黒崎幸吉著 旧約聖書略註 Web版 詩篇





詩篇 第87篇

関根訳シオンへの集中

文語訳( )コラの()のうたなり讃美(さんび)なり
口語訳コラの子の歌、さんび

本篇は86篇9節の思想を展開せるものというを得べく全世界の諸国は皆エホバの支配の中に摂取せられ、皆その民と称せられ、シオンをその首都と称するに至るであろうことを大胆に宣言せる詩である。用語の極めて簡潔大胆なること、その思想の勇敢なることが本篇の特徴である。全篇一種の預言的気魄に充ち、而してこの預言はキリストによりて霊的に実現するに至った。この詩はあるいはヒゼキヤ王がアツシリヤ軍を撃退せる後の時代の作と称せられ、またはバビロンの俘囚より帰還せる後の作といわれているけれども確言することができない。外的事情よりもむしろ内面的信仰の詩であるというべきであろう。1−3節、4−6節の二部に分れ最後の一節はやや難解なる結尾である。


〔1〕シオンの栄光(1−3)
87篇1節(かれ)の》【エホバの】(もとゐ)(きよ)*(やま)(やま)なるシオンにあり。エホバはシオンにその御国の基をおき給う。

文語訳87篇1節 ヱホバの(もとゐ)はきよき(やま)にあり
口語訳87篇1節 主が基をすえられた都は聖なる山の上に立つ。
関根訳87篇1節 コラの子の歌、うた。聖なる山の上に建てられた町よ、
新共同87篇1節 【コラの子の詩。賛歌。歌。】聖なる山に基を置き


補註
「山」は原語複数、エルサレムの都は多くの丘の上に建ち居る故かく言えるならん。


87篇2節エホバはヤコブの子孫イスラエルの民の住み居るすべての住居(すまゐ)にまさりてシオンの〔もろもろの〕(かど)(かど))を(あい)したまふ。シオンこそエホバの住み給う中心地なれ。

文語訳87篇2節 ヱホバはヤコブのすべての住居(すまひ)にまさりてシオンのもろもろの(かど)(あい)したまふ
口語訳87篇2節 主はヤコブのすべてのすまいにまさって、シオンのもろもろの門を愛される。
関根訳87篇2節 ヤコブのすべての住居にまさってヤヴェは君を愛される、おお、シオンの門よ。
新共同87篇2節 主がヤコブのすべての住まいにまさって愛される シオンの城門よ。


87篇3節(かみ)(みやこ)よ、なんぢにつきて昔より預言としてまた約束として(さかえ)あることどもは(かた)らるるなり。》【おほくの榮光のことを語りはやせり】セラ。

文語訳87篇3節 (かみ)(みやこ)よなんぢにつきておほくの榮光(えいくわう)のことを(かた)りはやせり セラ
口語訳87篇3節 神の都よ、あなたについて、もろもろの栄光ある事が語られる。〔セラ
関根訳87篇3節 神の都よ、ヤヴェは君の中で尊きことどもを語られる。セラ
新共同87篇3節 神の都よ あなたの栄光について人々は語る。〔セラ


〔2〕諸国の民の合流(4−6)
87篇4節神云い給うわれは*ラハブ即ちエジプトバビロンの如きイスラエルを圧迫せる敵たりし諸国民をも(われ)をしるもの我を信ずる民(うち)にあげん、長くイスラエルの敵たりし強国 ペリシテ、北方の富国なるツロ、南方の雄《クシ》【エテオピア】を()よ、この(ひと)即ちこれらの諸国の民もことごとくかしこなるシオンの山(うま)シオンの民たり〔といはん〕。

文語訳87篇4節 われはラハブ、バビロンをも(われ)をしるものの(うち)にあげん ペリシテ、ツロ、エテオピアを()よこの(ひと)はかしこに(うま)れたりといはん
口語訳87篇4節 わたしはラハブとバビロンをわたしを知る者のうちに挙げる。ペリシテ、ツロ、またエチオピヤを見よ。「この者はかしこに生れた」と言われる。
関根訳87篇4節 わたしはラハブとバベルをわたしを知るもののうちに教え、ペリシテ、ツロ、またエチオピアについても「この者はかしこで生まれた」と記される者がいる。
新共同87篇4節 「わたしはラハブとバビロンの名を わたしを知る者の名と共に挙げよう。見よ、ペリシテ、ティルス、クシュをも この都で生まれた、と書こう。


補註
「ラハブ」はエジプトの別名、ラハブはもと「荒れ狂うもの、おそろしきもの」の意、エジプトはイスラエルにとってそのようなものでもあるからエジプトの別名となった、海の怪獣の一種の名ならん(イザヤ30:7。51:9。詩篇89:10)。


87篇5節かくしてシオンにつきては()くいは(れ)ん『*()のもの()のもの全世界のあらゆる民らはみなその(なか)にうまれ民として数えられたり、而して至上者(いとたかきもの)なるエホバ神はみづからシオンを()これを固うしたまはん』と。

文語訳87篇5節 シオンにつきては如此(かく)いはん (この)もの(かの)ものその(なか)にうまれたり至上者(いとたかきもの)みづからシオンを()てたまはんと
口語訳87篇5節 しかしシオンについては「この者も、かの者もその中に生れた」と言われる。いと高き者みずからシオンを堅く立てられるからである。
関根訳87篇5節 しかしシオンについては言われる、「この者もかの者もその中で生まれた」と。いと高き者ご自身がこれを固くされるのである。
新共同87篇5節 シオンについて、人々は言うであろう この人もかの人もこの都で生まれた、と。」いと高き神御自身がこれを固く定められる。


補註
「此もの彼のもの」は原語「人及び人」、これは国民全部を指すと共にその一人一人を指す。イエス・キリストの福音によりて一人一人が救わるることによりて全世界の諸国が神の国となることの預言の如くにも感ぜらる。


87篇6節エホバ〔もろもろの〕(たみ)(ら)をその神の国の帳簿にしるしたまふ(とき)バビロンもエジプトも、その他の諸国につきても何らの差別なくこのものは彼處(かしこ)即ちシオンの山に(うま)れたりと(かぞ)へあげたまはん。かくして全世界の民はシオンの市民となり、全世界の中心はシオンの山であり、エホバは全世界の主として仰がるゝに至らん。セラ。

文語訳87篇6節 ヱホバもろもろの(たみ)をしるしたまふ(とき)このものは彼處(かしこ)にうまれたりと(かぞ)へあげたまはん セラ
口語訳87篇6節 主がもろもろの民を登録されるとき、「この者はかしこに生れた」としるされる。〔セラ
関根訳87篇6節 ヴェはもろもろの民を登録され、「この者はかしこで生まれた」と記帳される。セラ
新共同87篇6節 主は諸国の民を数え、書き記される この都で生まれた者、と。〔セラ


〔3〕結尾(7)
87篇7節かくして全世界がエホバの御許に一に帰する時、歓喜は世界を掩いうたふもの(をど)るもの〔(みな)いはん〕『わが救いわが祝福の(すべ)ての》【もろもろの】(いづみ)はなんぢの(うち)にあり』と。

文語訳87篇7節 うたふもの(をど)るもの(みな)いはん わがもろもろの(いづみ)はなんぢの(うち)にありと
口語訳87篇7節 歌う者と踊る者はみな言う、「わがもろもろの泉はあなたのうちにある」と。
関根訳87篇7節 歌う者も踊る者とともに言う、「わがすべての泉はあなたの中にある」と。
新共同87篇7節 歌う者も踊る者も共に言う 「わたしの源はすべてあなたの中にある」と。