黒崎幸吉著 旧約聖書略註 Web版 詩篇





詩篇 第98篇

関根訳来り給う神

文語訳( )歌なり
口語訳

前三篇と略同一の内容および構成を有する詩で、エホバの憐憫と真実とによる救を讃美し(1−3)、全地をしてエホバをほめうたわしめ(4−6)、エホバの全世界を審き給うことに対する歓呼を以て終っている(7−9)。七十人訳には「ダビデの歌」とあれど、然らず、本篇は95−99篇中、唯一の表題付詩篇である。全篇「歌」を表示する故ならん。第二イザヤの影響多きこと勿論なり。


〔1〕エホバの救をほめうたえ(1−3)
98篇1節あたらしき(うた)をエホバにむかひてうたへ、そはエホバはその民イスラエルの為に(たへ)なる(こと)をおこなひ、その(みぎ)(みて)、その(きよ)(かひな)をもて何物の力をも要せずして(おのれ)のためにイスラエルの(すくひ)をなし()へたま《ひたればなり。》【へり】かかる奇しき御業を爭でうたわずに居るべきや。

文語訳98篇1節 あたらしき(うた)をヱホバにむかひてうたへ そは(たへ)なる(こと)をおこなひその(みぎ)(みて)そのきよき(かひな)をもて(おのれ)のために(すくひ)をなし()へたまへり
口語訳98篇1節 新しき歌を主にむかってうたえ。主はくすしきみわざをなされたからである。その右の手と聖なる腕とは、おのれのために勝利を得られた。
関根訳98篇1節 歌。ヤヴェに向かって新しい歌を歌え。まことに彼は多くの不思議を行なわれた。その右の手が勝利をもたらしその腕が彼をきわだたせた。
新共同98篇1節 【賛歌。】新しい歌を主に向かって歌え。主は驚くべき御業を成し遂げられた。右の御手、聖なる御腕によって 主は救いの御業を果たされた。


98篇2節エホバはバビロンを打ち給うことによりてその(すくひ)イスラエルのみならず全世界に()らしめ、イスラエルを救いてその()を《異邦人(ことくにびと)ら》【もろもろの國人】の()のまへにあらはし(たま)へり。

文語訳98篇2節 ヱホバはそのすくひを()らしめ その()をもろもろの國人(くにびと)()のまへにあらはし(たま)へり
口語訳98篇2節 主はその勝利を知らせ、その義をもろもろの国民の前にあらわされた。
関根訳98篇2節 ヴェはその救いを知らしめ多くの民の前にその義を現わされた。
新共同98篇2節 主は救いを示し 恵みの御業を諸国の民の目に現し


98篇3節(また)イスラエルはエホバに棄てられし如く思いたれどエホバは決してイスラエルを忘れ給わず、その憐憫(あはれみ)眞實(まこと)とをイスラエルの(いへ)にむかひて記念(きねん)これをその心に留めたまふ、()(はて)もことごとくわが(かみ)為したまえるイスラエルの(すくひ)()たり。神はまことにその恩恵と真実とをもておどろくべき事をなしたまう。

文語訳98篇3節 (また)その憐憫(あはれみ)眞實(まこと)とをイスラエルの(いへ)にむかひて記念(きねん)したまふ ()(はて)もことごとくわが(かみ)のすくひを()たり
口語訳98篇3節 主はそのいつくしみと、まこととをイスラエルの家にむかって覚えられた。地のもろもろのはては、われらの神の勝利を見た。
関根訳98篇3節 彼はイスラエルの家に向かってその恵みと真実(まこと)を忘れ給わなかった。地のすべての果てまでもわれらの神の救いを見た。
新共同98篇3節 イスラエルの家に対する 慈しみとまことを御心に留められた。地の果てまですべての人は わたしたちの神の救いの御業を見た。


〔2〕全地よよろこびうたえ(4−6)
98篇4節それ故全地(ぜんち)よ、エホバにむかひて(よろこ)ばしき(こゑ)をあげよ、(こゑ)をはなちてよろこびうたへ、()めうたへ。如何にうたいても足れりということなし。

文語訳98篇4節 全地(ぜんち)よヱホバにむかひて(よろこ)ばしき(こゑ)をあげよ(こゑ)をはなちてよろこびうたへ()めうたへ
口語訳98篇4節 全地よ、主にむかって喜ばしき声をあげよ。声を放って喜び歌え、ほめうたえ。
関根訳98篇3節 全地よ、ヤヴェに向かって声をあげ歓呼して、喜びかつ歌え。
新共同98篇4節 全地よ、主に向かって喜びの叫びをあげよ。歓声をあげ、喜び歌い、ほめ歌え。


98篇5節(こと)をもて〔エホバをほめうたへ、〕(こと)〔の()〕と(うた)のこゑとをもて《エホバをほめうたへ。》【せよ】

文語訳98篇5節 (こと)をもてヱホバをほめうたへ (こと)()(うた)のこゑとをもてせよ
口語訳98篇5節 琴をもって主をほめうたえ。琴と歌の声をもってほめうたえ。
関根訳98篇5節 ヴェを琵琶をもってたたえ、琵琶にあわせて大声で歌え。
新共同98篇5節 琴に合わせてほめ歌え 琴に合わせ、楽の音に合わせて。


98篇6節ラツパと角笛(つのぶえ)《の()とをもて》【をふきならし】(わう)エホバのみまへに(よろこ)ばしき(こゑ)をあげよ。あらゆる音楽を奏でつゝエホバに向いてよろこびうたえ。

文語訳98篇6節 ラッパと角笛(つのぶえ)をふきならし (わう)ヱホバのみまへによろこばしき(こゑ)をあげよ
口語訳98篇6節 ラッパと角笛の音をもって王なる主の前に喜ばしき声をあげよ。
関根訳98篇6節 ラッパと角笛の()にあわせて王ヤヴェの前に声をあげよ。
新共同98篇6節 ラッパを吹き、角笛を響かせて 王なる主の御前に喜びの叫びをあげよ。


〔3〕自然界もまたこの歓呼に加わらん(7−9)
98篇7節(うみ)とそのなかに()つるもの、世界(せかい)と《その(なか)》【せかい】にすむものと()りどよむべし。全世界がイスラエルとそのよろこびを共にすればなり。

文語訳98篇7節 (うみ)とそのなかに()つるもの 世界(せかい)とせかいにすむものと鳴響(なりどよ)むべし
口語訳98篇7節 海とその中に満ちるもの、世界とそのうちに住む者とは鳴りどよめけ。
関根訳98篇7節 海とその中に満つるものはどよめき世界とその中に住む者はなりどよめけ。
新共同98篇7節 とどろけ、海とそこに満ちるもの 世界とそこに住むものよ。


98篇8節河々(かはがは)は》【大水は】よろこびてその()()ち〔もろもろの〕(やま)(やま))はあひともに*エホバのみまへによろこびうたふべし。森羅万象一としてこのよろこびをうたわざるはなし。

文語訳98篇8節 大水(おほみづ)はその()をうち もろもろの(やま)はあひともにヱホバの(みまへ)によろこびうたふべし
口語訳98篇8節 大水はその手を打ち、もろもろの山は共に主のみ前に喜び歌え。
関根訳98篇8節 多くの川は手をうちならし山々もともに喜べよ、
新共同98篇8節 潮よ、手を打ち鳴らし 山々よ、共に喜び歌え


補註
「エホバのみまへに」は原文によれば9節に入る。


98篇9節(そは)エホバ()(さば)かん《とて》【ために】(きた)りたまへばなり、エホバ地を審き給う、これにまさりてよろこばしきことあらんや。エホバ((せい)()をもて世界(せかい)をさばき、公平(こうへい)をもて〔もろもろの〕(たみ)(ら)を(さば)きたまはん。正義と公平とはエホバの統治の要素なればなり。

文語訳98篇9節 ヱホバ()をさばかんために(きた)りたまへばなり ヱホバ()をもて世界(せかい)をさばき 公平(こうへい)をもてもろもろの(たみ)をさばきたまはん
口語訳98篇9節 主は地をさばくために来られるからである。主は義をもって世界をさばき、公平をもってもろもろの民をさばかれる。
関根訳98篇9節 地を(さば)かんとて来り給うヤヴェの間に。彼は義をもって世界を(さば)き公平をもって諸国民を審き給う。
新共同98篇9節 主を迎えて。主は来られる、地を裁くために。主は世界を正しく裁き 諸国の民を公平に裁かれる。