黒崎幸吉著 註解新約聖書 Web版

新共同訳ヨシュア記第22章

◆ヨルダン川東岸諸部族の帰還

22章1節 ヨシュアは、ルベン人、ガド人、マナセの半部族を呼び寄せて、

22章2節 言った。「あなたたちは、主の僕モーセが命じたことをことごとく守っただけではなく、わたしが命じたすべてのことにも聞き従った。

22章3節 あなたたちは、今日に至るまで長い間、同胞を見捨てず、あなたたちの神、主の命じられた言いつけを守ってきた。

22章4節 しかし今や、あなたたちの神、主は約束されたとおり、同胞に安住の地をお与えになったのだから、あなたたちは主の僕モーセから受けたヨルダン川の東側にある自分の所有地の天幕に帰るがよい。

22章5節 ただ主の僕モーセが命じた戒めと教えを忠実に守り、あなたたちの神、主を愛し、その道に歩み、その戒めを守って主を固く信頼し、心を尽くし、魂を尽くして、主に仕えなさい。」

22章6節 ヨシュアが彼らを祝福して送り出すと、彼らは自分の天幕に帰って行った。

22章7節 マナセの半部族には既にモーセがバシャンの地にその所有地を定めていたが、マナセの残る半部族には、ヨシュアが他の同胞諸部族と共にヨルダン川の西側に所有地を与えた。彼らをその天幕に送り出したとき、ヨシュアは祝福して、

22章8節 彼らに言った。「多くの財宝、多数の家畜、金、銀、銅、鉄および数多くの衣服を天幕に持ち帰りなさい。敵から分捕った物は、兄弟たちと分け合いなさい。」

22章9節 ルベンとガドの人々、およびマナセの半部族は、カナンの土地のシロでイスラエルの他の部族と別れ、モーセを通して受けた主の命令によって既に取得していた自分たちの所有地、ギレアド地方に帰って行った。

22章10節 ルベンとガドの人々、およびマナセの半部族は、カナンの土地にあるヨルダン川のゲリロトに着いたとき、そこに一つの祭壇を築いた。それは目立って大きい祭壇であった。

22章11節 イスラエルの人々は、ルベンとガドの人々、およびマナセの半部族がカナンの地境、ヨルダン川のイスラエル側のゲリロトに祭壇を築いたとの知らせを聞いた。

22章12節 これを聞いたイスラエルの人々は、シロで、イスラエルの人々の共同体全体の集まりを開き、彼らに対して軍を差し向けることにした。

22章13節 イスラエルの人々はまず、ギレアド地方にいるルベンとガドの人々、およびマナセの半部族のもとに祭司エルアザルの子ピネハスを遣わした。

22章14節 彼に同行したのは、イスラエルの各部族から、それぞれ家系の指導者一名、計十名の指導者であり、いずれもイスラエルの部隊の家系の長であった。

22章15節 彼らは、ギレアド地方にいるルベンとガドの人々、およびマナセの半部族のもとに着くと、こう告げた。

22章16節 「主の共同体全体はこう言う。お前たちが今日、イスラエルの神、主に背いたこの背信の行為は何事か。お前たちは、今日、自分たちのために祭壇を築いて、主に逆らっている。

22章17節 かつてペオルで犯したあの罪は、我々にとってささいなことであっただろうか。あのとき、主の共同体に災害がくだり、今日に至ってもまだ清められていないではないか。

22章18節 それなのに、お前たちは今日、主に背こうとしている。今日、主に逆らうなら、明日、イスラエルの共同体全体に御怒りが下るであろう。

22章19節 もしもお前たちの所有地が汚れているなら、主の幕屋がある主の所有地に渡って来て、わたしたちの間に所有地を持つがよい。わたしたちの神、主の祭壇のほかに、自分たちの祭壇を築いて、主に逆らい、わたしたちに逆らってはならない。

22章20節 ゼラの子アカンが滅ぼし尽くしてささげるべきもののことで背いたとき、イスラエルの共同体全体に御怒りが下り、その罪のために息絶えたのは、彼一人だけではなかった。」

22章21節 ルベンとガドの人々、およびマナセの半部族は、イスラエルの部隊の長たちに答えて、言った。

22章22節 「神よ、主なる神よ。神よ、主なる神よ。神はご存じです。イスラエルも分かってください。もし、これが主に対する裏切りであり、背信であったなら、今日、わたしたちを生かしておかないでください。

22章23節 もし、わたしたちが主に背いて祭壇を築き、その上で、焼き尽くす献げ物、穀物の献げ物、和解の献げ物をささげたとすれば、主御自身が罰してくださるでしょう。

22章24節 わたしたちがこのことをしたのは、一つの心配があったからです。すなわち、後日、あなたたちの子供がわたしたちの子供に向かい、『あなたたちはイスラエルの神、主と何の関係もない。

22章25節 ルベンとガドの人々よ。主はヨルダン川をわたしたちとあなたたちとの境とされた。あなたたちには、主の割り当てはない』と言って、あなたたちの子供がわたしたちの子供に主を畏れることをやめさせるかもしれません。

22章26節 それで、自分たちの手で祭壇を築こうと申し合わせたのです。焼き尽くす献げ物やその他の献げ物をするためではなく、

22章27節 あなたたちとわたしたち、更にわたしたちの子孫との間柄を示す証拠とするためです。わたしたちが焼き尽くす献げ物や、和解の献げ物をささげて主を礼拝するのは、後日、あなたたちの子供がわたしたちの子供に向かい、『あなたたちには、主の割り当てはない』と言わないためです。

22章28節 わたしたちはこうも申し合わせました。もし後日、わたしたち、またわたしたちの子孫に、このようなことが言われたなら、こう答えよう。『わたしたちの先祖が作った主の祭壇の模型を見なさい。焼き尽くす献げ物や和解の献げ物をささげるためではなく、あなたたちとわたしたちとの間柄を示す証拠なのです。』

22章29節 今日、主に逆らい、主に背いて、主の幕屋の前にあるわたしたちの神、主の祭壇とは別に祭壇を築き、焼き尽くす献げ物、穀物の献げ物、和解の献げ物をささげるつもりなど、全くありません。」

22章30節 祭司ピネハス、共同体の指導者および同伴したイスラエルの部隊の長たちは、ルベン、ガド、マナセの人々の語る言葉を聞いて、良しとした。

22章31節 エルアザルの子である祭司ピネハスは、ルベン、ガド、マナセの人々に告げた。「わたしたちは今日、主がわたしたちの中におられることを知った。あなたたちは主に対してこの背信の行為をすることなく、イスラエルの民が、主の手にかけられるのを免れさせた。」

22章32節 エルアザルの子、祭司ピネハスと指導者たちは、ルベン、ガドの人々と別れ、ギレアド地方からカナンの土地のイスラエルの人々のもとに帰って、このことを報告した。

22章33節 イスラエルの人々は、このことを良しとし、神をたたえ、もはやルベンとガドの人々の住む地方に攻め上り、これを滅ぼそうと言う者はなかった。

22章34節 ルベンとガドの人々はこの祭壇を、「わたしたちの間では主が神であることの証人」と名付けた。


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