黒崎幸吉著 旧約聖書略註 Web版 詩篇





詩篇 第31篇

文語訳伶長(うたのかみ)にうたはしめたるダビデのうた
口語訳聖歌隊の指揮者によってうたわせたダビデの歌
関根訳31篇1節聖歌隊の指揮者に、ダビデの歌。
新共同31篇1節【指揮者によって。賛歌。ダビデの詩。】

本篇は多くの迫害、軽侮に逢い、消え果てんばかりの悲しみ(10)と無力(11)との中において神より外に頼むべきものなき一の霊魂が、エホバの神に対する熱求と感謝、またその恩恵と自己の苦痛との回想を歌ったものである。作者はあるいはダビデであるといわれ、またエレミヤ記との類似の節が多いことからエレミヤであるともいわれている。ただしエレミヤとダビデはその人格のある方面殊にその悲哀の方面において非常に類似している点があるので、この後説は必ずしも有力ではない。種々の感情や思想が渾然として湧き出でており明瞭なる区分はないが、大体1−4。5−8。9−13。14−18。19−24の五部に分かれている。


〔1〕祈願(1−4)
*31篇1節エホバよわれ(なんぢ)によりたのむ、全心全霊をもって汝を避所として汝に遁れる。それ故に(ねが)はくは《とこしへに》【いづれの日までも】(はぢ)をおはしめたまふなかれ、もし汝我をこの苦しみより助け給わずばわれは敵の前に愧しめられ、汝の稜威は損われん、それ故になんぢの()をもてわれを(たす)けたまへ。なやめる僕を捨てざることこそ汝の義に相応しきことなればなり。

文語訳31篇1節 ヱホバよわれ(なんぢ)によりたのむ (ねが)はくはいづれの()までも(はぢ)をおはしめたまふなかれ なんぢの()をもてわれを(たす)けたまへ
口語訳31篇1節 主よ、わたしはあなたに寄り頼みます。とこしえにわたしをはずかしめず、あなたの義をもってわたしをお助けください。
関根訳31篇2節 ヴェよ、あなたをわたしは避け所としています。永遠にわたしに恥をおわせないで下さい、あなたの義をもってわたしを助けて下さい。
新共同31篇2節 主よ、御もとに身を寄せます。とこしえに恥に落とすことなく 恵みの御業によってわたしを助けてください。


補註
1−3節は71:1−3に繰返されている。


31篇2節なんぢの(みみ)わが祈の声にかたぶけて(すみや)かに来りてこのなやみよりわれをすくひたまへ、ねがはくはわがために*かたきとりでのごとき(いは)となりて我をまもり(われ)をすくふたかき壘砦(とりで)》【保障】の(いへ)となりて我を敵の手の及ばざる処にあらしめたまへ。

文語訳31篇2節 なんぢの(みみ)をかたぶけて(すみや)かにわれをすくひたまへ (ねが)はくはわがためにかたき(いは)となり(われ)をすくふ保障(まもり)(いへ)となりたまへ
口語訳31篇2節 あなたの耳をわたしに傾けて、すみやかにわたしをお救いください。わたしのためにのがれの岩となり、わたしを救う堅固な城となってください。
関根訳31篇3節 あなたの耳をわたしに傾け速やかにわたしを救って下さい。わがために(まも)りの岩となりわたしを援ける固き家となってください。
新共同31篇3節 あなたの耳をわたしに傾け 急いでわたしを救い出してください。砦の岩、城塞となってお救いください。


補註
「かたき磐」は原語「力の岩」。


31篇3節(そは)(なんぢ)はわが(いは)わが(しろ)《にして》【なり、されば】我汝の中にありて平安を得御名(みな)のゆゑをもてわれを()き、われを(みちび)て安全なる救の城に入らしめ《たまへばなり。》【*たまへ】

文語訳31篇3節 なんぢはわが(いは)わが(しろ)なり されば(みな)のゆゑをもてわれを()きわれを(みちび)きたまへ
口語訳31篇3節 まことに、あなたはわたしの岩、わたしの城です。み名のためにわたしを引き、わたしを導き、
関根訳31篇4節 げにあなたはわが岩、わが砦、み名の故にわたしを導き、道しるべとなり、
新共同31篇4節 あなたはわたしの大岩、わたしの砦。御名にふさわしく、わたしを守り導き


補註
3−4節の「たまへ」は未完了形で「たまわんことを」と訳することもできるけれども普通の場合として反復せる行為と解すべきであろう。


31篇4節なんぢ(われ)(かれ)らが(ひそ)かにまうけて我を陥れんとしたる(あみ)よりひきいだし我を救い《たまふ、》【*たまへ】なんぢはわが保砦(とりで)(なれば)なり。

文語訳31篇4節 なんぢ( われ)をかれらが(ひそ)かにまうけたる (あみ)よりひきいだしたまへ なんぢはわが保砦(とりで)なり
口語訳31篇4節 わたしのためにひそかに設けた網からわたしを取り出してください。あなたはわたしの避け所です。
関根訳31篇5節 彼らがわたしのためにもうけたわなからわたしを助け出して下さい。あなたはわが護り手なのです。
新共同31篇5節 隠された網に落ちたわたしを引き出してください。あなたはわたしの砦。


〔2〕過去に於ける神の恩恵(5−8)
31篇5節*われわが生命なる霊魂(たましひ)をなんぢの御手(みて)にゆだぬ、願わくは之を御手の中に保ちてわが生命をながらえしめたまえ。エホバまことの(かみ)よ、なんぢはわれを敵の手より(あがな)ひたまへり。汝必ずわが生命を永らえしめ給わん。

文語訳31篇5節 われ靈魂(たましひ)をなんぢの(みて)にゆだぬ ヱホバまことの(かみ)よ なんぢはわれを(あがな)ひたまへり
口語訳31篇5節 わたしは、わが魂をみ手にゆだねます。主、まことの神よ、あなたはわたしをあがなわれました。
関根訳31篇6節 あなたのみ手にわが霊をゆだねます、ヤヴェ、真実(まこと)なる神、あなたがわたしを(あがな)って下さい。
新共同31篇6節 まことの神、主よ、御手にわたしの霊をゆだねます。わたしを贖ってください。


補註
ルカ23:46にイエスはその死にあたりてこの句を叫び給うた。本節はこの生命の保護を求むる心であり、イエスの場合はこの世における生命の終りと共にその永遠の保護を祈る意味である。故に結局同一のことに帰する。


31篇6節われは《空虚(くうきよ)にして()きが(ごと)きもの》【*いつはりの(むなし)きこと】すなわち偶像の神(こころ)をよする不信仰なる(もの)をにくむ、《(しか)して(われ)は》【われはただ】エホバによりたの《めり。》【むなり】

文語訳31篇6節 われはいつはりの(むな)しきことに(こころ)をよする(もの)をにくむ われは(ただ)ヱホバによりたのむなり
口語訳31篇6節 あなたはむなしい偶像に心を寄せる者を憎まれます。しかしわたしは主に信頼し、
関根訳31篇7節 わたしは憎む、偽りの神々を大事にする者を。わたしはヤヴェに依り頼むのです。
新共同31篇7節 わたしは空しい偶像に頼る者を憎み 主に、信頼します。


補註
現行訳「いつはりの虚しきこと」は空虚、虚無なるものの意味で偶像を指す。


31篇7節(われ)今に至るまで我に示し給えるなんぢの憐憫(あはれみ)回想して心よりよろこびたのしまん、なんぢ、わがなやみをかへりみて我をあわれみ、わが靈魂(たましひ)窮迫(くるしみ)【禍害】をことごとく()り、

文語訳31篇7節 (われ)はなんぢの憐憫(あはれみ)をよろこびたのしまん なんぢわが艱難(なやみ)をかへりみ わがたましひの禍害(わざはひ)をしり
口語訳31篇7節 あなたのいつくしみを喜び楽しみます。あなたがわたしの苦しみをかえりみ、わたしの悩みにみこころをとめ、
関根訳31篇8節 あなたの恵みを喜び楽しませて下さい。あなたはわが悩みをみそなわし、わが魂の苦しみをかえりみられるからです。
新共同31篇8節 慈しみをいただいて、わたしは喜び躍ります。あなたはわたしの苦しみを御覧になり わたしの魂の悩みを知ってくださいました。


31篇8節われを(あた)()わたして彼らの手中にとぢこめしめたまはず、わが(あし)をひろき自由なるところに(たて)たま《へり。》【へばなり】かくして我は敵の手を逃れて汝のあわれみの中に平和なる生活を送ることを得たり。

文語訳31篇8節 われを(あた)()にとぢこめしめたまはず わが(あし)をひろきところに()てたまへばなり
口語訳31篇8節 わたしを敵の手にわたさず、わたしの足を広い所に立たせられたからです。
関根訳31篇9節 あなたはわたしを敵の手に渡さず、わが足を広やかなところに立たせて下さる。
新共同31篇9節 わたしを敵の手に渡すことなく わたしの足を 広い所に立たせてくださいました。


〔3〕苦難の絶頂(*9−13)
31篇9節《われをあはれみたまへ、エホバよ、その故は窮迫(くるしみ)われにあればなり、わが()、わが(たましひ)、わが(からだ)はうれひによりて*おとろへたり。》【われ迫りくるしめり、エホバよわれをあはれみたまへ、わが目はうれひによりておとろふ、霊魂も身もまた衰へぬ】全身憂苦によりて衰弱し目に生気なく霊魂に活力なく身体はやせ衰えたり。

文語訳31篇9節 われ(せま)りくるしめり ヱホバよ(われ)をあはれみたまへ わが()はうれひによりておとろふ 靈魂(たましひ)()もまた(おとろ)へぬ
口語訳31篇9節 主よ、わたしをあわれんでください。わたしは悩み苦しんでいます。わたしの目は憂いによって衰え、わたしの魂も、からだもまた衰えました。
関根訳31篇10節 ヴェよ、わたしをあわれんで下さい、わたしは苦しんでいるのです。わが眼は悲しみによって衰えました(わが魂も体も)。
新共同31篇10節 主よ、憐れんでください わたしは苦しんでいます。目も、魂も、はらわたも 苦悩のゆえに衰えていきます。


補註
9−13節の訳文は原文の切迫せる文勢を示していないので、できるだけ原文を直訳した。
9「おとろへたり」は単数動詞で「目」だけを受けているけれども文勢により上記の如くに私訳す。


31篇10節(そは)わが生命(いのち)非常に強き《かなしみの(うち)に、わが年月(としつき)はうめきの(うち)()()り、わが(ちから)わが犯せる不義(ふぎ)によりてつまずき(にぶ)り、わが(ほね)(また)(おとろ)へたればなり。》【かなしみによりて消えゆき、わが年華はなげきによりて消えゆけばなり、わが力はわが不義によりておとろへ、わが骨は枯れはてたり】かくして大なる悲哀と呻吟の中に全身無力と化して衰え果つる結果となれり。

文語訳31篇10節 わが生命(いのち)はかなしみによりて()えゆき わが年華(とし)はなげきによりて()えゆけばなり わが(ちから)はわが不義(ふぎ)によりておとろへ わが(ほね)はかれはてたり
口語訳31篇10節 わたしのいのちは悲しみによって消えゆき、わたしの年は嘆きによって消えさり、わたしの力は苦しみによって尽き、わたしの骨は枯れはてました。
関根訳31篇11節 げにわが生命は苦痛の中に過ぎ去り、わが年は(なげ)きの中に過ぎて行きます。わが力はわが(とが)のためにつきはてわが骨はかれはて、
新共同31篇11節 命は嘆きのうちに 年月は呻きのうちに尽きていきます。罪のゆえに力はうせ 骨は衰えていきます。


31篇11節われもろもろの(あた)《より》【ゆゑに】ゆえなくしてそしらる(るものとなれり)、まことに堪え難く苦し、しかも最も親しかるべきわが隣人(となり)にはわけて(はなは)だし、これにまさりて耐え難きことなし、最も我を理解し居るはずの(あひ)()(もの)にはかえって固陋(ころう)として忌憚(いみはばか)られ、(ちまた)にてわれを()るものは我と関係することによりて禍害の己に及ばんことを恐れて()けてのがる。何たるさもしい心持にあらずや。

文語訳31篇11節 われもろもろの(あた)ゆゑにそしらる わが(となり)にはわけて(はなは)だし相識(あいし)るものには忌憚(いみはばか)られ(ちまた)にてわれを()るもの()けてのがる
口語訳31篇11節 わたしはすべてのあだにそしられる者となり、隣り人には恐れられ、知り人には恐るべき者となり、ちまたでわたしを見る者は避けて逃げます。
関根訳31篇12節 すべてのわが敵の故にわたしはわが隣り人にもいたく恥ずかしめられわが知り人の恐れのまととなりました。わたしを(ちまた)で見るものはわが前から逃げて行きます。
新共同31篇12節 わたしの敵は皆、わたしを嘲り 隣人も、激しく嘲ります。親しい人々はわたしを見て恐れを抱き 外で会えば避けて通ります。


31篇12節かくしてわれは生きながら()にたる(もの)のごとく《(ひと)(こころ)より(わす)()られ、》【忘られて人の心に置かれず】全く存在を失えるものの如くに取扱われ《また》【われは】やぶれたる器物(うつはもの)のごとく邪魔ものとして棄てて顧みられざるものとなれり。

文語訳31篇12節 われは()にたるもののごとく(わす)られて(ひと)のこゝろに()かれず われはやぶれたる(うつは)もののごとくなれり
口語訳31篇12節 わたしは死んだ者のように人の心に忘れられ、破れた器のようになりました。
関根訳31篇13節 わたしは死んだ人のように人の心に忘れられこわれた器物のようになりました。
新共同31篇13節 人の心はわたしを死者のように葬り去り 壊れた器と見なします。


31篇13節そは(われ)おほくの(ひと)我に関してつぶやく《ささやき》【そしり】をきき、《四方(よも)に》【到るところに】我を滅ぼさんとする者の(おそれ)あ(ればな)り、かれら我を憎み我を滅ぼさんとする者は(われ)にさからひて(たがひ)に《(あひ)はかり、》【はかりしが】わが生命(いのち)を〔さへ〕とらんと(くはだ)てたり。四方八方にかかる敵を控えて我、いかで之に耐え得んや、唯エホバの御力に依頼むより外に途ぞなき。

文語訳 31篇13節 そは(われ)おほくの(ひと)のそしりをきゝ(いた)るところに(おそれ)あり かれら(われ)にさからひて(たがひ)にはかりしが わが生命(いのち)をさへとらんと(くはだ)てたり
口語訳31篇13節 まことに、わたしは多くの人のささやくのを聞きます、「至る所に恐るべきことがある」と。彼らはわたしに逆らってともに計り、わたしのいのちを取ろうと、たくらむのです。
関根訳31篇14節 げにわたしは多くの人のささやきを聞きます、「恐ろしいことが周りにある」と。彼らがわたしを(そこ)なおうと相談し、わが生命をとろうとたくらんでいるのです。
新共同31篇14節 ひそかな声が周囲に聞こえ 脅かすものが取り囲んでいます。人々がわたしに対して陰謀をめぐらし 命を奪おうとたくらんでいます。


〔4〕祈願(14−18)
31篇14節かかる絶大の苦悩の中にありて汝我を棄て給えるが如くなるがされど《われは、エホバよ、》【エホバよわれ】汝を疑うことなく昔の如く(なんぢ)によりたのめり、然のみならず(われ)は心より告白していへり『(なんぢ)わが(かみ)なり』》と。》【また汝はわが神なりといへり】

文語訳31篇14節 されどヱホバよわれ(なんぢ)によりたのめり また(なんぢ)はわが(かみ)なりといへり
口語訳31篇14節 しかし、主よ、わたしはあなたに信頼して、言います、「あなたはわたしの神である」と。
関根訳31篇15節 しかしわたしは、ヤヴェよ、あなたに依り頼み、あたなに申します、「あなたはわが神、
新共同31篇15節 主よ、わたしはなお、あなたに信頼し 「あなたこそわたしの神」と申します。


31篇15節わが(とき)とその間に起る凡ての事件はすべてなんぢの御手(みて)の中に汝の支配の下にあり、さればねがはくはわれを(あた)()より〔たすけ〕(また)われに(おひ)(せま)りて我を迫害するものより(たす)けいだしたまへ。

文語訳31篇15節 わが(とき)はすべてなんぢの(みて)にあり ねがはくはわれを(あた)()よりたすけ われに追迫(おひせま)るものより(たす)けいだしたまへ
口語訳31篇15節 わたしの時はあなたのみ手にあります。わたしをわたしの敵の手と、わたしを責め立てる者から救い出してください。
関根訳31篇16節 わが時はあなたのみ手にあります」と。わが敵、わたしを迫害する者の手から救って下さい。
新共同31篇16節 わたしにふさわしいときに、御手をもって 追い迫る者、敵の手から助け出してください。


31篇16節またなんぢの(しもべ)なる我を暗黒の中に棄ておき給わず我のうへに聖顔(みかほ)をかがやかせて我が心を充ち足らわせなんぢの仁慈(いつくしみ)をもて(われ)凡ての仇とその力よりすくひたまへ。

文語訳31篇16節 なんぢの(しもべ)のうへに聖顏(みかほ)をかゞやかせ なんぢの仁慈(いつくしみ)をもて(われ)をすくひたまへ
口語訳31篇16節 み顔をしもべの上に輝かせ、いつくしみをもってわたしをお救いください。
関根訳31篇17節 み顔を(しもべ)の上に輝かせ、み恵みをもってわたしを助けて下さい。
新共同31篇17節 あなたの僕に御顔の光を注ぎ 慈しみ深く、わたしをお救いください。


31篇17節エホバよ、汝我を見棄つることによりてわれに(はぢ)()はしめたまふなかれ、そは(われ)なんぢを《()びたれば》【よべば】汝之に応え給うはずなればなり、(ねが)はくはかえって我を苦しめんとするあしき(もの)(はぢ)をうけしめ、今傲慢に過し居る彼らをして死して陰府(よみ)下らしめ、そこにありて(くち)をつぐましめ(たま)へ。

文語訳31篇17節 ヱホバよわれに(はぢ)をおはしめ(たま)ふなかれ そは(われ)なんぢをよべばなり (ねが)はくはあしきものに(はぢ)をうけしめ陰府(よみ)にありて(くち)をつぐましめ(たま)
口語訳31篇17節 主よ、わたしはあなたに呼ばわります、わたしをはずかしめないでください。悪しき者に恥をうけさせ、彼らに声をあげさせずに陰府に行かせてください。
関根訳31篇18節 ヴェよ、わたしに恥をおわせないで下さい。わたしはあなたを呼び求めるからです。悪人どもが恥をおい陰府(よみ)に投げ込まれますように。
新共同 31篇18節 主よ、あなたを呼びます。わたしを恥に落とすことなく 神に逆らう者をこそ恥に落とし 陰府に落とし、黙らせてください。


31篇18節傲慢(たかぶり)輕侮(あなどり)とをもて(ただ)しき(もの)にむかひて(みだ)りにののしる(いつはり)口唇(くちびる)をつぐましめ(たま)へ。彼らはこの世に多くの害を与え、殊に汝エホバに依頼む者を損う者なればなり。

文語訳31篇18節 傲慢(たかぶり)輕侮(あなどり)とをもて(ただし)きものにむかひ(みだ)りにのゝしるいつはりの口唇(くちびる)をつぐましめたまへ
口語訳31篇18節 高ぶりと侮りとをもって正しい者をみだりにそしる偽りのくちびるをつぐませてください。
関根訳31篇19節 虚偽の唇がだまらされるように、高ぶって(軽蔑(けいべつ)して)義人に対し厚かましいことを語る唇が。
新共同31篇19節 偽って語る唇を封じてください 正しい人を侮り、驕り高ぶって語る唇を。


〔5〕感謝と讃美(19−24)
31篇19節汝は実にかかる苦痛の底より、かかる多くの敵の手より我を救い給えり。(なんぢ)をおそるるもの汝の前に謙るもののために汝がたくはへ給い、なんぢに依ョ(よりたの)むもの汝をその避所とするもののために(ひと)()のまへにて凡ての人に示さんが為にほどこしたまへる(なんぢ)のいつくしみは(おほい)なるかな。汝は実に無尽蔵の宝庫の如く必要なるもの相応しきものには限りなくその恩恵を施し給う。

文語訳31篇19節 (なんぢ)をおそるゝ(もの)のためにたくはへ なんぢに依ョ(よりたの)むもののために(ひと)()のまへにてほどこしたまへる(なんぢ)のいつくしみは(おほい)なるかな
口語訳31篇19節 あなたを恐れる者のためにたくわえ、あなたに寄り頼む者のために人の子らの前に施されたあなたの恵みはいかに大いなるものでしょう。
関根訳31篇20節 あなたを(おそ)れる者のためにあなたが(たくわ)えあなたに信頼する者にあなたが加えられるあなたのみ恵みのなんと多いことか、人の子らの眼の前で。
新共同31篇20節 御恵みはいかに豊かなことでしょう。あなたを畏れる人のためにそれを蓄え 人の子らの目の前で あなたに身を寄せる人に、お与えになります。


31篇20節汝をおそるる者らが他人の迫害に遭わんとする時(なんぢ)かれらを御前(みまへ)なるひそかなる(ところ)にかくして彼らをして親しく聖顔を仰ぐことを得しめ、かつ悪しき(ひと)謀略(はかりごと)よりまぬかれしめ、彼らを滅より救い給いまたエホバの住み給う行宮(かりいほ)のうちにひそませて有害にして無益なる(した)のあらそひをさけしめたまはん。エホバは常にその愛する者の避所その隠れ家に在し給う。

文語訳31篇20節 (なんぢ)かれらを御前(みまへ)なるひそかなる(ところ)にかくして(ひと)謀略(はかりごと)よりまぬかれしめ また行宮(かりいほ)のうちにひそませて(した)のあらそひをさけしめたまはん
口語訳31篇20節 あなたは彼らをみ前のひそかな所に隠して人々のはかりごとを免れさせ、また仮屋のうちに潜ませて舌の争いを避けさせられます。
関根訳31篇21節 あなたは彼らをみ顔の蔭にかくし人の中傷から守りあなたの住居のうちにかくまって舌の争いをまぬかれさせる。
新共同31篇21節 御もとに彼らをかくまって 人間の謀から守ってくださいます。仮庵の中に隠し 争いを挑む舌を免れさせてくださいます。


31篇21節(ほむ)べきかな、エホバは*堅固(けんご)なる(しろ)のなかにて我を安全に守りつつ(あや)しき》【奇しまるるばかりの】仁慈(いつくしみ)をわれに(あらは)したまへり。エホバの守護の中にその聖顔を仰ぎ見つつその恩恵を心ゆくばかりに味い得る者は幸福なるかな。

文語訳31篇21節 ()むべきかなヱホバは堅固(けんご)なる(しろ)のなかにて(あや)しまるゝばかりの仁慈(いつくしみ)をわれに(あらは)したまへり
口語訳31篇21節 主はほむべきかな、包囲された町のようにわたしが囲まれたとき、主は驚くばかりに、いつくしみをわたしに示された。
関根訳31篇22節 ヴェはほむべきかな、防備せる都から彼は驚くべき恵みをわたしに示された。
新共同31篇22節 主をたたえよ。主は驚くべき慈しみの御業を 都が包囲されたとき、示してくださいました。


補註
「堅固なる城」はまた「包囲の町」「堅固なる町」とも訳す、表徴的に見るべきであるけれども之を具体的に解すべしとする説もある。


31篇22節それにもかかわらず、往々にして禍害が突然我に臨むときわれ(おどろ)きあわてて()へらく『我は今やなんぢの()(まへ)より()たれたり』と。嗚呼何たる不信仰の態度ぞ。()れど実はかかる心の状態は一時に過ぎず、やがてわれ(なんぢ)によびもとめしとき(なんぢ)わが懇求(ねがひ)(こゑ)をききたまへり。汝はまことに恩恵に富み給うが故に苦しむものの叫びを聞き漏し給うことなし。

文語訳31篇22節 われ(おどろ)きあわてゝいへらく なんぢの()のまへより()たれたりと (され)どわれ(なんぢ)によびもとめしとき(なんぢ)わがねがひの(こゑ)をきゝたまへり
口語訳31篇22節 わたしは驚きあわてて言った、「わたしはあなたの目の前から断たれた」と。しかしわたしがあなたに助けを呼び求めたとき、わたしの願いを聞きいれられた。
関根訳31篇23節 わたしは驚きあわてて言った、あなたの眼の前からわたしは絶たれた、と。しかしわたしがあなたに向かって叫んだときまことにあなたはわが願いの声を聞かれた。
新共同31篇23節 恐怖に襲われて、わたしは言いました 「御目の前から断たれた」と。それでもなお、あなたに向かうわたしの叫びを 嘆き祈るわたしの声を あなたは聞いてくださいました。


31篇23節《エホバの(すべ)ての》【なんぢらもろもろの】聖徒(せいと)よ、エホバはかくも恩恵に富み給うがゆえに心よりエホバをいつくしめ、エホバは眞實(まこと)あるものをば見捨て給わずして之をまもり、傲慢(たかぶ)(もの)におもく(むくい)をほどこし彼らを愧(は)じしめたまふ。

文語訳31篇23節 なんぢらもろもろの聖徒(せいと)よヱホバをいつくしめ ヱホバは眞實(まこと)あるものをまもり傲慢者(たかぶるもの)におもく(むくい)をほどこしたまふ
口語訳31篇23節 すべての聖徒よ、主を愛せよ。主は真実な者を守られるが、おごりふるまう者にはしたたかに報いられる。
関根訳31篇24節 すべての聖徒たちよ、ヤヴェを愛せよ、ヤヴェは忠信な者を守られるが高ぶって行動する者にはしたたかに報いられる。
新共同31篇24節 主の慈しみに生きる人はすべて、主を愛せよ。主は信仰ある人を守り 傲慢な者には厳しく報いられる。


31篇24節すべてエホバを俟望(まちのぞ)むものよ、エホバ汝らを守り給うが故に(つよ)かれ、》【雄々しかれ】(かつ)(なんぢ)らの(こころ)を《雄々(をを)しからしめよ。》【かたくせよ】エホバに依頼む者は如何なる場合にも強く雄々しく生きることを得。

文語訳31篇24節 すべてヱホバを俟望(まちのぞ)むものよ雄雄(をを)しかれ なんぢら(こころ)をかたうせよ
口語訳31篇24節 すべて主を待ち望む者よ、強くあれ、心を雄々しくせよ。
関根訳31篇25節 強かれ、君たちの心をかたくせよ、すべてヤヴェを待ち望む者たちよ。
新共同31篇25節 雄々しくあれ、心を強くせよ 主を待ち望む人はすべて。