黒崎幸吉著 註解新約聖書 Web版

新共同訳ダニエル書第5章

◆壁に字を書く指の幻

5章1節 ベルシャツァル王は千人の貴族を招いて大宴会を開き、みんなで酒を飲んでいた。

5章2節 宴も進んだころ、ベルシャツァルは、その父ネブカドネツァルがエルサレムの神殿から奪って来た金銀の祭具を持って来るように命じた。王や貴族、後宮の女たちがそれで酒を飲もうというのである。

5章3節 そこで、エルサレムの神殿から奪って来た金銀の祭具が運び込まれ、王や貴族、後宮の女たちがそれで酒を飲み始めた。

5章4節 こうして酒を飲みながら、彼らは金や銀、青銅、鉄、木や石などで造った神々をほめたたえた。

5章5節 その時、人の手の指が現れて、ともし火に照らされている王宮の白い壁に文字を書き始めた。王は書き進むその手先を見た。

5章6節 王は恐怖にかられて顔色が変わり、腰が抜け、膝が震えた。

5章7節 王は大声をあげ、祈祷師、賢者、星占い師などを連れて来させ、これらバビロンの知者にこう言った。「この字を読み、解釈をしてくれる者には、紫の衣を着せ、金の鎖を首にかけて、王国を治める者のうちの第三の位を与えよう。」

5章8節 宮廷の知者たちは皆、集まって来たが、だれもその字を読むことができず、解釈もできなかった。

5章9節 ベルシャツァル王はいよいよ恐怖にかられて顔色が変わり、貴族も皆途方に暮れた。

5章10節 王や貴族が話しているのを聞いた王妃は、宴会場に来てこう言った。「王様がとこしえまでも生き永らえられますように。そんなに心配したり顔色を変えたりなさらないでくださいませ。

5章11節 お国には、聖なる神の霊を宿している人が一人おります。父王様の代に、その人はすばらしい才能、神々のような知恵を示したものでございます。お父上のネブカドネツァル王様は、この人を占い師、祈祷師、賢者、星占い師などの長にしておられました。

5章12節 この人には特別な霊の力があって、知識と才能に富み、夢の解釈、謎解き、難問の説明などがよくできるのでございます。ダニエルという者で、父王様はベルテシャツァルと呼んでいらっしゃいました。このダニエルをお召しになれば、その字の解釈をしてくれることでございましょう。」

5章13節 そこで、ダニエルが王の前に召し出された。王は彼に言った。「父王がユダから捕らえ帰ったユダヤ人の捕囚の一人、ダニエルというのはお前か。

5章14節 聞くところによると、お前は神々の霊を宿していて、すばらしい才能と特別な知恵を持っているそうだ。

5章15節 賢者や祈祷師を連れて来させてこの文字を読ませ、解釈させようとしたのだが、彼らにはそれができなかった。

5章16節 お前はいろいろと解釈をしたり難問を解いたりする力を持つと聞いた。もしこの文字を読み、その意味を説明してくれたなら、お前に紫の衣を着せ、金の鎖を首にかけて、王国を治める者のうち第三の位を与えよう。」

5章17節 ダニエルは王に答えた。「贈り物など不要でございます。報酬はだれか他の者にお与えください。しかし、王様のためにその文字を読み、解釈をいたしましょう。

5章18節 王様、いと高き神は、あなたの父ネブカドネツァル王に王国と権勢と威光をお与えになりました。

5章19節 その権勢を見て、諸国、諸族、諸言語の人々はすべて、恐れおののいたのです。父王様は思うままに殺し、思うままに生かし、思うままに栄誉を与え、思うままに没落させました。

5章20節 しかし、父王様は傲慢になり、頑に尊大にふるまったので、王位を追われ、栄光は奪われました。

5章21節 父王様は人間の社会から追放され、心は野の獣のようになり、野生のろばと共に住み、牛のように草を食らい、天から降る露にその身をぬらし、ついに悟ったのは、いと高き神こそが人間の王国を支配し、その御旨のままに王を立てられるのだということでした。

5章22節 さて、ベルシャツァル王よ、あなたはその王子で、これらのことをよくご存じでありながら、なお、へりくだろうとはなさらなかった。

5章23節 天の主に逆らって、その神殿の祭具を持ち出させ、あなた御自身も、貴族も、後宮の女たちも皆、それで飲みながら、金や銀、青銅、鉄、木や石で造った神々、見ることも聞くこともできず、何も知らないその神々を、ほめたたえておられます。だが、あなたの命と行動の一切を手中に握っておられる神を畏れ敬おうとはなさらない。

5章24節 そのために神は、あの手を遣わして文字を書かせたのです。

5章25節 さて、書かれた文字はこうです。メネ、メネ、テケル、そして、パルシン。

5章26節 意味はこうです。メネは数えるということで、すなわち、神はあなたの治世を数えて、それを終わらせられたのです。

5章27節 テケルは量を計ることで、すなわち、あなたは秤にかけられ、不足と見られました。

5章28節 パルシンは分けるということで、すなわち、あなたの王国は二分されて、メディアとペルシアに与えられるのです。」

5章29節 これを聞いたベルシャツァルは、ダニエルに紫の衣を着せ、金の鎖をその首にかけるように命じ、王国を治める者のうち第三の位を彼に与えるという布告を出した。

5章30節 その同じ夜、カルデア人の王ベルシャツァルは殺された。


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