黒崎幸吉著 旧約聖書略註 Web版 詩篇





詩篇 第89篇

関根訳ダビデ王国の選びと破棄

文語訳( )エズラ(びと)エタンのをしへの(うた)
口語訳エズラびとエタンのマスキールの歌
関根訳89篇1節エズラ人エタンのマスキールの歌。
新共同89篇1節【マスキール。エズラ人エタンの詩。】

本篇はおそらくイスラエルがバビロンに囚われし後その帰還前の作と見るべきで、詩の根本思想は一方に神の憐憫とその真実とに対する確き信頼を有ち、ダビデに約束せられし約束に対して不動の信念を持ちつゝ、他方これらの事実を全然裏切るが如くに見ゆるイスラエルの現状を見て、この二つの矛盾の間に悶ゆる心を示している。而して詩人はこの矛盾を解決することなしに、徹頭徹尾エホバの愛憐に対する信頼とその約束に対する希望とに終始している点がイスラエルの信仰の根本の姿であって、最も貴き霊的至宝である。而してこの矛盾はイエス・キリストの受肉によって完全に解決せられ、神の愛と神の真と而して永遠に動かざるダビデの王位とが確立したのである。本篇には「憐憫」「真実」の二語が七回繰返され本篇の基調をなす。1−4節、5−18節、19−37節、38−51節の四つの区分より成る。


〔1〕エホバの憐憫とその真実(1−4)
89篇1節よしイスラエルの現状は俘囚の下に在りて苦しみつつありともエホバの憐憫はとこしえに変らざればわれエホバの憐憫(あはれみ)をとこしへにうたはん、われ(くち)もて声を大にして(なんぢ)の》【エホバの】眞實(まこと)をよろづ()につげしらせん。

文語訳89篇1節 われヱホバの憐憫(あはれみ)をとこしへにうたはん われ(くち)もてヱホバの眞實(まこと)をよろづ()につげしらせん
口語訳89篇1節 主よ、わたしはとこしえにあなたのいつくしみを歌い、わたしの口をもってあなたのまことをよろずよに告げ知らせます。
関根訳89篇2節 ヴェの恵みの業をいつまでもわたしは歌おう。あなたの真実(まこと)を代々にわが口で告げ知らせよう。
新共同89篇2節 主の慈しみをとこしえにわたしは歌います。わたしの口は代々に あなたのまことを告げ知らせます。


89篇2節われ宣言していふ『エホバのあはれみは決してイスラエルを離るゝことなく永遠(とこしへ)()てらる、(なんぢ)はその眞實(まこと)をかたく(てん)にさだめ永遠にこれを守りたまはん』と。

文語訳89篇2節 われいふ あはれみは永遠(とこしへ)にたてらる(なんぢ)はその眞實(まこと)をかたく(てん)にさだめたまはんと
口語訳89篇2節 あなたのいつくしみはとこしえに堅く立ち、あなたのまことは天のようにゆるぐことはありません。
関根訳89篇3節 げにわたしは思った、「恵みのは永遠(とわ)にたてられ、天にあなたの真実がかたく立つ」、と。
新共同89篇3節 わたしは申します。「天にはとこしえに慈しみが備えられ あなたのまことがそこに立てられますように。」


89篇3節エホバ誓いて言い給うわれわが(えら)びたるもの即ちダビデ契約(けいやく)をむすび、わが(しもべ)ダビデにちかひたり。

文語訳89篇3節 われわが(えら)びたるものと契約(けいやく)をむすびわが(しもべ)ダビデにちかひたり
口語訳89篇3節 あなたは言われました、「わたしはわたしの選んだ者と契約を結び、わたしのしもべダビデに誓った、
関根訳89篇4節 「わたしは選んだ者と契約を結び、わが(しもべ)ダビデに対して誓いをたてた。
新共同89篇4節 「わたしが選んだ者とわたしは契約を結び わたしの僕ダビデに誓った


89篇4節われなんぢの(すゑ)をとこしへに(かた)うして決して亡ぶることならからしめ、なんぢの座位(くらゐ)をたてて代々(よよ)におよばしめ汝の王位を永遠までも絶ゆることなからしめん。 セラ。

文語訳89篇4節 われなんぢの(すゑ)をとこしへに(かた)うし なんぢの座位(くらゐ)をたてて(よよ)々におよばしめん セラ
口語訳89篇4節 『わたしはあなたの子孫をとこしえに堅くし、あなたの王座を建てて、よろずよに至らせる』」。〔セラ
関根訳89篇5節 わたしは永久に君の(すえ)を立て君の位を代々建てる」、と。セラ
新共同89篇5節 あなたの子孫をとこしえに立て あなたの王座を代々に備える、と。」〔セラ


89篇5節エホバよ、《諸天(しよてん)》【もろもろの天】はその凡ての造られしものの栄光をもてなんぢの*(くす)しき御業(みわざ)をほめん、なんぢの眞實(まこと)をもてその約束を守り給うこともまたイスラエルの聖徒(せいと)》【潔きもの】の(つどひ)にてほめらるべし。

文語訳89篇5節 ヱホバよもろもろの(てん)はなんぢの(くす)しき事跡(みわざ)をほめん なんぢの眞實(まこと)もまた(きよ)きものの(つどひ)にてほめらるべし
口語訳89篇5節 主よ、もろもろの天にあなたのくすしきみわざをほめたたえさせ、聖なる者のつどいで、あなたのまことをほめたたえさせてください。
関根訳89篇6節 ヴェよ、天はあなたの(たえ)なる業をほめ、聖なる者の群もあなたの真実をほめる。
新共同89篇6節 主よ、天があなたの驚くべき力を告白し 聖なるものがその集会で あなたのまことを告白しますように。


補註
「奇しき御業」は原文単数を用う、神の救の全経綸を一の奇蹟と見しものならん。「聖きものの會」は学者は一般に天使または天の被造物の群と解す。ヨブ5:1参照。


89篇6節(そは)蒼天(おほぞら)ある数々の存在の中にてたれかエホバに(たぐ)ふものあらんや、(かみ)(がみ))の()(ら)なる天使たちのなかに(たれ)かエホバのごとき(もの)あらんや。天上天下エホバに比すべきものはなし。

文語訳89篇6節 蒼天(おほぞら)にてたれかヱホバに(たぐ)ふものあらんや (かみ)()のなかに(たれ)かヱホバのごとき(もの)あらんや
口語訳89篇6節 大空のうちに、だれか主と並ぶものがあるでしょうか。神の子らのうちに、だれか主のような者があるでしょうか。
関根訳89篇7節 げに誰か雲間にあってヤヴェに等しき者があろう、神々の子らのうち誰かヤヴェにしく者があろう。
新共同89篇7節 雲の上で、誰が主に並びえましょう 神々の子らの中で誰が主に比べられましょう。


89篇7節(かみ)は《聖徒(せいと)》【きよきもの】の公會(こうくわい)(なか)にて(かしこ)むべきものなり、その四周(まはり)にあるすべての(もの)にまさりて(おそ)るべきものなり。宇宙の凡ての被造物はエホバを畏れかしこむべきなり。

文語訳89篇7節 (かみ)はきよきものの公會(こうくわい)のなかにて(かしこ)むべきものなり その四周(まはり)にあるすべての(もの)にまさりて(おそ)るべきものなり
口語訳89篇7節 主は聖なる者の会議において恐るべき神、そのまわりにあるすべての者にまさって大いなる恐るべき者です。
関根訳89篇8節 聖なる者の(つど)いでいと恐るべき神、その周りのすべての者に(かしこ)まれるお方。
新共同89篇8節 聖なるものの集いにおいて あなたは恐れられる神。御もとにあるものすべてに超えて 大いに畏れ敬われる方です。


89篇8節萬軍(ばんぐん)(かみ)エホバよ、〔ヤハよ〕(なんぢ)のごとく大能(たいのう)あるものは(たれ)ぞや、汝の大能によりたのむ者は救を得ん。(ヤハよ) なんぢの眞實(まこと)はなんぢをめぐり汝は真実をもて取りかこまれたり。

文語訳89篇8節 萬軍(ばんぐん)(かみ)ヱホバよヤハよ(なんぢ)のごとく大能(たいのう)あるものは(たれ)ぞや なんぢの眞實(まこと)はなんぢをめぐりたり
口語訳89篇8節 万軍の神、主よ、主よ、だれかあなたのように大能のある者があるでしょうか。あなたのまことは、あなたをめぐっています。
関根訳89篇9節 ヴェ、万軍の神よ、誰かあなたのように強かろう。ヤよ、あなたの真実もあなたの周りにある。
新共同89篇9節 万軍の神、主よ 誰があなたのような威力を持つでしょう。主よ、あなたの真実は あなたを取り囲んでいます。


89篇9節なんぢその大能をもて(うみ)*あるるををさめ、またその如く諸国民の高慢をくだきたまい、その(なみ)のたちあがらんときは(これ)をしづめたまふなり。

文語訳89篇9節 なんぢ(うみ)のあるゝををさめ その(なみ)のたちあがらんときは(これ)をしづめたまふなり
口語訳89篇9節 あなたは海の荒れるのを治め、その波の起るとき、これを静められます。
関根訳89篇10節 あなたは海の高ぶりを治め、波が騒ぐ時、それを静められる。
新共同 89篇10節 あなた は誇り高い海を支配し 波が高く起これば、それを静められます。


補註
「あるる」は原語「高ぶり」。


89篇10節なんぢ、ラハブ即ちイスラエルの敵たるエジプト(ころ)されしもののごとく撃碎(うちくだ)き、《なんぢの》【おのれの】(あた)どもを(ちから)ある(みうで)をもて打散(うちちら)したまへり。げに汝の力はおそるべきかな。

文語訳89篇10節 なんぢラハブを(ころ)されしもののごとく撃碎(うちくだ)きおのれの(あた)どもを(ちから)ある(みうで)をもて打散(うちちら)したまへり
口語訳89篇10節 あなたはラハブを、殺された者のように打ち砕き、あなたの敵を力ある腕をもって散らされました。
関根訳89篇11節 ラハブを砕いて、切り殺された者のようにし、力強い腕をもってあなたの敵を散らす。
新共同89篇11節 あなたはラハブを砕き、刺し殺し 御腕の力を振るって敵を散らされました。


89篇11節然のみならず汝は天地の創造主に在し給えば〔もろもろの〕((しよ)(てん)(なんぢ)のもの、()もまた(なんぢ)のものなり、世界(せかい)とその(なか)()つるものとはすべてみな《なんぢその(もとゐ)()きたまへり。》【なんぢの基したまへるなり】

文語訳89篇11節 もろもろの(てん)はなんぢのもの()もまた(なんぢ)のものなり 世界(せかい)とその(なか)にみつるものとはなんぢの(もとゐ)したまへるなり
口語訳89篇11節 もろもろの天はあなたのもの、地もまたあなたのもの、世界とその中にあるものとはあなたがその基をおかれたものです。
関根訳89篇12節 天はあなたのもの、地もあなたのもの、世界とそれに満ちるものはあなたが築かれた。
新共同89篇12節 天はあなたのもの、地もあなたのもの。御自ら世界とそこに満ちるものの基を置き


89篇12節(きた)(みなみ)地の両極までもみななんぢ(つく)りたまへり、タボル、ヘルモンの如き秀峰汝の創造を讃美するものゝ如くなんぢの御名(みな)によりて(よろこ)びよばふ。

文語訳89篇12節 (きた)(みなみ)はなんぢ(つく)りたまへり タボル、ヘルモンはなんぢの(みな)によりて(よろこ)びよばふ
口語訳89篇12節 北と南はあなたがこれを造られました。タボルとヘルモンは、み名を喜び歌います。
関根訳89篇13節 北と南はあなたがこれを創造し、タボルとヘルモンはあなたのみ名をたたえる。
新共同89篇13節 北と南を創造されました。タボル山、ヘルモン山は 御名を喜び歌います。


89篇13節なんぢは大能(たいのう)のみうでをもちたまふ、なんぢの(みて)はつよく(なんぢ)のみぎの(みて)はたかし。げに汝は力の神に在し給う、汝の為さんとし給うことは一として成し得ざるはなし。

文語訳89篇13節 なんぢは大能(たいのう)のみうでをもちたまふ なんぢの(みて)はつよく(なんぢ)のみぎの(みて)はたかし
口語訳89篇13節 あなたは大能の腕をもたれます。あなたの手は強く、あなたの右の手は高く、
関根訳89篇14節 あなたのみ腕には力あり、み手は強く、右のみ手は高く上げられる。
新共同89篇14節 あなたは力強い業を成し遂げる腕を具え 御手の力を振るい 右の御手を高く上げられます。


89篇14節天下を治むるに欠くべからざる()公平(こうへい)はなんぢの寶座(みくら)のもとゐにして汝は常に正義と公平とをもて全世界を支配し給うなり、あはれみと眞實(まこと)とは汝より出でて汝の聖顏(みかほ)のまへに《(はべ)る。》【あらはれゆく】

文語訳89篇14節 ()公平(こうへい)はなんぢの寶座(みくら)のもとゐなり あはれみと眞實(まこと)とは聖顏(みかほ)のまへにあらはれゆく
口語訳89篇14節 義と公平はあなたのみくらの基、いつくしみと、まことはあなたの前に行きます。
関根訳89篇15節 義と公平はみ(くら)の支え、恵みと真はみ前に先だつ。
新共同89篇15節 正しい裁きは御座の基 慈しみとまことは御前に進みます。


89篇15節かかるエホバを仰ぎつゝ叫ぶ*歡呼(くわんこ)(こゑ)》 【よろこびの音】を()(たみ)はさいはひなり、エホバよ、かれらは御顔(みかほ)(ひかり)のなかを《(あゆ)むなり。》【歩めり】

文語訳89篇15節 よろこびの(おと)をしる(たみ)はさいはひなり ヱホバよかれらはみかほの(ひかり)のなかをあゆめり
口語訳89篇15節 祭の日の喜びの声を知る民はさいわいです。主よ、彼らはみ顔の光のなかを歩み、
関根訳89篇16節 あなたを迎える喜びの叫びを知る民に幸あれ、彼らは、ヤヴェよ、み顔の光に歩む。
新共同89篇16節 いかに幸いなことでしょう 勝利の叫びを知る民は。主よ、御顔の光の中を彼らは歩きます。


補註
「歓呼の聲」現行訳「よろこびの音」は宗教上の儀式、王の即位その他の重要なる機会に発する叫びの声。


89篇16節かれらは汝の御名(みな)を信ずるによりて終日(ひねもす)よろこび、(なんぢ)()によりて他のもろもろの民よりも(たか)く《あげらる。》【あげられたり】

文語訳89篇16節 かれらは(みな)によりて終日(ひねもす)よろこび (なんぢ)()によりて(たか)くあげられたり
口語訳89篇16節 ひねもす、み名によって喜び、あなたの義をほめたたえます。
関根訳89篇17節 ひねもすあなたのみ名を喜び、あなたの義に高められる。
新共同89篇17節 絶えず、御名によって喜び躍り 恵みの御業にあずかって奮い立ちます。


89篇17節(そは)かれらの(ちから)の《(かざり)》【榮光】即ち我らの飾なる力はなんぢ《にして》【なり】 (なんぢ)(めぐみ)によりてわれらの(つの)われらの力はたかくあげられん。

文語訳89篇17節 かれらの(ちから)榮光(えいくわう)はなんぢなり (なんぢ)(めぐみ)によりてわれらの(つの)はたかくあげられん
口語訳89篇17節 あなたは彼らの力の栄光だからです。われらの角はあなたの恵みによって高くあげられるでしょう。
関根訳89篇18節 げにあなたは彼らの()えある力、あなたのいつくしみはわれらの角を高くする。
新共同89篇18節 あなたは彼らの力の輝きです。御旨によって、我らの角を高く上げてください。


89篇18節そはわれらの(たて)として我らを守る王はエホバに()き、われらの(わう)はイスラエルの聖者(せいじや)なるエホバにつけ(ばな)り。その王がエホバに属する民こそ最も幸なるものなれ。

文語訳89篇18節 そはわれらの(たて)はヱホバに()きわれらの(わう)はイスラエルの聖者(せいじや)につけり
口語訳89篇18節 われらの盾は主に属し、われらの王はイスラエルの聖者に属します。
関根訳89篇19節 われらの盾はヤヴェのもの、われらの王はイスラエルの聖者のもの。
新共同89篇19節 主は我らの盾 イスラエルの聖なる方は我らの王。


〔3〕ダビデに対する約束(19−37)
89篇19節そのときエホバ、預言者ナタンにより異象(まほろし)をもて(サムエル後7:17)なんぢの《*聖者(せいじや)》【聖徒】なるダビデにつげ(て()ひ)たまはく、われ《ちからある(もの)(うへ)佑助(たすけ)()き》【佑助をちからあるものに委ねたり】〔わが〕(たみ)のなかより《(えら)べるものを》【一人をえらびて】(たか)くあげてこれを王位に即かしめたり。

文語訳89篇19節 そのとき異象(まぼろし)をもてなんぢの聖徒(せいと)につげたまはく われ佑助(たすけ)をちからあるものに(ゆだ)ねたり わが(たみ)のなかより一人(ひとり)をえらびて(たか)くあげたり
口語訳89篇19節 昔あなたは幻をもってあなたの聖徒に告げて言われました、「わたしは勇士に栄冠を授け、民の中から選ばれた者を高くあげた。
関根訳89篇20節 その時あなたは幻の中にあなたの聖徒に語り、「わたしは助けを一人の勇者にさずけ、民の中から一人の若者を選んだ」、と言われた。
新共同89篇20節 あなたの慈しみに生きる人々に かつて、あなたは幻によってお告げになりました。「わたしは一人の勇士に助けを約束する。わたしは彼を民の中から選んで高く上げた。


補註
「聖徒」は原語単数でダビデを指すと解す、複数の意味とすればイスラエルを指す事となる。19-38節はサムエル後書第7章のようやくの如きもの故これを参照しつつ読むべし。


89篇20節即ちわれわが*(しもべ)ダビデを《見出(みいだ)して》【得て】(これ)にわが(きよ)(あぶら)をそゝげり。かくして彼を王となせり。

文語訳89篇20節 われわが(しもべ)ダビデをえて(これ)にわが聖膏(きよきあぶら)をそゝげり
口語訳89篇20節 わたしはわがしもべダビデを得て、これにわが聖なる油をそそいだ。
関根訳89篇21節 「わが僕、ダビデを見つけ出しわが聖なる油を彼に注いだ、
新共同89篇21節 わたしはわたしの僕ダビデを見いだし 彼に聖なる油を注いだ。


補註
「僕ダビデ」なる称呼につきてはサムエル後7:5、8を見よ。


89篇21節わが()はかれとともに(かた)く、われは堅くわが手を以て彼を支え、わが(かひな)彼を助けてかれを(つよ)くせん。

文語訳89篇21節 わが()はかれとともに(かた)くわが(かひな)はかれを(つよ)くせん
口語訳89篇21節 わが手は常に彼と共にあり、わが腕はまた彼を強くする。
関根訳89篇22節 わが手は強く彼にともない、わが腕も強く彼を支える。
新共同89篇22節 わたしの手は彼を固く支え わたしの腕は彼に勇気を与えるであろう。


89篇22節されば(あた)かれを*しへたぐることなし、(あく)()かれを(くる)しむることなからん。

文語訳89篇22節 (あた)かれをしへたぐることなし(あく)()かれを(くる)しむることなからん
口語訳89篇22節 敵は彼をだますことなく、悪しき者は彼を卑しめることはない。
関根訳89篇23節 敵は彼を襲わず、不法の人は彼をおさえない。
新共同89篇23節 敵は彼を欺きえず 不正な者が彼を低くすることはない。


補註
「しへたぐる」の原語は債権者が債務者をしえたぐる如き場合に用いらるる語として解せられているけれどもやや不明の語、あるいは突然に襲撃する意味と解す。


89篇23節われは常にかれを守りかれの(まへ)にその〔もろもろの〕(てき)をたふし、(かれ)を《にくむ》【にくめる】ものを()たん。

文語訳89篇23節 われかれの(まへ)にそのもろもろの(てき)をたふし(かれ)をにくめるものを()たん
口語訳89篇23節 わたしは彼の前にもろもろのあだを打ち滅ぼし、彼を憎む者どもを打ち倒す。
関根訳89篇24節 わたしは彼の前から仇を追いはらい、彼を憎む者をわたしは撃つ。
新共同89篇24節 わたしは彼の前で彼を苦しめる者を滅ぼし 彼を憎む者を倒す。


89篇24節されどわが眞實(まこと)とわが憐閥(あはれみ)とは永遠にダビデとともに()り、わが()によりて我を信ずるが故にその(つの)はたかくあげられその力は強くせられん。

文語訳89篇24節 されどわが眞實(まこと)とわが隣閥(あはれみ)とはダビデとともに()り わが()によりてその(つの)はたかくあげられん
口語訳89篇24節 わがまことと、わがいつくしみは彼と共にあり、わが名によって彼の角は高くあげられる。
関根訳89篇25節 わが真実(まこと)と恵みは彼とともにあり、彼の角はわが名の故に高くされる。
新共同89篇25節 わたしの真実と慈しみは彼と共にあり わたしの名によって彼の角は高く上がる。


89篇25節われまたかれの政治を祝しかれの()(うみ)のうへにおきてその版図を西は地中海上まで及ぼしそのみぎの()ユーフラテの(かは)(うへ)におかん。かくて東はユーフラテ付近の河々までもその領土を拡張するに至らん。

文語訳89篇25節 われ(また)かれの()(うみ)のうへにおき そのみぎの()(かは)のうへにおかん
口語訳 89篇25節 わたしは彼の手を海の上におき、彼の右の手を川の上におく。
関根訳89篇26節 わたしは彼の手を海の上におき、その右の手を流れの上におく。
新共同89篇26節 わたしは彼の手を海にまで届かせ 彼の右の手を大河にまで届かせる。


89篇26節ダビデはこの故に我に感謝し、(われ)にむかひて(なんぢ)はわが(ちち)、わが(かみ)、わが(すくひ)(いは)なりとよばん。

文語訳89篇26節 ダビデ(われ)にむかひて(なんぢ)はわが(ちち)わが(かみ)わがすくひの(いは)なりとよばん
口語訳89篇26節 彼はわたしにむかい『あなたはわが父、わが神、わが救の岩』と呼ぶであろう。
関根訳89篇27節 彼はわたしに向かってあなたはわが父、わが神、わが救いの岩、と言う。
新共同89篇27節 彼はわたしに呼びかけるであろう あなたはわたしの父 わたしの神、救いの岩、と。


89篇27節われまた(かれ)をわが*初子(うひご)となして彼に最上の位置を与え、()(わう)たちのうち(いと)もたかき(もの)となさん。

文語訳89篇27節 われまた(かれ)をわが初子(うひご)となし()(わう)たちのうち(いと)もたかき(もの)となさん
口語訳89篇27節 わたしはまた彼をわがういごとし、地の王たちのうちの最も高い者とする。
関根訳89篇28節 わたしも彼を長子とし、地の王たちのいと高き者とする。
新共同89篇28節 わたしは彼を長子とし 地の諸王の中で最も高い位に就ける。


補註
「子」「初子」はこの場合イスラエルの王を指す、イスラエルの民を指す場合多し(出エジプト4:22。エレミヤ31:9)。


89篇28節如何なることありともわれとこしへに(わが)憐憫(あはれみ)をかれがためにたもちて変ることなかるべく《わが契約(けいやく)をかれがために(かた)うせん。》【之とたてし契約はかはることなかるべし】

文語訳89篇28節 われとこしへに憐憫(あはれみ)をかれがためにたもち (これ)とたてし契約(けいやく)はかはることなかるべし
口語訳89篇28節 わたしはとこしえに、わがいつくしみを彼のために保ち、わが契約は彼のために堅く立つ。
関根訳89篇29節 わたしは永遠(とこしえ)に彼にわが恵みをほどこし、わが契約は彼に向って変わらない。
新共同89篇29節 とこしえの慈しみを彼に約束し わたしの契約を彼に対して確かに守る。


89篇29節われまたその(すゑ)をとこしへに〔(ながら)へ〕、そのくらゐを(てん)日數(ひかず)のごとく永遠より永遠までもながらへしめん。

文語訳89篇29節 われまたその(すゑ)をとこしへに(ながら)へ そのくらゐを(てん)日數(ひかず)のごとくながらへしめん
口語訳89篇29節 わたしは彼の家系をとこしえに堅く定め、その位を天の日数のようにながらえさせる。
関根訳89篇30節 わたしはその(すえ)をいつまでも支え、その位を天の日数とひとしくする。
新共同89篇30節 わたしは彼の子孫を永遠に支え 彼の王座を天の続く限り支える。


*89篇30節もしその()(ら)わが(のり)をはなれ、わが審判(さばき)にしたがひて(あゆ)まず、

文語訳89篇30節 もしその()わが(のり)をはなれ わが審判(さばき)にしたがひて(あゆ)まず
口語訳89篇30節 もしその子孫がわがおきてを捨て、わがさばきに従って歩まないならば、
関根訳89篇31節 その子らがわが律法を棄て、わが誡命(いましめ)に歩まず、
新共同89篇31節 しかし、彼の子らがわたしの教えを捨て わたしの裁きによって歩まず


補註
本節以下はサムエル後7:14以下参照。


89篇31節わが律法(おきて)をやぶり、わが誡命(いましめ)をまもらずば、

文語訳89篇31節 わが律法(おきて) をやぶり、わが誡命(いましめ)をまもらずば、
口語訳89篇31節 もし彼らがわが定めを犯し、わが戒めを守らないならば、
関根訳89篇32節 わが掟をけがし、わが命令にそむくときは、
新共同89篇32節 わたしの掟を破り わたしの戒めを守らないならば


89篇32節われ(つゑ)をもて彼らを打ちてかれらの(とが)をただし、(むち)をもて彼らをこらしめてその邪曲(よこしま)をただすべし。

文語訳89篇32節 われ(つゑ)をもてかれらの(とが)をたゞし(むち)をもてその邪曲(よこしま)をたゞすべし
口語訳89篇32節 わたしはつえをもって彼らのとがを罰し、むちをもって彼らの不義を罰する。
関根訳89篇33節 わたしは杖をもって彼らの(とが)を罰し、こらしめをもってかれらの罪を罰する。
新共同89篇33節 彼らの背きに対しては杖を 悪に対しては疫病を罰として下す。


89篇33節されど彼との間の契約の故に、(かれ)よりわが憐憫(あはれみ)を〔ことごとくは〕*とりさらず、わが眞實(まこと)を《(いつは)ること》【おとろへしむること】なからん。

文語訳89篇33節 されど(かれ)よりわが憐憫(あはれみ)をことごとくはとりさらず わが眞實(まこと)をおとろへしむることなからん
口語訳89篇33節 しかし、わたしはわがいつくしみを彼から取り去ることなく、わがまことにそむくことはない。
関根訳89篇34節 しかしわが恵みを彼から取り去らず、わが真実を偽りに変えない。
新共同89篇34節 それでもなお、わたしは慈しみを彼から取り去らず わたしの真実をむなしくすることはない。


補註
「とりさらず」は原語の綴を一字変更せる文字の訳。


89篇34節われ決しておのれの契約(けいやく)をやぶらず、(おのれ)のくちびるより()でしことをかへじ。故にこの意味において最も信頼すべきものなり。

文語訳89篇34節 われおのれの契約(けいやく)をやぶらず(おのれ)のくちびるより()でしことをかへじ
口語訳89篇34節 わたしはわが契約を破ることなく、わがくちびるから出た言葉を変えることはない。
関根訳89篇35節 わが契約をけがさず、わが口の言葉を変えない。
新共同89篇35節 契約を破ることをせず わたしの唇から出た言葉を変えることはない。


89篇35節われ(さき)にわが(きよき)をさして(ちか)へり、われダビデに虚僞(いつはり)をいはじ。

文語訳89篇35節 われ(さき)にわが(きよき)をさして(ちか)へり われダビデに爲僞(いつはり)をいはじ
口語訳89篇35節 わたしはひとたびわが聖によって誓った。わたしはダビデに偽りを言わない。
関根訳89篇36節 一つのことをわが(きよ)さにかけて誓った、ダビデを決して欺くことをしない、と。
新共同89篇36節 聖なるわたし自身にかけて わたしはひとつのことを誓った ダビデを裏切ることは決してない、と。


89篇36節その誓は次の如きものであってその(すゑ)はとこしへにつづき永遠に絶ゆることなく、その座位(くらゐ)()のごとく永久にかがやきて(つね)にわが(まへ)にあらん。

文語訳89篇36節 その(すゑ)はとこしへにつゞき その座位(くらゐ)()のごとく(つね)にわが(まへ)にあらん
口語訳89篇36節 彼の家系はとこしえに続き、彼の位は太陽のように常にわたしの前にある。
関根訳89篇37節 彼の裔は永遠につづき、その位はわが前に天日(てんぴ)にひとしい。
新共同89篇37節 彼の子孫はとこしえに続き 彼の王座はわたしの前に太陽のように


*89篇37節また(つき)のごとく永遠(とこしへ)にたてられん、これら日月の如き(そら)にある證人(あかしびと)人間の証人と異り偽ることなく常にまことなり。セラ。

文語訳89篇37節 また(つき)のごとく永遠(とこしへ)にたてられん(そら)にある證人(あかしびと)はまことなり セラ
口語訳89篇37節 また月のようにとこしえに堅く定められ、大空の続くかぎり堅く立つ」。〔セラ
関根訳89篇38節 月のように永遠にかたく雲の中の証人(あかし)のように変わらない」、とセラ
新共同89篇38節 雲の彼方の確かな証しである月のように とこしえに立つであろう。」〔セラ


補註
本節後半は不明の構造をなす。種々の読み方あり。


〔4〕神は約束を破棄し給えるや(38−52)
89篇38節神はかくも憐憫と真実とに富み約束に忠実に在し給えり。されどエホバはあたかもこの約束を無視し給うものの如くにその受膏者(じゆかうじや)なるダビデの子孫をとほざけて()てたまへり、なんぢこれをいきどほりたまへり。

文語訳89篇38節 されどその受膏者(じゆかうじや)をとほざけて()てたまへり なんぢ(これ)をいきどほりたまへり
口語訳89篇38節 しかしあなたは、あなたの油そそがれた者を捨ててしりぞけ、彼に対して激しく怒られました。
関根訳89篇39節 ところがあなたはあなたのメシアをうち棄て、拒み、(はげ)しく怒られた。
新共同89篇39節 しかしあなたは、御自ら油を注がれた人に対して 激しく怒り、彼を退け、見捨て


89篇39節なんぢ無慈悲にも(おの)がしもべの汝より与えられし契約(けいやく)をいみ、()のかんむりをけがしその王位より彼を引き下し()にまでおとしたまへり。

文語訳89篇39節 なんぢ(おの)がしもべの契約(けいやく)をいみ (その)かんむりをけがして()にまでおとし(たま)へり
口語訳89篇39節 あなたはそのしもべとの契約を廃棄し、彼の冠を地になげうって、けがされました。
関根訳89篇40節 あなたの僕の契約をしりぞけ、その王冠を泥土(でいど)にゆだねられた。
新共同89篇40節 あなたの僕への契約を破棄し 彼の王冠を地になげうって汚し


89篇40節またその民の葡萄園の(かき)をことごとく(たふ)てこれを他国の自由なる侵略に露し、その保砦(とりで)をあれすたれしめこれを保護し得ざるに至らしめたまへり。

文語訳89篇40節 またその(かき)をことごとく(たふ)し その保砦(とりで)をあれすたれしめたまへり
口語訳89篇40節 あなたはその城壁をことごとくこわし、そのとりでを荒れすたれさせられました。
関根訳89篇41節 そのすべての垣をこぼち、その砦を廃墟とされた。
新共同89篇41節 彼の防壁をことごとく破り 砦をすべて廃虚とされた。


89篇41節それ故にその葡萄園なるイスラエルはその(みち)をすぐるすべての(もの)にかすめられ(80:12)、これを目撃する隣人(となりびと)にののしらる。

文語訳89篇41節 その(みち)をすぐるすべての(もの)にかすめられ隣人(となりびと)にのゝしらる
口語訳89篇41節 そこを通り過ぎる者は皆彼をかすめ、彼はその隣り人のあざけりとなりました。
関根訳89篇42節 通りすぎる者はみな彼を(かす)め、彼はその隣りに(あざけ)られた。
新共同89篇42節 通りかかる者は皆、そこで略奪し 周囲の民は彼を辱める。


89篇42節なんぢかえって彼の敵に与しかれが(てき)のみぎの()をたかく()てこれに力を与え、《かれの》【その】もろもろの(あた)してイスラエルを攻めしめこれをよろこばしめたまへり。

文語訳89篇42節 なんぢかれが(てき)のみぎの()をたかく()げそのもろもろの(あた)をよろこばしめたまへり
口語訳89篇42節 あなたは彼のあだの右の手を高くあげ、そのもろもろの敵を喜ばせられました。
関根訳 89篇43節 あなたはその仇の右手を高くし、そのすべての敵を喜ばせた。
新共同89篇43節 彼を苦しめる者の右の手をあなたは高く上げ 彼の敵が喜び祝うことを許された。


89篇43節なんぢかれの(つるぎ)()をふりかへして敵に向わざらしめ戰鬪(たたかひ)にたつに()へざらしめたまひき。

文語訳89篇43節 なんぢかれの(つるぎ)()をふりかへして戰鬪(たたかひ)にたつに()へざらしめたまひき
口語訳89篇43節 まことに、あなたは彼のつるぎの刃をかえして、彼を戦いに立たせられなかったのです。
関根訳89篇44節 あなたはその(やいば)の向きをかえ、戦いの中に彼を立たせなかった。
新共同89篇44節 しかも、彼の剣を再び岩のかけらとし 戦いの時にも、彼の力を興してくださらない。


89篇44節またその王たる光輝(かがやき)をけして恥辱の中に陥れその座位(くらゐ)()になげおとし、

文語訳89篇44節 またその光輝(かがやき)をけしその座位(くらゐ)()になげおとし
口語訳89篇44節 あなたは彼の手から王のつえを取り去り、その王座を地に投げすてられました。
関根訳89篇45節 あなたは彼の栄光を取り去り、その位を地になげすてた。
新共同89篇45節 あなたは彼の清さを取り去り 彼の王座を地になげうたれた。


89篇45節その*年若(としわか)()をちぢめ、王の若年を苦痛の中に終らしめ、(はぢ)をその(うへ)(おほ)ひたまへり。何たる悲しむべきことぞ、エホバに相応しからざるにあらずや。セラ。

文語訳89篇45節 その年若(としわか)()をちゞめ(はぢ)をそのうへに(おほ)ひたまへり セラ
口語訳89篇45節 あなたは彼の若き日をちぢめ、恥をもって彼をおおわれました。〔セラ
関根訳89篇46節 その若き時の日数を短くし、恥をもって彼を(おお)われた。セラ
新共同89篇46節 あなたは彼の若さの日を短くし 恥で彼を覆われた。〔セラ


補註
「年若き日」幼君エホヤキンがバビロンに捕われしを指すと見ることを得。


89篇46節エホバよ、かくて幾何時(いくそのとき)をへたまふや、自己(みつから)をとこしへに(かく)て我らとその王を放置したまふや、御怒(みいかり)()《の(ごと)くもゆるや。》【のもゆるごとくなるべきか】そはあまりに無慈悲なるにあらずや。

文語訳89篇46節 ヱホバよかくて幾何時(いくそのとき)をへたまふや 自己(みづから)をとこしへに(かく)したまふや忿怒(みいかり)()のもゆるごとくなるべきか
口語訳89篇46節 主よ、いつまでなのですか。とこしえにお隠れになるのですか。あなたの怒りはいつまで火のように燃えるのですか。
関根訳89篇47節 ヴェよ、いつまでつづけてみ顔をかくし、あなたの怒りは火のように燃えつづけるのか。
新共同89篇47節 いつまで、主よ、隠れておられるのですか。御怒りは永遠に火と燃え続けるのですか。


89篇47節ねがはくは*わが《生涯(しやうがい)》【時のいかに短かきか】のはかなき(おも)ひたまへ、《(なんぢ)如何(いか)なる徒事(いたづらごと)のためにもろもろの(ひと)()(つく)りたまひしや。》【汝いたづらにすべての人の子らをつくりたまはんや】もし汝何時までも御顔をかくしたまわば我が生命のある間に汝の憐憫と真実とを見得ざるに至らん、さらば我らは徒事の為に造られしにあらずや。

文語訳89篇47節 ねがはくはわが(とき)のいかに(みじか)きかを(おも)ひたまへ (なんぢ)いたづらにすべての(ひと)()をつくりたまはんや
口語訳89篇47節 主よ、人のいのちの、いかに短く、すべての人の子を、いかにはかなく造られたかを、みこころにとめてください。
関根訳89篇48節 わたしの日数のいくばくなるかをかえりみ給え、あなたはすべての人の子を(むな)しき者に創られた!
新共同89篇48節 心に留めてください わたしがどれだけ続くものであるかを あなたが人の子らをすべて いかにむなしいものとして創造されたかを。


補註
「わが生涯を思ひ給へ」は子音を前後することにより「わが弱きを思ひたまへ」となる。


89篇48節何人(なにび と)か》【誰か】いきて() ()ず、(また)おのがたましひを陰府(よみ)(の())より《(すく)ふものぞ。》【救ひうるものあらんや】かかるものは有り得ざるなり。セラ。

文語訳89篇48節 (たれ)かいきて()をみず(また)おのがたましひを陰府(よみ)より(すく)ひうるものあらんや セラ
口語訳89篇48節 だれか生きて死を見ず、その魂を陰府の力から救いうるものがあるでしょうか。〔セラ
関根訳89篇49節 生きて、死を見ぬ人があるだろうか、陰府の手からその身を救い得る者が。セラ
新共同89篇49節 命ある人間で、死を見ないものがあるでしょうか。陰府の手から魂を救い出せるものが ひとりでもあるでしょうか。〔セラ


89篇49節(しゆ)よ、なんぢが眞實(まこと)をもてダビデに(ちか)ひたまへる昔日(むかし)のあはれみは何處(いづこ)にありや。今は全く面影だになきにあらずや。

文語訳89篇49節 (しゆ)よなんぢが眞實(まこと)をもてダビデに(ちか)ひたまへる昔日(むかし)のあはれみはいづこにありや
口語訳89篇49節 主よ、あなたがまことをもってダビデに誓われた昔のいつくしみはどこにありますか。
関根訳89篇50節 主よ、あなたが真実をもってダビデに誓ったさきの日のあなたの恵みはどこにいったのか。
新共同89篇50節 主よ、真実をもってダビデに誓われた あなたの始めからの慈しみは どこに行ってしまったのでしょうか。


89篇50節(しゆ)よ、(ねが)はくはなんぢの(しもべ)のうくる(そしり)をみこゝろにとめたまへ、これを無視し給うなかれ〔現行訳は次節をここに入れる〕(われ)〔もろもろの〕*(たみ)のそしりをわが(ふところ)にいだく。

文語訳89篇50節 (しゆ)よねがはくはなんぢの(しもべ)のうくる(そしり)をみこゝろにとめたまヘ、(われ)もろもろの(たみ)のそしりをわが懷中(ふところ)にいだく。
口語訳89篇50節 主よ、あなたのしもべがうけるはずかしめをみこころにとめてください。主よ、あなたのもろもろの敵はわたしをそしり、あなたの油そそがれた者の足跡をそしります。わたしはもろもろの民のそしりをわたしのふところにいだいているのです。
関根訳89篇51節 主よ、あなたの僕らの辱かしめをかえりみ給え、わたしはすべての民のそしりをふところにいだいている。
新共同89篇51節 主よ、御心に留めてください あなたの僕が辱めを受けていることを これら強大な民をわたしが胸に耐えていることを。


補註
「民のそしり」と訳せるは原文を幾分変更せるもの、原文のままとすれば「我は多数の民をことごとくいだく」となり意味をなさず。


89篇51節エホバよ、(なんぢ)の〔もろもろの〕(あた)は(かくして)われをそしり、なんぢの受膏者(じゆかうじや)なる王のあしあとをそしれり。我らこれにたえがたし。願わくは来りて速に救い給え。

文語訳89篇51節 ヱホバよ(なんぢ)のもろもろの(あた)はわれをそしりなんぢの受膏者(じゆかうじや)のあしあとをそしれり。
口語訳89篇51節 (50節に合節)
関根訳89篇52節 ヴェよ、あなたの敵はののしり、あなたのメシアの足跡をそしるのです。
新共同89篇52節 彼らは、主よ、あなたの敵であり 彼らは辱めるのです。彼らはあなたの油注がれた者を追って 辱めるのです。


*89篇52節エホバは永遠(とこしへ)にほむべきかな。アーメン、アーメン。

文語訳89篇52節 ヱホバは永遠(とこしへ)にほむべきかな アーメン アーメン
口語訳89篇52節 主はとこしえにほむべきかな。アァメン、アァメン。
関根訳89篇53節 ヴェは永遠にほむべきかな、アーメン・アーメン。
新共同89篇53節 主をたたえよ、とこしえに。アーメン、アーメン。


補註
本節は第三巻の結尾の頌栄。