黒崎幸吉著 註解新約聖書 Web版

新共同訳ヨブ記第29章

◆ヨブの嘆き

29章1節 ヨブは言葉をついで主張した。

29章2節 どうか、過ぎた年月を返してくれ/神に守られていたあの日々を。

29章3節 あのころ、神はわたしの頭上に/灯を輝かせ/その光に導かれて/わたしは暗黒の中を歩いた。

29章4節 神との親しい交わりがわたしの家にあり/わたしは繁栄の日々を送っていた。

29章5節 あのころ、全能者はわたしと共におられ/わたしの子らはわたしの周りにいた。

29章6節 乳脂はそれで足を洗えるほど豊かで/わたしのためには/オリーブ油が岩からすら流れ出た。

29章7節 わたしが町の門に出て/広場で座に着こうとすると

29章8節 若者らはわたしを見て静まり/老人らも立ち上がって敬意を表した。

29章9節 おもだった人々も話すのをやめ/口に手を当てた。

29章10節 指導者らも声をひそめ/舌を上顎に付けた。

29章11節 わたしのことを聞いた耳は皆、祝福し/わたしを見た目は皆、賞賛してくれた。

29章12節 わたしが身寄りのない子らを助け/助けを求める貧しい人々を守ったからだ。

29章13節 死にゆく人さえわたしを祝福し/やもめの心をもわたしは生き返らせた。

29章14節 わたしは正義を衣としてまとい/公平はわたしの上着、また冠となった。

29章15節 わたしは見えない人の目となり/歩けない人の足となった。

29章16節 貧しい人々の父となり/わたしにかかわりのない訴訟にも尽力した。

29章17節 不正を行う者の牙を砕き/その歯にかかった人々を奪い返した。

29章18節 わたしはこう思っていた/「わたしは家族に囲まれて死ぬ。人生の日数は海辺の砂のように多いことだろう。

29章19節 わたしは水際に根を張る木/枝には夜露を宿すだろう。

29章20節 わたしの誉れは常に新しく/わたしの弓はわたしの手にあって若返る。」

29章21節 人々は黙して待ち望み/わたしの勧めに耳を傾けた。

29章22節 わたしが語れば言い返す者はなく/わたしの言葉は彼らを潤した。

29章23節 雨を待つように/春の雨に向かって口を開くように/彼らはわたしを待ち望んだ。

29章24節 彼らが確信を失っているとき/わたしは彼らに笑顔を向けた。彼らはわたしの顔の光を/曇らせることはしなかった。

29章25節 わたしは嘆く人を慰め/彼らのために道を示してやり/首長の座を占め/軍勢の中の王のような人物であった。


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