黒崎幸吉著 旧約聖書略註 Web版 詩篇





詩篇 第33篇

関根訳神讃美


本篇は前篇の末尾を受くるがごとき姿においてここに排列せられている会衆用の讃美歌で個人的経験を歌ったものではなく、神の栄光を各方面より讃美したものである。アルファベットの数だけの行数を有する技工的な詩で、したがって思想的に中心的なものがない、表題を欠く点においてダビデ詩集の一の例外である。国民的に敵の侵略を免れし時の歌であると見られているけれども、むしろかかる特定の具体的背景なきものと見るを適当とする。序言(1-3)と結尾(20-22)とを除き、主部は多くの方面よりせるエホバの讃美である。


〔1〕エホバに感謝と讃美とをささげよ(1-3)
33篇1節神の民として神に事うる*ただしき(もの)よ、エホバに絶対信頼することによりて彼によりてよろこべ、このよろこびにあふれてささぐる讃美(さんび)はなほきものに相應(ふさは)しきなり。

文語訳33篇1節 たゞしき(もの)よヱホバによりてよろこべ 讃美(さんび)はなほきものに(ふさは)しきなり
口語訳33篇1節 正しき者よ、主によって喜べ、さんびは直き者にふさわしい。
関根訳33篇1節 義しき者よ、ヤヴェにあって喜べ。讃美は直き者にふさわしい。
新共同33篇1節 主に従う人よ、主によって喜び歌え。主を賛美することは正しい人にふさわしい。


補註
「ただしき者」とは「信者」の別名。32:11を見よ。


33篇2節*(こと)をもてよろこびの歌にあわせつつエホバに感謝(かんしや)せよ、*十絃(とをを)の((たて))(こと)をもてエホバをほめうたへ。

文語訳33篇2節 (こと)をもてヱホバに感謝(かんしや)せよ 十絃(とをを)のことをもてヱホバをほめうたへ
口語訳33篇2節 琴をもって主をさんびせよ、十弦の立琴をもって主をほめたたえよ。
関根訳33篇2節 琴をもってヤヴェをほめたたえよ、十絃(とおお)の琴をもって彼をほめうたえ。
新共同33篇2節 琴を奏でて主に感謝をささげ 十弦の琴を奏でてほめ歌をうたえ。


補註
「琴」はキンノール、「十絃のこと」は「十〔絃〕のネベル」で原語を異にす。前者は英語の Lyre、ドイツ語の Zither で小形の絃楽器、後者はハープで現在のハープよりは小形な絃楽器であるとなされている。


33篇3節日々にあたらしき歓喜をうたえるあたらしき(うた)をエホバにむかひてうたひ、心にあふるる*歓喜(よろこび)(こゑ)をあげてたくみに《(かな)でよ。》【琴をかきならせ】

文語訳33篇3節 あたらしき(うた)をヱホバにむかひてうたひ歡喜(よろこび)(こゑ)をあげてたくみに(こと)をかきならせ
口語訳33篇3節 新しい歌を主にむかって歌い、喜びの声をあげて巧みに琴をかきならせ。
関根訳33篇3節 新しい歌を彼に向かって歌い、喜びの調べをもって巧みに(げん)をかきならせよ。
新共同33篇3節 新しい歌を主に向かってうたい 美しい調べと共に喜びの叫びをあげよ。


補註
「歓喜の聲をあげて」は「声高く」で楽器の音を指すか、人の声を指すか不明であるがおそらく双方を指すものであろう。


〔2〕エホバと地(4-5)
33篇4節かくの如く声をあげてエホバを讃美すべき所以はエホバのみ(ことば)(なほ)して少しの邪曲もなくそのすべて(おこな)ひたまふところ眞實(まこと)なれば我らは彼に依頼みて欺かるることなければなり。

文語訳33篇4節 ヱホバのみことばは(なほ)く そのすべて(おこな)ひたまふところ眞實(まこと)なればなり
口語訳33篇4節 主のみことばは直く、そのすべてのみわざは真実だからである。
関根訳33篇4節 げにヤヴェのみ(ことば)は直くそのすべてのみ業は真実(まこと)
新共同33篇4節 主の御言葉は正しく 御業はすべて真実。


33篇5節エホバは()公平(こうへい)なる審判とをこのみ不義と不公平とを忌嫌いたまふ、殊にエホバはいつくしみに富み給いてその仁慈(いつくしみ)はあまねく()()つ。正直、真実、正義、公平、仁慈、これらの諸徳にみち給うものこそエホバに在し給うなれ。

文語訳 33篇5節 ヱホバは()公平(こうへい)とをこのみたまふ その仁慈(いつくしみ)はあまねく()にみつ
口語訳33篇5節 主は正義と公平とを愛される。地は主のいつくしみで満ちている。
関根訳33篇5節 彼は義と公平を()で給う。ヤヴェの慈しみは地に満ちる。
新共同33篇5節 主は恵みの業と裁きを愛し 地は主の慈しみに満ちている。


〔3〕エホバと創造(6-9)
33篇6節而のみならずエホバその創造の御業においてその能力をあらわし給うもろもろの(てん)はエホバの*みことばによりて()り、《その》【てんの】萬軍(ばんぐん)なる天使、日月星晨等はエホバの(くち)臭氣(いき)なる言によりてつくられたり。神語り給えばすなわち天の万象たちどころに成る。

文語訳33篇6節 もろもろの(てん)はヱホバのみことばによりて()り てんの萬軍(ばんぐん)はヱホバの(くち)(いき)によりてつくられたり
口語訳33篇6節 もろもろの天は主のみことばによって造られ、天の万軍は主の口の息によって造られた。
関根訳33篇6節 ヴェのみ言によって天は造られ、そのみ口のいきによって天の万象は造られた。
新共同33篇6節 御言葉によって天は造られ 主の口の息吹によって天の万象は造られた。


補註
「みことば」は創世1:2以下の「神言ひたまひけるは」を指す、ヨハネ1:2以下も同一の思想である。唯肉体となりたまえる「言」なるイエスにつきては未だ知られなかったことは勿論である。


*33篇7節エホバは(うみ)(みづ)をあつめてうづだかくし、(ふかき)(ふち)(くら)にをさめたまふ。海も深き淵も人の想像に絶する力を以て悉くエホバの神の御手によりて成れり。

文語訳33篇7節 ヱホバはうみの(みづ)をあつめてうづだかくし深淵(ふかきふち)(くら)にをさめたまふ
口語訳33篇7節 主は海の水を水がめの中に集めるように集め、深い淵を倉におさめられた。
関根訳33篇7節 彼は海の水を(かめ)に集め原始の水を倉におさめる。
新共同33篇7節 主は大海の水をせき止め 深淵の水を倉に納められた。


補註
本節の思想は創世7:11にある如き当時の天地の構成に関する思想によりたるもの。


33篇8節かかる恐るべき力を有つエホバに在し給う以上全地(ぜんち)はエホバをおそれ、()にすめるもろもろの(ひと)天地の造り主に在し給うエホバをおぢかしこむべし。

文語訳33篇8節 全地(ぜんち)はヱホバをおそれ()にすめるもろもろの(ひと)はヱホバをおぢかしこむべし
口語訳33篇8節 全地は主を恐れ、世に住むすべての者は主を恐れかしこめ。
関根訳33篇8節 全地はヤヴェの前に恐れ、地に住むすべての者はその前にかしこむ。
新共同33篇8節 全地は主を畏れ 世界に住むものは皆、主におののく。


33篇9節そはエホバ()ひたまへば万物たちどころに()り、おほせたまへばただちに()てるがゆゑなり。

文語訳33篇9節 そはヱホバ()ひたまへば()り おほせたまへば()てるがゆゑなり
口語訳33篇9節 主が仰せられると、そのようになり、命じられると、堅く立ったからである。
関根訳33篇9節 彼が言を語ればその通りになり命じられるとかたく立つからである。
新共同33篇9節 主が仰せになると、そのように成り 主が命じられると、そのように立つ。


〔4〕エホバと国々(10-17)
*33篇10節エホバはその御旨に叶わざるもろもろの(くに)(たみ))の自己の利益のみを求めてやまざるはかりごとをば之を成就せしめずに悉く之を(むなし)くし、もろもろの(たみ)不義と邪悪に充てるおもひを破壊して之を徒勞(いたづら)にしたまふ。

文語訳33篇10節 ヱホバはもろもろの(くに)のはかりごとを(むな)しくし もろもろの(たみ)のおもひを徒勞(いたづら)にしたまふ
口語訳33篇10節 主はもろもろの国のはかりごとをむなしくし、もろもろの民の企てをくじかれる。
関根訳 33篇10節 ヴェは諸国の計画(はかりごと)(むな)しくし諸民の思うところをくつがえされる。
新共同33篇10節 主は国々の計らいを砕き 諸国の民の企てを挫かれる。


補註
本節以下の国民の謀略が徒労に帰することは具体的の事実があったと見る必要がない。


33篇11節而してその反対に、一見無力の如くに見えてもエホバの謀略(はかりごと)決して倒るることなくとこしへに()ち、そのみこころのおもひは徒労に帰することなくして世々(よよ)にたつ、エホバによらずしては国々が如何なることを図るともそれらは結局無効に帰するにすぎず。

文語訳33篇11節 ヱホバの謀略(はかりごと)はとこしへに()ち そのみこゝろのおもひは世々(よよ)にたつ
口語訳33篇11節 主のはかりごとはとこしえに立ち、そのみこころの思いは世々に立つ。
関根訳33篇11節 ヴェの計画は永遠(とこしえ)に立ちその心の思うところは代々に立つ。
新共同33篇11節 主の企てはとこしえに立ち 御心の計らいは代々に続く。


33篇12節それ故にエホバをおのが(かみ)して之に服従する(くに)(たみ))はさいはひなり、彼は神の守護によりて永遠に立つことを得またエホバおのれの特別の嗣業(ゆづり)にせんとて多くの民の中より(えら)びたまへるその(たみ)イスラエルはさいはひなり。エホバは特に彼らの上にその恩顧を被らせ給えばなり。

文語訳33篇12節 ヱホバをおのが(かみ)とする(くに)はさいはひなり ヱホバ嗣業(ゆづり)にせんとて(えら)びたまへるその(たみ)はさいはひなり
口語訳33篇12節 主をおのが神とする国はさいわいである。主がその嗣業として選ばれた民はさいわいである。
関根訳33篇12節 ヴェをその神とする国、彼がおのが嗣業に選んだ民に幸あれ。
新共同33篇12節 いかに幸いなことか 主を神とする国 主が嗣業として選ばれた民は。


33篇13節されどエホバはイスラエルの上のみに目をとめ給うことなく(てん)よりうかがひて、すべての(ひと)()()

文語訳33篇13節 ヱホバ(てん)よりうかゞひてすべての(ひと)()()
口語訳33篇13節 主は天から見おろされ、すべての人の子らを見、
関根訳33篇13節 ヴェは天から見おろされそべての人の子らを見られる。
新共同33篇13節 主は天から見渡し 人の子らをひとりひとり御覧になり


33篇14節その(いま)すところなる天の御座より()にすむもろもろの(ひと)()たまふ。イスラエルたると他の国民たるとを問わずエホバの目を逃れ得るものはない。

文語訳33篇14節 その(いま)すところより()にすむもろもろの(ひと)をみたまふ
口語訳33篇14節 そのおられる所から地に住むすべての人をながめられる。
関根訳33篇14節 その坐し給う高御座(たかみくら)から地に住むすべての者をかえりみる。
新共同33篇14節 御座を置かれた所から 地に住むすべての人に目を留められる。


33篇15節エホバはすべてかれらの(こころ)をつくりて彼らの心の思いをその支配の下に置き給いその()すところを(ことごと)(かんが)之を審き之に報いたまふ。

文語訳33篇15節 ヱホバはすべてかれらの(こころ)をつくり その()すところをことごとく(かんが)みたまふ
口語訳33篇15節 主はすべて彼らの心を造り、そのすべてのわざに心をとめられる。
関根訳33篇15節 造り主は彼らの心をみなつくり、そのすべての思うところを知られる。
新共同33篇15節 人の心をすべて造られた主は 彼らの業をことごとく見分けられる。


33篇16節それ故に戦争の勝敗も凡てエホバによるのであって(わう)(しや)いくさびと(おほ) きをもて(すくひ)をえず、 軍勢の多きこと必ずしも勝利の保証ではなくまた勇士(ゆうし)ちから(おほい)なるをもて必ずしも(たすけ)をえざるなり。人間の力は勝利の最後の原因ではない。

文語訳33篇16節 王者(わうしや)いくさびと(おほき)をもて(すくひ)をえず勇士(ゆうし)ちから(おほい)なるをもて(たすけ)をえざるなり
口語訳33篇16節 王はその軍勢の多きによって救を得ない。勇士はその力の大いなるによって助けを得ない。
関根訳33篇16節 王はその多くの軍勢によって救いを得ず、勇士はその大いなる力によって助けを得ない。
新共同33篇16節 王の勝利は兵の数によらず 勇士を救うのも力の強さではない。


33篇17節戦争において決定的勝利の力と考えらるる(むま)はすくひを与え勝利を来らしむる(えき)なく、その(おほい)なるちからも〔(ひと)を〕たすくることなからん。軍馬、戦車の多くして強きが故に之に依頼む者は禍害なるかな。彼らはエホバを無視しつつ頼むべからざるに頼っているのである。

文語訳33篇17節 (むま)はすくひに(えき)なく その(おほい)なるちからも(ひと)をたすくることなからん
口語訳33篇17節 馬は勝利に頼みとならない。その大いなる力も人を助けることはできない。
関根訳33篇17節 馬は勝利のために役立たず、その多くの軍勢は人の助けとならない。
新共同33篇17節 馬は勝利をもたらすものとはならず 兵の数によって救われるのでもない。


〔5〕エホバのあわれみ(18-19)
33篇18節()よ、エホバの()自己の軍馬や自己の謀略に依頼むものの上に在らずエホバをおそるるものまたその憐憫(あはれみ)をのぞむもののうへにあり、エホバは限りなく彼らをあわれみ給う。

文語訳33篇18節 ()よヱホバの()はヱホバをおそるゝもの(また)その憐憫(あはれみ)をのぞむもののうへにあり
口語訳33篇18節 見よ、主の目は主を恐れる者の上にあり、そのいつくしみを望む者の上にある。
関根訳33篇18節 見よ、ヤヴェの目は彼を恐れる者、その恵みをまち望む者に向けられ、
新共同33篇18節 見よ、主は御目を注がれる 主を畏れる人、主の慈しみを待ち望む人に。


33篇19節()はかれらのたましひを()よりすくひて生くることを得しめ饑饉(ききん)の》【とし飢ゑたる】ときにも()にながらへしめんが(ため)なり。エホバに依頼む者愧しめらるるなし。

文語訳33篇19節 ()はかれらのたましひを()よりすくひ饑饉(としうゑ)たるときにも()にながらへしめんがためなり
口語訳33篇19節 これは主が彼らの魂を死から救い、ききんの時にも生きながらえさせるためである。
関根訳33篇19節 彼らの魂を死より救い、飢饉(ききん)の時にも彼らを生かす。
新共同33篇19節 彼らの魂を死から救い 飢えから救い、命を得させてくださる。


〔6〕結尾の歓喜と讃美(20-22)
33篇20節われらのたましひはこの世の何ものをも俟望まずしてひたすらにエホバを侯望(まちのぞ)めり、エホバは実に滅びんとする時のわれらの(たすけ)また敵の火矢を防ぐわれらの(たて)なり。故にエホバにありて我ら全く安らかに居ることを得。

文語訳33篇20節 われらのたましひはヱホバを俟望(まちのぞ)めり ヱホバはわれらの(たすけ)われらの(たて)なり
口語訳33篇20節 われらの魂は主を待ち望む。主はわれらの助け、われらの盾である。
関根訳33篇20節 われらの魂はヤヴェを望み待つ。彼はわれらの助け、われらの盾。
新共同33篇20節 我らの魂は主を待つ。主は我らの助け、我らの盾。


33篇21節かく彼らエホバを俟望めり、《そはエホバにありて(われ)らの(こころ)はよろこびに溢るることができまたその(きよ)御名(みな)によりたのむことによりて我ら敵より救わるることを望めばなり。》【われらはきよき御名によりたのめり斯くてぞわれらの心はエホバにありてよろこばん】

文語訳33篇21節 われらはきよき(みな)によりたのめり (かく)てぞわれらの(こころ)はヱホバにありてよろこばん
口語訳 33篇21節 われらは主の聖なるみ名に信頼するがゆえに、われらの心は主にあって喜ぶ。
関根訳33篇21節 げにわれらの心は彼にあって喜び、われらはその聖きみ名に依り頼む。
新共同33篇21節 我らの心は喜び 聖なる御名に依り頼む。


33篇22節エホバよ、われら(なんぢ)俟望(まちのぞ)めり、これに(したが)ひて憐憫(あはれみ)をわれらのうへに()れたまへ。エホバは己を俟望むものを恥しめ給わじ。

文語訳33篇22節 ヱホバよわれら(なんぢ)をまちのぞめり これに(したが)ひて憐憫(あはれみ)をわれらのうへに()れたまへ
口語訳33篇22節 主よ、われらが待ち望むように、あなたのいつくしみをわれらの上にたれてください。
関根訳33篇22節 ヴェよ、あなたの恵みがわれらの上にあれ、われらはあなたに望みを托したのだから。
新共同33篇22節 主よ、あなたの慈しみが 我らの上にあるように 主を待ち望む我らの上に。