詩篇略註に関する凡例


一 詩篇は他の諸書と性質を異にする関係上、略註の形式も自ら他の書と異るようになった。

二 他の諸書において萬止むを得ざる場合のみ私訳を試みることしたのであるが、詩篇の場合は現行訳が誤訳にあらざる場合でも次のごとき場合には随所に私訳を試みた。

イ、     ヘブル語の原詩は大体非常に簡潔であるゆえ、邦訳をもできるだけこれに応じて簡潔ならしめる。

ロ、     現行訳では複数名詞を「もろもろの云々」と訳しているけれども原語に、コル(凡て)がある場合も「もろもろの」と訳されている故、単なる複数の場合は、これと区別するためこれを除いた。

ハ、     原語が同一でも現行訳は詩形を美化するために殊更に異る訳を用いているようであるが、かかる場合なるべく原語に近付けるために同一の訳語を用いた。

ニ、     できるだけ現存のヘブル語の本文に従ったけれども、母音符を変更するか、または子音の一二を変更することによりて非常に適切なる意味の変化を得る場合は、この改革を採用した。ただし近頃の学者の傾向に従うことをせず、かかる場合は極めて必要なる少数の場合に限った。

ホ、     トーラー(律法)、ツェダカー(正義)、カーヴォード(栄光)、ゴーイーム(異邦、異邦人)等の訳語が略一定せる文字はこの訳語に改めた。

三 各篇の作られし時代および作者等に関しては多くの学者の為すごとく、推測を基礎とせる断定を与えることをせず、ただ大体としてその詩の背景として適当なる時代、場合、作者を示唆するに止めた。

四 各篇の後に必要ある箇所の補註を附した。ただし補註においては、読者の要求の程度を考えて、原語に関する詳述を避けた。この補註のゴシック文字は本文の節の数字である。

五 本文にある*印は補註を参照せよとの意味である。

六 「神」の原語は普通「エロヒム」であるが、それが「エル」である場合は「エル」と振り仮名を施した。

 

 

旧約聖書略註(中)全体の凡例

 

-       本書の表題はこれを篇、款、項、目に別けた。但し各書の性質に応じてこの区分法を用いざるものまたはこれを変更せるものもある。

-       旧約聖書現行訳の中、訂正を必要とするものは私訳をも合わせ掲げた。但し出来るだけ現行訳を取ることとした。

-       現行訳に用いられている漢字の中、目下普通に使用せられない種類のものは、これを普通に使用せらるる文字に書き改めた。また動詞の語尾の変化する部分は、現行訳にては振り仮名を以って表しているけれども、これを本文の中に入れることとした。

-       現行訳にヱホバとあるをエホバとした。発音上この方が正しいからである。近来ヤーヴェなる読み方が一般に用いられているけれども、本書では現行訳にようこととした。

-       本書の使用上の注意は新約聖書略註の場合と同一である。

-       中巻以下においては私訳の部分を《》形の括弧を以って包みこれに相当する現行訳を【】の括弧を以って包んだ。それゆえに現行訳のままを読み下すためには《》内の部分を無視して【】内の部分に連絡すれば可なり(Web化では活字の大きさを統一し、聖書本文を青、略註を黒で表した)。