黒崎幸吉著 旧約聖書略註 Web版 詩篇





詩篇 第148篇

関根訳救いの讃美


前篇と同様の思想と形式とを有つ詩であって略同時代の作と推定し得る処のものである。1−6節において天に属する凡てのものをしてエホバをほめたゝえしめ、7−13節において地に属する凡てのものをしてエホバをほめたゝえしめている。而して最後に14節においてイスラエルに対する神の特別の恩恵をうたう。イスラエル中心の思想であってイスラエルの救は神のよろこびたまう処たるのみならず全被造物のよろこびであるとする思想である。


〔1〕天よエホバをほめたゝえよ(1−6)
*148篇1節《ヤハ》【エホバ】をほめたゝへよ(ハレルヤ)、〔もろもろの〕(てん)よりエホバをほめたゝへよ、〔もろもろの〕天の(たか)(ところ)にてエホバをほめたゝへよ。

文語訳148篇1節 ヱホバをほめたゝへよ もろもろの(てん)よりヱホバをほめたゝへよ もろもろの高所(たかきところ)にてヱホバをほめたゝへよ
口語訳148篇1節 主をほめたたえよ。もろもろの天から主をほめたたえよ。もろもろの高き所で主をほめたたえよ。
関根訳148篇1節 をほめ讃えよ。天からヤヴェをほめ讃えよ。高き所で彼をほめ讃えよ。
新共同148篇1節 ハレルヤ。天において主を賛美せよ。高い天で主を賛美せよ。


補註
1-6において自然界がエホバを賛美することは自然の深き心持をうたえる言葉である。ロマ8:19-22もこの心持である。


148篇2節その天使(みつかひ)よ、みなエホバをほめたゝへよ、その天使たちの萬軍(ばんぐん)よ、みなエホバをほめたゝへよ。

文語訳148篇2節 その天使(みつかひ)よみなヱホバをほめたゝへよ その萬軍(ばんぐん)よみなヱホバをほめたゝへよ
口語訳148篇2節 その天使よ、みな主をほめたたえよ。その万軍よ、みな主をほめたたえよ。
関根訳148篇2節 そのすべてのみ使いは彼をほめ讃えよ。そのすべての(つわもの)たちは彼をほめ讃えよ。
新共同148篇2節 御使いらよ、こぞって主を賛美せよ。主の万軍よ、こぞって主を賛美せよ。


148篇3節()よ、(つき)よ、エホバをほめたゝへよ、 ひかりの(ほし)よ、みなエホバをほめたゝへよ。

文語訳148篇3節 ()(つき)よヱホバをほめたゝへよ ひかりの(ほし)よみなヱホバをほめたゝへよ
口語訳148篇3節 日よ、月よ、主をほめたたえよ。輝く星よ、みな主をほめたたえよ。
関根訳148篇3節 日と月は彼をほめ讃えよ。すべての光の星は彼をほめ讃えよ。
新共同148篇3節 日よ、月よ主を賛美せよ。輝く星よ主を賛美せよ。


148篇4節〔もろもろの〕((しよ)(てん)(てん)なる最高の天よ、(てん)蒼穹のうへなる(みづ)よ、エホバをほめたゝへよ。

文語訳148篇4節 もろもろの(てん)のてんよ (てん)のうへなる(みづ)よ ヱホバをほめたゝへよ
口語訳148篇4節 いと高き天よ、天の上にある水よ、主をほめたたえよ。
関根訳148篇4節 諸天の天は彼をほめ讃え天の上なる水も彼をほめ讃えよ。
新共同148篇4節 天の天よ 天の上にある水よ主を賛美せよ。


148篇5節これらはみな声をあわせてエホバの聖名(みな)をほめたゝふべし、かくて全宇宙の全被造物は一声にエホバをほめたたえん。そはエホバ御言を出して(めい)じたまひたればかれらは(つく)られた(ればな)り。

文語訳148篇5節 これらはみなヱホバの聖名(みな)をほめたゝふべし そはヱホバ(めい)じたまひたればかれらは(つく)られたり
口語訳148篇5節 これらのものに主のみ名をほめたたえさせよ、これらは主が命じられると造られたからである。
関根訳148篇5節 これらはヤヴェのみ名をほめ讃うべきである。彼が命じ、これらのものは創られれたのだ!
新共同148篇5節 主の御名を賛美せよ。主は命じられ、すべてのものは創造された。


148篇6節エホバまた(これ)()をいやとほながに()決して滅ぶることなからしめたまひたり、(また)()ゆまじき法則(のり)》【すぎうすまじき詔命】をくだしたまへり。かくして自然の法則を定めて永遠にこれを守りたまう。

文語訳148篇6節 ヱホバまた此等(これら)をいやとほながに()てたまひたり (また)すぎうすまじき詔命(みことのり)をくだしたまへり
口語訳148篇6節 主はこれらをとこしえに堅く定め、越えることのできないその境を定められた。
関根訳148篇6節 彼は彼らを永遠(とこしえ)まで立て法を与えてこれに従わせる。
新共同148篇6節 主はそれらを世々限りなく立て 越ええない掟を与えられた。


〔2〕地よエホバをほめたゝえよ(7−13)
148篇7節(たつ)よ、すべての(ふち)よ、()よりエホバをほめたゝへよ。

文語訳148篇7節 (たつ)よ すべての(ふち)()よりヱホバをほめたゝへよ
口語訳148篇7節 海の獣よ、すべての淵よ、地から主をほめたたえよ。
関根訳148篇7節 地からヤヴェをほめ讃えよ、竜とすべての(ふち)
新共同148篇7節 地において主を賛美せよ。海に住む竜よ、深淵よ


148篇8節無生物としては()よ、(あられ)よ、(ゆき)よ、(きり)よ、みことばにしたがふ狂風(あらし)よ、

文語訳148篇8節 ()(あられ)(ゆき)(きり)よ みことばにしたがふ狂風(あらし)
口語訳148篇8節 火よ、あられよ、雪よ、霜よ、み言葉を行うあらしよ、
関根訳148篇8節 火と(ひょう)よ、雪と霧み言葉を行なう暴風(あらし)
新共同148篇8節 火よ、雹よ、雪よ、霧よ 御言葉を成し遂げる嵐よ


148篇9節〔もろもろの〕(やま)(ならびに)もろもろの(をか)植物としては()をむすぶ()、すべての香柏(かうはく)よ、

文語訳148篇9節 もろもろの(やま) もろもろのをか ()をむすぶ() すべての香柏(かうはく)
口語訳148篇9節 もろもろの山、すべての丘、実を結ぶ木、すべての香柏よ、
関根訳148篇9節 山々とすべての丘果樹とすべてのいと杉よ
新共同148篇9節 山々よ、すべての丘よ 実を結ぶ木よ、杉の林よ


148篇10節動物としては(けもの)、もろもろの《家畜(かちく)》【牲畜】はふもの(つばさ)ある(とり)よ、

文語訳148篇10節 (けもの) もろもろの牲畜(けだもの) はふもの (つばさ)ある(とり)
口語訳148篇10節 野の獣、すべての家畜、這うもの、翼ある鳥よ、
関根訳148篇10節 野獣とすべての家畜這()うものと翼ある鳥よ
新共同148篇10節 野の獣よ、すべての家畜よ 地を這うものよ、翼ある鳥よ


*148篇11節人間としては()(わう)たち、もろもろの(たみ)()諸侯(きみたち)《および》【よ地の】もろもろの審士(さばきびと)よ、

文語訳148篇11節 ()(わう)たち もろもろのたみ ()諸侯(きみたち)()のもろもろの審士(さばきびと)
口語訳148篇11節 地の王たち、すべての民、君たち、地のすべてのつかさよ、
関根訳148篇11節 地の王とすべての民草司(つかさ)たちとすべての地の裁き人らよ
新共同148篇11節 地上の王よ、諸国の民よ 君主よ、地上の支配者よ


補註
イスラエルの回復のよろこびを全世界の王等をして讃美せしめんとする処にイスラエル中心の思想が顕著である。


148篇12節 (わか)きをのこ、(わか)きをみな、()いたる(ひと)、をさなきものよ、

文語訳148篇12節 (わか)きをのこ (わか)きをみな ()いたる(ひと) をさなきものよ
口語訳148篇12節 若い男子、若い女子、老いた人と幼い者よ、
関根訳148篇12節 若き男、若き女も、老いたるも若きもともに
新共同148篇12節 若者よ、おとめよ 老人よ、幼子よ。


148篇13節みなエホバの聖名(みな)をほめたゝふべし、(そは)《かれの聖名(みな)のみたかくあがり、》【その聖名はたかくして類なく】その榮光(えいくわう)()よりも(てん)よりもうへにあればなり。

文語訳148篇13節 みなヱホバの聖名(みな)をほめたゝふべし その聖名(みな)はたかくして(たぐひ)なく そのえいくわうは()よりも(てん)よりもうへにあればなり
口語訳148篇13節 彼らをして主のみ名をほめたたえさせよ。そのみ名は高く、たぐいなく、その栄光は地と天の上にあるからである。
関根訳148篇13節 ヴェのみ名をほめ讃うべきである。げにそのみ名のみ高く、その栄光は地と天の上にある。
新共同148篇13節 主の御名を賛美せよ。主の御名はひとり高く 威光は天地に満ちている。


〔3〕イスラエルよエホバをほめたゝえよ(14)
148篇14節エホバは是まで屈辱の中にありしその(たみ)イスラエルのために〔(ひと)つの〕(つの)をあげその民の権威と能力とを回復したまへり、イスラエルがかく回復せしめられし事はこはそのもろもろの聖徒(せいと)のほまれ、エホバにちかき(たみ)エホバの特に選びたまえる民なるイスラエルの子等(こら)のほまれなり、《ヤハ》【エホバ】を讃稱(ほめたゝ)へよ(ハレルヤ)

文語訳148篇14節 ヱホバはその(たみ)のために(ひと)つの(つの)をあげたまへり こはそのもろもろの聖徒(せいと)のほまれ ヱホバにちかき(たみ)なるイスラエルの子輩(こら)のほまれなり ヱホバを讃稱(ほめたた)へよ
口語訳148篇14節 主はその民のために一つの角をあげられた。これはすべての聖徒のほめたたえるもの、主に近いイスラエルの人々のほめたたえるものである。主をほめたたえよ。
関根訳148篇14節 彼はその民のために一つの角をあげられた。これはすべて彼を(うやも)う者、イスラエルの子ら、彼に近い民のための讃美そのもの。ヤヴェをほめ讃えよ。
新共同148篇14節 主は御自分の民の角を高く上げてくださる。それは主の慈しみに生きるすべての人の栄誉。主に近くある民、イスラエルの子らよ。ハレルヤ。