黒崎幸吉著 旧約聖書略註 Web版 詩篇





詩篇 第100篇

関根訳喜びの歌

文語訳( )感謝(かんしや)のうた
口語訳感謝の供え物のための歌

戴冠詩集の最後のものとして、全世界に感謝を以てエホバの聖前に来るべきことを叫んでいる。全篇の思想も字句も他の同種類の詩およびイザヤ書エレミヤ記等にこれを見出すことができるけれども、それらの中の粋ともいうべき高く美しき思想を歌っている為に極めて調子の高き詩であり歓喜の旺溢している心持を充分に感ずることができる。バビロン俘囚より帰り来り神殿を再建せるイスラエルの歓喜が如何に大きくあったかを知ることができる。


100篇1節全地(ぜんち)よ、エホバにむかひてシオンの山よりエホバが支配し給うよろこびに充ちてよろこばしき(こゑ)をあげよ。

文語訳100篇1節 全地(ぜんち)よヱホバにむかひて(よろこ)ばしき(こゑ)をあげよ
口語訳100篇1節 全地よ、主にむかって喜ばしき声をあげよ。
関根訳100篇1節 感謝のための歌。全地よ、ヤヴェに向かって歓呼の声をあげよ。
新共同100篇1節 【賛歌。感謝のために。】全地よ、主に向かって喜びの叫びをあげよ。


100篇2節この欣喜(よろこび)をいだきてエホバに*(つか)へ、もはやエホバの御前に恐怖を以て出づることなくよろこびうたひつゝその聖前(みまへ)にきたれ。

文語訳100篇2節 欣喜(よろこび)をいだきてヱホバに(つか)へ うたひつゝその(みまへ)にきたれ
口語訳100篇2節 喜びをもって主に仕えよ。歌いつつ、そのみ前にきたれ。
関根訳100篇2節 喜びをもってヤヴェに仕え、歌いつつそのみ前にきたれ。
新共同100篇2節 喜び祝い、主に仕え 喜び歌って御前に進み出よ。


補註
「事へ」は最早やエホバの御前に奴隷たる状態にあらざることを示す。


*100篇3節()れ、エホバこそ(かみ)にますなれ、彼より外に真の神は存在することなし(かれ)こそ(われ)らを創造(つく)りたまひたれば》【われらを造りたまへるものはエホバにしませば】(われ)らはその(もの)なり。全世界の如何なる民も彼のものならずと云うことなし。われらイスラエルはもとより全世界のすべての民らはその(たみ)その草苑(まき)(ひつじ)なり。エホバこれを守りこれを養い給う。

文語訳100篇3節 ()れヱホバこそ(かみ)にますなれわれらを(っく)りたまへるものはヱホバにましませば我儕(われら)はその(もの)なり われらはその(たみ)その草苑(まき)のひつじなり
口語訳100篇3節 主こそ神であることを知れ。われらを造られたものは主であって、われらは主のものである。われらはその民、その牧の羊である。
関根訳100篇3節 知れ、ヤヴェこそ神にいますを。彼はわれらを造りわれらはそのもの、その民、その牧の羊。
新共同100篇3節 知れ、主こそ神であると。主はわたしたちを造られた。わたしたちは主のもの、その民 主に養われる羊の群れ。


補註
3、4節等はイスラエルの民のみにつき、またエルサレムの宮のみにつき云っている如くに見え、また詩人もかく感じていたのであろうけれども、この信仰の状態は、その民族的制限を超越して全人類的となっていることを感ぜしめる。而してこの理想はイエス・キリストによりゲリジムの山にもエルサレムにもあらず唯霊と真とを以てエホバを拝することを得るに至って完全に実現した。


*100篇4節その恩恵を感謝(かんしや)しつゝその神の宮の御門(みかど)にいりその稜威をほめたたへつゝその大庭(おほには)にいれ、エホバの宮に来りてエホバを拝することこそ全世界の幸でありまたその為すべき道である。されば感謝(かんしや)してその御名(みな)をほめたゝへよ。

文語訳100篇4節 感謝(かんしや)しつゝその(みかど)にいり ほめたゝへつゝその大庭(おほには)にいれ 感謝(かんしや)してその(みな)をほめたゝへよ
口語訳100篇4節 感謝しつつ、その門に入り、ほめたたえつつ、その大庭に入れ。主に感謝し、そのみ名をほめまつれ。
関根訳100篇4節 感謝をもってその門に入り讃美しつつその前庭に入れ。感謝してそのみ名をたたえよ。
新共同100篇4節 感謝の歌をうたって主の門に進み 賛美の歌をうたって主の庭に入れ。感謝をささげ、御名をたたえよ。


補註
4、5節等はエレミヤ33:10、11の預言が実現せるものとして記されている。


100篇5節 エホバは*めぐみふかくその*憐憫(あはれみ)かぎりなく、その*眞實(まこと)はよろづ()におよぶべければなり。

文語訳100篇5節 ヱホバはめぐみふかくその憐憫(あはれみ)かぎりなく その眞實(まこと)よろづ()におよぶべければなり
口語訳100篇5節 主は恵みふかく、そのいつくしみはかぎりなく、そのまことはよろず代に及ぶからである。
関根訳100篇5節 まことにヤヴェは恵み深くそのいつくしみは永遠にその真実(まこと)はよろず代におよぶ。
新共同100篇5節 主は恵み深く、慈しみはとこしえに 主の真実は代々に及ぶ。


補註
「めぐみ深く」は原語「善良なる事」「憐み」と「眞実」とにつきては第89篇諸言を見よ。