詩篇第三巻(73−89篇)は第二巻と共にエロヒム詩集と称えらるる一団をなす。而して第三巻の主要部(73−83)はアサフの歌の表題を持つ詩であって84篇以下はダビデのうたとコラの子のうたとの混合である(なお他に詩50篇がアサフのうたである)。アサフはダビデの楽師として選ばれ、ヘマンとエタン(又はエドトン)と共に神の宮の音楽の事を掌ったレビ人であった。彼らは契約の櫃のエルサレム入りに際して楽隊長であった(歴代上15:16−24。16:37、42)。またアサフの子らも、ヘマン、エタンの子らと共にダビデの伶人として神の家の務をなし、アサフの四人の子は二十四の楽隊の中の四つの長であった。而してアサフの一族の中においてはアサフが殊に優れていたためか、アサフ詩集には単にアサフのうたと名付けられており(「コラの子らのうた」参照)、また彼は単に一片の楽師ではなく、信仰に燃えし熱情を有する先見者(預言者)であった(歴代下29:30)。
この詩集の特徴は全体が国民詩愛国詩である点である。その結果神は常に審判者としてあらわれ、また詩の中に神御自身が語り給う場合多く、またイスラエルとエホバとの関係は常に強調せられ、イスラエルの歴史は教訓的に屡々引用せられている(第78篇のごときその著しきもの)。