黒崎幸吉著 註解新約聖書 Web版

新共同訳ダニエル書第8章

◆雄羊と雄山羊の幻

8章1節 わたしダニエルは先にも幻を見たが、その後ベルシャツァル王の治世第三年に、また幻を見た。

8章2節 その幻の中にあって、見るとわたしはエラム州の都スサにおり、ウライ川のほとりにいるようであった。

8章3節 目を上げて眺めると、見よ、一頭の雄羊が川岸に立っていた。二本の角が生えていたが共に長く、一本は他の一本より更に長くて、後ろの方に生えていた。

8章4節 見ていると、この雄羊は西、北、南に向かって突進し、これにかなう獣は一頭もなく、その力から救い出すものもなく、雄羊はほしいままに、また、高慢にふるまい、高ぶった。

8章5節 これについて考えていると、見よ、西から一頭の雄山羊が全地の上を飛ぶような勢いで進んで来た。その額には際立った一本の角が生えていた。

8章6節 この雄山羊は先に見た川岸に立っている二本の角のある雄羊に向かって、激しい勢いで突進した。

8章7節 みるみるうちに雄山羊は雄羊に近づき、怒りに燃えてこれを打ち倒し、その二本の角を折ったが、雄羊には抵抗する力がなかった。雄山羊はこれを地に投げ打ち、踏みにじった。その力から雄羊を救い出すものはなかった。

8章8節 雄山羊は非常に尊大になったが、力の極みで角は折れ、その代わりに四本の際立った角が生えて天の四方に向かった。

8章9節 そのうちの一本からもう一本の小さな角が生え出て、非常に強大になり、南へ、東へ、更にあの「麗しの地」へと力を伸ばした。

8章10節 これは天の万軍に及ぶまで力を伸ばし、その万軍、つまり星のうちの幾つかを地に投げ落とし、踏みにじった。

8章11節 その上、天の万軍の長にまで力を伸ばし、日ごとの供え物を廃し、その聖所を倒した。

8章12節 また、天の万軍を供え物と共に打ち倒して罪をはびこらせ、真理を地になげうち、思うままにふるまった。

8章13節 わたしは一人の聖なる者が語るのを聞いた。またもう一人の聖なる者がその語っている者に言った。「この幻、すなわち、日ごとの供え物が廃され、罪が荒廃をもたらし、聖所と万軍とが踏みにじられるというこの幻の出来事は、いつまで続くのか。」

8章14節 彼は続けた。「日が暮れ、夜の明けること二千三百回に及んで、聖所はあるべき状態に戻る。」

8章15節 わたしダニエルは、この幻を見ながら、意味を知りたいと願っていた。その時、見よ、わたしに向かって勇士のような姿が現れた。

8章16節 すると、ウライ川から人の声がしてこう言った。「ガブリエル、幻をこの人に説明せよ。」

8章17節 彼がわたしの立っている所に近づいて来たので、わたしは恐れてひれ伏した。彼はわたしに言った。「人の子よ、この幻は終わりの時に関するものだということを悟りなさい。」

8章18節 彼がこう話している間に、わたしは気を失って地に倒れたが、彼はわたしを捕らえて立ち上がらせ、

8章19節 こう言った。「見よ、この怒りの時の終わりに何が起こるかをお前に示そう。定められた時には終わりがある。

8章20節 お前の見た二本の角のある雄羊はメディアとペルシアの王である。

8章21節 また、あの毛深い雄山羊はギリシアの王である。その額の大きな角は第一の王だ。

8章22節 その角が折れて代わりに四本の角が生えたが、それはこの国から、それほどの力を持たない四つの国が立つということである。

8章23節 四つの国の終わりに、その罪悪の極みとして/高慢で狡猾な一人の王が起こる。

8章24節 自力によらずに強大になり/驚くべき破壊を行い、ほしいままにふるまい/力ある者、聖なる民を滅ぼす。

8章25節 才知にたけ/その手にかかればどんな悪だくみも成功し/驕り高ぶり、平然として多くの人を滅ぼす。ついに最も大いなる君に敵対し/人の手によらずに滅ぼされる。

8章26節 この夜と朝の幻について/わたしの言うことは真実だ。しかし、お前は見たことを秘密にしておきなさい。まだその日は遠い。」

8章27節 わたしダニエルは疲れ果てて、何日か病気になっていた。その後、起きて宮廷の務めに戻った。しかし、この幻にぼう然となり、理解できずにいた。


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