黒崎幸吉著 旧約聖書略註 Web版 詩篇
詩篇 第68篇
文語訳 | 伶長にうたはしめたるダビデのうたなり讃美なり |
口語訳 | 聖歌隊の指揮者によってうたわせたダビデの歌、さんび |
関根訳68篇1節 | 聖歌隊の指揮者に、ダビデの歌、うた。 |
新共同68篇1節 | 【指揮者によって。ダビデの詩。賛歌。歌。】 |
終末的詩篇であって、エホバがイスラエルを中心としてついに全世界を支配し給うに至ることを歌える雄大なる歌である。作者の脳裏に浮べる光景は過去におけるイスラエルの歴史であり、その中に顕われし神の御手による救と勝利の経験であった。将来においてもその如き手段をもって神はイスラエルを救い給うのみならず、凡てのイスラエルの敵、すなわち神の敵を打滅して全世界がシオンの山エルサレムの市、その聖所を中心としてこれに集り、諸王は来りて献物をささぐるに至ることを預言せるものである。イスラエルの選民意識が強くここに表顕せられていると同時に、エホバの神が必ず最後の勝利者、支配者となり給うことの強き確信が全篇に旺溢しているのを見る。何時時代の作なりやにつきては古くはヨシア時代より新しくはマカベウス時代に至るまで学者の説に上らない時代はないと云い得る位、区々の説が行われている。この事実はこの詩の作られし時代の不明なる証拠と見ることができる。唯その中に比較的新しき文字があることと、第二イザヤ(イザヤ40−66章)の中に多くの類似を見出し得ることと、旧約聖書の所々(例えばモーセの祝福、申命33章。デボラの歌、士師5章)に類似せる点ある等により、後世模倣時代の作であり、バビロン俘囚後の作と見ることが最も真に近いということができる。
この詩はその機構の雄大なるがために古来正義の戦を戦わんとせし多くの信仰の勇士に強き確信を与えし処のものであった。なおこの詩の文言の中にはおそらく多くの混乱があり、また歴史上の事実の中に一つの思想を織込んでいる関係上、意味不明の点少からず難解の箇所が多い。本文の私訳はできるだけ原文を変更せずに試みた結果に過ぎず、多くの異説あり、また本文に多大の変更を敢えてする説の存すること勿論である。全篇大別して三部とすることができる。1−6節は序言、7−18節は過去の歴史の回顧による未来の預言、19−35節は現在および将来に関する詩作者の想像である。
〔1〕序言(1−6)
*68篇1節《神は起き給ふ、その敵はちらされ、神をにくむ者は聖前より逃れん。》【ねがはくは神おきたまへ、その仇はことごとくちり神をにくむものはみまへよりにげさらんことを】神一度び起上り給えば、如何なる敵も風前の燈の如くに亡ぶ。
文語訳 | 68篇1節 ねがはくは神おきたまへ その仇はことごとくちり 神をにくむものは前よりにげさらんことを
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口語訳 | 68篇1節 神よ、立ちあがって、その敵を散らし、神を憎む者をみ前から逃げ去らせてください。
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関根訳 | 68篇2節 ヤハヴェが立ち上がられると、彼の敵は散らされ彼を憎む者はみ前から逃げ去る。
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新共同 | 68篇2節 神は立ち上がり、敵を散らされる。神を憎む者は御前から逃げ去る。
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補註
現行訳の如く祈願の意味に訳することは有力なる学者の反対する処である。なお本節は民数10:35のモーセの祈を引用したものである。
68篇2節風の為に烟のおひやらるる如くひとたまりも無く《汝かれらを逐遣り給はん、》【かれらを驅逐りたまへ】*惡き者は火の前に蝋のとくる如く神の聖前にて《滅びん。》【ほろぶべし】悪しき者にして神の前に立ち得る者はあることなし。
文語訳 | 68篇2節 烟のおひやらるゝごとくかれらを驅逐りたまへ 惡しきものは火のまへに蝋のとくるごとく 神のみまへにてほろぶべし
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口語訳 | 68篇2節 煙の追いやられるように彼らを追いやり、ろうの火の前に溶けるように悪しき者を神の前に滅ぼしてください。
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関根訳 | 68篇3節 去りゆく煙が消え去るように火の前にろうが溶けるように悪しき者はヤハヴェの前から滅び失せる。
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新共同 | 68篇3節 煙は必ず吹き払われ、蝋は火の前に溶ける。神に逆らう者は必ず御前に滅び去る。
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補註
2、3節「惡しき者」は異邦人、「義しき者」はイスラエルであると彼らは信じていた。
68篇3節されど《*義しき者は喜ばん、神の聖前にて歓ばん、且喜びを以て悦ばん。》【義しき者には歓喜あり、かれら神のみ前にてよろこびをどらん實にたのしみて喜ばん】義しき者は神の聖前における無限の祝福を喜ぶことができる。
文語訳 | 68篇3節 されど義きものには歡喜あり かれら神の前にてよろこびをど'らん實にたのしみて喜ばん
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口語訳 | 68篇3節 しかし正しい者を喜ばせ、神の前に喜び踊らせ、喜び楽しませてください。
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関根訳 | 68篇4節 しかし義人はヤハヴェの前に喜びおどりいたく喜び楽しむ。
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新共同 | 68篇4節 神に従う人は誇らかに喜び祝い 御前に喜び祝って楽しむ。
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68篇4節神《に向ひて讃美せよ、》【のみまへにうたへ】その御名を《ほめうたへよ。》【ほめたたへよ】その御業は恩恵と真理とに充つるが故なり。而して神はあたかも東邦の王者の行幸の如く、またイザヤ40:3に録さるる如く荒野を通りて来り給う、この馬に乗りて(荒野を)すぐる者のために、
その妨害となるべき不信と不義とを除き、その歩み給ふべき
大道をきづけ、かれの名は*ヤハとよぶ、その聖前に《歓べ。》【よろこびをどれ】
文語訳 | 68篇4節 神のみまへにうたへ その名をほめたたへよ乘りて野をすぐる者のために大道をきづけ かれの名をヤハとよぶ その前によろこびをどれ
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口語訳 | 68篇4節 神にむかって歌え、そのみ名をほめうたえ。雲に乗られる者にむかって歌声をあげよ。その名は主、そのみ前に喜び踊れ。
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関根訳 | 68篇5節 ヤハヴェに向かって歌え、そのみ名をほめよ、雲に乗られる者にその道をそなえよ、ヤハはそのみ名、彼の前に歓呼せよ。
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新共同 | 68篇5節 神に向かって歌え、御名をほめ歌え。雲を駆って進む方に道を備えよ。その名を主と呼ぶ方の御前に喜び勇め。
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補註
ヤハはヤーヴエー(エホバ)の略、ハレルーヤのヤー。
68篇5節人の近づくべきもなき聖き住居にまします神はかえって己を卑くして人を愛し給う神、人の顧みざる憐むべきみなし子のためには親しき父、やもめのためには義しき審きをなし給う審士なり。
文語訳 | 68篇5節 きよき住居にまします神はみなしごの父やもめの審士なり
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口語訳 | 68篇5節 その聖なるすまいにおられる神はみなしごの父、やもめの保護者である。
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関根訳 | 68篇6節 彼はみなしごの父、やもめの保護者、ヤハヴェはその聖なるみ住居におられる。
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新共同 | 68篇6節 神は聖なる宮にいます。みなしごの父となり やもめの訴えを取り上げてくださる。
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68篇6節神は人にすてられしさびしきよるべなきものを救い出して家族の中に《住はしめ》【をらしめ】敵に捕われて苦しめる囚人をときて福祉にみちびきたまふ、されど神に服わざる《反逆者》【そむくもの】は審きを受けてうるほひなき地に《すまん。》【すめり】かくして神の民と神の敵、義しき者と悪しき者とは神の聖前において截然として二分せらるる運命を有つ、これ人類の当然の帰結なり。
文語訳 | 68篇6節 神はよるべなきものを家族の中にをらしめ囚人をときて福祉にみちびきたまふ されど悖逆者はうるほひなき地にすめり
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口語訳 | 68篇6節 神は寄るべなき者に住むべき家を与え、めしゅうどを解いて幸福に導かれる。しかしそむく者はかわいた地に住む。
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関根訳 | 68篇7節 ヤハヴェは身寄りなき者を家に帰らせ囚人を解いて歌い手とする。しかし逆らう者は乾いた地に住む。
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新共同 | 68篇7節 神は孤独な人に身を寄せる家を与え 捕われ人を導き出して清い所に住ませてくださる。背く者は焼けつく地に住まねばならない。
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〔2〕過去の歴史の回想(7−18)
*68篇7節神よ、イスラエルがエジプトを出でてカナンに向えるときなんぢはイスラエルの民にさきだちいでて(荒)野をすすみゆきたま《ふに、》【ひき】セラ(ここにセラを入れて後に来る詩句を一層印象的ならしむ、19節も同じ意味)。
文語訳 | 68篇7節 神よなんぢは民にさきだちいでて野をすすみゆきたまひき セラ
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口語訳 | 68篇7節 神よ、あなたが民に先だち出て、荒野を進み行かれたとき、[セラ
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関根訳 | 68篇8節 ヤハヴェよ、あなたがその民の前に先立ち荒野を歩まれたとき、セラ
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新共同 | 68篇8節 神よ、あなたが民を導き出し 荒れ果てた地を行進されたとき〔セラ
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補註
7、8節 デボラの歌(士師5:4、5)と略同一の字句、なお「シナイの山すら・・・・・・ふるひ動けり」と訳するのが通説である
*68篇8節そのとき天地に大なる変動あり地ふるひ雷、雹、雨霰(あられ)となりて天、神の聖前に《滴る、是れイスラエルの神なる神の聖前に於けるシナイの光景なり。》【漏る、シナイの山すら神イスラエルの神のみ前にふるひうごけり】
文語訳 | 68篇8節 そのとき地ふるひ天かみのみまへに漏る シナイの山すら神イスラエルの神の前にふるひうごけり
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口語訳 | 68篇8節 シナイの主なる神の前に、イスラエルの神なる神の前に、地は震い、天は雨を降らせました。
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関根訳 | 68篇9節 地はふるえ、天もしたたらせた、シナイの神なるヤハヴェのみ前イスラエルの神ヤハヴェのみ前に。
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新共同 | 68篇9節 地は震え、天は雨を滴らせた シナイにいます神の御前に 神、イスラエルの神の御前に。
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68篇9節*神よ、なんぢの嗣業の地なるカナンの地のつかれおとろへて無力なるものとなり果てたるとき、豊なる雨をふらせ豊なる恩恵を加えて之をかたくしたまへり。
文語訳 | 68篇9節 神よなんぢの嗣業の地のつかれおとろへたるとき豐かなる雨をふらせて之をかたくしたまへり
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口語訳 | 68篇9節 神よ、あなたは豊かな雨を降らせて、疲れ衰えたあなたの嗣業の地を回復され、
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関根訳 | 68篇10節 ヤハヴェよ、あなたは豊かな雨を降らせあなたの嗣業なる疲れた地を建て直された。
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新共同 | 68篇10節 神よ、あなたは豊かに雨を賜り あなたの衰えていた嗣業を固く立てて
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補註
本節はマナと鶉の物語(出エジプト16:4)を意味すと解する説が多く行われているけれども、やはりカナンの地に対する多くの恩恵と解するを可とす。
68篇10節〔曩に〕汝の《*部落》【公會】なるイスラエルはその中に《住む、》【とどまれり】神よ、汝は惠をもて貧しきもののために備をなしたま《ふ。》【ひき】かくして神の民は神と共に住み、その貧しき者は神の恵の中に生く。
文語訳 | 68篇10節 曩になんぢの公會はその中にとどまれり 神よなんぢは惠をもて貧しきもののために預備をなしたまひき
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口語訳 | 68篇10節 あなたの群れは、そのうちにすまいを得ました。神よ、あなたは恵みをもって貧しい者のために備えられました。
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関根訳 | 68篇11節 彼らはあなたの食物で飽き足りる、ヤハヴェよあなたは貧しき者に良きものを賜う。
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新共同 | 68篇11節 あなたの民の群れをその地に住ませてくださった。恵み深い神よ あなたは貧しい人にその地を備えられた。
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補註
「部落」の意、ただし問題多き文字。
68篇11節主みことばを賜《へば、》【ふ】その音信をのぶる婦は《大なる群をなす。》【多くして群をなせり】神の嘉信殊にその勝利の嘉信は多くの婦女子が歌い躍りつつこれを祝することによりて全国民に告知する。
文語訳 | 68篇11節 主みことばを賜ふ その佳音をのぶる婦女はおほくして群をなせり
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口語訳 | 68篇11節 主は命令を下される。おとずれを携えた女たちの大いなる群れは言う、
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関根訳 | 68篇12節 主はみ言葉を与えられる。喜びの音信を伝える者の大いなる群れ。
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新共同 | 68篇12節 主は約束をお与えになり 大勢の女たちが良い知らせを告げる
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68篇12節《萬軍の王たちはエホバの前に敗れて逃げて又逃げ、》【もろもろの軍旅の王たちはにげさる、逃去りたれば】イスラエルの軍はその分獲物を携えて凱旋し家《に住む》【なる】婦女はその掠物をわかつ。神はその勝利を以てイスラエルの家の婦女子をも恵み給う。
文語訳 | 68篇12節 もろもろの軍族の王たちはにげさる 逃去りたれば家なる婦女はその掠物をわかつ
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口語訳 | 68篇12節 「もろもろの軍勢の王たちは逃げ去り、逃げ去った」と。家にとどまる女たちは獲物を分ける、
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関根訳 | 68篇13節 軍勢を率いる王たちは逃げに逃げた。家の前庭で分捕物が分けられる。
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新共同 | 68篇13節 「王たちは軍勢と共に逃げ散る、逃げ散る」と。家にいる美しい女も戦利品を分けている。
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*68篇13節なんぢら怠惰なる生活を送って羊の牢の《間にふすとも、なお平和と富とは汝に恵まるることあたかも白銀におほはれし鴿のつばさ、黄金に掩はれしその羽〔の如し〕。》【うちにふすときは鴿のつばさの白銀におほはれその毛の黄金におほはるるがごとし】
文語訳 | 68篇13節 なんぢら羊の牢のうちにふすときは鴿のつばさの白銀におほはれその毛の黄金におほはるゝがごとし
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口語訳 | 68篇13節 たとい彼らは羊のおりの中にとどまるとも。はとの翼は、しろがねをもっておおわれ、その羽はきらめくこがねをもっておおわれる。
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関根訳 | 68篇14節 君らは羊のおりの中に留まるのか。鳩の翼は銀をもって蔽われその羽毛は輝く金をもって蔽われる。
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新共同 | 68篇14節 あなたたちは二つの鞍袋の間に横たわるのか。鳩の翼は銀に、羽は黄金に被われている。
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補註
難解の一節。
68篇14節全能者かしこにて王たちを打ち敗りこれをちらし《給ふ》【給へる】ときは*サルモンの山に《雪降るが如し。》【雪ふりたるがごとくなりき】風に吹かれて散乱する雪片は敗れて散さる王たちを想起さしむ。
文語訳 | 68篇14節 全能者かしこにて列王をちらし給へるときはサルモンの山に雪ふりたるがごとくなりき
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口語訳 | 68篇14節 全能者がかしこで王たちを散らされたとき、ザルモンに雪が降った。
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関根訳 | 68篇15節 全能者が王たちを散らされたとき黒い山に雪が降った。
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新共同 | 68篇15節 全能者が王たちを散らされるとき ツァルモン山に雪が降るであろう。
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補註
「サルモンの山」はシケムに近き山、本節も難解の一節。
68篇15節*バシャンの山は神の造り給える美しき神の山なり、バシャンの山は峨々として聳ゆる峰《多き》【かさなれる】山なり。
文語訳 | 68篇15節 バシャンのやまは神の山なりバシャンのやまは峰かさなれる山なり
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口語訳 | 68篇15節 神の山、バシャンの山、峰かさなる山、バシャンの山よ。
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関根訳 | 68篇16節 神の山、蛇の山、聳え立つ山、蛇の山よ、
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新共同 | 68篇16節 神々しい山、バシャンの山 峰を連ねた山、バシャンの山
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補註
「バシヤンの山」はガリラヤ湖の東バシヤン地方の連山かまたはヘルモンの山を指す。
68篇16節《峰多き山々よ、》【峰重れるもろもろの山よ】なんぢらかかる美しき神の山にてありながら如何なれば神の《住まんと欲し給へる山即ちシオンの山を》【住所にえらびたまへる山を】ねたみ見るや、《實に》【さはれ】エホバは永遠に〔この山に〕住みたまはん。汝ら妬み見るも徒爾(とじ)なり、エホバの住み給うシオンの山は実に如何なる山にもまさりてうるわし。
文語訳 | 68篇16節 峰かさなれるもろもろの山よ なんぢら何なれば神の佳所にえらびたまへる山をねたみ見るや然はれヱホバは永遠にこの山にすみたまはん
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口語訳 | 68篇16節 峰かさなるもろもろの山よ、何ゆえ神がすまいにと望まれた山をねたみ見るのか。まことに主はとこしえにそこに住まわれる。
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関根訳 | 68篇17節 何故君たち聳え立つ山々はヤハヴェがその住家として望みヤハヴェが永遠に住まわれる山を敵視するのか。
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新共同 | 68篇17節 峰を連ねた山よ、なぜ、うかがうのか 神が愛して御自分の座と定められた山を 主が永遠にお住みになる所を。
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68篇17節神の戰車は*よろづに萬をかさね、千々に千々を加ふ、主その中に《います、その有様はさながら聖きシナイなり。》【いませり、聖所にいますがごとくシナイの山にいまししがごとし】
文語訳 | 68篇17節 神の戰車はよろづに萬をかさね千にちぢをくはふ 主その中にいませり 聖所にいますがごとくシナイの山にいまししがごとし
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口語訳 | 68篇17節 主は神のいくさ車幾千万をもって、シナイから聖所に来られた。
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関根訳 | 68篇18節 ヤハヴェの戦車は幾千万。主はシナイから聖所に来られた。
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新共同 |
68篇18節
神の戦車は幾千、幾万 主はそのただ中にいます。シナイの神は聖所にいます。
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補註
「萬に萬を云々」は原語「萬の二倍、千の反覆」。
*68篇18節なんぢ高き處にのぼり、天の栄光の中に入り給い虜者をとりこにしてひきゐ、多くの者を御許に服わせ給い、禮物を人のなかよりも叛逆者のなかよりも受たまへり、かくして万民を征服し終りてヤハの神ここに住たまはん爲なり。パウロはエペソ4:8に本節を引用しキリストの復活と聖霊の賜物の説明とした。
文語訳 | 68篇18節 なんぢ高處にのぼり虜者をとりこにしてひきゐ禮物を人のなかよりも叛逆者のなかよりも受けたまへり ヤハの神ここに住みたまはんが爲なり
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口語訳 | 68篇18節 あなたはとりこを率い、人々のうちから、またそむく者のうちから贈り物をうけて、高い山に登られた。主なる神がそこに住まわれるためである。
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関根訳 | 68篇19節 あなたは高き所に上られ、虜をひきい人々から贈り物を受けられた。・・・・・・・・・・・・
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新共同 | 68篇19節 主よ、神よ あなたは高い天に上り、人々をとりことし 人々を貢ぎ物として取り、背く者も取られる。彼らはそこに住み着かせられる。
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補註
難解の句、パウロがエペソ4:8に引用せるもの。なお、「禮物を人のなかより受けたまへり、ヤハの神、叛逆者と共に住み給わん為なり」とも読む。
〔3〕現在及将来におけるエホバの支配の完成(19−35)
68篇19節日々にわれらの荷をおひたまふ主、われらの救ひの神はほむべきかな。彼は一日たりとも我らの重荷を負ひ給わざるなし。かくして最後の勝利の日に及ばん。セラ。
文語訳 | 68篇19節 日々にわれらの荷をおひたまふ主われらのすくひの神はほむべきかな セラ
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口語訳 | 68篇19節 日々にわれらの荷を負われる主はほむべきかな。神はわれらの救である。[セラ
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関根訳 | 68篇20節 日毎にわれらのために重荷を負われる主はほむべきかな。神はわれらの救いである。セラ
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新共同 | 68篇20節 主をたたえよ 日々、わたしたちを担い、救われる神を。〔セラ
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68篇20節神は《我らの數々の救の》【しばしばわれらを助けたまへる】神なり、死よりのがれうるは主エホバに由る。エホバなくして我らの救はなし。
文語訳 | 68篇20節 神はしばしばわれらを助けたまへる神なり 死よりのがれうるは主ヱホバに由る
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口語訳 | 68篇20節 われらの神は救の神である。死からのがれ得るのは主なる神による。
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関根訳 | 68篇21節 神はわれらにとって多くの救いの神、死よりも逃れうるのは主ヤハヴェによる。
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新共同 | 68篇21節 この神はわたしたちの神、救いの御業の神 主、死から解き放つ神。
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68篇21節(實に)神はその仇の頭《と愆のなかに歩むものの*髪おほき顱頂とを撃ちやぶり給ふ。》【を撃やぶりたまはん、愆のなかにとどまるものの髪おほき顱頂をうちやぶりたまはん】
文語訳 | 68篇21節 神はその仇のかうべを撃ちやぶりたまはん 愆のなかにとどまるものの髪おほき顱頂をうちやぶりたまはん
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口語訳 | 68篇21節 神はその敵のこうべを打ち砕き、おのがとがの中に歩む者の毛深い頭のいただきを打ち砕かれる。
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関根訳 | 68篇22節 げにヤハヴェはその敵の頭を砕かれる、罪の中を歩む者の毛深い脳天を。
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新共同 | 68篇22節 神は必ず御自分の敵の頭を打ち 咎のうちに歩み続ける者の 髪に覆われた頭を打たれる。
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補註
「髪おほき顱頂」は戦場にある兵士の頭を指す。ここでは敵の兵士を意味す。
68篇22節主いへらく我バシャンより〔かれらを〕携へかへり、海のふかき所よりたづさへ歸らん。たとい敵は如何なる山奥如何なる海底に逃るるとも主は必ず彼らを携え帰りてこれに報を与え給う。
文語訳 | 68篇22節 主いへらく我バシャンよりかれらを携へかへり海のふかき所よりたづさへ歸らん
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口語訳 | 68篇22節 主は言われた、「わたしはバシャンから彼らを携え帰り、海の深い所から彼らを携え帰る。
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関根訳 | 68篇23節
主は言われた、蛇の山からわたしは連れ戻す、海の深みからわたしは連れ戻す。
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新共同 | 68篇23節 主は言われる。「バシャンの山からわたしは連れ帰ろう。海の深い底から連れ帰ろう。
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68篇23節斯くてなんぢの足を〔そのあたの〕血にひたし、《なんぢの犬の舌、汝の仇よりその分を得ん。》【之をなんぢの犬の舌になめしめん】敵は完全に戮り尽されて、犬すらもこれをその餌とするに至らん。
文語訳 | 68篇23節 斯てなんぢの足をそのあたの血にひたし之をなんぢの犬の舌になめしめん
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口語訳 | 68篇23節 あなたはその足を彼らの血に浸し、あなたの犬の舌はその分け前を敵から得るであろう」と。
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関根訳 | 68篇24節 君の足が彼らの血で洗われ君の犬の舌が分け前を敵から得られるように。
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新共同 | 68篇24節 あなたは敵を打って足をその血に浸し あなたの犬も分け前として敵の血に舌を浸す。」
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68篇24節かくして神は凡ての敵を打破りてその聖所に入り給う。神よ、《人はなんぢの行幸》【すべての人はなんぢの進み行きたまふ】を見たり、わが神わが王の聖所に《入りたまふ行幸なり。》【すすみゆきたまふを見たり】
文語訳 | 68篇24節 神よすべての人はなんぢの進行きたまふをみたり わが神わが王の聖所にすすみゆきたまふを見たり
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口語訳 | 68篇24節 神よ、人々はあなたのこうごうしい行列を見た。わが神、わが王の、聖所に進み行かれるのを見た。
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関根訳 | 68篇25節 ヤハヴェよ、人々はあなたの行進を見た、わが神、わが王が聖所へと行進されるのを。
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新共同 | 68篇25節 神よ、あなたの行進が見える。わたしの神、わたしの王は聖所に行進される。
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68篇25節この聖所への神の行幸を祝いよろこびて【皷うつ童女のなかにありて】謳ふものは前にゆき、琴ひくものは後に《したがひ、*皷うつ童女は眞中にあり。》【したがへり】
文語訳 | 68篇25節 鼗うつ童女のなかにありて謳ふものは前にゆき琴ひくものは後にしたがへり
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口語訳 | 68篇25節 歌う者は前に行き、琴をひく者はあとになり、おとめらはその間にあって手鼓を打って言う、
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関根訳 | 68篇26節 歌うたう者は先立ち、琴をひく者は殿となり鼓をとる乙女らは真中を行く。
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新共同 | 68篇26節 歌い手を先頭に、続いて楽を奏する者 おとめらの中には太鼓を打つ者。
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補註
「鼓」はタンブーリン。童女が両端にいたと見るよりも中央にいたと見るべく、母音符を変更して私訳の如くに読む(グンケル)。
68篇26節この奉祝の楽隊につれてなんぢら〔すべての〕(公)會にて神をほめよ、イスラエルの源より出づるものなるなんぢらイスラエルの民よ、主をほめまつれ。
文語訳 | 68篇26節 なんぢらすべての會にて神をほめよ イスラエルのみなもとより出づるなんぢらよ主をほめまつれ
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口語訳 | 68篇26節 「大いなる集会で神をほめよ。イスラエルの源から出た者よ、主をほめまつれ」と。
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関根訳 | 68篇27節 集いの中でヤハヴェをたたえよ、ヤハヴェをイスラエルの群れの中から。
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新共同 | 68篇27節 聖歌隊によって神をたたえよ イスラエルの源からの主を。
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68篇27節このつどいを見わたすに彼處にかれらの首脳者としてこれを統ぶる年若きベニヤミンあり、ユダの諸侯とその群衆とあり、南方において代表的なる種族なり。また北方においてはゼブルンの諸侯、ナフタリの諸侯あり。全イスラエルはこのエホバの勝利を祝しつつあり。
文語訳 | 68篇27節 彼處にかれらを統ぶるとしわかきベニヤミンあり ユダの諸侯とその群衆とありまたゼブルンのきみたちナフタリの諸侯あり
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口語訳 | 68篇27節 そこに彼らを導く年若いベニヤミンがおり、その群れの中にユダの君たちがおり、ゼブルンの君たち、ナフタリの君たちがいる。
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関根訳 |
68篇28節 かしこにベニヤミンあり、年若くして率いユダの君候たちは多くの群衆の中にありゼブロンの君候たち、ナフタリの君候たちもいる。
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新共同 | 68篇28節 若いベニヤミンがそこで彼らを統率する。ユダの君侯らは彼らの指導者 ゼブルンの君侯ら、ナフタリの君侯らもいる。
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68篇28節なんぢの神はイスラエルをして全世界を支配せんが為になんぢの力を《統べ》【たて】たまへり。イスラエルの使命はかくして神より出づ、神よ、なんぢ我らのためになしたまひしことを《強くしたまへ。》【かたくし給ヘ】
文語訳 | 68篇28節 なんぢの神はなんぢの力をたてたまへり神よなんぢ我儕のためになしたまひし事をかたくしたまへ
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口語訳 | 68篇28節 神よ、あなたの大能を奮い起してください。われらのために事をなされた神よ、あなたの力をお示しください。
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関根訳 | 68篇29節 ヤハヴェよ、あなたの力を奮い起こし、ヤハヴェよ、あなたがわれらのために建てられたものを強め給え。
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新共同 | 68篇29節 あなたの神は命じられる あなたが力を帯びることを。神よ、力を振るってください わたしたちのために行動を起こしてください。
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68篇29節ヱルサレムなるなんぢの宮の《ゆゑに》【ために】世界の諸国の王たちは汝にまつろう証拠としてなんぢに禮物をささげん。
文語訳 | 68篇29節 エルサレムなるなんぢの宮のために列王なんぢに禮物をささげん
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口語訳 | 68篇29節 エルサレムにあるあなたの宮のために、王たちはあなたに贈り物をささげるでしょう。
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関根訳 | 68篇30節 いと高き者よ、エルサレムはあなたの宮、王たちはあなたのもとに贈り物をもたらす。
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新共同 | 68篇30節 あなたの神殿からエルサレムの上に。あなたのもとに王たちは献げ物を携えて来ます。
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68篇30節ねがはくは葦間の獣なる河馬また鰐の如き、またむらがれる牡牛、小牛のごとき〔もろもろの〕民(ら)即ちエジプトの如きまたその他の異邦人のごとき民をいましめてかれらに白銀をたづさへ來り、《服はしめたまへ、》【自ら服(まつろ)ふことを為しめたまへ】、神はたたかひを好む〔もろもろの〕民(ら)をちらしたまへり。
文語訳 | 68篇30節 ねがはくは葦間の獸むらがれる粘犢のごときもろもろの民をいましめてかれらに白銀をたつさへきたり みづから服ふことを爲しめたまへ 神はたたかひを好むもろもろの民をちらしたまへり
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口語訳 | 68篇30節 葦の中に住む獣、もろもろの民の子牛を率いる雄牛の群れをいましめてください。みつぎ物をむさぼる者たちを足の下に踏みつけ、戦いを好むもろもろの民を散らしてください。
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関根訳 | 68篇31節 葦の茂みにすむ獣をこらし給え、雄牛とその子らの群を。彼らは銀を求めて諸国民をふみにじり戦いを好んで諸国民を散らした。
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新共同 | 68篇31節 叱咤してください、葦の茂みに住む獣を 諸国の民を子牛のように伴う猛牛の一群を 銀の品々を踏みにじるものを。闘いを望む国々の民を散らしてください。
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68篇31節かくして何れの処にも神に敵する者は一人もなく諸侯はエジプトよりきたりて降を乞いエテオピアはあわただしく神にむかひて手をのべてその服従の意思を表示せん。
文語訳 | 68篇31節 諸侯はエジプトよりきたり エテオピアはあわただしく神にむかひて手をのべん
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口語訳 | 68篇31節 青銅をエジプトから持ちきたらせ、エチオピヤには急いでその手を神に伸べさせてください。
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関根訳 | 68篇32節 エジプトの商人は青い布をもたらし、クシはその手の工をヤハヴェにささげる。
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新共同 | 68篇32節 エジプトから青銅の品々が到来し クシュは、神に向かって手を伸べる。
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68篇32節地の〔もろもろの〕《王國》【くに】よ、《神に向ひて讃美し、》【神のまへにうたへ】主をほめうたへ。全世界はかくしてエホバを讃めたたうるに至らん。セラ。
文語訳 | 68篇32節 地のもろもろのくによ 神のまへにうたへ主をほめうたへ セラ
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口語訳 | 68篇32節 地のもろもろの国よ、神にむかって歌え、主をほめうたえ。[セラ
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関根訳 | 68篇33節 地のもろもろの王国よ、ヤハヴェに向かって歌え、主をほめうたえ、セラ
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新共同 | 68篇33節
地の王国よ、共に神に向かって歌い 主にほめ歌をうたえ〔セラ
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68篇33節かくして神は諸天の上にのぼり給う。この《古き》【上古よりの】天の天にのりたま者にむかひて〔うたへ、〕みよ、主はみこゑを發したまふ、《力》【勢力】ある御聲《なり。》【をいだしたまふ】この力ある御声を以て全世界に命令し全世界を統べ給う。
文語訳 | 68篇33節 上古よりの天の天にのりたまふ者にむかひてうたへ みよ主はみこゑを發したまふ勢力ある聲をいだしたまふ
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口語訳 | 68篇33節 いにしえからの天の天に乗られる主にむかってほめうたえ。見よ、主はみ声を出し、力あるみ声を出される。
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関根訳 | 68篇34節 天を乗り行く者。原初の天を乗り行く者を。見よ、彼はそのみ声、力あるみ声を上げられる。
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新共同 | 68篇34節 いにしえよりの高い天を駆って進む方に。神は御声を、力強い御声を発せられる。
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68篇34節なんぢらちからを神に歸せよ、神より外にこの力を帯ぶる者なし。その稜威はイスラエルの上にとどまり、その大能は雲のなかにあり。かくして神はイスラエルを祝し全世界を統治め給う。
文語訳 | 68篇34節 なんぢらちからを神に歸せよ その稜威はイスラエルの上にとどまり その大能は雲のなかにあり
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口語訳 | 68篇34節 力を神に帰せよ。その威光はイスラエルの上にあり、その力は雲の中にある。
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関根訳 | 68篇35節 力をヤハヴェに帰せよ、イスラエルのいと高き者に。その威厳とその力は雲の中にある。
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新共同 | 68篇35節 力を神に帰せよ。神の威光はイスラエルの上にあり 神の威力は雲の彼方にある。
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68篇35節神は聖所にありて恐るべきかな、》【神のおそるべき状はきよき所よりあらはる】イスラエルの神(かれこそ)はその民にちからと勢力とをあたへたまふ、神はほむべきかな。
文語訳 | 68篇35節 神のおそるべき状はきよき所よりあらはる イスラエルの神はその民にちからと勢力とをあたへたまふ 神はほむべきかな
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口語訳 | 68篇35節 神はその聖所で恐るべく、イスラエルの神はその民に力と勢いとを与えられる。神はほむべきかな。
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関根訳 | 68篇36節 ヤハヴェはその聖所の故に恐るべくげにイスラエルの神こそ民に力と勝利とを与えられる。ヤハヴェはほむべきかな。
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新共同 | 68篇36節 神よ、あなたは聖所にいまし、恐るべき方。イスラエルの神は御自分の民に力と権威を賜る。神をたたえよ。
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