黒崎幸吉著 旧約聖書略註 Web版 詩篇





詩篇 第74篇

関根訳民の(なげ)

文語訳( )アサフの教訓(をしへ)のうた
口語訳アサフのマスキールの歌

エルサレムの神殿の掠奪(6節)、その放火(7節)、シオンの荒廃等非常なる国家的国民的苦難廃頽に際し国家を憂うる詩人がエホバに祈り訴えて敵を亡ぼし給わんことを祈願する血涙記である。かゝる国家的苦難はイスラエルの歴史上においては紀元前587年カルデヤ人によりエルサレムが破壊せられその神殿が焼かれ、その中にあるものが掠奪され、人民がバビロンに移されしこと(列王下25:8−17)と、紀元前170−165年にアンテオクス・エピフアネスによるエルサレムの攻略とマカベウスによるその回復の事件との二つを数うることができる。この詩がこの中の何れの場合に作られしものかにつき有力なる学者間に学説一致せず、詩の内容としても、双方に相当の理由と不都合とあり決定することができない。補註に掲ぐる如き理由を評量して考うる場合むしろ586年の事件後、第二イザヤの預言以前に作られしものと見るべきが如くである。1−9節において敵の暴虐を記録してエホバに愁訴し、10−17節において神の無限の力をのべ、18−23節において神の救を信じ求めて神に依り頼む。なお79篇も本篇と同様の場合の詩と見るべきである。


〔1〕神よ何時まで我らを棄て給うや(1−9)
74篇1節(かみ)よ、いかなれば(なんぢ)〔われらを〕かぎりなく()てたまひしや、切に祈れども汝の助は未だ至らざるは何ぞや。奈何(いか)なればなんぢの牧し給う草苑(まき)(ひつじ)なるイスラエルの民にみいかりの火を燃し給い、その(けぶり)あがれるや。

文語訳74篇1節 (かみ)よいかなれば(なんぢ)われらをかぎりなく()てたまひしや 奈何(いかなれ)ばなんぢの草苑(まき)(ひつじ)にみいかりの(けぶり)あがれるや
口語訳74篇1節 神よ、なぜ、われらをとこしえに捨てられるのですか。なぜ、あなたの牧の羊に怒りを燃やされるのですか。
関根訳74篇1節 アサフのマスキールの歌。ヤヴェよ、何故あなたは永遠(とこしえ)にわれらを見棄てあなたの怒りはあなたの牧の羊に向かい燃えるのか。
新共同74篇1節 【マスキール。アサフの詩。】神よ、なぜあなたは 養っておられた羊の群れに怒りの煙をはき 永遠に突き放してしまわれたのですか。


74篇2節ねがはくは往昔(むかし)なんぢが多くの愛の代償を払いて買求(かひもと)め、《嗣業(ゆづり)たるべき一族(いちぞく)》【たまへる公會ゆづりの支派】となさんとて(あがな)ひたまへる《なんぢの公會(こうくわい)》【もの】を《(おぼ)へ》【思ひ出で】たまへ、汝にとりてかくも貴重なる民にてありながら、その現今の姿はまことに見る影だもなきにあらずや。(これ)〔また〕なんぢが()みたまふシオンの(やま)の今日の有様《なり。》【を思ひ出でたまへ】

文語訳74篇2節 ねがはくは往昔(むかし)なんぢが買求(かひもと)めたまへる公會(こうくわい)ゆづりの支派(やから)となさんとて(あがな)ひたまへるものを(おも)ひいでたまへ (また)なんぢが()みたまふシオンの(やま)をおもひいで(たま)
口語訳74篇2節 昔あなたが手に入れられたあなたの公会、すなわち、あなたの嗣業の部族となすためにあがなわれたものを思い出してください。あなたが住まわれたシオンの山を思い出してください。
関根訳74篇2節 思い起こして下さい、昔あなたが買い取られたあなたの(つど)い、嗣業として贖われた族を、あなたが住まわれたこのシオンの山を。
新共同74篇2節 どうか、御心に留めてください すでにいにしえから御自分のものとし 御自分の嗣業の部族として贖われた会衆を あなたのいます所であったこのシオンの山を。


74篇3節*とこしへの滅亡(ほろび)(あと)ともいうべきこのシオンの廃墟にみあしを()けたまへ、(あた)聖所(せいじよ)を冒涜しその中にてもろもろの()しきわざをおこなへり。願わくは来りてその有様を見そなわし給え。

文語訳74篇3節 とこしへの滅亡(ほろぴ)(あと)にみあしを()けたまへ(あた)聖所(せいじよ)にてもろもろの()しきわざをおこなへり
口語訳74篇3節 とこしえの滅びの跡に、あなたの足を向けてください。敵は聖所で、すべての物を破壊しました。
関根訳74篇3節 あなたの歩みをもたげて永遠の廃墟に向けて下さい。敵はあなたの聖所のすべてを壊しました。。
新共同74篇3節 永遠の廃虚となったところに足を向けてください。敵は聖所のすべてに災いをもたらしました。


補註
「とこしへの」、長期に亘る荒廃はマカベウス時代の詩としては不適当なり。


74篇4節なんぢの(てき)はなんぢの《*集會場(つどひば)》【つどひ】なる神の宮のなかにて()えたけび、神の祭壇をこぼちこれに代えて偶像その他のおのが《*(しるし)》【旗】をたてて(しるし)とせり。

文語訳74篇4節 なんぢの(てき)はなんぢの(つどひ)のなかに()えたけびおのが(はた)をたてて(しるし)とせり
口語訳74篇4節 あなたのあだは聖所の中でほえさけび、彼らのしるしを立てて、しるしとしました。
関根訳74篇4節 あなたの敵はあなたの集会の真中でほえたけり、何百というしるしを立てました。
新共同74篇4節 あなたに刃向かう者は、至聖所の中でほえ猛り 自分たちのしるしをしるしとして立てました。


補註
現行訳「集ひ」はまた「集会の場所をも意味し、神の集会場は神の宮、神の幕屋または後に至りては会堂(シナゴグ)をも意味す、8節補註を見よ。「誌」(しるし)は旗か偶像かまたは祭壇など異教を標識とするものならん。この点はマカベウス時代の歴史に合致す。  


74篇5節かれらの神の宮における振舞(はやし)のしげみにて(をの)をあぐる(ひと)(さま)にみゆ。乱暴狼藉たとうるに術なし。

文語訳74篇5節 かれらは(はやし)のしげみにて(をの)をあぐる(ひと)(さま)にみゆ
口語訳74篇5節 彼らは上の入口では、おのをもって木の格子垣を切り倒しました。
関根訳74篇5節 彼らは葉をはらう者のように打ち倒し、(おの)で茂った木を倒すようにしました。
新共同74篇5節 彼らが木の茂みの中を 斧を携えて上るのが見えると


74篇6節あたかも林のしげみにて雑木を伐採することの如く、いま(てをの)(つち)とをもて聖所(せいじよ)をあらし、そのなかなる装飾や祭壇の如き金銀銅を鏤めたる彫刻(ゑりきざ)めるものをことごとく(こぼ)ちおとせり。

文語訳74篇6節 いま(てをの)(つち)とをもて聖所(せいじよ)のなかなる彫刻(ゑりきざ)めるものをことごとく(こぼ)ちおとせり
口語訳74篇6節 また彼らは手おのと鎚とをもって聖所の彫り物をことごとく打ち落しました。
関根訳74篇6節 彼らは戸口をことごとく打ち破り手斧と(つち)で打ちこわし
新共同74篇6節 ただちに手斧、まさかりを振るって 彫り物の飾りをすべて打ち壊し


74篇7節かれらはなんぢの聖所(せいじよ)なるエルサレムの神殿()をかけ、御名(みな)住所(すみか)なる宮をけがしてその栄光を()におとしたり。まことに彼らは赦すべからざることをなせるなり。

文語訳74篇7節 かれらはなんぢの聖所(せいじよ)()をかけ(みな)居所(すみか)をけがして()におとしたり
口語訳74篇7節 彼らはあなたの聖所に火をかけ、み名のすみかをけがして、地に倒しました。
関根訳74篇7節 あなたの聖所に火をはなち、み名の住み給う所をひどくけがしました。
新共同74篇7節 あなたの聖所に火をかけ 御名の置かれた所を地に引き倒して汚しました。


74篇8節かれら(こゝろ)のうちにいふ『われらことごとく(これ)(こぼ)ちあらさん』と。かくて彼らは何の容赦もなく、(くに)(うち)なる(かみ)のもろもろの《*集會場(つどひば)》【會堂】をやきつくせり。

文語訳74篇8節 かれら(こころ)のうちにいぶ われらことごとく(これ)をこぼちあらさんと かくて國内(くにのうち)なる(かみ)のもろもろの會堂(くわいだう)をやきつくせり
口語訳74篇8節 彼らは心のうちに言いました、「われらはことごとくこれを滅ぼそう」と。彼らは国のうちの神の会堂をことごとく焼きました。
関根訳74篇8節 彼らは心のうちに思うには「われらはことごとく滅ぼそう、地にあるすべての神の集会を焼き払おう」と。
新共同74篇8節 「すべて弾圧せねばならない」と心に言って この地にある神の会堂をすべて焼き払いました。


補註
この「會堂」と訳されし原語は4節の「集會場」と同語。もし会堂の意味とすればマカベウス時代と見る方が至当であるけれども詩篇にはシナゴグについて歌えるものなく、また七十人訳もこの説に全く異る訳を為しているのを見る。故にこれをもって直ちにマカベウス時代の詩と断定し得ず。


74篇9節われらの(しるし)なる神の祭壇、その他の宮のもの()えず、最も預言が切実に要求せらるゝ場合であるにもかかわらず、*預言者(よげんしや)(いま)はなし、()くていくその(とき)をかふべき。われらのうちに知るものなし、永遠に絶望のうちに呻吟することは何たる悲しきことであろうか。

文語訳74篇9節 われらの(しるし)はみえず預言者(よげんしや)(いま)はなし(かく)ていくその(とき)をかふべきわれらのうちに()るものなし
口語訳74篇9節 われらは自分たちのしるしを見ません。預言者も今はいません。そしていつまで続くのか、われらのうちには、知る者がありません。
関根訳74篇9節 われらのしるしをわれらは見ず、預言者ももういません。われらの中にそれがいつまでか知る者はないのです。
新共同74篇9節 わたしたちのためのしるしは見えません。今は預言者もいません。いつまで続くのかを知る者もありません。


補註
「預言者なき」時代は普通マカベウス時代を指しているけれども586年前後にもかかる時代ありき。


〔2〕神よ汝は万能に在し給う(10−17)
74篇10節(かみ)よ、(てき)はいくその(とき)をふるまでかゝる冒涜を敢えてして汝をそしるや、(あた)はなんぢの御名(みな)をとこしへに(けが)すならんか。かゝることは有るまじきにあらずや。

文語訳74篇10節 (かみ)(てき)はいくその時をふるまでそしるや(あた)はなんぢの(みな)をとこしへに(けが)すならんか
口語訳74篇10節 神よ、あだはいつまであざけるでしょうか。敵はとこしえにあなたの名をののしるでしょうか。
関根訳74篇10節 ヴェよ、仇はいつまでけがしごとを言うのです。敵は永遠にあなたのみ名をそしるのですか。
新共同74篇10節 神よ、刃向かう者はいつまで嘲るのでしょうか。敵は永久にあなたの御名を侮るのでしょうか。


74篇11節いかなれば(なんぢ)その御手(みて)(みぎ)御手(みて)をひき込めて手出しし給わざるもののごとく振舞いたまふや、(ねが)はくは御手(みて)(ふところ)より(いだ)してかれらを(ほろぼ)したまへ。

文語訳74篇11節 いかなれば(なんぢ)その(みて)みぎの(みて)をひきたまふや ねがはくは(みて)をふところよりいだしてかれらを(ほろ)ぼしたまへ
口語訳74篇11節 なぜあなたは手を引かれるのですか。なぜあなたは右の手をふところに入れておかれるのですか。
関根訳74篇11節 なぜあなたのみ手をひっこめておられるのです。なぜ右のみ手をふところに入れたままなのです。
新共同74篇11節 なぜ、手を引いてしまわれたのですか 右の御手は、ふところに入れられたまま。


74篇12節(かみ)はいにしへよりわが(わう)なり、無力なる偶像にあらず多くのすくひを《()》【世】の(なか)におこなひたまへり。かゝる王にして我らを救いたまわざるは何ぞや。

文語訳74篇12節 (かみ)はいにしへよりわが(わう)なり すくひを()(なか)におこなひたまへり
口語訳74篇12節 神はいにしえからわたしの王であって、救を世の中に行われた。
関根訳74篇12節 しかしヤヴェよ、あなたは昔からのわたしの王、地の真中に救いを行ない給う方です。
新共同74篇12節 しかし神よ、いにしえよりのわたしの王よ この地に救いの御業を果たされる方よ。


74篇13節*なんぢこそ実にその(ちから)をもて(うみ)をわかちて陸地を造り(みづ)のなかなる(たつ)(かうべ)をくだき、

文語訳74篇13節 なんぢその(ちから)をもて(うみ)をわかち(みつ)のなかなる(たつ)(かうべ)をくだき
口語訳74篇13節 あなたはみ力をもって海をわかち、水の上の龍の頭を砕かれた。
関根訳74篇13節 み力をもって海を打たれたのはあなたであり、水の上で竜の頭を砕かれたのはあなたです。
新共同74篇13節 あなたは、御力をもって海を分け 大水の上で竜の頭を砕かれました。


補註
「なんぢ」、14、15、17節とも節の初に「汝」とあり強き語。


74篇14節(わに)のかうべをうちくだき、()にすめる(たみ)にあたへて(しよく)となしたまへり。これと同様に汝は汝に敵するエジプトの民を打ちてこれを野獣の食となし給えり。

文語訳74篇14節 (わに)のかうべをうちくだき()にすめる(たみ)にあたへて(しよく)となしたまへり
口語訳74篇14節 あなたはレビヤタンの頭をくだき、これを野の獣に与えてえじきとされた。
関根訳74篇14節 あなたはレビヤタンの頭を断ち切り、海のふかのための食い物とされました。
新共同74篇14節 レビヤタンの頭を打ち砕き それを砂漠の民の食糧とされたのもあなたです。


74篇15節なんぢは水に対して全き支配権をもち給い、(いづみ)(なが)れとをひらき (また)〔もろもろの〕大河(おほかは)をからしたまへり。

文語訳74篇15節 なんぢは(いつみ)水流(ながれ)とをひらき (また)もろもろの大河(おほかは)をからしたまへり
口語訳74篇15節 あなたは泉と流れとを開き、絶えず流れるもろもろの川をからされた。
関根訳74篇15節 あなたは泉と川とを開き、水のつきない流れをほされた方です。
新共同74篇15節 あなたは、泉や川を開かれましたが 絶えることのない大河の水を涸らされました。


74篇16節(ひる)はなんぢのもの、(よる)又汝(またなんぢ)のものなり、汝は昼をも夜をも支配し給う。なんぢはもろもろの星や月の(ひかり)()とをそなへ、

文語訳74篇16節 (ひる)はなんぢのもの(よる)又汝(またなんぢ)のものなり なんぢは(ひかり)()とをそなヘ
口語訳74篇16節 昼はあなたのもの、夜もまたあなたのもの。あなたは光と太陽とを設けられた。
関根訳74篇16節 昼もあなたのもの、夜もあなたのもの。月と日をも設けられたのはあなたです。
新共同74篇16節 あなたは、太陽と光を放つ物を備えられました。昼はあなたのもの、そして夜もあなたのものです。


74篇17節あまねく()のもろもろの(さかひ)をたてて地と水との間を限り、また四季の運行を掌りて(なつ)(ふゆ)とをつくりたまへり。かゝる万能の神に在す以上その民イスラエルをかゝる姿に捨ておき給うことは有るべきはずなし。

文語訳74篇17節 あまねく()のもろもろの(さかひ)をたて(なつ)()_)とをつくりたまへり
口語訳74篇17節 あなたは地のもろもろの境を定め、夏と冬とを造られた。
関根訳74篇17節 あなたは地のすべての地域を定め、あなたは夏と冬とをつくられた。
新共同74篇17節 あなたは、地の境をことごとく定められました。夏と冬を造られたのもあなたです。


〔3〕神よ来りて助け給え(18−23)
74篇18節エホバよ、(あた)はなんぢをそしり、(おろか)なる(たみ)はなんぢの御名(みな)をけがせり、この(こと)を《(おぼ)へ》【思ひいで】たまへ。決してこれを忘れ給うことなかれ、現今の如くにして止まらば汝はこのことを忘れ給えるにあらざるやを恐る。

文語訳74篇18節 ヱホバよ(あた)はなんぢをそしり(おろ)かなる(たみ)はなんぢの(みな)をけがせり この(こと)をおもひいでたまへ
口語訳74篇18節 主よ、敵はあなたをあざけり、愚かな民はあなたのみ名をののしります。この事を思い出してください。
関根訳74篇18節 ヴェよ、このことを想い起こして下さい、敵はけがしごとを言い愚かな民はみ名をそしるのです。
新共同74篇18節 主よ、御心に留めてください、敵が嘲るのを 神を知らぬ民があなたの御名を侮るのを。


補註
「之を憶へよ」も文首にあり強調語。


74篇19節(ねが)はくは(なんぢ)鴿(はと)ともいうべき弱くして素直なるイスラエルのたましひを*()のあらき(けもの)なる敵の手にわたしたまふなかれ、(くる)しむものあわれなるものなるイスラエルの民生命(いのち)をとこしへに(わす)れたまふなかれ。

文語訳74篇19節 (ねが)はくはなんぢの鴿(はと)のたましひを()のあらき(けもの)にわたしたまふなかれ (くる)しむものの(いのち)をとこしへに(わす)れたまふなかれ
口語訳74篇19節 どうかあなたのはとの魂を野の獣にわたさないでください。貧しい者のいのちをとこしえに忘れないでください。
関根訳74篇19節 あなたに教えられる者を野獣にわたさないで下さい。あなたに属する貧しい者の生命を永遠に忘れないで下さい。
新共同74篇19節 あなたの鳩の魂を獣に渡さないでください。あなたの貧しい人々の命を 永遠に忘れ去らないでください。


補註
「野のあらき獣」は原語「生物」で後に来る「生命」と同語、語呂を合わせたもの。


74篇20節汝がアブラハム以来しばしば与え給える契約(けいやく)をかへりみたまへ、これを忘却し給うなかれ()のくらきところは強暴(あらび)(すまひ)にて()ちたればなり。この地はまことに暗黒にしてそこに傲然として居を占むるものは唯強暴のみである。

文語訳74篇20節 契約(けいやく)をかへりみたまへ ()のくらきところは強暴(あらび)(すまひ)にて()ちたればなり
口語訳74篇20節 あなたの契約をかえりみてください。地の暗い所は暴力のすまいで満ちています。
関根訳74篇20節 あなたの(とりで)を顧みて下さい、町は暗黒で、田舎は暴逆で満ちています。
新共同74篇20節 契約を顧みてください。地の暗い隅々には 不法の住みかがひしめいています。


74篇21節ねがはくはかゝる強暴なる神の敵の為に(しへた)げらるゝものを慚退(はぢしりぞ)かしめ(たま)ふなかれ、これ汝の御名を汚すことなればなり、願わくは我らを救い(なや)めるものと(くる)しむあわれむべきものとに聖名(みな)をほめたたへしめたまへ。我らが救わるゝは我らの為にあらず汝の御名のためなればなり。

文語訳74篇21節 ねがはくは(しへた)げらるゝものを慚退(はぢしりぞ)かしめ(たま)ふなかれ (なや)めるものと(くる)しむものとに聖名(みな)をほめたゝへしめたまへ
口語訳74篇21節 しえたげられる者を恥じさせないでください。貧しい者と乏しい者とにみ名をほめたたえさせてください。
関根訳74篇21節 踏みつけられた者が恥を負うままにしないで下さい。貧しい者、乏しい者がみ名をほめ讃えるように。
新共同74篇21節 どうか、虐げられた人が再び辱められることなく 貧しい人、乏しい人が 御名を賛美することができますように。


74篇22節(かみ)よ、おきて(なんぢ)(うたへ)をあげつらひ、汝がイスラエルの為に主張すべきことを主張し給い、(おろか)なるものの終日(ひねもす)なんぢを(そし)れるをみこころに()めたまへ。而してこれに厳かなる審判を下したまえ。

文語訳74篇22節 (かみ)よおきてなんぢの(うたへ)をあげつらひ(おろ)かなるものの終日(ひねもす)なんぢを(そし)れるをみこゝろに()めたまへ
口語訳74篇22節 神よ、起きてあなたの訴えをあげつらい、愚かな者のひねもすあなたをあざけるのをみこころにとめてください。
関根訳74篇22節 ヴェよ、たち上がってあなたの事を貫いて下さい。愚かな者たちが終日あなたをそしるのを覚え給え。
新共同74篇22節 神よ、立ち上がり 御自分のために争ってください。神を知らぬ者が絶えずあなたを嘲っているのを 御心に留めてください。


74篇23節なんぢの(てき)(こゑ)をわすれたまふなかれ、(なんぢ)にかちほこり、汝にさからひて(おこ)りたつ(もの)のかしがましき非難軽蔑、冒涜の(こゑ)はたえずあがれり。我らは今やこの敵の声の中に葬り去らんとす、神よ来りてこの苦難より我らを救い出したまへ。

文語訳74篇23節 なんぢの(てき)(こゑ)をわすれたまふなかれ (なんぢ)にさからひて(おこ)りたつ(もの)のかしがましき(こゑ)はたえずあがれり
口語訳74篇23節 あなたのあだの叫びを忘れないでください。あなたの敵の絶えずあげる騒ぎを忘れないでください。
関根訳74篇23節 あなたの仇の叫びとあなたに逆らう者のたえず起こす騒ぎを忘れ給うな。
新共同74篇23節 あなたに刃向かう者のあげる声 あなたに立ち向かう者の常に起こす騒ぎを どうか、決して忘れないでください。