黒崎幸吉著 註解新約聖書 Web版

新共同訳出エジプト記第12章

◆主の過越

12章1節 エジプトの国で、主はモーセとアロンに言われた。

12章2節 「この月をあなたたちの正月とし、年の初めの月としなさい。

12章3節 イスラエルの共同体全体に次のように告げなさい。『今月の十日、人はそれぞれ父の家ごとに、すなわち家族ごとに小羊を一匹用意しなければならない。

12章4節 もし、家族が少人数で小羊一匹を食べきれない場合には、隣の家族と共に、人数に見合うものを用意し、めいめいの食べる量に見合う小羊を選ばねばならない。

12章5節 その小羊は、傷のない一歳の雄でなければならない。用意するのは羊でも山羊でもよい。

12章6節 それは、この月の十四日まで取り分けておき、イスラエルの共同体の会衆が皆で夕暮れにそれを屠り、

12章7節 その血を取って、小羊を食べる家の入り口の二本の柱と鴨居に塗る。

12章8節 そしてその夜、肉を火で焼いて食べる。また、酵母を入れないパンを苦菜を添えて食べる。

12章9節 肉は生で食べたり、煮て食べてはならない。必ず、頭も四肢も内臓も切り離さずに火で焼かねばならない。

12章10節 それを翌朝まで残しておいてはならない。翌朝まで残った場合には、焼却する。

12章11節 それを食べるときは、腰帯を締め、靴を履き、杖を手にし、急いで食べる。これが主の過越である。

12章12節 その夜、わたしはエジプトの国を巡り、人であれ、家畜であれ、エジプトの国のすべての初子を撃つ。また、エジプト/のすべての神々に裁きを行う。わたしは主である。

12章13節 あなたたちのいる家に塗った血は、あなたたちのしるしとなる。血を見たならば、わたしはあなたたちを過ぎ越す。わたしがエジプトの国を撃つとき、滅ぼす者の災いはあなたたちに及ばない。

12章14節 この日は、あなたたちにとって記念すべき日となる。あなたたちは、この日を主の祭りとして祝い、代々にわたって守るべき不変の定めとして祝わねばならない。

12章15節 七日の間、あなたたちは酵母を入れないパンを食べる。まず、祭りの最初の日に家から酵母を取り除く。この日から第七日までの間に酵母入りのパンを食べた者は、すべてイスラエルから断たれる。

12章16節 最初の日に聖なる集会を開き、第七日にも聖なる集会を開かねばならない。この両日にはいかなる仕事もしてはならない。ただし、それぞれの食事の用意を除く。これだけは行ってもよい。

12章17節 あなたたちは除酵祭を守らねばならない。なぜなら、まさにこの日に、わたしはあなたたちの部隊をエジプトの国から導き出したからである。それゆえ、この日を代々にわたって守るべき不変の定めとして守らねばならない。

12章18節 正月の十四日の夕方からその月の二十一日の夕方まで、酵母を入れないパンを食べる。

12章19節 七日の間、家の中に酵母があってはならない。酵母の入ったものを食べる者は、寄留者であれその土地に生まれた者であれ、すべて、イスラエルの共同体から断たれる。

12章20節 酵母の入ったものは一切食べてはならない。あなたたちの住む所ではどこでも、酵母を入れないパンを食べねばならない。』」

12章21節 モーセは、イスラエルの長老をすべて呼び寄せ、彼らに命じた。「さあ、家族ごとに羊を取り、過越の犠牲を屠りなさい。

12章22節 そして、一束のヒソプを取り、鉢の中の血に浸し、鴨居と入り口の二本の柱に鉢の中の血を塗りなさい。翌朝までだれも家の入り口から出てはならない。

12章23節 主がエジプト人を撃つために巡るとき、鴨居と二本の柱に塗られた血を御覧になって、その入り口を過ぎ越される。滅ぼす者が家に入って、あなたたちを撃つことがないためである。

12章24節 あなたたちはこのことを、あなたと子孫のための定めとして、永遠に守らねばならない。

12章25節 また、主が約束されたとおりあなたたちに与えられる土地に入ったとき、この儀式を守らねばならない。

12章26節 また、あなたたちの子供が、『この儀式にはどういう意味があるのですか』と尋ねるときは、

12章27節 こう答えなさい。『これが主の過越の犠牲である。主がエジプト人を撃たれたとき、エジプトにいたイスラエルの人々の家を過ぎ越し、我々の家を救われたのである』と。」民はひれ伏して礼拝した。

12章28節 それから、イスラエルの人々は帰って行き、主がモーセとアロンに命じられたとおりに行った。

◆初子の死

12章29節 真夜中になって、主はエジプトの国ですべての初子を撃たれた。王座に座しているファラオの初子から牢屋につながれている捕虜の初子まで、また家畜の初子もことごとく撃たれたので、

12章30節 ファラオと家臣、またすべてのエジプト人は夜中に起き上がった。死人が出なかった家は一軒もなかったので、大いなる叫びがエジプト中に起こった。

12章31節 ファラオは、モーセとアロンを夜のうちに呼び出して言った。「さあ、わたしの民の中から出て行くがよい、あなたたちもイスラエルの人々も。あなたたちが願っていたように、行って、主に仕えるがよい。

12章32節 羊の群れも牛の群れも、あなたたちが願っていたように、連れて行くがよい。そして、わたしをも祝福してもらいたい。」

12章33節 エジプト人は、民をせきたてて、急いで国から去らせようとした。そうしないと自分たちは皆、死んでしまうと思ったのである。

12章34節 民は、まだ酵母の入っていないパンの練り粉をこね鉢ごと外套に包み、肩に担いだ。

12章35節 イスラエルの人々は、モーセの言葉どおりに行い、エジプト人から金銀の装飾品や衣類を求めた。

12章36節 主は、この民にエジプト人の好意を得させるようにされたので、エジプト人は彼らの求めに応じた。彼らはこうして、エジプト人の物を分捕り物とした。

◆エジプトの国を去る

12章37節 イスラエルの人々はラメセスからスコトに向けて出発した。一行は、妻子を別にして、壮年男子だけでおよそ六十万人であった。

12章38節 そのほか、種々雑多な人々もこれに加わった。羊、牛など、家畜もおびただしい数であった。

12章39節 彼らはエジプトから持ち出した練り粉で、酵母を入れないパン菓子を焼いた。練り粉には酵母が入っていなかった。彼らがエジプトから追放されたとき、ぐずぐずしていることはできなかったし、道中の食糧を用意するいとまもなかったからである。

12章40節 イスラエルの人々が、エジプトに住んでいた期間は四百三十年であった。

12章41節 四百三十年を経たちょうどその日に、主の部隊は全軍、エジプトの国を出発した。

12章42節 その夜、主は、彼らをエジプトの国から導き出すために寝ずの番をされた。それゆえ、イスラエルの人々は代々にわたって、この夜、主のために寝ずの番をするのである。

◆過越祭の規定

12章43節 主はモーセとアロンに言われた。「過越祭の掟は次のとおりである。外国人はだれも過越の犠牲を食べることはできない。

12章44節 ただし、金で買った男奴隷の場合、割礼を施すならば、彼は食べることができる。

12章45節 滞在している者や雇い人は食べることができない。

12章46節 一匹の羊は一軒の家で食べ、肉の一部でも家から持ち出してはならない。また、その骨を折ってはならない。

12章47節 イスラエルの共同体全体がこれを祝わなければならない。

12章48節 もし、寄留者があなたのところに寄留し、主の過越祭を祝おうとするときは、男子は皆、割礼を受けた後にそれを祝うことが許される。彼はそうすれば、その土地に生まれた者と同様になる。しかし、無割礼の者は、だれもこれを食べることができない。

12章49節 この規定は、その土地に生まれた者にも、あなたたちの間に寄留している寄留者にも、同じように適用される。」

12章50節 イスラエルの人々はすべて、主がモーセとアロンに命じたとおりに行った。

12章51節 まさにこの日に、主はイスラエルの人々を部隊ごとにエジプトの国から導き出された。


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