黒崎幸吉著 註解新約聖書 Web版

新共同訳サムエル記上第18章

◆ダビデに対するサウルの敵意

18章1節 ダビデがサウルと話し終えたとき、ヨナタンの魂はダビデの魂に結びつき、ヨナタンは自分自身のようにダビデを愛した。

18章2節 サウルはその日、ダビデを召し抱え、父の家に帰ることを許さなかった。

18章3節 ヨナタンはダビデを自分自身のように愛し、彼と契約を結び、

18章4節 着ていた上着を脱いで与え、また自分の装束を剣、弓、帯に至るまで与えた。

18章5節 ダビデは、サウルが派遣するたびに出陣して勝利を収めた。サウルは彼を戦士の長に任命した。このことは、すべての兵士にも、サウルの家臣にも喜ばれた。

18章6節 皆が戻り、あのペリシテ人を討ったダビデも帰って来ると、イスラエルのあらゆる町から女たちが出て来て、太鼓を打ち、喜びの声をあげ、三絃琴を奏で、歌い踊りながらサウル王を迎えた。

18章7節 女たちは楽を奏し、歌い交わした。「サウルは千を討ち/ダビデは万を討った。」

18章8節 サウルはこれを聞いて激怒し、悔しがって言った。「ダビデには万、わたしには千。あとは、王位を与えるだけか。」

18章9節 この日以来、サウルはダビデをねたみの目で見るようになった。

18章10節 次の日、神からの悪霊が激しくサウルに降り、家の中で彼をものに取りつかれた状態に陥れた。ダビデは傍らでいつものように竪琴を奏でていた。サウルは、槍を手にしていたが、

18章11節 ダビデを壁に突き刺そうとして、その槍を振りかざした。ダビデは二度とも、身をかわした。

18章12節 主はダビデと共におられ、サウルを離れ去られたので、サウルはダビデを恐れ、

18章13節 ダビデを遠ざけ、千人隊の長に任命した。ダビデは兵士の先頭に立って出陣し、また帰還した。

18章14節 主は彼と共におられ、彼はどの戦いにおいても勝利を収めた。

18章15節 サウルは、ダビデが勝利を収めるのを見て、彼を恐れた。

18章16節 イスラエルもユダも、すべての人がダビデを愛した。彼が出陣するにも帰還するにも彼らの先頭に立ったからである。

18章17節 サウルはダビデに言った。「わたしの長女メラブを、お前の妻として与えよう。わたしの戦士となり、主の戦いをたたかってくれ。」サウルは自分でダビデに手を下すことなく、ペリシテ人の手で殺そうと考えていた。

18章18節 ダビデはサウルに言った。「わたしなど何者でしょう。わたしの一族、わたしの父の一族などイスラエルで何者でしょう。わたしが王の婿になるとは。」

18章19節 ところが、サウルの娘メラブはダビデに嫁ぐべきときに、メホラ人アドリエルに嫁がせられた。

18章20節 サウルの娘ミカルはダビデを愛していた。それをサウルに告げる者があり、サウルは好都合だと思った。

18章21節 サウルは、「彼女を与えてダビデを罠にかけ、ペリシテ人の手にかけよう」と考え、ダビデに言った。「二番目の娘を嫁にし、その日わたしの婿になりなさい。」

18章22節 サウルは家臣に命じた。「ダビデにひそかにこう言え。『王はあなたが気に入っておられるし、家臣たちも皆、あなたを愛しているのだから、王の婿になってください。』」

18章23節 サウルの家臣はこれらの言葉をダビデの耳に入れた。ダビデは言った。「王の婿になることが、あなたたちの目には容易なことと見えるのですか。わたしは貧しく、身分も低い者です。」

18章24節 サウルの家臣は、ダビデの言ったことをサウルに報告した。

18章25節 サウルは言った。「では、ダビデにこう言ってくれ。『王は結納金など望んではおられない。王の望みは王の敵への報復のしるし、ペリシテ人の陽皮百枚なのだ』と。」サウルはペリシテ人の手でダビデを倒そうと考えていた。

18章26節 家臣はダビデにこのことを告げた。ダビデはこうして王の婿になることは良いことだと思い、何日もたたないうちに、

18章27節 自分の兵を従えて出立し、二百人のペリシテ人を討ち取り、その陽皮を持ち帰った。王に対し、婿となる条件である陽皮の数が確かめられたので、サウルは娘のミカルを彼に妻として与えなければならなかった。

18章28節 サウルは、主がダビデと共におられること、娘ミカルがダビデを愛していることを思い知らされて、

18章29節 ダビデをいっそう恐れ、生涯ダビデに対して敵意を抱いた。

18章30節 ペリシテの将軍たちが出撃して来ると、ダビデはそのたびにサウルの家臣のだれよりも武勲を立て、名声を得た。


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