黒崎幸吉著 註解新約聖書 Web版

新共同訳エレミヤ書第32章

◆エレミヤの拘留

32章1節 主からエレミヤに臨んだ言葉。ユダの王ゼデキヤの第十年、ネブカドレツァルの第十八年のことであった。

32章2節 そのとき、バビロンの王の軍隊がエルサレムを包囲していた。預言者エレミヤは、ユダの王の宮殿にある獄舎に拘留されていた。

32章3節 ユダの王ゼデキヤが、「なぜ、お前はこんなことを預言するのか」と言って、彼を拘留したのである。エレミヤの預言はこうである。「主はこう言われる。見よ、わたしはこの都をバビロンの王の手に渡す。彼はこの町を占領する。

32章4節 ユダの王ゼデキヤはカルデア人の手から逃げることはできない。彼は必ずバビロンの王の手に渡され、王の前に引き出されて直接尋問される。

32章5節 ゼデキヤはバビロンへ連行され、わたしが彼を顧みるときまで、そこにとどめ置かれるであろう、と主は言われる。お前たちはカルデア人と戦っても、決して勝つことはできない。」

◆アナトトの畑を買う

32章6節 さて、エレミヤは言った。「主の言葉がわたしに臨んだ。

32章7節 見よ、お前の伯父シャルムの子ハナムエルが、お前のところに来て、『アナトトにあるわたしの畑を買い取ってください。あなたが、親族として買い取り、所有する権利があるのです』と言うであろう。」

32章8節 主の言葉どおり、いとこのハナムエルが獄舎にいるわたしのところに来て言った。「ベニヤミン族の所領に属する、アナトトの畑を買い取ってください。あなたに親族として相続し所有する権利があるのですから、どうか買い取ってください。」わたしは、これが主の言葉によることを知っていた。

32章9節 そこで、わたしはいとこのハナムエルからアナトトにある畑を買い取り、銀十七シェケルを量って支払った。

32章10節 わたしは、証書を作成して、封印し、証人を立て、銀を秤で量った。

32章11節 そしてわたしは、定められた慣習どおり、封印した購入証書と、封印されていない写しを取って、

32章12節 マフセヤの孫であり、ネリヤの子であるバルクにそれを手渡した。いとこのハナムエルと、購入証書に署名した証人たちと、獄舎にいたユダの人々全員がそれを見ていた。

32章13節 そして、彼らの見ている前でバルクに命じた。

32章14節 「イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。これらの証書、すなわち、封印した購入証書と、その写しを取り、素焼きの器に納めて長く保存せよ。

32章15節 イスラエルの神、万軍の主が、『この国で家、畑、ぶどう園を再び買い取る時が来る』と言われるからだ。」

◆エレミヤの祈り

32章16節 購入証書をネリヤの子バルクに渡したあとで、わたしは主に祈った。

32章17節 「ああ、主なる神よ、あなたは大いなる力を振るい、腕を伸ばして天と地を造られました。あなたの御力の及ばない事は何一つありません。

32章18節 あなたは恵みを幾千代に及ぼし、父祖の罪を子孫の身に報いられます。大いなる神、力ある神、その御名は万軍の主。

32章19節 その謀は偉大であり、御業は力強い。あなたの目は人の歩みをすべて御覧になり、各人の道、行いの実りに応じて報いられます。

32章20節 あなたはエジプトの国で現されたように今日に至るまで、イスラエルをはじめ全人類に対してしるしと奇跡を現し、今日のように御名があがめられるようにされました。

32章21節 あなたは、しるしと奇跡をもって強い力を振るい、腕を伸ばして大いなる恐れを与え、あなたの民イスラエルをエジプトの国から導き出されました。

32章22節 そして、かつて先祖に誓われたとおり、この土地を彼らに賜りました。乳と蜜の流れるこの土地です。

32章23節 ところが、彼らはここに来て、土地を所有すると、あなたの声に聞き従わず、またあなたの律法に従って歩まず、あなたが命じられたことを何一つ行わなかったので、あなたは彼らにこの災いをくだされました。

32章24節 今や、この都を攻め落とそうとして、城攻めの土塁が築かれています。間もなくこの都は剣、飢饉、疫病のゆえに、攻め囲んでいるカルデア人の手に落ちようとしています。あなたの御言葉どおりになっていることは、御覧のとおりです。

32章25節 それにもかかわらず、主なる神よ、あなたはわたしに、『銀で畑を買い、証人を立てよ』と言われました。この都がカルデア人の手に落ちようとしているこのときにです。」

32章26節 主の言葉がエレミヤに臨んだ。

32章27節 「見よ、わたしは生きとし生けるものの神、主である。わたしの力の及ばないことが、ひとつでもあるだろうか。

32章28節 それゆえ、主はこう言われる。わたしはこの都をカルデア人の手に、またバビロンの王ネブカドレツァルの手に渡す。王はこの都を占領する。

32章29節 この都を攻撃しているカルデア人が突入し、火を放って焼き払う。屋上でバアルに香をたき、また他の神々に酒を供えて、わたしを怒らせた多くの家を焼き払う。

32章30節 その初めから、イスラエルの人々とユダの人々は、わが前に悪のみを行ってきた。実にイスラエルの人々は、その手の業によって甚だしくわたしを怒らせてきた、と主は言われる。

32章31節 この都は、建てられた日から今日に至るまで、わたしを怒らせ憤らせてきたので、これをわたしの前から取り除く。

32章32節 イスラエルの人々、ユダの人々が犯して、わたしを怒らせたそのすべての悪事のゆえである。王、高官、祭司、預言者、ユダの人々、エルサレムの住民、皆同罪である。

32章33節 彼らはわたしに背を向け、顔を向けようとしなかった。わたしは繰り返し教え諭したが、聞こうとせず、戒めを受け入れようとはしなかった。

32章34節 彼らは忌むべき偶像を置いて、わたしの名で呼ばれる神殿を汚し、

32章35節 ベン・ヒノムの谷に、バアルの聖なる高台を建て、息子、娘たちをモレクにささげた。しかし、わたしはこのようなことを命じたことはないし、ユダの人々が、この忌むべき行いによって、罪に陥るなどとは思ってもみなかった。」

32章36節 しかし今や、お前たちがバビロンの王、剣、飢饉、疫病に渡されてしまったと言っている、この都について、イスラエルの神、主はこう言われる。

32章37節 「かつてわたしが大いに怒り、憤り、激怒して、追い払った国々から彼らを集め、この場所に帰らせ、安らかに住まわせる。

32章38節 彼らはわたしの民となり、わたしは彼らの神となる。

32章39節 わたしは彼らに一つの心、一つの道を与えて常にわたしに従わせる。それが、彼ら自身とその子孫にとって幸いとなる。

32章40節 わたしは、彼らと永遠の契約を結び、彼らの子孫に恵みを与えてやまない。またわたしに従う心を彼らに与え、わたしから離れることのないようにする。

32章41節 わたしは彼らに恵みを与えることを喜びとし、心と思いを込めて確かに彼らをこの土地に植える。

32章42節 まことに、主はこう言われる。かつて、この民にこの大きな災いをくだしたが、今や、彼らに約束したとおり、あらゆる恵みを与える。

32章43節 この国で、人々はまた畑を買うようになる。それは今、カルデア人の手に渡って人も獣も住まない荒れ地になる、とお前たちが言っているこの国においてである。

32章44節 人々は銀を支払い、証書を作成して、封印をし、証人を立てて、ベニヤミン族の所領や、エルサレムの周辺、ユダの町々、山あいの町々、シェフェラの町々、ネゲブの町々で畑を買うようになる。わたしが彼らの繁栄を回復するからである、と主は言われる。」


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