黒崎幸吉著 註解新約聖書 Web版

新共同訳列王記下第9章

◆イエフの謀反

9章1節 預言者エリシャは預言者の仲間の一人を呼んで言った。「腰に帯を締め、手にこの油の壺を持って、ラモト・ギレアドに行きなさい。

9章2節 そこに着いたら、ニムシの孫でヨシャファトの子であるイエフに会いなさい。あなたは入って彼をその仲間の間から立たせ、奥の部屋に連れて行き、

9章3節 油の壺を取って彼の頭に注いで言いなさい。『主はこう言われる。わたしはあなたに油を注ぎ、あなたをイスラエルの王とする』と。そして戸を開けて逃げて来なさい。ぐずぐずしていてはならない。」

9章4節 その若者、預言者の従者はラモト・ギレアドに行った。

9章5節 彼がそこに着くと、軍の長たちが席に着いていた。彼が、「将軍、あなたに申し上げたいことがあります」と言うと、イエフは、「我々のうちの誰に対してか」と聞き返した。彼は、「将軍、あなたに対してです」と答えた。

9章6節 イエフは立って家に入って来た。若者は彼の頭に油を注いで言った。「イスラエルの神、主はこう言われる。『わたしはあなたに油を注ぎ、あなたを主の民イスラエルの王とする。

9章7節 あなたはあなたの主君アハブの家を撃たねばならない。こうしてわたしはイゼベルの手にかかったわたしの僕たち、預言者たちの血、すべての主の僕たちの血の復讐をする。

9章8節 アハブの家は全滅する。わたしは、イスラエルにおいて縛られている者も解き放たれている者も、アハブに属する男子をすべて絶ち滅ぼし、

9章9節 アハブの家をネバトの子ヤロブアムの家のようにし、アヒヤの子バシャの家のようにする。

9章10節 犬がイズレエルの所有地でイゼベルを食い、彼女を葬る者はいない。』」彼は戸を開けて逃げ去った。

9章11節 イエフが主君の家臣たちのところに出て行くと、彼らは、「どうだった。なぜあの狂った男があなたを訪ねて来たのか」と聞いた。イエフは、「あの男が誰で、何を言ったのか、あなたたちには分かっているはずだ」と答えたが、

9章12節 彼らは言った。「それは違う。我々によく説明してくれ。」そこで彼は言った。「あの男はわたしにこのように告げた。『主はこう言われる。わたしはあなたに油を注ぎ、あなたをイスラエルの王とする。』」

9章13節 彼らはおのおの急いで上着を脱ぎ、階段の上にいた彼の足もとに敷き、角笛を吹いて、「イエフが王になった」と宣言した。

9章14節 ニムシの孫でヨシャファトの子であるイエフは、ヨラムに対して謀反を起こした。――ヨラムは全イスラエルを率い、アラムの王ハザエルに対して、ラモト・ギレアドの防衛に当たったが、

9章15節 アラムの王ハザエルとの戦いでアラム兵に傷を負わされ、それをいやすためイズレエルに戻っていた。――イエフは言った。「もしあなたたちが本気でいるなら、だれもこの町を抜け出してイズレエルに知らせに行ってはならない。」

9章16節 それから、イエフは戦車に乗ってイズレエルに向かった。ヨラムがそこで床に伏していたからである。またユダの王アハズヤがヨラムを見舞いに下って来ていた。

9章17節 イズレエルの塔の上には見張りが立っていたが、イエフの軍勢が近づいて来るのを見て、「軍勢が見えます」と言った。ヨラムは、「騎兵を一人選んで迎えに行かせ、道中無事だったか、尋ねさせよ」と命じた。

9章18節 騎兵は迎えに行って、「王が、道中御無事でしたかと尋ねておられます」と伝えた。しかしイエフは、「道中無事であったかどうか、お前と何のかかわりがあるのか。わたしの後ろにまわれ」と言った。一方、見張りは、「使いの者は彼らのところに行ったまま帰って来ません」と知らせた。

9章19節 ヨラムは騎兵をもう一人遣わした。彼も彼らのところに行って、「王が、道中御無事でしたかと尋ねておられます」と伝えた。しかし、イエフは、「道中無事であったかどうか、お前と何のかかわりがあるのか。わたしの後ろにまわれ」と言った。

9章20節 見張りはまた、「彼らのところに行ったまま帰って来ません。あの戦車の走らせ方はニムシの子イエフの走らせ方と似ています。狂ったように走らせているからです」と報告した。

9章21節 ヨラムは、「馬をつなげ」と命じた。戦車に馬がつながれると、イスラエルの王ヨラムとユダの王アハズヤは、それぞれ自分の戦車に乗って出て行った。彼らはイエフを迎えようとして出て行き、イズレエル人ナボトの所有地で彼に出会った。

9章22節 ヨラムはイエフを見ると、「イエフ、道中無事だったか」と尋ねたが、イエフは答えた。「あなたの母イゼベルの姦淫とまじないが盛んに行われているのに、何が無事か。」

9章23節 ヨラムは手綱を返して逃げ出し、アハズヤに、「アハズヤよ、裏切りだ」と叫んだ。

9章24節 イエフは手に弓を取り、ヨラムの腕と腕の間を射た。矢は心臓を射貫き、彼は戦車の中に崩れ落ちた。

9章25節 イエフは侍従ビドカルに言った。「彼をイズレエル人ナボトの所有地の畑に運んで投げ捨てよ。わたしがお前と共に馬に乗って彼の父アハブに従って行ったとき、主がこの託宣を授けられたことを思い起こせ。

9章26節 『わたしは昨日ナボトの血とその子らの血を確かに見た』と主は言われた。また、『わたしはこの所有地であなたに報復する』と主は言われた。今、主の言葉どおり、彼をその所有地に運んで投げ捨てよ。」

9章27節 ユダの王アハズヤはこれを見て、ベト・ガンの道を通って逃げた。イエフはその後を追い、「彼も撃ってしまえ」と命じた。アハズヤは、イブレアムの近くのグルの坂を行く戦車の中で傷を負い、メギドまで逃げて、そこで死んだ。

9章28節 彼の家臣たちはその遺体を車に乗せてエルサレムに運び、ダビデの町の彼の墓に先祖と共に葬った。

9章29節 アハブの子ヨラムの治世第十一年に、アハズヤはユダの王となった。

9章30節 イエフがイズレエルに来たとき、イゼベルはそれを聞いて、目に化粧をし、髪を結い、窓から見下ろしていた。

9章31節 イエフが城門を入って来ると、「主人殺しのジムリ、御無事でいらっしゃいますか」と言った。

9章32節 彼は窓を見上げ、「わたしの味方になる者は誰だ、誰だ」と言うと、二、三人の宦官が見下ろしたので、

9章33節 「その女を突き落とせ」と言った。彼らがイゼベルを突き落としたので、その血は壁や馬に飛び散り、馬が彼女を踏みつけた。

9章34節 彼は家に入って食事をしてから言った。「あの呪われた女の面倒を見てやれ。彼女も王女だったのだから、葬ってやれ。」

9章35節 だが、人々が葬ろうとして行くと、頭蓋骨と両足、両手首しかなかった。

9章36節 彼らが帰って、そのことを知らせると、イエフは言った。「これは主の言葉のとおりだ。主はその僕ティシュベ人エリヤによってこう言われた。『イゼベルの肉は、イズレエルの所有地で犬に食われ、

9章37節 イゼベルの遺体はイズレエルの所有地で畑の面にまかれた肥やしのようになり、これがイゼベルだとはだれも言えなくなる。』」


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