黒崎幸吉著 旧約聖書略註 Web版 詩篇





詩篇 第146篇

関根訳幸いな者


第146−150篇は最後のハレルヤ歌集であり、古くよりユダヤの会堂において朝拝に用いられていた。本篇は内容において前篇と密接なる関係および類似を有し、エホバの恩恵、正義、力、支配等に対して讃美を献げし歌である。七十人訳には本篇より148篇までにハガイ及びゼカリヤの歌とあり。何らかの伝説によりしものならん。


146篇1節《ヤハ》【エホバ】を讃稱(ほめたた)へよ(ハレルヤ)、わがたましひよ、エホバをほめたゝへよ。

文語訳146篇1節 ヱホバを讃稱(ほめたた)へよ わがたましひよヱホバをほめたゝへよ
口語訳146篇1節 主をほめたたえよ。わが魂よ、主をほめたたえよ。
関根訳146篇1節 をほめ(たた)えよ、わが魂よ、ヤヴェをほめ讃えよ。
新共同146篇1節 ハレルヤ。わたしの魂よ、主を賛美せよ。


146篇2節われ()けるかぎりは常にやむことなくエホバをほめたゝへ、わがながらふるほどは死に至るまでわが(かみ)をほめうたはん。

文語訳146篇2節 われ生けるかぎりはヱホバをほめたゝへ わがながらふるほどはわが(かみ)をほめうたはん
口語訳146篇2節 わたしは生けるかぎりは主をほめたたえ、ながらえる間は、わが神をほめうたおう。
関根訳146篇2節 わたしは生ける限りヤヴェをほめ讃え、生命(いのち)あるかぎりわが神をほめうたう。
新共同146篇2節 命のある限り、わたしは主を賛美し 長らえる限り わたしの神にほめ歌をうたおう。


146篇3節(なんぢ)如何に苦しき時にも侯伯(きみたち)》【もろもろの君】によりたのむことなく、(ひと)()によりたのむなかれ、かれらたとい如何に有力であり有能であるとしてもかれらに《(すくひ)》【助】あることなし。人間によりたのむ者は結局に於て失望せん。

文語訳146篇3節 もろもろの(きみ)によりたのむことなく (ひと)()によりたのむなかれ かれらに(たすけ)あることなし
口語訳146篇3節 もろもろの君に信頼してはならない。人の子に信頼してはならない。彼らには助けがない。
関根訳146篇3節 世の権力者を頼みとしてはいけない、身分の高い者でも、――救いは彼にはないのだから。
新共同146篇3節 君侯に依り頼んではならない。人間には救う力はない。


146篇4節人間は如何に賢く見ゆるとも死してその氣息(いき)いでゆけば、かれは一の死骸と化して(つち)にかへる。その()かれが〔もろもろの〕生前に企てし凡ての企圖(くはだて)はほろびてあとなきに至らん。

文語訳146篇4節 その氣息(いき)いでゆけばかれ(つち)にかへる その()かれがもろもろの企圖(くはだて)はほろびん
口語訳146篇4節 その息が出ていけば彼は土に帰る。その日には彼のもろもろの計画は滅びる。
関根訳146篇4節 そのいきが出てゆけば、彼は土に帰る。その日彼の(くわだ)ては滅び失せる。
新共同146篇4節 霊が人間を去れば 人間は自分の属する土に帰り その日、彼の思いも滅びる。


146篇5節ヤコブの(かみ)なる天地の創造主に在し給うまことの神をおのが(たすけ)とし、その(のぞみ)をおのが(かみ)エホバにおくのみにして他の何物にも依頼まぬものは(さいはひ)なり。

文語訳146篇5節 ヤコブの(かみ)をおのが(たすけ)とし その(のぞみ)をおのが(かみ)ヱホバにおくものは(さいはひ)なり
口語訳146篇5節 ヤコブの神をおのが助けとし、その望みをおのが神、主におく人はさいわいである。
関根訳146篇5節 ヤコブの神をその助けとする者、その望みをその神、ヤヴェに置く者に幸あれ。
新共同146篇5節 いかに幸いなことか ヤコブの神を助けと頼み 主なるその神を待ち望む人


146篇6節()のエホバの神こそはあめつちと(うみ)とその(なか)なるあらゆるものを(つく)たまえる真の神に在しとこしへに眞實(まこと)をまもりてその約束をたがえたまわず、

文語訳146篇6節 ()はあめつちと(うみ)とそのなかなるあらゆるものを(つく)り とこしへに眞實(まこと)をまもり
口語訳146篇6節 主は天と地と、海と、その中にあるあらゆるものを造り、とこしえに真実を守り、
関根訳146篇6節 ヴェは天と地を造り海とその中のすべてのものを造ったお方。とこしえに真実(まこと)を守り
新共同146篇6節 天地を造り 海とその中にあるすべてのものを造られた神を。とこしえにまことを守られる主は


146篇7節(しへた)げらるゝもののために義しく公平なる審判(さばき)をおこなひ、()ゑたるものに食物(くひもの)をあたへたまふ(かみ)なり。*エホバは弱者をあわれみとらはれたる(ひと)をときはなちたまふ。

文語訳146篇7節 (しへた)げらるゝもののために審判(さばき)をおこなひ ()ゑたるものに食物(くひもの)をあたへたまふ(かみ)なり ヱホバはとらはれたる(ひと)をときはなちたまふ
口語訳146篇7節 しえたげられる者のためにさばきをおこない、飢えた者に食物を与えられる。主は捕われ人を解き放たれる。
関根訳146篇7節 虐げられたものに(さば)きを行ない、飢えた者に食物を(たも)うお方、ヤヴェは捕われ人を解き放たれる。
新共同146篇7節 虐げられている人のために裁きをし 飢えている人にパンをお与えになる。主は捕われ人を解き放ち


補註
7-9においてエホバが五回繰り返されているのは特に強くエホバの性質を印象せんが為なり。


146篇8節*エホバは盲者(めしひ)を憐みてそ()をひらき、*エホバは強者の圧迫の下に(かが)(もの)(なほ)くたたせ、*エホバは(たゞ)しきものを(いつく)しみたまふ。

文語訳146篇8節 ヱホバはめしひの()をひらき ヱホバは屈者(かがむもの)をなほくたゝせ ヱホバは(ただし)きものを(いつく)しみたまふ
口語訳146篇8節 主は盲人の目を開かれる。主はかがむ者を立たせられる。主は正しい者を愛される。
関根訳146篇8節 ヴェは目しいた者の眼を開き、かがむ者をたたせ、ヤヴェは義しい者を愛し、
新共同146篇8節 主は見えない人の目を開き 主はうずくまっている人を起こされる。主は従う人を愛し


*146篇9節エホバは《寄寓者(きぐうしや)》【他邦人】をもてなして之をまもり、よるべなき孤児(みなしご)寡婦(やもめ)とをさゝへたまふ。されど()しきものの(みち)はくつがへしたまふなり。

文語訳146篇9節 ヱホバは他邦人(あだしくにびと)をまもり 孤子(みなしご)寡婦(やもめ)とをさゝへたまふ されど()しきものの(みち)はくつがへしたまふなり
口語訳146篇9節 主は寄留の他国人を守り、みなしごと、やもめとをささえられる。しかし、悪しき者の道を滅びに至らせられる。
関根訳146篇9節 ヴェは(やど)れる者を守り、みなしごとやもめを支える。しかし悪人の道を迷路とされる。
新共同146篇9節 主は寄留の民を守り みなしごとやもめを励まされる。しかし主は、逆らう者の道をくつがえされる。


146篇10節エホバはとこしへに統治(すべをさ)めたまはん、シオンよ、なんぢの(かみ)はよろづ()まで統治(すべをさ)めたまはん。エホバの支配は永遠より永遠に亘りて変わることなし。《ヤハ》【エホバ】をほめたゝへよ(ハレルヤ)

文語訳146篇10節 ヱホバはとこしへに統御(すべをさ)めたまはん シオンよなんぢの(かみ)はよろづ()まで統御(すべをさ)めたまはん ヱホバをほめたゝへよ
口語訳146篇10節 主はとこしえに統べ治められる。シオンよ、あなたの神はよろず代まで統べ治められる。主をほめたたえよ。
関根訳146篇10節 ヴェはとこしえに治め、シオンよ、君の神は代々に支配する。ヤをほめ讃えよ。
新共同146篇10節 主はとこしえに王。シオンよ、あなたの神は代々に王。ハレルヤ。