黒崎幸吉著 旧約聖書略註 Web版 詩篇





詩篇 第107篇

関根訳救われた者の感謝


本篇は第五巻の初頭を飾る詩であって、イスラエルがバビロンの俘囚より帰還せる後に、神の憐憫と真実とに対して共に感謝すべきことを高調している意味において第五巻の初頭に位置することは適当である。しかしながら本篇は前巻末の第105、106篇と共に三幅対をなしているのであって、この三篇は同一の目的に向って三つの異れる方面よりこれを取扱っているのである。1−3節において106:47の祈が応えられしことにたいする感謝をさゝぐべきことを慫慂(しょうよう)し、次になやめる旅人(4−9節)、囚徒(10−16節)、病者(17−22節)、難船の遭難者(23−32節)等がエホバに祈り求むる場合(6、13、19、28の折返し)これを救い給うエホバの憐憫を記し、8、15、21、31節の折返しによりてエホバをほめたたえんことをすゝめている。32節以下はややその以前の部分との連絡を欠くごとくに見えるけれども然らず、これを一般化してなやめる者を救い、高ぶる者を摧き給うエホバの憐憫と審判とを記す。


〔1〕感謝をささげよ(1−3)
107篇1節エホバに感謝(かんしや)せよ、(そは) エホバは(めぐみ)ふかく〔ましまして〕その憐憫(あはれみ)《とこしへにたゆることなければなり。》【かぎりなし】エホバはこのあはれみを以てイスラエルをバビロンの手より救出したまえり。

文語訳107篇1節 ヱホバに感謝(かんしや)せよ ヱホバは(めぐみ)ふかくましましてその隣憫(あはれみ)かぎりなし
口語訳107篇1節 「主に感謝せよ、主は恵みふかく、そのいつくしみはとこしえに絶えることがない」と、
関根訳107篇1節 ヴェに感謝せよ、げに彼は恵み深くそのいつくしみは永遠につづく。
新共同107篇1節 「恵み深い主に感謝せよ 慈しみはとこしえに」と


107篇2節それ故にエホバ《に(あがな)はれし(もの)》【の救贖をかうぶる者】はみな(しか)いふべきなり。声を合せてこの感謝を表わすべきなり。

文語訳107篇2節 ヱホバの救贖(あがなひ)をかうぶる(もの)はみな(しか)いふべきなり
口語訳107篇2節 主にあがなわれた者は言え。主は彼らを悩みからあがない、
関根訳107篇2節 ヴェに(あがな)われた者は言え、彼は苦しみの中から彼らを贖い
新共同107篇2節 主に贖われた人々は唱えよ。主は苦しめる者の手から彼らを贖い


*107篇3節エホバは(てき)()よりかれらを(あがな)て之をエルサレムに帰らしめかれらを〔もろもろの〕((かく)()より即ち(ひがし)(より)、西(にし)(より)、(きた)(より)、《*(うみ)より》【南より】〔とり〕あつめ《たまへるなり。》【たまへり】この恩恵を思いて我らは感謝せずにおる事能わず。

文語訳107篇3節 エホバは(てき)()よりかれらを(あがな)ひもろもろの()より東西北南(ひがしにしきたみなみ)よりとりあつめたまへり
口語訳107篇3節 もろもろの国から、東、西、北、南から彼らを集められた。
関根訳107篇3節 よもの国、東、西、北、南より彼らを集めたと。
新共同107篇3節 国々の中から集めてくださった 東から西から、北から南から。


補註
本節は前節の「贖はれし者」の説明的従属句、「海より」、海は普通西を指す故、これを「南」と訳するは不都合なるが如くであるが、恐らくイザヤ49:12をそのまゝに用いしものか、又は「海」の原語を少しく変更して「南」となせるものならん。


〔2〕なやめる旅人に対するエホバの憐憫(4−9)
107篇4節かれら《は荒野(あらの)砂漠(さばく)にさまよひ、(すま)ふべき(まち)への(みち)見出(みいだ)さゞりき。》【野にてあれはてたる路にさまよひその住ふべき邑にあはざりき】イスラエルはその俘囚の時代に於てまことにこの旅人の如くになやみしなり。

文語訳107篇4節 かれら()にてあれはてたる(みち)にさまよひその(すま)ふべき(まち)にあはざりき
口語訳107篇4節 彼らは人なき荒野にさまよい、住むべき町にいたる道を見いださなかった。
関根訳107篇4節 彼らは砂漠で迷い、荒野で人の住む町への道を見失った。
新共同107篇4節 彼らは、荒れ野で迷い 砂漠で人の住む町への道を見失った。


107篇5節かれらはその砂漠の道に於て()ゑまた(かわ)食うに食物なく飲むに水なくそのうちの霊魂(たましひ)おとろへ力も竭きはてたり。

文語訳107篇5節 かれら()ゑまた(かわ)きそのうちの靈魂(たましひ)おとろへたり
口語訳107篇5節 彼らは飢え、またかわき、その魂は彼らのうちに衰 えた。
関根訳107篇5節 彼らは飢えかつ渇き、彼らののどはひあがった。
新共同107篇5節 飢え、渇き、魂は衰え果てた。


*107篇6節()くてその困苦(くるしみ)のうちにてエホバ《に》【を】助を求めてよばはりたればエホバその祈をきゝてこれを患難(なやみ)よりたすけいだし、

文語訳107篇6節 (かく)てその困苦(くるしみ)のうちにてヱホバをよばはりたれば ヱホバこれを患難(なやみ)よりたすけいだし
口語訳107篇6節 彼らはその悩みのうちに主に呼ばわったので、主は彼らをその悩みから助け出し、
関根訳107篇6節 その苦しみの中で彼らはヤヴェに叫んだ、彼はその悩みから彼らを救い
新共同107篇6節 苦難の中から主に助けを求めて叫ぶと 主は彼らを苦しみから救ってくださった。


補註
本節は尚13、19、28にも繰返さる。


107篇7節(すま)ふべき(まち)に《(たつ)する》【ゆかしめんとて】(なほ)(みち)にみちびきたまへり。エホバは必ず我らを苦難の中より救い給う。

文語訳107篇7節 (すま)ふべき(まち)にゆかしめんとて(なほ)(みち)にみちびきたまへり
口語訳107篇7節 住むべき町に行き着くまで、まっすぐな道に導かれた。
関根訳107篇7節 正しい道に彼らを導き人の住む町に行かせた。
新共同107篇7節 主はまっすぐな道に彼らを導き 人の住む町に向かわせてくださった。


*107篇8節(ねが)はくは《エホバに(むか)ひ、その憐憫(あはれみ)と、(ひと)()らになしたまへる(くす)しき事跡(みわざ)とを感謝(かんしや)せんことを。》【すべての人はエホバの惠により人の子になしたまへる奇しき事跡によりてエホバを讃稱へんことを】

文語訳107篇8節 (ねが)はくはすべての(ひと)はヱホバの(めぐみ)により(ひと)()になしたまへる(くす)しき事跡(みわざ)によりてヱホバを讃稱(ほめたた)へんことを
口語訳107篇8節 どうか、彼らが主のいつくしみと、人の子らになされたくすしきみわざとのために、主に感謝するように。
関根訳107篇8節 彼のいつくしみと、人の子らへの奇しきみわざの故に彼らはヤヴェに感謝せよ。
新共同107篇8節 主に感謝せよ。主は慈しみ深く 人の子らに驚くべき御業を成し遂げられる。


補註
本節は尚15、21、31にも繰返さる。6節の祈願に対し本節は感謝なり。


107篇9節(そは)エホバは(かわ)きしたふ霊魂(たましひ)を《()かしめ》【たらはせ】()ゑたるたましひを()(もの)にて《みたし》【あかしめ】(たま)へばなり。斯のごとくエホバはさまよえるイスラエルに住むべき邑を与え、よき物にてその口を飽かしめ給えるなり。

文語訳107篇9節 ヱホバは(かわ)きしたふ靈魂(たましひ)をたらはせ()ゑたるたましひを嘉物(よきもの)にてあかしめ(たま)へばなり
口語訳107篇9節 主はかわいた魂を満ち足らせ、飢えた魂を良き物で満たされるからである。
関根訳107篇9節 彼がかわいたのどをうるおし飢えた(たま)に良きものを満たしたから。
新共同107篇9節 主は渇いた魂を飽かせ 飢えた魂を良いもので満たしてくださった。


〔3〕エホバは囚人を顧み給う(10−16)
107篇10節牢獄の中にありくらきと*()(かげ)とに()るもの、患難(なやみ)とくろがねの鏈とに(いまし)めらるゝものたる囚人、

文語訳107篇10節 くらきと()(かげ)とに()るもの患難(なやみ)とくろがねとに(いまし)めらるゝもの
口語訳107篇10節 暗黒と深いやみの中にいる者、苦しみと、くろがねに縛られた者、
関根訳107篇10節 暗きと闇のうちに座する者苦悩と鉄鎖にしばられた者。
新共同107篇10節 彼らは、闇と死の陰に座る者 貧苦と鉄の枷が締めつける捕われ人となった。


補註
「死の蔭」は「墓場」という如き意味。


107篇11節(エル)(ことば)にそむき、 至高者(いとたかきもの)のをしへを(かろ)しめければ、

文語訳107篇11節 (かみ)(ことば)にそむき至高者(いとたかきもの)のをしへを(かろ)しめければ
口語訳107篇11節 彼らは神の言葉にそむき、いと高き者の勧めを軽んじたので、
関根訳107篇11節 げに彼らは神の言いつけにそむきいと高き者の計画(はかりごと)をなみした。
新共同107篇11節 神の仰せに反抗し いと高き神の御計らいを侮ったからだ。


107篇12節神は之に対する懲戒とし又刑罰としてかれらに獄中の勤勞(きんらう)を与え、之をもてその(こころ)をひくうしたまへり、かれらこの苦難のために(たふ)れたれど誰も之を(たす)くるものもなかりき。斯く彼らは凡ての人に見棄てられき、俘囚の中にあるイスラエルもまた之と同一の運命にあり。

文語訳107篇12節 勤勞(きんろう)をもてその心をひくうしたまへり かれら(たふ)れたれど(たす)くるものもなかりき
口語訳107篇12節 主は重い労働をもって彼らの心を低くされた。彼らはつまずき倒れても、助ける者がなかった。
関根訳107篇12節 そこで彼は彼らの心を辛労によって低くされた。彼らはたおれたが、助ける者もなかった。
新共同107篇12節 主は労苦を通して彼らの心を挫かれた。彼らは倒れ、助ける者はなかった。


107篇13節()くてその困苦(くる)しみのうちにてエホバ《に》【を】祈りよばはりたれば、エホバその祈を聴き(これ)患難(なやみ)よりすくひ、

文語訳107篇13節 一斯(かく)てその困苦(くるしみ)のうちにてヱホバをよばはりたればヱホバこれを患難(なやみ)よりすくひ
口語訳107篇13節 彼らはその悩みのうちに主に呼ばわったので、主は彼らをその悩みから救い、
関根訳107篇13節 その苦しみの中で彼らはヤヴェに叫んだ、彼は悩みから彼らを助け出し、
新共同107篇13節 苦難の中から主に助けを求めて叫ぶと 主は彼らの苦しみに救いを与えられた。


107篇14節牢獄の中のくらきと()(がげ)より彼等(かれら)をみちびき(いだ)してその(かせ)をこぼち(たま)へり。げにエホバはイスラエルをバビロンの牢獄より解放ちたまえり。

文語訳107篇14節 くらきと()のかげより彼等(かれら)をみちびき(いだ)してその(かせ)をこぼちたまへり
口語訳107篇14節 暗黒と深いやみから彼らを導き出して、そのかせをこわされた。
関根訳107篇14節 暗きと闇の中から彼らを引き出し彼らのかせをこぼたれた。
新共同107篇14節 闇と死の陰から彼らを導き出し 束縛するものを断ってくださった。


107篇15節(ねが)はくは《エホバに(むか)ひ、その憐憫(あはれみ)と、(ひと)()らになしたまへる(くす)しき事跡(みわざ)とを感謝(かんしや)せんことを。》【すべての人はエホバの惠により人の子になしたまへる奇しき事跡によりてエホバを讃稱へんことを】(8節参照)

文語訳107篇15節 (ねが)はくはすべての(ひと)はヱホバの(めぐみ)により(ひと)()になしたまへる(くす)しき事跡(みわざ)によりてヱホバを讃稱(ほめたた)へんことを
口語訳107篇15節 どうか、彼らが主のいつくしみと、人の子らになされたくすしきみわざとのために、主に感謝するように。
関根訳107篇15節 彼のいつくしみと、人の子らへの奇しきみわざの故に、彼らはヤヴェに感謝せよ。
新共同107篇15節 主に感謝せよ。主は慈しみ深く 人の子らに驚くべき御業を成し遂げられる。


107篇16節そは(エホバは)その力を以てあかがねの(もん)をこぼち、くろがねの(くわんのき)をたちきり《(たま)へばなり。》【たまへり】イスラエルを圧迫する者の力如何に強くともエホバは之に打勝ち給うべければなり(イザヤ45:2)。

文語訳107篇16節 そはあかがねの(もん)をこぼち くろがねの關木(くわんのき)をたちきりたまへり
口語訳107篇16節 主は青銅のとびらをこわし、鉄の貫の木を断ち切られたからである。
関根訳107篇16節 彼が青銅の扉を打ち破り鉄の貫の木を破かれたから。
新共同 107篇16節 主は青銅の扉を破り 鉄のかんぬきを砕いてくださった。


〔4〕エホバは病める者をいたわり給う(17−22)
107篇17節*(おろか)なる(もの)智慧によりて行動せざる者はおのが(とが)(みち)により、(おの)がよこしまのために病にかゝり之によりて(なや)めり。

文語訳107篇17節 (おろ)かなる(もの)はおのが(とが)(みち)により(おの)がよこしまによりて(なや)めり
口語訳107篇17節 ある者はその罪に汚れた行いによって病み、その不義のゆえに悩んだ。
関根訳107篇17節 彼らは(よこし)まな歩みの故に疲れその咎の故に弱くされた。
新共同107篇17節 彼らは、無知であり、背きと罪の道のために 屈従する身になった。


補註
「愚かなる者」は病人を意味せざる故子音を一字変更して「病める者」とする説あり、巧妙なる改訂なれど現在の儘の方が含蓄多し。


107篇18節かれらの靈魂(たましひ)その病のためにすべての食物(くひもの)をきらひて()(かど)にちかづく。

文語訳107篇18節 かれらの靈魂(たましひ)はすべての食物(くひもの)をきらひて()(かど)にちかづく
口語訳107篇18節 彼らはすべての食物をきらって、死の門に近づいた。
関根訳107篇18節 すべての食物を彼らはいとうようになりこうして死の門に近づいた。
新共同107篇18節 どの食べ物も彼らの喉には忌むべきもので 彼らは死の門に近づいた。


107篇19節()くてその(くる)しみのうちにてエホバ《に祈りよばはりたれば》【をよばふ】 エホバその祈にこたえてこれを患難(なやみ)よりすくひ〔たまふ。〕

文語訳107篇19節 かくてその困苦(くるしみ)のうちにてヱホバをよばふ ヱホバこれを患難(なやみ)よりすくひたまふ
口語訳107篇19節 彼らはその悩みのうちに主に呼ばわったので、主は彼らをその悩みから救い、
関根訳107篇19節 その苦しみの中で彼らはヤヴェに叫んだ。彼は彼らの悩みから彼らを助け出し
新共同107篇19節 苦難の中から主に助けを求めて叫ぶと 主は彼らの苦しみに救いを与えられた。


107篇20節その*聖言(みことば)をつかはして(これ)をいやし、(これ)をその滅亡(ほろび)によりて墓坑の中に陷る事よりたすけいだしたまふ。

文語訳107篇20節 その聖言(みことば)をつかはして(これ)をいやし(これ)をその滅亡(ほろび)よりたすけいだしたまふ
口語訳107篇20節 そのみ言葉をつかわして、彼らをいやし、彼らを滅びから助け出された。
関根訳107篇20節 み言を遣わして彼らを(いや)し、滅びの穴からその生命を救い出された。
新共同107篇20節 主は御言葉を遣わして彼らを癒し 破滅から彼らを救い出された。


補註
「聖言をつかはす」聖言を人格化せるもの、神を直接に指すことを憚る結果、天使思想となり又ロゴスの思想の起因となった。



107篇21節(ねが)はくは《エホバに(むか)ひ、その憐憫(あはれみ)と、(ひと)()らになしたまへる(くす)しき事跡(みわざ)とを感謝(かんしや)せんことを。》【すべての人はエホバのめぐみにより人の子になしたまへる奇しき事跡によりてエホバをほめたたへんことを】

文語訳107篇21節 (ねが)はくはすべての(ひと)ヱホバのめぐみにより(ひと)()になしたまへる(くす)しき事跡(みわざ)によりてヱホバをほめたゝへんことを
口語訳107篇21節 どうか、彼らが主のいつくしみと、人の子らになされたくすしきみわざとのために、主に感謝するように。
関根訳107篇21節 彼のいつくしみと、人の子らへの奇しきみわざの故に彼らはヤヴェに感謝せよ。
新共同107篇21節 主に感謝せよ。主は慈しみ深く 人の子らに驚くべき御業を成し遂げられる。


107篇22節かれら〔は〕感謝(かんしや)のそなへものをさゝげ、(よろこ)びうたひてその事跡(みわざ)を《()べん(こと)を。》【いひあらはすべし】イスラエルの病はかくしてエホバに醫さるるが故なり。

文語訳 107篇22節 かれらは感謝(かんしや)のそなへものをさゝげ(よろこ)びうたひてその事跡(みわざ)をいひあらはすべし
口語訳107篇22節 彼らが感謝のいけにえをささげ、喜びの歌をもって、そのみわざを言いあらわすように。
関根訳107篇22節 感謝の犠牲をささげ、喜びつつそのみわざを語れ。
新共同107篇22節 感謝のいけにえをささげ 御業を語り伝え、喜び歌え。


〔5〕難船者に対するエホバのあわれみ(23−32)
107篇23節(ふね)にて(うみ)にうかび、大洋(おほうみ)にて(わざ)をいとなむ(もの)なる水夫や通商人等

文語訳107篇23節 (ふね)にて(うみ)にうかび大洋(おほうみ)にて(わざ)をいとなむ(もの)
口語訳107篇23節 舟で海にくだり、大海で商売をする者は、
関根訳107篇23節 彼らは舟で海を下り大海で商売に従事した。
新共同107篇23節 彼らは、海に船を出し 大海を渡って商う者となった。


107篇24節大洋の中に於て暴風怒涛のおどろくべきエホバのみわざを()、また(ふち)の深き処にて、難航より救いたまうその(くす)しき事跡(みわざ)をみる。

文語訳107篇24節 ヱホバのみわざを()また(ふち)にてその(くす)しき事跡(みわざ)をみる
口語訳107篇24節 主のみわざを見、また深い所でそのくすしきみわざを見た。
関根訳107篇24節 彼らは海の深みでヤヴェのみわざとその奇しきみわざを見た。
新共同107篇24節 彼らは深い淵で主の御業を 驚くべき御業を見た。


107篇25節エホバ(めい)じたまへば忽にしてあらき(かぜ)おこりてその(なみ)山のごとくにあぐ。

文語訳107篇25節 ヱホバ(めい)じたまへばあらき(かぜ)おこりてその(なみ)をあぐ
口語訳107篇25節 主が命じられると暴風が起って、海の波をあげた。
関根訳107篇25節 彼が命じて大風をたたせると海の波は高まった。
新共同107篇25節 主は仰せによって嵐を起こし 波を高くされたので


107篇26節かれら舟の中にある者は浪の度毎に(あめ)にのぼりまた(ふち)にくだり、この恐ろしき患難(なやみ)によりてその靈魂(たましひ)とけさり、

文語訳107篇26節 かれら(あめ)にのぼりまた(ふち)にくだり 患難(なやみ)によりてその靈魂(たましひ)とけさり
口語訳107篇26節 彼らは天にのぼり、淵にくだり、悩みによってその勇気は溶け去り、
関根訳107篇26節 彼らは天に上り、(ふち)に下りその(たま)は危うきによってとけ去り
新共同107篇26節 彼らは天に上り、深淵に下り 苦難に魂は溶け


107篇27節《かれらは》【左た右たにかたぶき】()ひたる(もの)のごとく《ゆらつき踉蹌(よろめ)きて》【踉蹌(よろぼ)ひて】*なす(ところ)をしらず。

文語訳107篇27節 左右(こなたかなた)にかたぶき()ひたる(もの)のごとく踉蹌(よろぼ)ひてなすところをしらず
口語訳107篇27節 酔った人のようによろめき、よろめいて途方にくれる。
関根訳107篇27節 彼らは酔いどれのようにゆれ動きその知恵はみな失せた。
新共同107篇27節 酔った人のようによろめき、揺らぎ どのような知恵も呑み込まれてしまった。


補註
「なす所をしらず」は直訳「凡ての智慧は呑まれたり」。


107篇28節かくてその(くる)しみのうちに〔て〕エホバを祈り《よばはりたれば》【よばふ】エホバその祈にこたえてこれを患難 (なやみ)よりたづさへいで

文語訳107篇28節 かくてその困苦(くるしみ)のうちにてヱホバをよばふ ヱホバこれを患難(なやみ)よりたづさへいで
口語訳107篇28節 彼らはその悩みのうちに主に呼ばわったので、主は彼らをその悩みから救い出された。
関根訳107篇28節 その苦しみの中で彼らはヤヴェに叫んだ。彼は悩みから彼らを引き出した。
新共同107篇28節 苦難の中から主に助けを求めて叫ぶと 主は彼らを苦しみから導き出された。


107篇29節狂風(あらし)をしづめ《たまひ》【て】(なみ)【を】おだやかに《なれり。》【なし給へり】

文語訳107篇29節 狂風(あらし)をしづめて(なみ)をおだやかになし(たま)へり
口語訳107篇29節 主があらしを静められると、海の波は穏やかになった。
関根訳107篇29節 彼は暴風(あらし)を静めて(なぎ)とし海の波は静まった。
新共同107篇29節 主は嵐に働きかけて沈黙させられたので 波はおさまった。


107篇30節かれらは《(なみ)(しづ)まれる》【おのが靜かなる】をよろこぶ 、()くてエホバはかれらを《(あこが)れの(みなと)》【その望むところの湊】にみちびきたまふ。

文語訳107篇30節 かれらはおのが(しづ)かなるをよろこぶ (かく)てヱホバはかれらをその(のぞ)むところの(みなと)にみちびきたまふ
口語訳107篇30節 こうして彼らは波の静まったのを喜び、主は彼らをその望む港へ導かれた。
関根訳107篇30節 彼らは海の静まったのを喜んだ。彼は目ざす港に彼らを導かれた。
新共同107篇30節 彼らは波が静まったので喜び祝い 望みの港に導かれて行った。


107篇31節(ねが)はくは《エホバに(むか)ひ、その憐憫(あはれみ)と、(ひと)()らになしたまへる(くす)しき事跡(みわざ)とを感謝(かんしや)せんことを。》【すべての人エホバの惠により人の子になしたまへる奇しき事跡によりてエホバをほめたたへんことを】

文語訳107篇31節 (ねが)はくはすべての(ひと)ヱホバの(めぐみ)により(ひと)()になしたまへる(あや)しき事跡(みわざ)によりてヱホバをほめたゝへんことを
口語訳107篇31節 どうか、彼らが主のいつくしみと、人の子らになされたくすしきみわざとのために、主に感謝するように。
関根訳107篇31節 彼のいつくしみと、人の子らへの奇しきみわざの故に彼らはヤヴェに感謝せよ。
新共同107篇31節 主に感謝せよ。主は慈しみ深く 人の子らに驚くべき御業を成し遂げられる。


107篇32節かれら(たみ)(つどひ)にて《エホバ》【これ】をあがめ長老(ちやうらう)()にて《かれ》【これ】を讃稱(ほめたゝ)《へんことを。》【ふべし】まことにエホバは荒浪の中よりイスラエルを救い出したまえるなり。

文語訳107篇32節 かれら(たみ)(つどひ)にてこれをあがめ長老(ちやうらう)()にてこれを讃稱(ほめたた)ふべし
口語訳107篇32節 彼らが民の集会で主をあがめ、長老の会合で主をほめたたえるように。
関根訳107篇32節 民の集いにおいて彼をあがめ長老たちの集いで彼をほめよ。
新共同107篇32節 民の集会で主をあがめよ。長老の集いで主を賛美せよ。


〔6〕エホバの恩恵とその審判(33−43)
107篇33節エホバはその大なる能力によりて水多き(かは)を((あら)()にかはらせ、湧き出づる(みづ)(いづみ)をかわける()(かは)らせ、

文語訳107篇33節 ヱホバは(かは)()にかはらせ(いづみ)をかわける()(かは)らせ
口語訳107篇33節 主は川を野に変らせ、泉をかわいた地に変らせ、
関根訳107篇33節 彼は流れを砂漠にかえ、泉を()れた地にかえる。
新共同107篇33節 主は大河を荒れ野とし 水の源を乾いた地とし


107篇34節〔また〕(ゆたか)なる()《を、其処(そこ)》にすめる (たみ)(あく)によりて【そこを】之をさばきて(しほ)()にかはらせたまふ。

文語訳107篇34節 また(ゆた)かなる()にすめる(たみ)(あく)によりてそこを(しほ)()にかはらせ(たま)
口語訳107篇34節 肥えた地をそれに住む者の悪のゆえに塩地に変らせられる。
関根訳107篇34節 その中に住む者の悪の故に実り豊かな地を塩地にかえる。
新共同107篇34節 住む者の悪事のために 実り豊かな地を塩地とされた。



107篇35節また反対にエホバ人をあわれみたまう時は(あれ)()を((みづ)の)(いけ)にかはらせ、(かわ)ける()を((みづ)の)(いづみ)にかはらせ、

文語訳107篇35節 ()(いけ)にかはらせ(かわ)ける()をいづみにかはらせ
口語訳107篇35節 主は野を池に変らせ、かわいた地を泉に変らせ、
関根訳107篇35節 砂漠を池にかえ乾いた地を泉にかえる。
新共同107篇35節 主は荒れ野を湖とし 砂漠を水の源とし


107篇36節こゝに()ゑたるものを()まはせ之を豊かに養いたまふ。さればかれらはエホバの恩恵の下に(すま)ふべき(まち)》【己がすまひの邑】をたて、

文語訳107篇36節 こゝに()ゑたるものを(すま)はせたまふ されば(かれ)らは(おの)がすまひの(まち)をたて
口語訳107篇36節 飢えた者をそこに住まわせられる。こうして彼らはその住むべき町を建て、
関根訳107篇36節 こうしてそこに飢えた者を住ませ彼らは住むべき町を建てる。
新共同107篇36節 飢えていた人々をそこに住まわせ 人の住む町を固く立てられた。


107篇37節(はた)にたねをまき、葡萄園(ぶだうぞの)を《()ゑて》【まうけて】そのむすべる()をえたり。かくして彼らを栄えしめまたえり。

文語訳107篇37節 (はた)にたねをまき葡萄園(ぶだうその)をまうけてそのむすべる()をえたり
口語訳107篇37節 畑に種をまき、ぶどう畑を設けて多くの収穫を得た。
関根訳107篇37節 彼らは野に種をまき、葡萄を植えそれは豊かな収穫をもたらす。
新共同107篇37節 彼らは野に種を蒔き、ぶどう畑を作り 作物を実らせた。


107篇38節イスラエルは即ち是にしてエホバはかれらの(いた)くふえひろごれるまでに(めぐみ)をあたへて彼らを栄えしめその牲畜(けだもの)のへることをも(ゆる)したまはずして彼らの産業を豊ならしめたり。

文語訳107篇38節 ヱホバはかれらの(いた)くふえひろごれるまでに(めぐみ)をあたへ その牲畜(けだもの)のへることをも(ゆる)したまはず
口語訳107篇38節 主が彼らを祝福されたので彼らは大いにふえ、その家畜の減るのをゆるされなかった。
関根訳107篇38節 彼は彼らを祝し、その数は大いにふえ、その家畜の数はへることがなかった。
新共同107篇38節 主が祝福されたので彼らは限りなく増え 家畜も減らされることはなかった。


*107篇39節されどその後に至りてイスラエルが〔また〕虐待(しへたげ)苦難(くるしみ)悲哀(かなしみ)によりて、その人口()りゆき、(かつ)この心うなたれ《たるとき、》【たり】

文語訳107篇39節 されどまた虐待(しへたげ)くるしみ悲哀(かなしみ)によりて()りゆき(かつ)うなたれたり
口語訳107篇39節 彼らがしえたげと、悩みと、悲しみとによって減り、かつ卑しめられたとき、
関根訳107篇39節 彼らはまた災いと苦しみに圧せられて数がへった。
新共同 107篇39節 不毛、災厄、嘆きによって 彼らは減って行き、屈み込んだ。


補註
本節を40、41節の前提句と見て私訳す。


*107篇40節エホバ(は)イスラエルに敵する〔もろもろの〕(きみ)(たち)に侮辱(あなどり)をそゝぎて彼らの為す処を栄えしめず、(みち)なき荒地(あれち)にさまよはせ〔たまふ。〕

文語訳107篇40節 ヱホバもろもろの(きみ)侮辱(あなどり)をそゝぎ(みち)なき荒地(あれち)にさまよはせたまふ
口語訳107篇40節 主はもろもろの君に侮りをそそぎ、道なき荒れ地にさまよわせられた。
関根訳107篇40節 すると彼は貴族たちの上にそしりを注ぎ、彼らを道なき荒地にさまよわせた。
新共同107篇40節 主は貴族らの上に辱めを浴びせ 道もない混沌に迷い込ませられたが


補註
本節の形容が稍前後と不揃なのはヨブ12:21a、24bの逐語的引用なる為ならん。


107篇41節〔然はあれど〕イスラエルの民なるその(まづ)しきものを(ば)患難(なやみ)のうちより((たか)く)(あげ)〔て〕その苦痛より免れしめその家族(やから)をひつじの(むれ)のごとくならしめて之を増しこれを栄えしめたまふ。

文語訳107篇41節 (しか)はあれど(まづ)しきものを患難(なやみ)のうちより()げてその家族(やから)をひつじの(むれ)のごとくならしめたまふ
口語訳107篇41節 しかし主は貧しい者を悩みのうちからあげて、その家族を羊の群れのようにされた。
関根訳107篇41節 彼は貧しき者をその惨めな様から高くしその族を群のように多くされた。
新共同107篇41節 乏しい人はその貧苦から高く上げ 羊の群れのような大家族とされた。


107篇42節(なほ)きものなるイスラエルの民(これ)をみて(よろこ)び、もろもろの不義(ふぎ)を以て神に敵するものはその(くち)をふさがん。彼ら唯驚きてあわてふためくのみ。

文語訳107篇42節 (なほ)きものは(これ)をみて(よろこ)びもろもろの不義(ふぎ)はその(くち)をふさがん
口語訳107篇42節 正しい者はこれを見て喜び、もろもろの不義はその口を閉じた。
関根訳107篇42節 直き者は見て、喜びすべての不法はその口をつぐんだ。
新共同107篇42節 正しい人はこれを見て喜び祝い 不正を行う者は口を閉ざす。


107篇43節すべて(さと)(もの)はこれらの(こと)《を(こゝろ)にとめ、》【に心をよせ】エホバの憐憫(あはれみ)を《(おも)はんことを。》【さとるべし】

文語訳107篇43節 すべて慧喜(さときもの)はこれらのことに(こころ)をよせヱホバの憐憫(あはれみ)をさとるべし
口語訳107篇43節 すべて賢い者はこれらの事に心をよせ、主のいつくしみをさとるようにせよ。
関根訳107篇43節 誰か賢くてこれらのことを心にとめ、ヤヴェのいつくしみを悟るものぞ。
新共同107篇43節 知恵ある人は皆、これらのことを心に納め 主の慈しみに目を注ぐがよい。