黒崎幸吉著 旧約聖書略註 Web版 詩篇





詩篇 第73篇

関根訳近き神

文語訳( )アサフのうた
口語訳アサフの歌

ヨブ記の中心問題と同一の問題ではあるがその反対の方面すなわち不義者が栄え誇っていることに対する義者のなやみとその解決とを歌えるものが本篇である。個人の問題として歌われているけれども、イスラエルにとりては国民的問題であるともいうことができる。而してこの問題の解決は神との霊交が、至高善である点を悟ることによりて与えられたのであった。1−11節は不義者の倨傲なる態度とその栄華とを録し、12−17節はこれに対する自己の疑惑を述べ、18−28節は解決を示す。難解の箇所多く、私訳は多くの学者の一致する修正を原文に施したるものによれる場合多し。


〔1〕不義者の栄華(1−11)
73篇1節《まことに》(かみ)その民選び潔め給えるイスラエルにむかひ、(こゝろ)のきよきものに(むか)ひて【まことに】(めぐみ)あり。この古来信ぜられし真理を予は毫も疑わんとするものにあらず。

文語訳73篇1節 (かみ)はイスラエルにむかひ(こころ)のきよきものに(むか)ひてまことに(めぐみ)あり
口語訳73篇1節 神は正しい者にむかい、心の清い者にむかって、まことに恵みふかい。
関根訳73篇1節 アサフの歌。神は直き者に向かってげに恵み深く、ヤヴェは心清き者に向かっていつくしみ深い。
新共同73篇1節 【賛歌。アサフの詩。】神はイスラエルに対して 心の清い人に対して、恵み深い。


73篇2節(しか)はあれど、われはこの真理を確く信じて立つこと能わずしてわが(あし)《よろめく》【つまつく】ばかり、わが(あゆ)みすべるばかりにてありき。

文語訳73篇2節 (しか)はあれどわれはわが(あし)つまづくばかりわが(あゆみ)すべるばかりにてありき
口語訳73篇2節 しかし、わたしは、わたしの足がつまずくばかり、わたしの歩みがすべるばかりであった。
関根訳73篇2節 しかしわたしは―わが足ほとんど(つまず)くばかりわが歩み正に顚倒(てんとう)せんばかりであった。
新共同73篇2節 それなのにわたしは、あやうく足を滑らせ 一歩一歩を踏み誤りそうになっていた。


73篇3節こはわれ()しきものの平和の中に(さか)ゆるを()てその(ほこ)〔れ〕る(もの)をねたみしによる。嫉みは人の心を不安ならしむ、また不義者は決してこれを嫉むべきではない(37:1。箴言3:31。23:17。24:1、19)。

文語訳73篇3節 こはわれ()しきものの(さか)ゆるを()てその(ほこ)れる(もの)をねたみしによる
口語訳73篇3節 これはわたしが、悪しき者の栄えるのを見て、その高ぶる者をねたんだからである。
関根訳73篇3節 何故ならわたしは悪しき者の幸福なのを見て、不義をなす者をねたんだからである。
新共同73篇3節 神に逆らう者の安泰を見て わたしは驕る者をうらやんだ。


73篇4節*そはかれらに(くる)しみなくその()(つよ)(すこや)かなればなり。》【かれらは死ぬるに苦しみなくそのちからは反りてかたし】彼らは息災延命、悪しき者に相応しからざる有様である。これを見て我が心は嫉に燃えざるを得なかった。

文語訳73篇4節 かれらは()ぬるに(くる)しみなくそのちからは(かへ)りてかたし
口語訳73篇4節 彼らには苦しみがなく、その身はすこやかで、つやがあり、
関根訳73篇4節 何故なら彼らには悩みもなく健康でその身体(からだ)は肥えふとっている。
新共同73篇4節 死ぬまで彼らは苦しみを知らず からだも肥えている。


補註
「死ぬるに」と訳されたる一字を二語に分割すれば私訳の如き意味となる。本節に「死」につき述ぶるは不適当であるので多くの学者の採用する修正である。


73篇5節かれらは世の恒の(ひと)のごとく(うれひ)にをらず極めて楽しくその日を送り、(ひと)《と(とも)に》【のごとく】患難(なやみ)にあふことなし。不思議にも悪しき者は却って患難を免る。

文語訳73篇5節 かれらは(ひと)のごとく(うれひ)にをらず(ひと)のごとく患難(なやみ)にあふことなし
口語訳73篇5節 ほかの人々のように悩むことがなく、ほかの人々のように打たれることはない。
関根訳73篇5節 世の人の負う重荷もなく他の人のように苦しみにあうこともない。。
新共同73篇5節 だれにもある労苦すら彼らにはない。だれもがかかる病も彼らには触れない。


73篇6節このゆゑに傲慢(たかぶり)は《かれらの首飾(くびかざり)となり、》【妝飾のごとくその頸をめぐり】強暴(あらび)はころものごとく彼等(かれら)をおほへり。倨傲と暴力は悪しき者の常態である。

文語訳73篇6節 このゆゑに傲慢(たかぶり)妝飾(かざり)のごとくその(くび)をめぐり強暴(あらび)はころものごとく彼等(かれら)をおほへり
口語訳73篇6節 それゆえ高慢は彼らの首飾となり、暴力は衣のように彼らをおおっている。
関根訳73篇6節 それ故高ぶりは彼らの首飾りであり暴逆は衣のように彼らをおおう。
新共同73篇6節 傲慢は首飾りとなり 不法は衣となって彼らを包む。


補註
「首飾」原語「鎖を巻くこと」鎖は装飾として用いられた。


*73篇7節脂肥(あぶらぶと)り〔の(こゝろ)〕よりかれらの(つみ)(ほとばし)()で、その罪深き(こゝろ)(おもひ)外部に向って(あふ)るゝなり。》【かれら肥えふとりてその目とびいで心の欲にまさりて物をうるなり】

文語訳73篇7節 かれら()えふとりてその()とびいで(こころ)(ねがひ)にまさりて(もの)をうるなり
口語訳73篇7節 彼らは肥え太って、その目はとびいで、その心は愚かな思いに満ちあふれている。
関根訳73篇7節 その眼は脂肪のためにとび出しその心は悪い計画(くわだて)で一杯である。
新共同73篇7節 目は脂肪の中から見まわし 心には悪だくみが溢れる。


補註
前半の私訳は「彼らの眼」のヨツドをワウに修正したる場合、七十人訳はこの読み方をとる。


73篇8節《かれらは》【また】嘲笑(あざけり)をなして善良なる者を弄び、惡意(あくい)をもて(かた)て人を誹謗することを喜び、暴虐(しへたげ)行いながらこれを(たか)(ところ)より誇り顔に(かた)る。》【惡をもて暴虐のことばをいだし高ぶりてものいふ】

文語訳73篇8節 また嘲笑(あざけり)をなし(あく)をもて暴虐(しへたげ)のことばをいだし(たか)ぶりてものいふ
口語訳73篇8節 彼らはあざけり、悪意をもって語り、高ぶって、しえたげを語る。
関根訳73篇8節 彼らはあざけり、悪口をいい、曲がったことを高びしゃに語る。
新共同73篇8節 彼らは侮り、災いをもたらそうと定め 高く構え、暴力を振るおうと定める。


73篇9節その(くち)(てん)におきてあたかも自ら神なるかの如くに語り、その(した)()にあまねく()かしめて全地をその命の下に服せしむ。

文語訳73篇9節 その(くち)(てん)におき その(した)()にあまねく()かしむ
口語訳73篇9節 彼らはその口を天にさからって置き、その舌は地をあるきまわる。
関根訳73篇9節 彼らはその口を天に置きその舌は地をはいまわる。
新共同73篇9節 口を天に置き 舌は地を行く。


73篇10節()(ゆゑ)にかれの(たみ)即ち悪しき者に従うものはここにかへりて彼の許に集り、その罪の(みづ)のみちたる〔(さかづき)〕を《のみほす》【しぼりいだして】彼らは彼の罪に等しき罪をことごとく自ら行う。

文語訳73篇10節 このゆゑにかれの(たみ)はこゝにかへり(みづ)のみちたる(さかづき)をしぼりいだして
口語訳73篇10節 それゆえ民は心を変えて彼らをほめたたえ、彼らのうちにあやまちを認めない。
関根訳73篇10節 それ故民は彼らにたより、その言葉をそのまま受け入れる。
新共同73篇10節 (民がここに戻っても 水を見つけることはできないであろう。)


73篇11節《かくしていふ》【いへらく】『(エル)いかで()りたまはんや、至上者(いとたかきもの)知識(さとり)あらんや』と。彼らは神を無視してその悪に耽る。

文語訳73篇11節 いへらく(かみ)いかで()りたまはんや 至上者(いとたかきもの)知識(さとり)あらんやと
口語訳73篇11節 彼らは言う、「神はどうして知り得ようか、いと高き者に知識があろうか」と。
関根訳73篇11節 彼らは言う、「神は知りはしない、いと高き者に知識があろうか」と。
新共同73篇11節 そして彼らは言う。「神が何を知っていようか。いと高き神にどのような知識があろうか。」


〔2〕我がなやみ(12−17)
73篇12節()よ、かれらは()しきものなるに神はその悪を審き給うことなきものの如く(つね)にやすらかにしてその(とみ)ましくははれり。

文語訳73篇12節 ()よかれらは()しきものなるに(つね)にやすらかにしてその(とみ)ましくはゝれり
口語訳73篇12節 見よ、これらは悪しき者であるのに、常に安らかで、その富が増し加わる。
関根訳73篇12節 みよ、これが悪しき者たちである、いつも幸福で、ますます盛んになる。
新共同73篇12節 見よ、これが神に逆らう者。とこしえに安穏で、財をなしていく。


73篇13節あたかもその正反対に(まこと)(われ)はいたづらに(こゝろ)をきよめ、その結果何の得る処もなく(つみ)ををかさずして神を礼拝せんが為に()をあらひたり。かくして我は神の前に義しからんことを切に求めたりき。

文語訳73篇13節 (まこと)(われ)はいたづらに(こころ)をきよめ(つみ)ををかさずして()をあらひたり
口語訳73篇13節 まことに、わたしはいたずらに心をきよめ、罪を犯すことなく手を洗った。
関根訳73篇13節 わたしはやはり無駄に心を清め、罪を離れて手を洗ったのだ。
新共同73篇13節 わたしは心を清く保ち 手を洗って潔白を示したが、むなしかった。


補註
「手を洗ふ」は礼拝の時の潔の式を指す。


73篇14節(しか)も》【そは】われ終日(ひねもす)なやみにあひ、(あさ)ごとに(せめ)を《うけたり。》【うけしなり】

文語訳73篇14節 それわれ終日(ひねもす)なやみにあひ(あさ)ごとに(せめ)をうけしなり
口語訳73篇14節 わたしはひねもす打たれ、朝ごとに懲らしめをうけた。
関根訳73篇14節 わたしは終日悩み朝毎にこらしめられている。
新共同73篇14節 日ごと、わたしは病に打たれ 朝ごとに懲らしめを受ける。


73篇15節われもし以上の如き事実をあげてかかることを()べんといひしならば、これはまことに不信の態度であって、(われ)なんぢエホバの神子等(こら)()を《裏切(うらぎ)りしならん。》【あやまらせしならん】それ故にこれを口に出して語ること能わず。

文語訳73篇15節 われもし(かか)ることを()べんといひしならば(われ)なんぢが子輩(こら)()をあやまらせしならん
口語訳73篇15節 もしわたしが「このような事を語ろう」と言ったなら、わたしはあなたの子らの代を誤らせたであろう。
関根訳73篇15節 わたしもかの者たちと同じことを言うとすればあなたの子らの世を誤らせることになる。
新共同73篇15節 「彼らのように語ろう」と望んだなら 見よ、あなたの子らの代を 裏切ることになっていたであろう。


73篇16節かくてわれ《これを》【これらの道理を】()らんとして(おも)ひめぐらししに、《この(こと)()()苦痛(くつう)なりき。》【わが眼いたく痛みたり】この世の不義と矛盾とが我が前に展開したればなり。

文語訳73篇16節 われこれらの道理(ことはり)をしらんとして(おも)ひめぐらしゝにわが()いたく(いた)みたり
口語訳73篇16節 しかし、わたしがこれを知ろうと思いめぐらしたとき、これはわたしにめんどうな仕事のように思われた。
関根訳73篇16節 わたしはこれを理解しようと考えたがそれは困難なことに思われた。
新共同73篇16節 わたしの目に労苦と映ることの意味を 知りたいと思い計り


73篇17節われこの痛みをいだきて(エル)聖所(せいじよ)にゆきてそこにて神の前に祈りつゝかれら悪しき者結局(いやはて)の如何になり行くかをふかく(おも)へるまでは〔(しか)りき。〕そこにて我はついに彼らの運命の如何を明かに示さるゝに至れり。

文語訳73篇17節 われ(かみ)聖所(せいじよ)にゆきてかれらの結局(いやはて)をふかく(おも)へるまでは(しか)りき
口語訳73篇17節 わたしが神の聖所に行って、彼らの最後を悟り得たまではそうであった。
関根訳73篇17節 神の奥義に立ち入り、彼らの終わりが何であるか、悟るまでは。
新共同73篇17節 ついに、わたしは神の聖所を訪れ 彼らの行く末を見分けた


〔3〕矛盾の解決(18−28)
73篇18節(まこと)になんぢは(かれ)らを(なめら)かなる辷り易きところにおき、今は滑かなる幸福に酔わしめて、ついにかれらを滅亡(ほろび)におとしいれ(たま)ふ、栄華に酔える不義の生活の中に明かに破滅の相を見ることができる。

文語訳73篇18節 (まこと)になんぢはかれらを(なめら)かなるところにおき かれらを滅亡(ほろび)におとしいれ(たま)
口語訳73篇18節 まことにあなたは彼らをなめらかな所に置き、彼らを滅びに陥らせられる。
関根訳73篇18節 まことにあなたは彼らを危うい所におき彼らをたおして滅びにゆだねる。
新共同73篇18節 あなたが滑りやすい道を彼らに対して備え 彼らを迷いに落とされるのを


73篇19節(あゝ)かれらは瞬間(またたくひま)にやぶれ〔たるかな〕《(こと)(おは)り、(おそれ)のゆゑに()()てたり。》【彼らは恐怖をもてことごとく滅びたり】

文語訳73篇19節 かれらは瞬聞(またたくひま)にやぶれたるかな 彼等(かれら)恐怖(おそれ)をもてことごとく(ほろ)びたり
口語訳73篇19節 なんと彼らはまたたくまに滅ぼされ、恐れをもって全く一掃されたことであろう。
関根訳73篇19節 なんと突然彼らは(ほろ)ぼされ驚いたことに、消え失せてしまったか。
新共同73篇19節 彼らを一瞬のうちに荒廃に落とし 災難によって滅ぼし尽くされるのを


73篇20節(しゆ)よ、《目覺(めさ)めし(のち)(ゆめ)のごとく、(なんぢ)()きたまふ(とき)かれらあしき者姿(すがた)夢の如きはかなきものとしてかろしめたまはん。》【なんぢ目をさましてかれらが像をかろしめたまはんときは、夢みし人の目さめたるがごとし】

文語訳73篇20節 (しゆ)よなんぢ()をさましてかれらが(ざう)をかろしめたまはんときは(ゆめ)みし(ひと)()さめたるがごとし
口語訳73篇20節 あなたが目をさまして彼らの影をかろしめられるとき、彼らは夢みた人の目をさました時のようである。
関根訳73篇20節 目が覚めた時夢が過ぎさり、見たものを人が軽んずるように。
新共同73篇20節 わが主よ、あなたが目覚め 眠りから覚めた人が夢を侮るように 彼らの偶像を侮られるのを。


73篇21節かゝる事実を示されつゝも(もし)わが(こゝろ)(くるし)くなり》【はうれへ】わが(むらと)はさゝれ《なば、》【たり】

文語訳73篇21節 わが(こころ)はうれへ わが(むらと)はさゝれたり
口語訳73篇21節 わたしの魂が痛み、わたしの心が刺されたとき、
関根訳73篇21節 わたしの心が思い乱れ胸中で色々に思い悩んだ時
新共同73篇21節 わたしは心が騒ぎ はらわたの裂ける思いがする。


73篇22節われはおろかにして悟覺(さとり)《なく》【なし】聖前(みまへ)にありて(けもの)に《()ぎず。》【ひとしかりき】

文語訳73篇22節 われおろかにして知覺(さとり)なし聖前(みまへ)にありて(けもの)にひとしかりき
口語訳73篇22節 わたしは愚かで悟りがなく、あなたに対しては獣のようであった。
関根訳73篇22節 わたしは悟りなき愚かな者、あなたのみ前で獣のようであった。
新共同73篇22節 わたしは愚かで知識がなく あなたに対して獣のようにふるまっていた。


73篇23節されど幸福なるかな(われ)は信仰によりてつねになんぢとともにあり、(なんぢ)わが右手(みぎのて)をたもち我を支えわれを導きたまへり。

文語訳73篇23節 されど(われ)つねになんぢとともにあり (なんぢ)わが右手(みぎのて)をたもちたまへり
口語訳73篇23節 けれどもわたしは常にあなたと共にあり、あなたはわたしの右の手を保たれる。
関根訳73篇23節 しかし私は常にあなたと共にあり、あなたはわが右の手をかたく取られる。
新共同73篇23節 あなたがわたしの右の手を取ってくださるので 常にわたしは御もとにとどまることができる。


73篇24節なんぢその訓論(さとし)をもて(われ)をみちびき、(のち)〔また〕われを〔うけて〕*榮光(さかえ)(うち)()れたまはん。悪しき者とは正反対に、彼らは滅亡に我は栄光に入るに至らん。

文語訳73篇24節 なんぢその訓諭(さとし)をもて(われ)をみちびき(のち)またわれをうけて榮光(さかえ)のうちに()れたまはん
口語訳73篇24節 あなたはさとしをもってわたしを導き、その後わたしを受けて栄光にあずからせられる。
関根訳73篇24節 あなたの計画(はかりごと)のままにあなたはわたしを導き、その後―栄光の中にわたしを受け給う。
新共同73篇24節 あなたは御計らいに従ってわたしを導き 後には栄光のうちにわたしを取られるであろう。


補註
「栄光」は死後の世界の栄光を指したのではない、旧約時代に新約的のこの思想は無かった。しかしこの思想の萌芽をここに見ることができる。


73篇25節(なんぢ)のほかに〕(われ)たれをか(てん)にもたん、天に在すものは唯汝のみ、我唯汝のみを仰ぎ見ん。()には(なんぢ)(ほか)にわが(した)ふものなし。富も栄華も権力も我において何かあらん。

文語訳73篇25節 (なんぢ)のほかに(われ)たれをか(てん)にもたん ()にはなんぢの(ほか)にわが(した)ふものなし
口語訳73篇25節 わたしはあなたのほかに、だれを天にもち得よう。地にはあなたのほかに慕うものはない。
関根訳73篇25節 わたしにとってあなたの他に天には誰もなく地にはあなたを離れてわたしの慕う者はない。
新共同73篇25節 地上であなたを愛していなければ 天で誰がわたしを助けてくれようか。


*73篇26節わが地上における肉の()とわが(こゝろ)とは《おとろへうせん》【おとろふ】されど(かみ)はわが(こゝろ)(いは)にして堅くわが心を支えわがとこしへの嗣業(ゆづり)また分け前にしてとこしえに保つことを得るなり。

文語訳73篇26節 わが()とわが(こころ)とはおとろふ されど(かみ)はわがこゝろの(いは)わがとこしへの嗣業(ゆづり)なり
口語訳73篇26節 わが身とわが心とは衰える。しかし神はとこしえにわが心の力、わが嗣業である。
関根訳73篇26節 わが肉とわが心は衰える、しかし神はいつまでもわが岩、わが生命である。
新共同73篇26節 わたしの肉もわたしの心も朽ちるであろうが 神はとこしえにわたしの心の岩 わたしに与えられた分。


補註
本節も24節と同様なり。


73篇27節()よ、なんぢに(とほ)きもの汝を信ぜず汝に背くものたとい今は栄え居るとも後には必ず審きをうけて(ほろ)びん、なんぢをはなれ汝に背きあだし神やこの世と姦淫(たはれ)(おこな)(もの)はみななんぢ(これ)(ほろぼ)(たま)ひたり。このことを知りて我は凡ての矛盾に打勝つことを得たり。

文語訳73篇27節 ()よなんぢに(とほ)きものは(ほろ)びん (なんぢ)をはなれて姦淫(たはれ)をおこなふ(もの)はみななんぢ(これ)をほろぼしたまひたり
口語訳73篇27節 見よ、あなたに遠い者は滅びる。あなたは、あなたにそむく者を滅ぼされる。
関根訳73篇27節 まことにみよ、あなたに遠い者は滅び、あなたから迷い出る者はみなあなたが滅ぼされる。
新共同73篇27節 見よ、あなたを遠ざかる者は滅びる。御もとから迷い去る者をあなたは絶たれる。


73篇28節(われ)()りて)(かみ)にちかづき(まつ)るは〔(われ)に〕よきことなり、われはこの世のあらゆる栄華あらゆる欲望より逃れ(しゆ)エホバを避所(さけどころ)としてそのもろもろの事跡(みわざ)をのべつたへん。

文語訳73篇28節 (かみ)にちかづき(まつ)るは(われ)によきことなり われは(しゆ)ヱホバを避所(さけどころ)としてそのもろもろの事跡(みわざ)をのべつたへん
口語訳73篇28節 しかし神に近くあることはわたしに良いことである。わたしは主なる神をわが避け所として、あなたのもろもろのみわざを宣べ伝えるであろう。
関根訳73篇28節 しかしわたしは―神の近きを喜び、主なるヤヴェに信頼し、そのすべてのみ業を()べ伝える。
新共同73篇28節 わたしは、神に近くあることを幸いとし 主なる神に避けどころを置く。わたしは御業をことごとく語り伝えよう。