黒崎幸吉著 註解新約聖書 Web版

新共同訳創世記第34章

◆シケムでの出来事

34章1節 あるとき、レアとヤコブとの間に生まれた娘のディナが土地の娘たちに会いに出かけたが、

34章2節 その土地の首長であるヒビ人ハモルの息子シケムが彼女を見かけて捕らえ、共に寝て辱めた。

34章3節 シケムはヤコブの娘ディナに心を奪われ、この若い娘を愛し、言い寄った。

34章4節 更にシケムは、父ハモルに言った。「どうか、この娘と結婚させてください。」

34章5節 ヤコブは、娘のディナが汚されたことを聞いたが、息子たちは家畜を連れて野に出ていたので、彼らが帰るまで黙っていた。

34章6節 シケムの父ハモルがヤコブと話し合うためにやって来たとき、

34章7節 ヤコブの息子たちが野から帰って来てこの事を聞き、皆、互いに嘆き、また激しく憤った。シケムがヤコブの娘と寝て、イスラエルに対して恥ずべきことを行ったからである。それはしてはならないことであった。

34章8節 ハモルは彼らと話した。「息子のシケムは、あなたがたの娘さんを恋い慕っています。どうか、娘さんを息子の嫁にしてください。

34章9節 お互いに姻戚関係を結び、あなたがたの娘さんたちをわたしどもにくださり、わたしどもの娘を嫁にしてくださいませんか。

34章10節 そして、わたしどもと一緒に住んでください。あなたがたのための土地も十分あります。どうか、ここに移り住んで、自由に使ってください。」

34章11節 シケムも、ディナの父や兄弟たちに言った。「ぜひとも、よろしくお願いします。お申し出があれば何でも差し上げます。

34章12節 どんなに高い結納金でも贈り物でも、お望みどおりに差し上げます。ですから、ぜひあの方をわたしの妻にください。」

34章13節 しかし、シケムが妹のディナを汚したので、ヤコブの息子たちは、シケムとその父ハモルをだましてこう答えた。

34章14節 「割礼を受けていない男に、妹を妻として与えることはできません。そのようなことは我々の恥とするところです。

34章15節 ただ、次の条件がかなえられれば、あなたたちに同意しましょう。それは、あなたたちの男性が皆、割礼を受けて我々と同じようになることです。

34章16節 そうすれば、我々の娘たちをあなたたちに与え、あなたたちの娘を我々がめとります。そして我々は、あなたたちと一緒に住んで一つの民となります。

34章17節 しかし、もし割礼を受けることに同意しないなら、我々は娘を連れてここを立ち去ることにします。」

34章18節 ハモルとその息子シケムは、この条件なら受け入れてもよいと思った。

34章19節 とくにシケムは、ヤコブの娘を愛していたので、ためらわず実行することにした。彼は、ハモル家の中では最も尊敬されていた。

34章20節 ハモルと息子シケムは、町の門のところへ行き町の人々に提案した。

34章21節 「あの人たちは、我々と仲良くやっていける人たちだ。彼らをここに住まわせ、この土地を自由に使ってもらうことにしようではないか。土地は御覧のとおり十分広いから、彼らが来ても大丈夫だ。そして、彼らの娘たちを我々の嫁として迎え、我々の娘たちを彼らに与えようではないか。

34章22節 ただ、次の条件がかなえられれば、あの人たちは我々と一緒に住み、一つの民となることに同意するというのだ。それは、彼らが割礼を受けているように、我々も男性は皆、割礼を受けることだ。

34章23節 そうすれば、彼らの家畜の群れも財産も動物もみな、我々のものになるではないか。それには、ただ彼らの条件に同意さえすれば、彼らは我々と一緒に住むことができるのだ。」

34章24節 町の門のところに集まっていた人々は皆、ハモルと息子シケムの提案を受け入れた。町の門のところに集まっていた男性はこうして、すべて割礼を受けた。

34章25節 三日目になって、男たちがまだ傷の痛みに苦しんでいたとき、ヤコブの二人の息子、つまりディナの兄のシメオンとレビは、めいめい剣を取って難なく町に入り、男たちをことごとく殺した。

34章26節 ハモルと息子シケムも剣にかけて殺し、シケムの家からディナを連れ出した。

34章27節 ヤコブの息子たちは、倒れている者たちに襲いかかり、更に町中を略奪した。自分たちの妹を汚したからである。

34章28節 そして、羊や牛やろばなど、町の中のものも野にあるものも奪い取り、

34章29節 家の中にあるものもみな奪い、女も子供もすべて捕虜にした。

34章30節 「困ったことをしてくれたものだ。わたしはこの土地に住むカナン人やペリジ人の憎まれ者になり、のけ者になってしまった。こちらは少人数なのだから、彼らが集まって攻撃してきたら、わたしも家族も滅ぼされてしまうではないか」とヤコブがシメオンとレビに言うと、

34章31節 二人はこう言い返した。「わたしたちの妹が娼婦のように扱われてもかまわないのですか。」


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