黒崎幸吉著 旧約聖書略註 Web版 詩篇





詩篇 第19篇

関根訳神の栄光

文語訳( )うたのかみに(うた)はしめたるダビデのうた
口語訳聖歌隊の指揮者によってうたわせたダビデの歌
関根訳19篇1節聖歌隊の指揮者に、ダビデの歌。
新共同19篇1節【指揮者によって。賛歌。ダビデの詩。】

本篇は最後の詩人の祈(12−14節)を除き前後の二部よりなる。第一部(1−6節)は自然界に顕れし神の栄光を讃美し、第二部(7−11節)は神の律法に顕れしエホバの教訓の美しさとその偉大なる力とを讃美している。前者は神の一般的啓示であり後者はイスラエルに対する特別の啓示である。前者において「神」(エル)を用い、後者において特にイスラエルの神「エホバ」を用いているのも作者の心持の自然の表顕である。この詩は第一部と第二部が全然独立の詩であったのを繋ぎ合わせたのであるとする説が多いけれども、決定的ではない。


〔1〕自然界に顕れし神の栄光(1−6)
19篇1節*もろもろの(てん)(かみ)栄光(えいくわう)をあらはし、神の創造し給える宇宙を見て神の力の絶大であることを知り*穹蒼(おほそら)はその御手(みて)のわざを(しめ)す。蒼穹に鏤(ちりば)められし数々の星を見て神の御業の巧にして奇しきことを知るのである。

文語訳19篇1節 もろもろの(てん)(かみ)のえいくわうをあらはし穹蒼(おほそら)はその(みて)のわざをしめす
口語訳19篇1節 もろもろの天は神の栄光をあらわし、大空はみ手のわざをしめす。
関根訳19篇2節 もろもろの天は神の栄光を語り大空はそのみ手の業を示す。
新共同19篇2節 天は神の栄光を物語り 大空は御手の業を示す。


補註
「もろもろの天」天はいくつかの部分より成ると考えられ、「蒼穹」は上天に張られた円天井と考えられていた。


19篇2節この()ことばをかの()*つたへ、このよ知識(ちしき)をかの()*おくる。自然界にあらわれし神の栄光と御業とに関する言葉と知識とは流れに流れ、伝えに伝えられて絶ゆることがない。

文語訳19篇2節 この()ことばをかの()につたへ このよ知識(ちしき)をかの()におくる
口語訳19篇2節 この日は言葉をかの日につたえ、この夜は知識をかの夜につげる。
関根訳19篇3節 一日(ひとひ)は他の日に言葉をつたえ一夜(ひとよ)は他の夜に知識を知らせる。
新共同19篇3節 昼は昼に語り伝え 夜は夜に知識を送る。


補註
「つたへ」は湧き出でること、「おくる」は宣言すること。


19篇3節自然は唯黙々として*(かた)らずいはず、その(こゑ)きこえざるに、

文語訳19篇3節 (かた)らずいはずその(こゑ)きこえざるに
口語訳19篇3節 話すことなく、語ることなく、その声も聞えないのに、
関根訳19篇4節 言葉もなく、語ることもなくその声もきこえないのに
新共同19篇4節 話すことも、語ることもなく 声は聞こえなくても


補註
または「如何なる言も如何なる語もその声きこえずということなし」と訳する説あり。


19篇4節しかも無言の言、無声の声は高くとどろきその*ひびきは全地(ぜんち)にあまねく、そのことばは()のはてにまでおよぶ、何人もこの声をきかない者はない(ロマ1:20。10:18)。殊に自然界の王者ともいうべきものは太陽であって(かみ)はかしこにその被造物の中に帷幄(あげばり)()のためにまうけたまひ日をその場所に住わしめ給へり。

文語訳19篇4節 そのひゞきは全地(ぜんち)にあまねくそのことばは()のはてにまでおよぶ (かみ)はかしこに帷幄(あげばり)()のためにまうけたまへり
口語訳19篇4節 その響きは全地にあまねく、その言葉は世界のはてにまで及ぶ。神は日のために幕屋を天に設けられた。
関根訳19篇5節 その響きは全地にゆきわたりその語りかけは地の果てにまで及ぶ。彼は()のために海に幕屋をもうけられた。
新共同19篇5節 その響きは全地に その言葉は世界の果てに向かう。そこに、神は太陽の幕屋を設けられた。


補註
「そのひびきは云々」を「その準縄は全地に及び」と訳すべしとの説あり。


19篇5節()その昇るや新郎(にいむこ)がいはひの殿(との)をいづる(ごと)く、光耀と新鮮さと歓喜と希望とにみち、その天かけるやその光輝と熱とは盛にして勇士(ますらを)その戦場をきそひはしるをよろこぶに()たり。

文語訳19篇5節 ()新郎(にひむこ)がいはひの殿(との)をいづるごとく勇士(ますらを)がきそひはしるをよろこぶに()たり
口語訳19篇5節 日は花婿がその祝のへやから出てくるように、また勇士が競い走るように、その道を喜び走る。
関根訳19篇6節 陽は花婿がその臥所(ふしど)から出てくるように勇士がその馳場(はせば)を走ろうと喜び勇む如くである。
新共同19篇6節 太陽は、花婿が天蓋から出るように 勇士が喜び勇んで道を走るように


19篇6節そのいでたつや(てん)(はし)よりし、その(めぐ)りゆくや(てん)のはてに(いた)る、その壮観は何ものにもたとえることができない。かくしてその光輝は全地をおおい(もの)としてその(あたた)まりを(かうぶ)らざるはなし。万物皆この太陽の光と熱によりて育つ、かかる太陽を天に置き給える神の御業は讃美すべきかな。

文語訳19篇6節 そのいでたつや(てん)(はし)よりし その(めぐ)りゆくや(てん)のはてにいたる (もの)としてその和煦(あたたまり)をかうぶらざるはなし
口語訳19篇6節 それは天のはてからのぼって、天のはてにまで、めぐって行く。その暖まりをこうむらないものはない。
関根訳19篇7節 陽は天の果てから出できたり天の果てにまでめぐりゆく。何物もその熱にふれないものはない。
新共同19篇7節 天の果てを出で立ち 天の果てを目指して行く。その熱から隠れうるものはない。


〔2〕エホバの法にあらわれしその稜威(7−11)
19篇7節エホバの*(のり)としてイスラエルの民に与えられし処の律法はまたくしていささかの欠点もなく、力強くして罪になやむ霊魂(たましひ)をいきかへらしめ、エホバの御旨を示す*證詞(あかし)たる律法はかたくして動かず充分に信頼すべきものであって、これにより*(おろか)なるものを(さと)からしむ。

文語訳19篇7節 ヱホバの(のり)はまたくして靈魂(たましひ)をいきかへらしめヱホバの證詞(あかし)はかたくして(おろ)かなるものを(さと)からしむ
口語訳19篇7節 主のおきては完全であって、魂を生きかえらせ、主のあかしは確かであって、無学な者を賢くする。
関根訳19篇8節 ヴェの律法(おきて)は全く魂を生きかえらせヤヴェの証言(あかし)はかたく愚かな者を賢くする。
新共同19篇8節 主の律法は完全で、魂を生き返らせ 主の定めは真実で、無知な人に知恵を与える。


補註
7−9節の「法」「證詞」「訓諭」「誡命」「畏れ」「審判」は各々色合いを異にするけれども、総合的に律法を指す、一面文章のあやでもある。7節の「愚なるもの」は原語「単純なるもの」で善にも悪にも移り易きもの。


19篇8節エホバの*訓諭(さとし)はなほくしてこれを行わんとする正しき者の(こころ)をよろこばしめ、エホバの*誡命(いましめ)はきよくして少しの濁もなく、之を守る者の霊の(まなこ)をあきらかならし《め、》【む】

文語訳19篇8節 ヱホバの訓諭(さとし)はなほくして(こころ)をよろこばしめヱホバの誡命(いましめ)はきよくして(まなこ)をあきらかならしむ
口語訳19篇8節 主のさとしは正しくて、心を喜ばせ、主の戒めはまじりなくて、眼を明らかにする。
関根訳19篇9節 ヴェの示しは真すぐで心を喜ばせヤヴェの戒(いまし)めは清く眼(まなこ)をあきらかにする。
新共同19篇9節 主の命令はまっすぐで、心に喜びを与え 主の戒めは清らかで、目に光を与える。


19篇9節《エホバを(おそ)るる*おそれ》【エホバを惶みおそるる道】を教うる法規はきよくして世々(よよ)にたゆることなく、エホバの*審判(さばき)眞實(まこと)にして虚偽なくことごとく(ただ)し。

文語訳19篇9節 ヱホバを(かしこ)みおそるゝ(みち)はきよくして世々(よよ)にたゆることなく ヱホバのさばきは眞實(まこと)にしてことごとく(ただ)
口語訳19篇9節 主を恐れる道は清らかで、とこしえに絶えることがなく、主のさばきは真実であって、ことごとく正しい。
関根訳19篇10節 ヴェの言は潔(きよ)らかでとこしえに立つ。ヤヴェのさばきは真実(まこと)でみな正しい。
新共同19篇10節 主への畏れは清く、いつまでも続き 主の裁きはまことで、ことごとく正しい。


19篇10節エホバの法の尊さはこれを黄金(こがね)にくらぶるも、おほくの純精金(まじりなきこがね)にくらぶるも彌増(いやまさ)りてしたふべく、何物にもその慕わしさにおいてこれにまさるものはなく、またこれを(みつ)にくらぶるも(はち)のすの滴瀝(したたり)にくらぶるもいやまさりて(あま)し。エホバの法の甘美さはこの世と比ぶべきものなし。

文語訳19篇10節 これを黄金(こがね)にくらぶるもおほくの純精金(まじりなきこがね)にくらぶるも彌増(いやまさ)りてしたふべく これを(みつ)にくらぶるも(はち)のすの滴瀝(したたり)にくらぶるもいやまさりて(あま)
口語訳19篇10節 これらは金よりも、多くの純金よりも慕わしく、また蜜よりも、蜂の巣のしたたりよりも甘い。
関根訳19篇11節 それらは金よりも尊く多くの純金よりも尊い。また蜜よりも甘く蜂の巣のしたたりよりも甘い。
新共同19篇11節 金にまさり、多くの純金にまさって望ましく 蜜よりも、蜂の巣の滴りよりも甘い。


19篇11節なんぢの(しもべ)なるわれはこれらの貴くして慕わしき律法によりて警戒(いましめ)をうく、この律法は無慈悲にして無味冷淡なる律法にあらず、もし喜んでこれらをまもらばこれに伴いて(おおい)なる報賞(むくい)あらん。エホバの律法はその造り給える自然と共に、否これにもまさりてほめたたえらるべきなり。

文語訳19篇11節 なんぢの(しもべ)はこれらによりて儆戒(いましめ)をうく これらをまもらば(おほい)なる報賞(むくい)あらん
口語訳19篇11節 あなたのしもべは、これらによって戒めをうける。これらを守れば、大いなる報いがある。
関根訳19篇12節 あなたの僕もこれらのもので教えをうける。それらを守れば大きな報いがあろう。
新共同19篇12節 あなたの僕はそれらのことを熟慮し それらを守って大きな報いを受けます。


〔3〕エホバの守護を祈る(12−14)
19篇12節この律法に照して見るならば何人も罪なき者はいない、かつたれか知らずして犯せるおのれの過失(あやまち)()()んや、おそらく多くの過に陥っているならんねがはくは(われ)我が内に残存するかくれたる(とが)より《(きよ)め》【解放ち】たまへ。

文語訳19篇12節 たれかおのれの過失(あやまち)をしりえんや ねがはくは(われ)をかくれたる(とが)より解放(ときはな)ちたまへ
口語訳19篇12節 だれが自分のあやまちを知ることができましようか。どうか、わたしを隠れたとがから解き放ってください。
関根訳19篇13節 誰かあやまちを悟りえよう、どうかかくれた罪からわたしを清めて下さい。
新共同19篇13節 知らずに犯した過ち、隠れた罪から どうかわたしを清めてください。


19篇13節(ねが)はくはなんぢの(しもべ)なるわれを《故意(ことさら)なる(つみ)より引留(ひきと)め》【引留めて故意なる罪を犯さしめず】てかかる罪に陥らしめずそれをわが(しゆ)たらしめ我を罪の奴隷たらしめたまふなかれ、さればわれ(きず)なきものとなりて(おほい)なる(とが)(まぬか)るるを()ん。然らざれば汝の律法は如何に善く如何に潔くとも、我は我が弱さの故に罪に陥ることを免るゝこと能わじ。

文語訳19篇13節 (ねが)はくはなんぢの(しもべ)をひきとめて故意(ことさら)なる(つみ)ををかさしめず それをわが(しゆ)たらしめ(たま)ふなかれ さればわれ(きず)なきものとなりて(おほい)なる(とが)をまぬかるゝをえん
口語訳19篇13節 また、あなたのしもべを引きとめて、故意の罪を犯させず、これに支配されることのないようにしてください。そうすれば、わたしはあやまちのない者となって、大いなるとがを免れることができるでしょう。
関根訳19篇14節 不法な人々からも僕をまもり彼らの支配をまぬかれさせて下さい。そうすればわたしは欠けなく重い答(とが)から離れ、清くありえましょう。
新共同19篇14節 あなたの僕を驕りから引き離し 支配されないようにしてください。そうすれば、重い背きの罪から清められ わたしは完全になるでしょう。


19篇14節エホバわが依頼むところの(いは)、わが罪より我をあがなう贖主(あがなひぬし)よ、願わくは信仰によりて汝に依頼むことによりわが(くち)(ことば)、わがこころの思念(おもひ)を潔めて罪より遠からしめ、これをなんぢのまへに(よろこ)ばるることを()しめたまへ(かくして自然と神の律法とに対して神を讃美する詩人の心は、自ら自己の弱さと醜さとに思い及ぼすことによりて、ついに罪より脱れんことの切なる願となる。イエスの十字架の贖罪によってこの祈が成就せらるるに至った)

文語訳19篇14節 ヱホバわが(いは) わが贖主(あがなひぬし)よ わがくちの(ことば)わがこゝろの思念(おもひ)なんぢのまへに(よろこ)ばるゝことを()しめたまへ
口語訳19篇14節 わが岩、わがあがないぬしなる主よ、どうか、わたしの口の言葉と、心の思いがあなたの前に喜ばれますように。
関根訳19篇15節 わたしの口の言葉があなたに喜ばれわたしの心の想いがみ前にとどきますよう、ああ、ヤヴェ、わが岩、わが磨(あがな)い主よ。
新共同19篇15節 どうか、わたしの口の言葉が御旨にかない 心の思いが御前に置かれますように。主よ、わたしの岩、わたしの贖い主よ。