黒崎幸吉著 旧約聖書略註 Web版 詩篇





詩篇 第104篇

関根訳(つく)り主なる神


前篇がエホバの憐憫を歌えるに対し本篇はエホバの創造し給える天地とその中の動植物を対象として創造の神の偉大さとその神の支配の完全さとを歌えるものである。従って本篇は大体において創世記の天地創造の順序に従って記述せられ、1−4節は天地創造の第一日および第二日に相当して光と天とを歌い、5−18節は地と水との創造およびその作用で第三日に相当し、19−23節は日、月につきて録しており第四日に相当し、24−30節は動植物等被造物の驚異を記述して略々第五日第六日に相当するものゝ如くである。而して最後に31−35節においてエホバをほめたゝうべきことを述べている。本篇はその内容上ヨブ記38−41章の影響あり、またこれに類似の思想を見ることができる。本篇は第103篇と同一人の作と見ることを得、互に相補充して全宇宙の神の讃美となる。ただし8節a、18節、32節は甚だ拙なる後人の加筆にあらずやと思わる。


〔1〕光と天(1−4)
104篇1節わが靈魂(たましひ)よ、エホバをほめまつれ、わが(かみ)エホバよ、なんぢは甚大(いとおほい)にして天地の主に在し給い尊貴(たふとき)稜威(みいつ)とを()て全宇宙に耀きたまへり。

文語訳104篇1節 わが靈魂(たましひ)よヱホバをほめまつれ わが(かみ)ヱホバよなんぢは至大(いとおほい)にして尊貴(たふとき)稜威(みいづ)とを()たまへり
口語訳104篇1節 わがたましいよ、主をほめよ。わが神、主よ、あなたはいとも大いにして誉と威厳とを着、
関根訳104篇1節 わが魂よ、ヤヴェをほめよ。わが神ヤヴェよ、あなたはいとも大いなる者、栄えと威厳を身にまとわれた。
新共同104篇1節 わたしの魂よ、主をたたえよ。主よ、わたしの神よ、あなたは大いなる方。栄えと輝きをまとい


補註
前篇冒頭と同一の句を以て始まり、同一の句を以て終る(35節)。


104篇2節なんぢ*(ひかり)創造りたまいこれを(ころも)のごとくにまとひてその光輝は全地にまばゆく、(てん)(まく)のごとくにはりてこれを以て全宇宙を覆いたまい、

文語訳104篇2節 なんぢ(ひかり)をころものごとくにまとひ(てん)(まく)のごとくにはり
口語訳104篇2節 光を衣のようにまとい、天を幕のように張り、
関根訳104篇2節 光を上衣のように身につけ天を天幕のようにはりめぐらした。
新共同104篇2節 光を衣として身を被っておられる。天を幕のように張り


補註
光を衣とすることは詩的の形容なり。


104篇3節天の穹蒼の上にある*(みづ)のなかにおのれの殿(との)棟梁(うつばり)をおきて天をその上に支え*(くも)をおのれの(くるま)となし、*(かぜ)をそ(つばさ)としてこれにのりあるき、

文語訳104篇3節 (みづ)のなかにおのれの殿(との)棟梁(うつばり)をおき (くも)をおのれの(くるま)となし(かぜ)(つばさ)にのりあるき
口語訳104篇3節 水の上におのが高殿のうつばりをおき、雲をおのれのいくさ車とし、風の翼に乗りあるき、
関根訳104篇3節 水の中にその高殿の(うつばり)をおき雲を車とし、風の翼にのって飛びかけり、
新共同104篇3節 天上の宮の梁を水の中にわたされた。雲を御自分のための車とし 風の翼に乗って行き巡り


補註
天の上の「水」につきては創世1:6註参照。「風」と「雲」は神の乗用車として形容せらる。


*104篇4節かぜを使者(つかひ)となしてその御旨を全地につたえ、()ゆる()》【焔のいづる火】を《役者(えきしや)》【僕】となしてこれを以てその御業を行いたまふ。

文語訳104篇4節 かぜを使者(つかひ)となし(ほのほ)のいづる()(しもべ)となしたまふ
口語訳104篇4節 風をおのれの使者とし、火と炎をおのれのしもべとされる。
関根訳104篇4節 四方の風を使いとし、人と(ほむら)はその仕え人。
新共同104篇4節 さまざまな風を伝令とし 燃える火を御もとに仕えさせられる。


補註
種々の訳が可能であり意味も難解であるので問題多き一節である。ヘブル1:7の如くにも読むことができる、七十人訳はこれと同じ。


〔2〕地と水(5−9)
104篇5節エホバは()堅き(もとゐ)のうへに()きて永遠(とこしへ)(うご)くことなからしめたまふ。

文語訳104篇5節 ヱホバは()(もとゐ)のうへにおきて 永遠(とこしへ)にうごくことなからしめたまふ
口語訳104篇5節 あなたは地をその基の上にすえて、とこしえに動くことのないようにされた。
関根訳104篇5節 彼は地をその基いの上にすえた、地は永遠(とこしえ)にゆるぐことがない。
新共同104篇5節 主は地をその基の上に据えられた。地は、世々限りなく、揺らぐことがない。


104篇6節創造の始に於ては地は水に掩われており、(ころも)にておほふがごとく、大水(おほみづ)にて()をおほひたまへり、(みづ)《は(やま)(うへ)(とゞま)りぬ。》【たゝへて山のうへをこゆ】

文語訳104篇6節 (ころも)にておほふがごとく大水(おほみづ)にて()をおほひたまへり (みづ)たゝへて(やま)のうへをこゆ
口語訳104篇6節 あなたはこれを衣でおおうように大水でおおわれた。水はたたえて山々の上を越えた。
関根訳104篇6節 淵は着物のように地をおおい、山々の上に水があった。
新共同104篇6節 深淵は衣となって地を覆い 水は山々の上にとどまっていたが


104篇7節なんぢ御言を以てこの水を(しつた)すれば(みづ)しりぞき、(なんぢ)いかづちの(こゑ)をはなてば(みづ)たちまち()りぬ。かくして陸地はあらわれいでたり(創世1:9)。

文語訳104篇7節 なんぢ叱陀(しつた)すれば(みづ)しりぞき (なんぢ)いかつちの(こゑ)をはなてば(みづ)たちまち()りぬ
口語訳104篇7節 あなたのとがめによって水は退き、あなたの雷の声によって水は逃げ去った。
関根訳104篇7節 あなたが叱咤(しった)すると水は逃げさり、あなたの(いかずち)の声によっておいはらわれた。
新共同104篇7節 あなたが叱咤されると散って行き とどろく御声に驚いて逃げ去った。


*104篇8節地の高低も汝によりて定められ(やま)(のぼ)(たに)(くだ)りて(なんぢ)(さだ)めたまへる(ところ)にいたる。》【あるひは山にのぼりあるひは谷にくだりて汝のさだめたまへる所にゆけり】

文語訳104篇8節 あるいは(やま)にのぼり(あるい)(たに)にくだりて (なんぢ)のさだめたまへる(ところ)にゆけり
口語訳104篇8節 山は立ちあがり、谷はあなたが定められた所に沈んだ。
関根訳104篇8節 水は山々に上り、谷に降り、あなたが定めたその所に落ちついた。
新共同104篇8節 水は山々を上り、谷を下り あなたが彼らのために設けられた所に向かった。


補註
現行訳は7節の水の上り下りの意味に解しているけれども、かく訳すことは文法上不可能である、私訳の如くすれば本節は括弧に入れて解すべきものである。


104篇9節なんぢ水に対して(さかひ)をたてて(これ)をこえしめず、ふたたび()をおほふことなからしむ。

文語訳104篇9節 なんぢ(さかひ)をたてて(これ)をこえしめず ふたゝび()をおほふことなからしむ
口語訳104篇9節 あなたは水に境を定めて、これを越えさせず、再び地をおおうことのないようにされた。
関根訳104篇9節 あなたは堺をもうけて水が越えないようにしふたたび地をおおうことのないようにした。
新共同104篇9節 あなたは境を置き、水に越えることを禁じ 再び地を覆うことを禁じられた。


〔3〕地と水との祝福(10−18)
104篇10節エホバはいづみを(たに)にわきいだしたまふ、その(ながれ)(やま)のあひだにはしる。これみなエホバの為し給う所なり。

文語訳104篇10節 ヱホバはいづみを(たに)にわきいだし(たま)ふ その(ながれ)(やま)のあひだにはしる
口語訳104篇10節 あなたは泉を谷にわき出させ、それを山々の間に流れさせ、
関根訳104篇10節 谷間に泉を()き出させ、山々の間を水は流れる。
新共同104篇10節 主は泉を湧き上がらせて川とし 山々の間を流れさせられた。


104篇11節かくてこのいづみと小川とを()のもろもろの(けもの)にのましむ、()驢馬(うさぎむま)もその(かわき)をやむ。かくしてエホバは野の獣をも顧み給う。

文語訳104篇11節 かくて()のもろもろの(けもの)にのましむ()驢馬(うさぎむま)もその(かわき)をやむ
口語訳104篇11節 野のもろもろの獣に飲ませられる。野のろばもそのかわきをいやす。
関根訳104篇11節 水はすべての野の獣をうるおし、野ろばもその(かつ)をいやす。
新共同104篇11節 野の獣はその水を飲み 野ろばの渇きも潤される。


104篇12節水のほとりには樹木繁茂し(そら)(とり)もそのほとりにすみ樹梢(こずゑ)(ひま)より嬉々としてさへづりうたふ。

文語訳104篇12節 (そら)(とり)もそのほとりにすみ 樹梢(こずゑ)(ひま)よりさへづりうたふ
口語訳104篇12節 空の鳥もそのほとりに住み、こずえの間にさえずり歌う。
関根訳104篇12節 その上に(そら)の鳥が住み小枝の間でさえずる。
新共同104篇12節 水のほとりに空の鳥は住み着き 草木の中から声をあげる。


104篇13節エホバはその殿(との)の上に貯うる貯水より雨を降らせて〔もろもろの〕(やま)(やま))に灌漑(みづそゝ)ぎたまふ、()はなんぢのみわざの()なるこの慈雨によりて飽足(あきた)りぬ。

文語訳104篇13節 ヱホバはその殿(との)よりもろもろの(やま)灌漑(みづそそ)ぎたまふ ()はなんぢのみわざの()によりて飽足(あきた)りぬ
口語訳104篇13節 あなたはその高殿からもろもろの山に水を注がれる。地はあなたのみわざの実をもって満たされる。
関根訳104篇13節 彼はその高殿から山々に水を注ぎ天からの賜物(たまもの)によって地は飽き足りる。
新共同104篇13節 主は天上の宮から山々に水を注ぎ 御業の実りをもって地を満たされる。


104篇14節エホバは雨を降らせこれによりて(くさ)をはえしめて家畜(けだもの)にあたへ、田産(たなつもの)をはえしめて(ひと)使用(もちゐ)にそなへたまふ、《これ》【かく】(つち)より食物(くひもの)をいだ《さんが(ため)》【したまふ】雨と地とによりてエホバは動物のみならず人にも祝福を与え給う。

文語訳104篇14節 ヱホバは(くさ)をはえしめて家畜(けだもの)にあたへ 田産(はたつもの)をはえしめて(ひと)使用(もちゐ)にそなへたまふ かく(つち)より食物(くひもの)をいだしたまふ
口語訳104篇14節 あなたは家畜のために草をはえさせ、また人のためにその栽培する植物を与えて、地から食物を出させられる。
関根訳104篇14節 彼は家畜のための草と、人の耕作のための青物を茂らせパンを地から生えさせる。
新共同104篇14節 家畜のためには牧草を茂らせ 地から糧を引き出そうと働く人間のために さまざまな草木を生えさせられる。


104篇15節《また葡萄酒(ぶだうしゆ)(ひと)(こゝろ)(よろこ)ばしめんが(ため)、その(かほ)(あぶら)にてつやゝかならしめん(ため)(かて)(ひと)(こゝろ)(さゝ)へんが(ため)なり。》【人のこゝろを歡ばしむる葡萄酒、ひとの顔をつやゝかならしむるあぶら、人のこゝろを強からしむる糧どもなり】

文語訳104篇15節 (ひと)のこゝろを(よろこ)ばしむる葡萄酒(ぶだうしゆ))ひとの(かほ)をつやゝかならしむるあぶら (ひと)のこゝろを(つよ)からしむる(かて)どもなり
口語訳104篇15節 すなわち人の心を喜ばすぶどう酒、その顔をつややかにする油、人の心を強くするパンなどである。
関根訳104篇15節 酒は人の心を喜ばせ、顔は油によってつややかになりパンは人の心の支えとなる。
新共同104篇15節 ぶどう酒は人の心を喜ばせ、油は顔を輝かせ パンは人の心を支える。


104篇16節エホバの植えたまえる全地の()とその()ゑたまへるレバノンの香柏(かうはく)とはこの天よりの雨によりて飽足(あきた)りぬべし。

文語訳104篇16節 ヱホバの()とその()ゑたまへるレバノンの香柏(かうはく)とは飽足(あきた)りぬべし
口語訳104篇16節 主の木と、主がお植えになったレバノンの香柏とは豊かに潤され、
関根訳104篇16節 ヴェの木々とその植えたレバノンのいと杉は飽き足り
新共同104篇16節 主の木々、主の植えられたレバノン杉は豊かに育ち


104篇17節これらの樹々は繁りて(とり)はそのなかに()をつくり、(つる)(まつ)をその(すまひ)とせり。雨の祝福もまた大なるかな。

文語訳104篇17節 (とり)はそのなかに()をつくり(つる)(まつ)をその(すまひ)とせり
口語訳104篇17節 鳥はその中に巣をつくり、こうのとりはもみの木をそのすまいとする。
関根訳104篇17節 小鳥はそこに巣をつくり、こうのとりはその頂きに宿る。
新共同104篇17節 そこに鳥は巣をかける。こうのとりの住みかは糸杉の梢。


104篇18節たかき(やま)山羊(やぎ)のすまひ、磐石(いは)山鼠(やまねずみ)のかくるる(ところ)なり。

文語訳104篇18節 たかき(やま)山羊(やぎ)のすまひ磐石(いは)山鼠(やまねずみ)のかくるる(ところ)なり
口語訳104篇18節 高き山はやぎのすまい、岩は岩だぬきの隠れる所である。
関根訳104篇18節 高い山々は野山羊のため、岩山は岩だぬきの隠れ場。
新共同104篇18節 高い山々は野山羊のため。岩狸は岩場に身を隠す。


〔4〕日月の祝福(19−23)
104篇19節エホバは(つき)をつくりて時期(とき)をつかさどらせこれによりて日数の経過季節の変化を示したまへり、()はその西(にし)にいることをしる。これによりて一日の時刻を人に示し給う。

文語訳104篇19節 ヱホバは(つき)をつくりて(とき)をつかさどらせたまへり ()はその西(にし)にいることをしる
口語訳104篇19節 あなたは月を造って季節を定められた。日はその入る時を知っている。
関根訳104篇19節 彼は時を定めるために月をつくり、日はその沈む時を知る。
新共同104篇19節 主は月を造って季節を定められた。太陽は沈む時を知っている。


104篇20節なんぢ黒暗(くらき)をつくりたまへば(よる)あり、夜には夜の使命ありてそのとき(はやし)のけものは(みな)()()づ。》【しのびしのびて出できたる】

文語訳104篇20節 なんぢ黒暗(くらき)をつくりたまへば(よる)あり そのとき(はやし)のけものは(みな)しのびしのびに()できたる
口語訳104篇20節 あなたは暗やみを造って夜とされた。その時、林の獣は皆忍び出る。
関根訳104篇20節 あなたが闇をおくと夜となり森の獣たちがみなはいまわる。
新共同104篇20節 あなたが闇を置かれると夜になり 森の獣は皆、忍び出てくる。


104篇21節わかき(しゝ)ほえて()をもとめ(エル)食物(くひもの)をもとむ。夜は彼らにとりて神の祝福なり。

文語訳104篇21節 わかき(しし)ほえて()をもとめ(かみ)にくひものをもとむ
口語訳104篇21節 若きししはほえてえさを求め、神に食物を求める。
関根訳104篇21節 若獅子は獲物を求めてほえ、神からその食い物を求める。
新共同104篇21節 若獅子は餌食を求めてほえ 神に食べ物を求める。


104篇22節而して()いづればこれらの獣類は退(しりぞ)きてその(あな)にふす。

文語訳104篇22節 ()いつれば退(しりぞ)きてその(あな)にふす
口語訳104篇22節 日が出ると退いて、その穴に寝る。
関根訳104篇22節 日が昇ると彼らは退き、その洞穴に伏してやすむ。
新共同104篇22節 太陽が輝き昇ると彼らは帰って行き それぞれのねぐらにうずくまる。


104篇23節然るに(ひと)これに反し日の出と共にいでて(わざ)をとり、その勤勞(きんらう)はゆふべにまでいたる。昼は人間にとりて神の賜物なり。

文語訳104篇23節 (ひと)はいでて(わざ)をとりその勤勞(きんらう)はゆふべにまでいたる
口語訳104篇23節 人は出てわざにつき、その勤労は夕べに及ぶ。
関根訳104篇23節 人々が出てきて仕事につきその勤労は夕にいたる。
新共同104篇23節 人は仕事に出かけ、夕べになるまで働く。


〔5〕エホバの御業は驚異なり(24−30)
104篇24節エホバよ、かく考え来れば(なんぢ)事跡(みわざ)はいかに(さは)なる。これらは(みな)なんぢ〔の〕智慧(ちゑ)《をもて》【にて】つくりたまへり、汝の智慧は量りがたし、(なんぢ)の〔もろもろの〕(とみ)()にみつ。

文語訳104篇24節 ヱホバよなんぢの事跡(みわざ)はいかに(さは)なる これらは(みな)なんぢの智慧(ちゑ)にてつくりたまへり (なんぢ)のもろもろの(とみ)()にみつ
口語訳104篇24節 主よ、あなたのみわざはいかに多いことであろう。あなたはこれらをみな知恵をもって造られた。地はあなたの造られたもので満ちている。
関根訳104篇24節 ヴェよ、あなたのみわざはいかに(さわ)なる。すべてをあなたは知恵をもって作られた。地はあなたの造ったもので満ちている。
新共同104篇24節 主よ、御業はいかにおびただしいことか。あなたはすべてを知恵によって成し遂げられた。地はお造りになったものに満ちている。


104篇25節かしこに(おほい)なるひろき(うみ)あり、そのなかに(かず)しられぬ()ふもの《大小(だいせう)生物(いきもの)》【小なる大なる生けるもの】あり。これらは皆汝のつくりたまえる汝の富にあらずや。

文語訳104篇25節 かしこに(おほい)なるひろき(うみ)あり そのなかに(かず)しられぬ()ふもの(ちひさ)なる(おほい)なる()けるものあり
口語訳104篇25節 かしこに大いなる広い海がある。その中に無数のもの、大小の生き物が満ちている。
関根訳104篇25節 海をも支配する者よ、海は大いにして広くそこには無数の動くもの、大小の生き物が満ちている。
新共同104篇25節 同じように、海も大きく豊かで その中を動きまわる大小の生き物は数知れない。


*104篇26節その海は洋々として広く(ふね)そのうへをはしり、(なんぢ)のつくりたまへる(わに)の如き大なる恐るべき獣さえもそのうちにあそびたはぶる。

文語訳104篇26節 (ふね)そのうへをはしり(なんぢ)のつくりたまへる(わに)そのうちにあそびたはぶる
口語訳104篇26節 そこに舟が走り、あなたが造られたレビヤタンはその中に戯れる。
関根訳104篇26節 そこに舟が行きかい、あなたが遊び道具につくられたレビヤタンがいる。
新共同104篇26節 舟がそこを行き交い お造りになったレビヤタンもそこに戯れる。


補註
後半直訳「その中に遊ぶべく汝の造りたまへる鰐、其所にあり」。


104篇27節かれらは(みな)なんぢに依頼みなんぢ俟望(まちのぞ)む、なんぢ彼らの上をも見守り給い、()(とき)食物(くひもの)(これ)にあたへたまふ。

文語訳104篇27節 (かれ)(みな)なんぢを俟望(まちのぞ)む なんぢ宜時(よきとき)にくひものを(これ)にあたへたまふ
口語訳104篇27節 彼らは皆あなたが時にしたがって食物をお与えになるのを期待している。
関根訳104篇27節 みなあなたが彼らに食物を時に及んで与えられるのを待つ。
新共同104篇27節 彼らはすべて、あなたに望みをおき ときに応じて食べ物をくださるのを待っている。


104篇28節彼等(かれら)はなんぢの(あた)へたまふ(もの)をひろふ、なんぢ(みて)をひらきたまへばかれら()(もの)にあきたりぬ。彼らの如きものすらも悉く皆汝のみめぐみの下にその生命を保つなり、それ故に

文語訳104篇28節 彼等(かれら)はなんぢの(あた)へたまふ(もの)をひろふ なんぢ(みて)をひらきたまへばかれら嘉物(よきもの)にあきたりぬ
口語訳104篇28節 あなたがお与えになると、彼らはそれを集める。あなたが手を開かれると、彼らは良い物で満たされる。
関根訳104篇28節 あなたがお与えになると彼らは集め、み手を開かれると良きものに飽き足りる。
新共同104篇28節 あなたがお与えになるものを彼らは集め 御手を開かれれば彼らは良い物に満ち足りる。


104篇29節なんぢの御面(みかほ)をおほひ彼らをはなれたまへば(かれ)らはあわてふためく、彼らは一日も安きを得ざればなり。(なんぢ)かれらの氣息(いき)をとりたまへば、(かれ)らはたちまちにして()にて(ちり)にかへる。汝はかく彼らを全く支配し給う。

文語訳104篇29節 なんぢ(みかほ)をおほひたまへば彼等(かれら)はあわてふためく (なんぢ)かれらの氣息(いき)をとりたまへばかれらは()にて(ちり)にかへる
口語訳104篇29節 あなたがみ顔を隠されると、彼らはあわてふためく。あなたが彼らの息を取り去られると、彼らは死んでちりに帰る。
関根訳104篇29節 み顔を隠されると彼らはおじまどいあなたが彼らの霊を取り去られると彼らは死んで(ちり)にかえる。
新共同104篇29節 御顔を隠されれば彼らは恐れ 息吹を取り上げられれば彼らは息絶え 元の塵に返る。


104篇30節これに反しなんぢ(みたま)を《(おく)り》【いだし】たまへば萬物(すべてのもの)(みな)(つく)《られ》【らる】なんぢ()のおもてを(あらた)にしたまふ。汝の御手によりて凡てのもの或は生命を得或は死滅す、汝の御業はおどろくべきかな。

文語訳104篇30節 なんぢ(みたま)をいだしたまへば百物(すべてのもの)みな(つく)らるなんぢ()のおもてを(あらた)にしたまふ
口語訳104篇30節 あなたが霊を送られると、彼らは造られる。あなたは地のおもてを新たにされる。
関根訳104篇30節 あなたの霊を送られると彼らは創造される。こうしてあなたは地の面を新たにされる。
新共同104篇30節 あなたは御自分の息を送って彼らを創造し 地の面を新たにされる。


〔6〕エホバを讃美せよ(31−35)
104篇31節(ねが)はくはエホバの榮光(えいくわう)とこしへにあらんことを、エホバ天地を創造りたまえる時のごとくそのみわざを(よろこ)びたまはんことを。

文語訳104篇31節 (ねが)はくはヱホバの榮光(えいくわう)とこしへにあらんことを ヱホバそのみわざを(よろこ)びたまはんことを
口語訳104篇31節 どうか、主の栄光がとこしえにあるように。主がそのみわざを喜ばれるように。
関根訳104篇31節 ヴェの栄光は永遠なれ、ヤヴェはそのみわざを(よろこ)ばれよ。
新共同104篇31節 どうか、主の栄光がとこしえに続くように。主が御自分の業を喜び祝われるように。


*104篇32節エホバ()をみたまへば()ふるひ、(やま)にふれたまへば(やま)(けぶり)をいだす。地震も噴火も皆エホバの為し給う御業なり。

文語訳104篇32節 ヱホバ()をみたまへば()ふるひ (やま)にふれたまへば(やま)(けぶり)をいだす
口語訳104篇32節 主が地を見られると、地は震い、山に触れられると、煙をいだす。
関根訳104篇32節 彼地をみたまえば地は震え、山はふれられて煙を出す。
新共同104篇32節 主が地を見渡されれば地は震え 山に触れられれば山は煙を上げる。


補註
思想の連絡はなはだ拙なり、おそらく後人の拙なる加筆か。


104篇33節()けるかぎりはエホバに(むか)ひてよろこびのうたをうたひ、(われ)ながらふるほどはわが(かみ)をほめうたはん。

文語訳104篇33節 ()けるかぎりはヱホバに(むか)ひてうたひ (われ)ながらふるほどはわが(かみ)をほめうたはん
口語訳104篇33節 わたしは生きるかぎり、主にむかって歌い、ながらえる間はわが神をほめ歌おう。
関根訳104篇33節 わたしは生きる限りヤヴェに向かって歌い、生きながらえる間わが神をほめ歌う。
新共同104篇33節 命ある限り、わたしは主に向かって歌い 長らえる限り、わたしの神にほめ歌をうたおう。


104篇34節エホバをおもふわが思念(おもひ)はたのしみ(ふか)からん、われエホバによりて(よろこ)ぶべし。エホバは全宇宙を創造し支配し給えばなり。

文語訳104篇34節 ヱホバをおもふわが思念(おもひ)はたのしみ(ふか)からん われヱホバによりて(よろこ)ぶべし
口語訳104篇34節 どうか、わたしの思いが主に喜ばれるように。わたしは主によって喜ぶ。
関根訳104篇34節 わが歌がみ心にかなうように。わたしがヤヴェにあって喜びうるように。
新共同104篇34節 どうか、わたしの歌が御心にかなうように。わたしは主によって喜び祝う。


104篇35節従ってエホバの創造とその支配とに応わざる罪人(つみびと)()より絶滅(たちほろぼ)され、あしきものは《最早(もは)存在(そんざい)()ざるべし、》【またあらざるべし】かくならんことは我が願なり。わが靈魂(たましひ)よ、エホバをほめまつれ、《*ヤハ》【エホバ】を讃稱(ほめたゝ)へよ。

文語訳104篇35節 罪人(つみびと)()より絶滅(たちほろ)ぼされ あしきものは(また)あらざるべし わが靈魂(たましひ)よヱホバをほめまつれヱホバを讃稱(ほめたた)へよ
口語訳104篇35節 どうか、罪びとが地から断ち滅ぼされ、悪しき者が、もはや、いなくなるように。わがたましいよ、主をほめよ。主をほめたたえよ。
関根訳104篇35節 罪人は地からたち滅ぼされ、悪しき者はもはやいなくなるように。わが魂よ、ヤヴェをほめよ、ハレルヤ!
新共同104篇35節 どうか、罪ある者がこの地からすべてうせ 主に逆らう者がもはや跡を絶つように。わたしの魂よ、主をたたえよ。ハレルヤ。


補註
「ヤハを讃稱へよ」は原語ハレルーヤーで、ここに始めて現われている。後にハレルヤ詩集(第111−118、146−150)に多くあらわる。