黒崎幸吉著 註解新約聖書 Web版

新共同訳列王記下第8章

◆シュネムの婦人への返済

8章1節 エリシャは、かつてその子供を生き返らせてやったことのある婦人に言った。「あなたは家族と共に立ち去り、住める所に移り住みなさい。主が飢饉を呼び起こし、それはこの地にも及んで七年も続くからだ。」

8章2節 婦人は直ちに神の人の言葉どおりに行動し、家族と共に立ち去り、ペリシテ人の地に七年間住んだ。

8章3節 七年たってから、その婦人はペリシテ人の地から帰り、王のもとに自分の家と畑の返還を求めて訴え出た。

8章4節 そのとき、王は神の人の従者ゲハジに話しかけ、「エリシャの行った大いなる業をすべて語り聞かせてくれ」と言っていた。

8章5節 神の人が死人を生き返らせたことをゲハジが王に語り聞かせていると、ちょうどそのとき、かつて子供を生き返らせてもらった婦人が、自分の家と畑のことで訴えに来たのであった。ゲハジは、「わたしの主君、王よ、これがその婦人です。またこれがその子で、エリシャはこの子を生き返らせたのです」と言った。

8章6節 婦人は王の求めに応じてその事実を語った。そこで王は彼女のために、一人の宦官に次のように命じた。「この婦人の物をすべて返しなさい。またこの地を後にした日から今に至るまでの畑のすべての収穫も返しなさい。」

◆ダマスコでのエリシャの預言

8章7節 エリシャがダマスコに来たとき、アラムの王ベン・ハダドは病気であった。「神の人がここに来た」と知らせる者があって、

8章8節 王はハザエルに言った。「贈り物を持って神の人を迎えに行き、わたしのこの病気が治るかどうか、彼を通して主の御旨を尋ねよ。」

8章9節 ハザエルは贈り物としてダマスコのすべての価値あるものをらくだ四十頭に載せて携え、エリシャを迎えに行った。彼はエリシャの前に立って言った。「あなたの子、アラムの王ベン・ハダドがわたしをあなたに遣わしました。この病気が治るかどうかと言っています。」

8章10節 エリシャは言った。「行って王に言うがいい。『あなたは必ず治る』と。しかし、主は彼が必ず死ぬことをわたしに示された。」

8章11節 神の人は、ハザエルが恥じ入るほど、じっと彼を見つめ、そして泣き出したので、

8章12節 ハザエルは、「どうしてあなたは泣かれるのですか」と尋ねた。エリシャは答えた。「わたしはあなたがイスラエルの人々に災いをもたらすことを知っているからです。あなたはその砦に火を放ち、若者を剣にかけて殺し、幼子を打ちつけ、妊婦を切り裂きます。」

8章13節 ハザエルは、「この僕、この犬にどうしてそんな大それた事ができましょうか」と言ったが、エリシャは、「主はあなたがアラムの王になることをわたしに示された」と答えた。

8章14節 彼はエリシャのもとを離れ、自分の主君のところに帰ると、王は、「エリシャはお前に何と言ったか」と尋ねたので、「必ず治ると彼は言いました」と答えた。

8章15節 しかし翌日、彼は布を取って水に浸し、王の顔を覆ったので、王は死んだ。ハザエルが彼に代わって王となった。

◆ユダの王ヨラム

8章16節 イスラエルの王アハブの子ヨラムの治世第五年に、――ヨシャファトがユダの王であったが――ユダの王ヨシャファトの子ヨラムが王となった。

8章17節 彼は三十二歳で王となり、八年間エルサレムで王位にあった。

8章18節 彼はアハブの娘を妻としていたので、アハブの家が行ったように、イスラエルの王たちの道を歩み、主の目に悪とされることを行った。

8章19節 しかし、主はその僕ダビデのゆえに、ユダを滅ぼそうとはされなかった。主は、ダビデとその子孫に絶えずともし火を与えると約束されたからである。

8章20節 ヨラムの治世に、エドムがユダに反旗を翻してその支配から脱し、自分たちの王を立てた。

8章21節 ヨラムは全戦車隊を率いてツァイルに進み、夜襲を試みて、自分を包囲するエドム兵とその戦車隊の長たちを打ち破った。しかし、その民は自分の天幕に逃げ帰った。

8章22節 こうしてエドムはユダに反旗を翻してその支配から脱し、今日に至っている。そのころ、同時にリブナが反旗を翻した。

8章23節 ヨラムの他の事績、彼の行ったすべての事は、『ユダの王の歴代誌』に記されている。

8章24節 ヨラムは先祖と共に眠りにつき、先祖と共にダビデの町に葬られた。その子アハズヤがヨラムに代わって王となった。

◆ユダの王アハズヤ

8章25節 イスラエルの王、アハブの子ヨラムの治世第十二年に、ユダの王ヨラムの子アハズヤが王となった。

8章26節 アハズヤは二十二歳で王となり、一年間エルサレムで王位にあった。その母は名をアタルヤといい、イスラエルの王オムリの孫娘であった。

8章27節 アハズヤはこのようにアハブの家と姻戚関係にあったため、アハブの家の道を歩み、アハブの家と同じように主の目に悪とされることを行った。

8章28節 彼はアハブの子ヨラムと共にアラムの王ハザエルと戦うため、ラモト・ギレアドに行った。しかし、アラム兵がヨラムに傷を負わせた。

8章29節 ヨラム王は、アラムの王ハザエルとのラマにおける戦いでアラム兵に負わされた傷をいやすため、イズレエルに戻った。ユダの王、ヨラムの子アハズヤは、病床にあるアハブの子ヨラムを見舞うため、イズレエルに下って行った。


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