黒崎幸吉著 註解新約聖書 Web版

新共同訳列王記下第3章

◆イスラエルの王ヨラム

3章1節 ユダの王ヨシャファトの治世第十八年に、アハブの子ヨラムがサマリアでイスラエルの王となり、十二年間王位にあった。

3章2節 彼は主の目に悪とされることを行ったが、ただ彼の父や母ほどではなかった。父が作ったバアルの石柱を彼は取り除いた。

3章3節 しかし彼は、イスラエルに罪を犯させたネバトの子ヤロブアムの罪を自分も犯し続け、それを離れなかった。

3章4節 モアブの王メシャは羊を飼育しており、十万匹の小羊と雄羊十万匹分の羊毛とを貢ぎ物としてイスラエルの王に納めていた。

3章5節 しかし、アハブが死ぬと、モアブの王はイスラエルの王に反旗を翻した。

3章6節 ヨラム王は直ちにサマリアを出て、イスラエルのすべての人々を動員し、

3章7節 出発した。また使者をユダの王ヨシャファトに遣わし、「モアブの王がわたしに反旗を翻しました。わたしと共にモアブに行って戦っていただけませんか」と言った。ヨシャファトは、「わたしも攻め上ります。わたしはあなたと一体、わたしの民はあなたの民と一体、わたしの馬はあなたの馬と一体です」と答え、

3章8節 「我々はどの道を上ればよいのですか」と尋ねた。ヨラムは、「エドムの荒れ野の道を」と答えた。

3章9節 イスラエルの王は、ユダの王およびエドムの王と共に出発したが、迂回するのに七日を費やし、部隊と連れて来た家畜のための水が底をついてしまった。

3章10節 イスラエルの王は、「ああ、主はこの三人の王をモアブの手に渡すために呼び集められたのか」と言った。

3章11節 ヨシャファトが、「ここには我々が主の御旨を尋ねることのできる主の預言者はいないのですか」と尋ねると、イスラエルの王の家臣の一人が、「ここには、エリヤの手に水を注いでいた、シャファトの子エリシャがいます」と答えた。

3章12節 ヨシャファトは、「彼には主の言葉があります」と言った。イスラエルの王は、ヨシャファトおよびエドムの王と共に彼のもとに下って行った。

3章13節 エリシャはイスラエルの王に言った。「わたしはあなたとどんなかかわりがあるのですか。あなたの父の預言者たちや母の預言者たちのもとに行きなさい。」イスラエルの王は答えた。「いいえ、モアブの手に渡そうとしてこの三人の王を呼び集められたのは主だからです。」

3章14節 エリシャは言った。「わたしの仕えている万軍の主は生きておられる。わたしは、ユダの王ヨシャファトに敬意を抱いていなければ、あなたには目もくれず、まして会いもしなかった。

3章15節 今、楽を奏する者を連れて来なさい。」楽を奏する者が演奏をすると、主の御手がエリシャに臨み、

3章16節 彼は言った。「主はこう言われる。『この涸れ谷に次々と堀を造りなさい。』

3章17節 主がこう言われるからである。『風もなく、雨もないのに、この涸れ谷に水が溢れ、あなたたちは家畜や荷役の動物と共にそれを飲む。』

3章18節 これは主の目には小さいことである。主はモアブをあなたたちの手にお渡しになる。

3章19節 あなたたちはすべての砦の町、すべてのえり抜きの町を打ち破り、すべての有用な木を倒し、すべての泉をふさぎ、すべての優れた耕地を石だらけの荒れ地とする。」

3章20節 翌朝、献げ物をささげるころ、見よ、水がエドムの方から流れ込んで、その地は水でいっぱいになった。

3章21節 モアブの人々は皆、王たちが攻め上って来たことを聞いた。剣を帯びる年齢に達した者がすべて召集され、国境の守備に就いた。

3章22節 彼らが翌朝早く起きると、太陽が水面を照らしていた。モアブの人々は目の前に血のように赤い水を見た。

3章23節 彼らは、「これは血だ。王たちは自分たちどうしで争い、討ち合ったにちがいない。モアブよ、今こそ奪うときだ」と言い、

3章24節 イスラエルの陣営に突入したが、イスラエルは立ち上がってモアブを迎え撃ち、モアブは敗走した。イスラエルは彼らに襲いかかり、モアブを討った。

3章25節 彼らは町を破壊し、すべての肥沃な耕地を皆がそれぞれ投げ込んだ石で満たし、すべての泉をふさぎ、すべての有用な木を切り倒した。残ったのは、キル・ハレセトの石だけであった。それも投石器を持つ者に囲まれ、攻撃された。

3章26節 モアブの王は戦いが自分の力の及ばないものになってきたのを見て、剣を携えた兵七百人を引き連れ、エドムの王に向かって突進しようとしたが、果たせなかった。

3章27節 そこで彼は、自分に代わって王となるはずの長男を連れて来て、城壁の上で焼き尽くすいけにえとしてささげた。イスラエルに対して激しい怒りが起こり、イスラエルはそこを引き揚げて自分の国に帰った。


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