心掛けてきた。その心掛けは立派である。

8章19節 しかし、神殿を建てるのはあなたではなく、あなたの腰から出る息子がわたしの名のために神殿を建てる』と。

8章20節 主は約束なさったことを実現された。主が約束なさったとおり、わたしは父ダビデに代わって立ち、イスラエルの王座につき、イスラエルの神、主の御名のためにこの神殿を建てた。

8章21節 またわたしは、そこに主との契約を納めた箱のために場所を設けた。その契約は、主がわたしたちの先祖をエジプトの地から導き出されたときに、彼らと結ばれたものである。」

8章22節 ソロモンは、イスラエルの全会衆の前で、主の祭壇の前に立ち、両手を天に伸ばして、

8章23節 祈った。「イスラエルの神、主よ、上は天、下は地のどこにもあなたに並ぶ神はありません。心を尽くして御前を歩むあなたの僕たちに対して契約を守り、慈しみを注がれる神よ、

8章24節 あなたはその僕、わたしの父ダビデになさった約束を守り、御口をもって約束なさったことを今日このとおり御手をもって成し遂げてくださいました。

8章25節 イスラエルの神、主よ、今後もあなたの僕ダビデに約束なさったことを守り続けてください。あなたはこう仰せになりました。『あなたがわたしの前を歩んだように、あなたの子孫もその道を守り、わたしの前を歩むなら、わたしはイスラエルの王座につく者を断たず、わたしの前から消し去ることはない』と。

8章26節 イスラエルの神よ、あなたの僕、わたしの父ダビデになさった約束が、今後も確かに実現されますように。

8章27節 神は果たして地上にお住まいになるでしょうか。天も、天の天もあなたをお納めすることができません。わたしが建てたこの神殿など、なおふさわしくありません。

8章28節 わが神、主よ、ただ僕の祈りと願いを顧みて、今日僕が御前にささげる叫びと祈りを聞き届けてください。

8章29節 そして、夜も昼もこの神殿に、この所に御目を注いでください。ここはあなたが、『わたしの名をとどめる』と仰せになった所です。この所に向かって僕がささげる祈りを聞き届けてください。

8章30節 僕とあなたの民イスラエルがこの所に向かって祈り求める願いを聞き届けてください。どうか、あなたのお住まいである天にいまして耳を傾け、聞き届けて、罪を赦してください。

8章31節 もしある人が隣人に罪を犯し、呪いの誓いを立てさせられるとき、その誓いがこの神殿にあるあなたの祭壇の前でなされるなら、

8章32節 あなたは天にいましてこれに耳を傾け、あなたの僕たちを裁き、悪人は悪人として、その行いの報いを頭にもたらし、善人は善人として、その善い行いに応じて報いをもたらしてください。

8章33節 あなたの民イスラエルが、あなたに罪を犯したために敵に打ち負かされたとき、あなたに立ち帰って御名をたたえ、この神殿で祈り、憐れみを乞うなら、

8章34節 あなたは天にいまして耳を傾け、あなたの民イスラエルの罪を赦し、先祖たちにお与えになった地に彼らを帰らせてください。

8章35節 彼らがあなたに罪を犯したために天が閉ざされ、雨が降らなくなったとき、この所に向かって祈り、御名をたたえ、あなたの懲らしめによって罪を離れて立ち帰るなら、

8章36節 あなたは天にいまして耳を傾け、あなたの僕たち、あなたの民イスラエルの罪を赦し、彼らに歩むべき正しい道を教え、嗣業としてあなたの民に与えてくださった地に雨を降らせてください。

8章37節 またこの地に飢饉が広がったり、疫病がはやったり、黒穂病、赤さび病、いなご、ばったが発生したり、敵がこの地で城門を封鎖したり、そのほかどんな災い、どんな難病が生じたときにも、

8章38節 あなたの民イスラエルが、だれでも、心に痛みを覚え、この神殿に向かって手を伸ばして祈るなら、そのどの祈り、どの願いにも、

8章39節 あなたはお住まいである天にいまして耳を傾け、罪を赦し、こたえてください。あなたは人の心をご存じですから、どの人にもその人の歩んできたすべての道に従って報いてください。まことにあなただけがすべての人の心をご存じです。

8章40節 こうして彼らは、あなたがわたしたちの先祖にお与えになった地で生を営む間、絶えずあなたを畏れ敬うでしょう。

8章41節 更に、あなたの民イスラエルに属さない異国人が、御名を慕い、遠い国から来て、

8章42節 ――それは彼らが大いなる御名と力強い御手と伸ばされた御腕のことを耳にするからです――この神殿に来て祈るなら、

8章43節 あなたはお住まいである天にいましてそれに耳を傾け、その異国人があなたに叫び求めることをすべてかなえてください。こうして、地上のすべての民は御名を知り、あなたの民イスラエルと同様にあなたを畏れ敬い、わたしの建てたこの神殿が御名をもって呼ばれていることを知るでしょう。

8章44節 あなたの民が敵に向かって戦いに出て行くとき、あなたの遣わされる道にあって、あなたのお選びになった都、わたしが御名のために建てた神殿の方を向いて主に祈るなら、

8章45節 あなたは天にいましてその祈りと願いに耳を傾け、彼らを助けてください。

8章46節 もし彼らがあなたに向かって罪を犯し、――罪を犯さない者は一人もいません――あなたが怒って彼らを敵の手に渡し、遠くあるいは近くの敵地に捕虜として引いて行かれたときに、

8章47節 彼らが捕虜になっている地で自らを省み、その捕らわれの地であなたに立ち帰って憐れみを乞い、『わたしたちは罪を犯しました。不正を行い、悪に染まりました』と言い、

8章48節 捕虜にされている敵地で、心を尽くし、魂を尽くしてあなたに立ち帰り、あなたが先祖にお与えになった地、あなたがお選びになった都、御名のためにわたしが建てた神殿の方に向かってあなたに祈るなら、

8章49節 あなたはお住まいである天にいましてその祈りと願いに耳を傾け、裁きを行ってください。

8章50節 あなたの民があなたに対して犯した罪、あなたに対する反逆の罪のすべてを赦し、彼らを捕らえた者たちの前で、彼らに憐れみを施し、その人々が彼らを憐れむようにしてください。

8章51節 彼らは、鉄の炉であるエジプトからあなたが導き出されたあなたの民、あなたの嗣業です。

8章52節 どうか、この僕の願いにも、あなたの民イスラエルの願いにも御目を向け、いつあなたに呼びかけても彼らに耳を傾けてください。

8章53節 主なる神よ、あなたはわたしたちの先祖をエジプトから導き出されたとき、あなたの僕モーセによってお告げになったとおり、彼らを地上のすべての民から切り離して御自分の嗣業とされました。」

8章54節 ソロモンはこのすべての祈りと願いを主にささげ終わった。それまで両膝をつき、両手を天に向かって伸ばしていた彼は、主の祭壇の前から立ち上がり、

8章55節 立ったまま大声でイスラエルの全会衆を祝福した。

8章56節 「約束なさったとおり、その民イスラエルに安住の地を与えてくださった主はたたえられますように。その僕モーセによって告げられた主の恵みの御言葉は、一つとしてむなしいものはなかった。

8章57節 わたしたちの神、主は先祖と共にいてくださった。またわたしたちと共にいてくださるように。わたしたちを見捨てることも、見放すこともなさらないように。

8章58節 わたしたちの心を主に向けさせて、わたしたちをそのすべての道に従って歩ませ、先祖にお授けになった戒めと掟と法を守らせてくださるように。

8章59節 主の御前でわたしが祈り求めたこれらの願いが、昼も夜もわたしたちの神、主の御もと近くに達し、日々の必要が満たされ、この僕と主の民イスラエルに御助けが与えられるように。

8章60節 こうして、地上のすべての民が、主こそ神であって、ほかに神のないことを知るに至るように。

8章61節 あなたたちはわたしたちの神、主と心を一つにし、今日そうであるようにその掟に従って歩み、その命令を守らなければならない。」

8章62節 王はすべてのイスラエル人と共に主の御前にいけにえをささげた。

8章63節 ソロモンは和解の献げ物として牛二万二千頭、羊十二万匹を主にささげた。こうして、王はイスラエルのすべての人と共に主の神殿を奉献した。

8章64節 その日、王は主の神殿の前にある庭の中央部を聖別して、そこで焼き尽くす献げ物、穀物の献げ物、和解の献げ物である動物の脂肪をささげた。主の御前にあった青銅の祭壇が、焼き尽くす献げ物、穀物の献げ物、和解の献げ物である動物の脂肪を供えるのには小さすぎたからである。

8章65節 そのときソロモンは、すべてのイスラエル人、レボ・ハマトからエジプトの川に至るまでの大会衆と共に、わたしたちの神、主の御前で祭りを執り行った。それは七日間、更に七日間、合わせて十四日間にわたった。

8章66節 八日目に王は民を去らせた。民は王に祝福の言葉を述べ、主がその僕ダビデとその民イスラエルになさったすべての恵みの御業を喜び祝い、心晴れやかに自分の天幕へと帰って行った。


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