黒崎幸吉著 註解新約聖書 Web版

新共同訳エレミヤ書第9章

◆ユダの堕落

9章1節 荒れ野に旅人の宿を見いだせるものなら/わたしはこの民を捨て/彼らを離れ去るであろう。すべて、姦淫する者であり、裏切る者の集まりだ。

9章2節 彼らは舌を弓のように引き絞り/真実ではなく偽りをもってこの地にはびこる。彼らは悪から悪へと進み/わたしを知ろうとしない、と主は言われる。

9章3節 人はその隣人を警戒せよ。兄弟ですら信用してはならない。兄弟といっても/「押しのける者(ヤコブ)」であり/隣人はことごとく中傷して歩く。

9章4節 人はその隣人を惑わし、まことを語らない。舌に偽りを語ることを教え/疲れるまで悪事を働く。

9章5節 欺きに欺きを重ね/わたしを知ることを拒む、と主は言われる。

9章6節 それゆえ、万軍の主はこう言われる。見よ、わたしは娘なるわが民を/火をもって溶かし、試す。まことに、彼らに対して何をすべきか。

9章7節 彼らの舌は人を殺す矢/その口は欺いて語る。隣人に平和を約束していても/その心の中では、陥れようとたくらんでいる。

9章8節 これらのことをわたしは罰せずにいられようかと/主は言われる。このような民に対し、わたしは必ずその悪に報いる。

9章9節 山々で、悲しみ嘆く声をあげ/荒れ野の牧草地で、哀歌をうたえ。そこは焼き払われて、通り過ぎる人もなくなり/家畜の鳴く声も聞こえなくなる。空の鳥も家畜も、ことごとく逃れ去った。

9章10節 わたしはエルサレムを瓦礫の山/山犬の住みかとし/ユダの町々を荒廃させる。そこに住む者はいなくなる。

9章11節 知恵ある人はこれを悟れ。主の口が語られることを告げよ。何故、この地は滅びたのか。焼き払われて荒れ野となり/通り過ぎる人もいない。

9章12節 主は言われる。「それは、彼らに与えたわたしの教えを彼らが捨て、わたしの声に聞き従わず、それによって歩むことをしなかったからだ。」

9章13節 彼らは、そのかたくなな心に従い、また、先祖が彼らに教え込んだようにバアルに従って歩んだ。

9章14節 それゆえ、イスラエルの神、万軍の主は言われる。「見よ、わたしはこの民に苦よもぎを食べさせ、毒の水を飲ませる。

9章15節 彼らを、彼ら自身も先祖も知らなかった国々の中に散らし、その後から剣を送って彼らを滅ぼし尽くす。」

9章16節 万軍の主はこう言われる。事態を見極め、泣き女を招いて、ここに来させよ。巧みな泣き女を迎えにやり、ここに来させよ。

9章17節 急がせよ、我々のために嘆きの歌をうたわせよ。我々の目は涙を流し/まぶたは水を滴らせる。

9章18節 嘆きの声がシオンから聞こえる。いかに、我々は荒らし尽くされたことか。甚だしく恥を受けたことか。まことに、我々はこの地を捨て/自分の住まいを捨て去った。

9章19節 女たちよ、主の言葉を聞け。耳を傾けて、主の口の言葉を受け入れよ。あなたたちの仲間に、嘆きの歌を教え/互いに哀歌を学べ。

9章20節 死は窓に這い上がり/城郭の中に入り込む。通りでは幼子を、広場では若者を滅ぼす。

9章21節 このように告げよ、と主は言われる。人間のしかばねが野の面を/糞土のように覆っている。刈り入れる者の後ろに落ちて/集める者もない束のように。

9章22節 主はこう言われる。知恵ある者は、その知恵を誇るな。力ある者は、その力を誇るな。富ある者は、その富を誇るな。

9章23節 むしろ、誇る者は、この事を誇るがよい/目覚めてわたしを知ることを。わたしこそ主。この地に慈しみと正義と恵みの業を行う事/その事をわたしは喜ぶ、と主は言われる。

9章24節 見よ、時が来る、と主は言われる。そのとき、わたしは包皮に割礼を受けた者を/ことごとく罰する。

9章25節 エジプト、ユダ、エドム/アンモンの人々、モアブ/すべて荒れ野に住み/もみ上げの毛を切っている人々/すなわち割礼のない諸民族をことごとく罰し/また、心に割礼のないイスラエルの家を/すべて罰する。


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