黒崎幸吉著 註解新約聖書 Web版

新共同訳イザヤ書第59章

◆救いを妨げるもの

59章1節 主の手が短くて救えないのではない。主の耳が鈍くて聞こえないのでもない。

59章2節 むしろお前たちの悪が/神とお前たちとの間を隔て/お前たちの罪が神の御顔を隠させ/お前たちに耳を傾けられるのを妨げているのだ。

59章3節 お前たちの手は血で、指は悪によって汚れ/唇は偽りを語り、舌は悪事をつぶやく。

59章4節 正しい訴えをする者はなく/真実をもって弁護する者もない。むなしいことを頼みとし、偽って語り/労苦をはらみ、災いを産む。

59章5節 彼らは蝮の卵をかえし、くもの糸を織る。その卵を食べる者は死に/卵をつぶせば、毒蛇が飛び出す。

59章6節 くもの糸は着物にならず/その織物で身を覆うことはできない。彼らの織物は災いの織物/その手には不法の業がある。

59章7節 彼らの足は悪に走り/罪のない者の血を流そうと急ぐ。彼らの計画は災いの計画。破壊と崩壊がその道にある。

59章8節 彼らは平和の道を知らず/その歩む道には裁きがない。彼らは自分の道を曲げ/その道を歩む者はだれも平和を知らない。

59章9節 それゆえ、正義はわたしたちを遠く離れ/恵みの業はわたしたちに追いつかない。わたしたちは光を望んだが、見よ、闇に閉ざされ/輝きを望んだが、暗黒の中を歩いている。

59章10節 盲人のように壁を手探りし/目をもたない人のように手探りする。真昼にも夕暮れ時のようにつまずき/死人のように暗闇に包まれる。

59章11節 わたしたちは皆、熊のようにうなり/鳩のような声を立てる。正義を望んだが、それはなかった。救いを望んだが、わたしたちを遠く去った。

59章12節 御前に、わたしたちの背きの罪は重く/わたしたち自身の罪が不利な証言をする。背きの罪はわたしたちと共にあり/わたしたちは自分の咎を知っている。

59章13節 主に対して偽り背き/わたしたちの神から離れ去り/虐げと裏切りを謀り/偽りの言葉を心に抱き、また、つぶやく。

59章14節 こうして、正義は退き、恵みの業は遠くに立つ。まことは広場でよろめき/正しいことは通ることもできない。

59章15節 まことは失われ、悪を避ける者も奪い去られる。主は正義の行われていないことを見られた。それは主の御目に悪と映った。

59章16節 主は人ひとりいないのを見/執り成す人がいないのを驚かれた。主の救いは主の御腕により/主を支えるのは主の恵みの御業。

59章17節 主は恵みの御業を鎧としてまとい/救いを兜としてかぶり、報復を衣としてまとい/熱情を上着として身を包まれた。

59章18節 主は人の業に従って報い/刃向かう者の仇に憤りを表し/敵に報い、島々に報いを返される。

59章19節 西では主の御名を畏れ/東では主の栄光を畏れる。主は激しい流れのように臨み/主の霊がその上を吹く。

59章20節 主は贖う者として、シオンに来られる。ヤコブのうちの罪を悔いる者のもとに来ると/主は言われる。

59章21節 これは、わたしが彼らと結ぶ契約であると/主は言われる。あなたの上にあるわたしの霊/あなたの口においたわたしの言葉は/あなたの口からも、あなたの子孫の口からも/あなたの子孫の子孫の口からも/今も、そしてとこしえに/離れることはない、と主は言われる。


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