黒崎幸吉著 旧約聖書略註 Web版 詩篇
詩篇 第44篇
文語訳 | 伶長にうたはしめたるコラの子のをしへの歌 |
口語訳 | 聖歌隊の指揮者によってうたわせたコラの子のマスキールの歌 |
関根訳44篇1節 | 聖歌隊の指揮者に、コラハの子マスキールの歌。 |
新共同44篇1節 | 【指揮者によって。コラの子の詩。マスキール。】 |
国民としてエホバに対する信頼を失わざるにもかかわらず戦敗国としての恥辱を受けて非常なる困難を経験せる時、過去の光栄ある歴史を顧みて、何故にかかる困難を経験せしめらるるやにつき、そのなやみをエホバに訴え、その救を祈る詩篇である。義しき者が戦敗の屈辱を受けてその説明を求むる点においてはヨブ記の思想に類似し、忠実なる主の僕の苦難として第二イザヤの「ヤーヴェの僕」に類似している。イスラエルの歴史の如何なる時代において生れし詩なりやについては明瞭なる手掛りを詩そのものの中に得ることができない。最も多くの学者によりて主張せらるる推測はマガベウス時代(紀元前二世紀)の作であるとされており、この時代は本篇の背景として多くの適切なる点を有しているけれども、なお二三の適合せざる点あり、その他アルタクセルクセス、オクス時代(前三五〇頃)のユダヤ人の反乱、俘囚後のエルサレム(前五世紀)、エホヤキン時代(前六世紀)、ヨアシの時代(前八世紀)ダビデ等多くの推測があるけれども何れも確定的ではない。唯その国民的にエホバに信頼せる点、その軍隊を所有している点等より少くとも王朝時代と見る方が安全であろう。なお本篇において自己の罪無きことを主張していることは新約の信仰より見て承認し難きごとくであるけれども、当時の思想としては俯仰天地に恥じざる心があったことは不当ではない。作者は過去におけるイスラエルの光栄ある歴史を回顧しつつ(1−3)現在もなおエホバに対する信頼を失わざることを述べ(4−8)、それにもかかわらず敵のために敗戦の屈辱を受けているのは(9−16)エホバがこれを為し給うのであることを思い(17−22)これより救われんことを切に祈る(23−26)の詩である。
〔1〕光栄ある祖先の歴史(1−3)
*44篇1節ああ神よ、むかしわれらの列祖の日になんぢがこの民の上になしたまひし数々の奇しき御業の語り伝えられているをわれら耳にきけり、列祖代々その歴史を我らに語り継ぎ来れり。
文語訳 | 44篇1節 ああ神よむかしわれらの列祖の日になんぢがなしたまひし事迹をわれら耳にきけり 列祖われらに語れり
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口語訳 | 44篇1節 神よ、いにしえ、われらの先祖たちの日に、あなたがなされたみわざを彼らがわれらに語ったのを耳で聞きました。
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関根訳 | 44篇2節 ヤハヴェよ、あなたがその昔、いにしえのときに、あなたのみ手をもってはたされたみ業をわれわれは耳でききました、先祖たちがわれわれに話してくれました。
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新共同 | 44篇2節 神よ、我らはこの耳で聞いています 先祖が我らに語り伝えたことを 先祖の時代、いにしえの日に あなたが成し遂げられた御業を。
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補註
エホバがその民になし給いし御業は出エジプト記、ヨシュア記その他に詳しく録さる。
44篇2節なんぢ御手をもてイスラエルに敵する〔もろもろの〕(異)國人をカナンの地よりおひしりぞけ、その地にわれらの列祖をうゑ、また汝に敵するもろもろの民をなやまして彼らをくるしめわれらの列祖をカナンの四方にはびこらせたまひき。
文語訳 | 44篇2節 なんぢ手をもてもろもろの國人をおひしりぞけ われらの列祖をうゑ竝もろもろの民をなやましてわれらの列祖をはびこらせたまひき
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口語訳 | 44篇2節 すなわちあなたはみ手をもって、もろもろの国民を追い払ってわれらの先祖たちを植え、またもろもろの民を悩まして、われらの先祖たちをふえ広がらせられました。
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関根訳 | 44篇3節 あなたは諸々の民を追いはらい彼らを植えられました。あなたは諸々の族を滅ぼし彼らを自由にされました。
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新共同 | 44篇3節 我らの先祖を植え付けるために 御手をもって国々の領土を取り上げ その枝が伸びるために 国々の民を災いに落としたのはあなたでした。
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44篇3節かれらは自己の力に頼りおのが劍によりて征服することによってその《地》【國】をえしにあらず、おのが臂《かれらを敵の手より救ひしにあらず、》【によりて勝をえしにあらず】彼らは汝のみに依頼みしが故にその救わるるは唯なんぢの右の手、なんぢの臂、なんぢの*面のひかりによれり、かく汝の力とその守が彼らの上に注がれしは、彼らにその価格ありしが故にあらず、唯汝かれらを惠みたまひたればなり。
文語訳 | 44篇3節 かれらはおのが劍によりて國をえしにあらず おのが臂によりて勝をえしにあらず 只なんぢの右の手なんぢの臂なんぢの面のひかりによれり 汝かれらを惠みたまひたればなり
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口語訳 | 44篇3節 彼らは自分のつるぎによって国を獲たのでなく、また自分の腕によって勝利を得たのでもありません。ただあなたの右の手、あなたの腕、あなたのみ顔の光によるのでした。あなたが彼らを恵まれたからです。
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関根訳 | 44篇4節 げに彼らが土地を得たのは剣によったのではなくその腕が彼らに救いを得させたのではありません。あなたの右の手、あなたの腕、み顔の光によるのです。あなたが彼らを受け入れられたからでした。
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新共同 | 44篇4節 先祖が自分の剣によって領土を取ったのでも 自分の腕の力によって勝利を得たのでもなく あなたの右の御手、あなたの御腕 あなたの御顔の光によるものでした。これがあなたのお望みでした。
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補註
「御顔の光」4:6。80:3、7、19。89:15その他。
〔2〕われらも汝によりたのむ(4−8)
44篇4節神よ、なんぢはわが王なり、王はその民を守りこれを救うの義務あるにあらずや、されば神よねがはくは《ヤコブの救を命じたまへ。》【ヤコブのために救をほどこしたまへ】汝命じ給えばイスラエルの救はたちどころに至らん。
文語訳 | 44篇4節 神よなんぢはわが王なり ねがはくはヤコブのために救をほどこしたまへ
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口語訳 | 44篇4節 あなたはわが王、わが神、ヤコブのために勝利を定められる方です。
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関根訳 | 44篇5節 あなたはわが王、わが神、ヤコブの救いを定められた方です。
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新共同 | 44篇5節 神よ、あなたこそわたしの王。ヤコブが勝利を得るように定めてください。
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44篇5節汝もしこの救を命じ給わばわれらは汝の力と助とによりて敵をたふし、また我らにさからひて起りたつものは如何に強き者たりともこれをなんぢの御名により汝の御業によりて踐壓ふべし。汝に依り頼みて勝ち得ざる敵とては一つもなし。
文語訳 | 44篇5節 われらは汝によりて敵をたふし また我儕にさからひて起りたつものをなんぢの名によりて踐壓ふべし
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口語訳 | 44篇5節 われらはあなたによって、あだを押し倒し、われらに立ちむかう者を、み名によって踏みにじるのです。
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関根訳 | 44篇6節 あなたにあってわれわれは敵をたおしあなたのみ名によって仇をふみにじる。
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新共同 | 44篇6節 あなたに頼って敵を攻め 我らに立ち向かう者を 御名に頼って踏みにじらせてください。
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44篇6節そは我をして敵に勝たしむるものは汝の御名と汝の能力とによるが故にわれわが弓によりたのまず、わが劍もまた我をすくふこと能はざればなり。我らをして戦に勝たしむるものは武器にあらず神の力なり、それ故に我らは全く我らの武器に依頼まざりき。
文語訳 | 44篇6節 そはわれわが弓によりたのまず わが劍もまた我をすくふことあたはざればなり
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口語訳 | 44篇6節 わたしは自分の弓を頼まず、わたしのつるぎもまた、わたしを救うことができないからです。
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関根訳 | 44篇7節 げにわたしはわが弓に頼らずわが剣はわたしを救わない。
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新共同 | 44篇7節 わたしが依り頼むのは自分の弓ではありません。自分の剣によって勝利を得ようともしていません。
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44篇7節なんぢ歴史の示すが如くわれらイスラエルの民を敵より救ひ、またわれらを苦しめ迫害し惡むものを打砕きて彼らを辱かしめたまへり。
文語訳 | 44篇7節 なんぢわれらを敵よりすくひまたわれらを惡むものを辱しめたまへり
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口語訳 | 44篇7節 しかしあなたはわれらをあだから救い、われらを憎む者をはずかしめられました。
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関根訳 | 44篇8節 げにあなたはわれらをその敵から救いわれらの仇を恥じしめ給います。
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新共同 | 44篇8節 我らを敵に勝たせ 我らを憎む者を恥に落とすのは、あなたです。
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44篇8節このイスラエルの歴史を回想してわれらはひねもす我らを救い給う神によりてほこり、〔われらは〕永遠になんぢの御名に感謝せん。汝のみ我らを永遠に恵み給うが故なり。セラ。
文語訳 | 44篇8節 われらはひねもす神によりてほこり われらは永遠になんぢの名に感謝せん セラ
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口語訳 | 44篇8節 われらは常に神によって誇り、とこしえにあなたのみ名に感謝するでしょう。[セラ
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関根訳 | 44篇9節 われらは日毎に神をたたえとこしえにあなたのみ名に感謝します。セラ
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新共同 | 44篇9節 我らは絶えることなく神を賛美し とこしえに、御名に感謝をささげます。〔セラ
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〔3〕何故の苦難ぞ(9−16)
44篇9節かく汝は汝に依り頼む民を救い給う。しかるに《汝は》【今は】われらをすててこれを助け給わず、我らを敵の前に敗北せしめて恥をおはせたまへり、また汝がかつて常に為し給える如くにわれらの軍人とともに出ゆき彼らと共に敵と戦いたまはず。
文語訳 | 44篇9節 しかるに今はわれらをすてて恥をおはせたまへり われらの軍人とともに出でゆきたまはず
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口語訳 | 44篇9節 ところがあなたはわれらを捨てて恥を負わせ、われらの軍勢と共に出て行かれませんでした。
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関根訳 | 44篇10節 しかしあなたはわれらを捨て、われらに恥を負わせわれらの軍勢と一緒に戦いに臨まず
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新共同 | 44篇10節 しかし、あなたは我らを見放されました。我らを辱めに遭わせ、もはや共に出陣なさらず
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44篇10節かえって我らを敗北せしめてわれらを敵のまへより退かしめ〔たまへり。〕われらを惡むもの《は己がために》【その任意に】われらを掠めうばへり。その時も汝は彼らの為すがままに任せ給えり。
文語訳 | 44篇10節 われらを敵のまへより退かしめたまへりわれらを惡むものその任意にわれらを掠めうばへり
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口語訳 | 44篇10節 あなたがわれらをあだの前から退かせられたので、われらの敵は心のままにかすめ奪いました。
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関根訳 | 44篇11節 われらを敵の前から退かせ仇はわれらを掠奪しました。
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新共同 | 44篇11節 我らが敵から敗走するままになさったので 我らを憎む者は略奪をほしいままにしたのです。
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44篇11節なんぢわれらをまもり給わず、かえってその中のある者をば《食用の羊》【食にそなへらるる羊】のごとくに《なし、また》【あたへ斯てわれらを】我らの中のある者をば〔もろもろの〕(異)國人のなかにちらし彼らの奴隷ならしめ(たまふ。)
文語訳 | 44篇11節 なんぢわれらを食にそなへらるゝ羊のごとくにあたへ斯てわれらをもろもろの國人のなかにちらし
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口語訳 | 44篇11節 あなたはわれらをほふられる羊のようにし、またもろもろの国民のなかに散らされました。
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関根訳 | 44篇12節 あなたはわれらをほふられる羊のようにしわれらを諸国の民の間に散らされました。
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新共同 | 44篇12節 あなたは我らを食い尽くされる羊として 国々の中に散らされました。
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44篇12節《なんぢ價なしに汝の民を賣り、その代價によりて利得し給はざりき。》【得るところなくしてなんぢの民をうり、その價によりてなんぢの富をましたまはざりき】あたかも全く無価値なる物の如くにその民を取扱い、何の得にもならざるにも関らずこれを無代償にて売り放ちその民を御手より放ち給えり、何たる無慈悲なる態度ぞや。
文語訳 | 44篇12節 得るところなくしてなんぢの民をうり その價によりてなんぢの富をましたまはざりき
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口語訳 | 44篇12節 あなたはわずかの金であなたの民を売り、彼らのために高い価を求められませんでした。
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関根訳 | 44篇13節 あなたの民を安値で売り高い価を求められませんでした。
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新共同 | 44篇13節 御自分の民を、僅かの値で売り渡し その価を高くしようともなさいませんでした。
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44篇13節汝われらを敵の前に敗れしめ隣〔人〕の諸国民モアブ、アンモン、ペリシテ、エドム等にそしらしめ、われらを環るこれらのあしきものにあなどらしめ、嘲けらしめたまへり。
文語訳 | 44篇13節 汝われらを憐人にそしらしめ われらを環るものにあなどらしめ 嘲らしめたまへり
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口語訳 | 44篇13節 あなたはわれらを隣り人にそしらせ、われらをめぐる者どもに侮らせ、あざけらせられました。
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関根訳 | 44篇14節 あなたはわれらを隣り人の辱かしめにあわせまわりの民らのあざけりと笑いの種にされました。
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新共同 | 44篇14節 我らを隣の国々の嘲りの的とし 周囲の民が嘲笑い、そしるにまかせ
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44篇14節又これにてもなお足らざるものの如く〔もろもろの〕國(民)のなかにわれらを軽蔑嘲笑の談柄となし、〔もろもろの〕民(ら)のなかにわれらを悪意と嘲弄とを以て*頭ふらるる者となしたまへり。
文語訳 | 44篇14節 又もろもろの國のなかにわれらを談柄となし もろもろの民のなかにわれらを頭ふらるゝ者となしたまへり
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口語訳 | 44篇14節 またもろもろの国民のなかにわれらを笑い草とし、もろもろの民のなかに笑い者とされました。
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関根訳 | 44篇15節 あなたはわれらを諸国の民の諺とし多くの族のあざけりの的とされました。
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新共同 | 44篇15節 我らを国々の嘲りの歌とし 多くの民が頭を振って侮るにまかせられました。
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補註
「頭ふらるる者」22:7。なおマタイ27:39はこの詩の実現として録さる。
44篇15節かくして わが凌辱ひねもす我がまへにありて常に我を離るることなくわが面の恥われをおほへるを以て全身恥を以て充さるるに至れり。
文語訳 | 44篇15節 わが凌辱ひねもす我がまへにあり わがかほの恥われをおほへり
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口語訳 | 44篇15節 わがはずかしめはひねもすわたしの前にあり、恥はわたしの顔をおおいました。
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関根訳 | 44篇16節 わが辱めは日毎にわが前にあり、恥はわが顔を蔽いました。
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新共同 | 44篇16節 辱めは絶えることなくわたしの前にあり わたしの顔は恥に覆われています。
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44篇16節何故に我はかく恥を受けざるべからざるかこは我をそしり我をののしる者の聲によりて凌辱たゆることなくまた我にあだし、我にうらみを報ゆるものの《面》【故】によりてわが面の恥我をおおいたるによるなり。
文語訳 | 44篇16節 こは我をそしり我をののしるものの聲により我にあだし我にうらみを報ゆるものの故によるなり
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口語訳 | 44篇16節 これはそしる者と、ののしる者の言葉により、敵と、恨みを報いる者のゆえによるのです。
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関根訳 | 44篇17節 わたしをそしり、ののしる者の声とわたしを憎み、仇を返す者の故です。
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新共同 | 44篇17節 嘲る声、ののしる声がします。報復しようとする敵がいます。
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〔4〕エホバ之をなし給う(17−22)
44篇17節これらのこと皆われらに臨みきつれど、われらなほ信仰を確く保ちて我らの祖先がしばしば汝を忘れし如くには汝を忘れず、またアブラハム以来列祖たちに与え給えるなんぢの契約(創世17:7。出エジプト19:5。24:7、8その他)《に不誠實ならざりき。》【をいつはりまもらざりき】
文語訳 | 44篇17節 これらのこと皆われらに臨みきつれどわれらなほ汝をわすれず なんぢの契約をいつはりまもらざりき
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口語訳 | 44篇17節 これらの事が皆われらに臨みましたが、われらはあなたを忘れず、あなたの契約にそむくことがありませんでした。
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関根訳 | 44篇18節 これらのすべてがわれらに臨みましたがわれらはあなたを忘れず、あなたの契約を拒みませんでした。
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新共同 | 44篇18節 これらのことがすべてふりかかっても なお、我らは決してあなたを忘れることなく あなたとの契約をむなしいものとせず
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44篇18節然のみならずわれらの心はそれが為に汝にそむきてしりぞかず、われらの歩み汝の定め給える道をはなれず、常に汝に依り頼み汝の鞭の下にありてなお汝を離れざりき。
文語訳 | 44篇18節 われらの心しりぞかずわれらの歩履なんぢの道をはなれず
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口語訳 | 44篇18節 われらの心はたじろがず、またわれらの歩みはあなたの道を離れませんでした。
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関根訳 | 44篇19節 われらの心は後に退かず、歩みはあなたの道から外れません。
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新共同 | 44篇19節 我らの心はあなたを裏切らず あなたの道をそれて歩もうとはしませんでした。
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*44篇19節されどそれにも関らずなんぢはわれを荒野に逐いやり野犬のすみかにてわれらを《打碎き》【きずつけ】われを淋しき処に置きて死の蔭をもてわれらをおほひ給へり。
文語訳 | 44篇19節 然どなんぢは野犬のすみかにてわれらをきずつけ死蔭をもてわれらをおほひ給へり
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口語訳 | 44篇19節 それでもあなたは山犬の住む所でわれらを砕き、暗やみをもってわれらをおおわれました。
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関根訳 | 44篇20節 ところがあなたは山犬のすみかでわれらを砕き暗闇をもってわれらを蔽われました。
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新共同 | 44篇20節 あなたはそれでも我らを打ちのめし 山犬の住みかに捨て 死の陰で覆ってしまわれました。
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補註
本節を前節と接続せしむる接続詞はこれを「たとい・・・・・・たまいたれど」と読むか、または「・・・・・・したまう程」と読むのが正しい。現行訳はやや心持の違いを生ず。
44篇20節われらもしおのれの神の御名をわすれて不信仰の生活を送り或はわれらの手を異神にのべて祈りしことあらんには、
文語訳 | 44篇20節 われらもしおのれの神の名をわすれ或はわれらの手を異神にのべしことあらんには
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口語訳 | 44篇20節 われらがもしわれらの神の名を忘れ、ほかの神に手を伸べたことがあったならば、
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関根訳 | 44篇21節 もしわれらがわれらの神の名を忘れ異教の神に向かって手をひろげたとしたら
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新共同 | 44篇21節 このような我らが、我らの神の御名を忘れ去り 異教の神に向かって 手を広げるようなことがあれば
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44篇21節神はこれを糺したまはざらんや、必ずこれを審き給う、そは神はこころの隠れたることをも知たまふ(が故なり)。
文語訳 | 44篇21節 神はこれを糺したまはざらんや 神はこころの隱れたることをも知りたまふ
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口語訳 | 44篇21節 神はこれを見あらわされないでしょうか。神は心の秘密をも知っておられるからです。
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関根訳 | 44篇22節 ヤハヴェはそれを探り出されないであろうか。げに彼は心のかくれた所をも知り給うのである。
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新共同 | 44篇22節 神はなお、それを探り出されます。心に隠していることを神は必ず知られます。
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*44篇22節しかしながら我らには決してかかる不信もなく背教もなく異神崇拝もなかりき。それにも関らずわれらは終日なんぢのために死にわたされ、屠られんとする羊の如くせられたり。殉教は我らの運命なるが如し。これ果して 何の為ぞ。
文語訳 | 44篇22節 われらは終日なんぢのために死にわたされ屠られんとする羊の如くせられたり
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口語訳 | 44篇22節 ところがわれらはあなたのためにひねもす殺されて、ほふられる羊のようにみなされました。
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関根訳 | 44篇23節 げにわれらは日毎にあなたのために殺され、屠所の羊のように見なされています。
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新共同 | 44篇23節 我らはあなたゆえに、絶えることなく 殺される者となり 屠るための羊と見なされています。
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補註
ロマ8:36にパウロがこの一節を引用したのは新約の聖徒の運命もこれに等しきことを思ったのであろう。
〔5〕エホバよ救いたまえ(23−26)
44篇23節主よ、さめたまへ、何なればねぶりて起きず我らをこの苦しみの中に見放したまふや、起きたまへ、われらをとこしへに棄てたまふなかれ。疾々来りて我らを救いたまえ。
文語訳 | 44篇23節 主よさめたまへ何なればねぶりたまふや起きたまへわれらをとこしへに棄てたまふなかれ
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口語訳 | 44篇23節 主よ、起きてください。なぜ眠っておられるのですか。目をさましてください。われらをとこしえに捨てないでください。
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関根訳 | 44篇24節 わが主よ、起きて下さい、なぜ眠り給うのですか、眼を覚まして下さい、いつまでも棄てないで下さい。
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新共同 | 44篇24節 主よ、奮い立ってください。なぜ、眠っておられるのですか。永久に我らを突き放しておくことなく 目覚めてください。
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44篇24節いかなれば聖顔をかくして《われらの》【われらがうくる】苦難と虐待とをわすれたるものの如く我らのなやみを無視したまふや。
文語訳 | 44篇24節 いかなれば聖顏をかくしてわれらがうくる苦難と虐待とをわすれたまふや
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口語訳 | 44篇24節 なぜあなたはみ顔を隠されるのですか。なぜわれらの悩みと、しえたげをお忘れになるのですか。
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関根訳 | 44篇25節 何故み顔をかくし給うのですか。われらの苦しみと悩みを忘れ給うのですか。
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新共同 | 44篇25節 なぜ、御顔を隠しておられるのですか。我らが貧しく、虐げられていることを 忘れてしまわれたのですか。
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44篇25節汝の棄つるところとなってわれらのたましひはかがみて塵にふし、われらの腹は土につきたり。身もたまも打ちのめされ圧倒されたり。
文語訳 | 44篇25節 われらのたましひはかがみて塵にふしわれらの腹は土につきたり
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口語訳 | 44篇25節 まことにわれらの魂はかがんで、ちりに伏し、われらのからだは土につきました。
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関根訳 | 44篇26節 げにわれらの魂は塵の中にかがみわれらの腹は土にまみれた。
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新共同 | 44篇26節 我らの魂は塵に伏し 腹は地に着いたままです。
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44篇26節ねがはくは我らの列祖を汝がたすけ給いし如く起きてわれらを助けたまへ、なんぢの仁慈のゆゑをもてわれらを贖ひたまへ。如何なる苦難と恥辱の中にありても我ら唯汝に依りたのめばなり。
文語訳 | 44篇26節 ねがはくは起きてわれらをたすけたまへ なんぢの仁慈のゆゑをもてわれらを贖ひたまへ
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口語訳 | 44篇26節 起きて、われらをお助けください。あなたのいつくしみのゆえに、われらをあがなってください。
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関根訳 | 44篇27節 起きて下さい、われらを助けて下さい。あなたの恵みの故にわれらを贖い給え。
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新共同 | 44篇27節 立ち上がって、我らをお助けください。我らを贖い、あなたの慈しみを表してください。
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