黒崎幸吉著 註解新約聖書 Web版

新共同訳民数記第20章

◆メリバの水

20章1節 イスラエルの人々、その共同体全体は、第一の月にツィンの荒れ野に入った。そして、民はカデシュに滞在した。ミリアムはそこで死に、その地に埋葬された。

20章2節 さて、そこには共同体に飲ませる水がなかったので、彼らは徒党を組んで、モーセとアロンに逆らった。

20章3節 民はモーセに抗弁して言った。「同胞が主の御前で死んだとき、我々も一緒に死に絶えていたらよかったのだ。

20章4節 なぜ、こんな荒れ野に主の会衆を引き入れたのです。我々と家畜をここで死なせるためですか。

20章5節 なぜ、我々をエジプトから導き上らせて、こんなひどい所に引き入れたのです。ここには種を蒔く土地も、いちじくも、ぶどうも、ざくろも、飲み水さえもないではありませんか。」

20章6節 モーセとアロンが会衆から離れて臨在の幕屋の入り口に行き、そこにひれ伏すと、主の栄光が彼らに向かって現れた。

20章7節 主はモーセに仰せになった。

20章8節 「あなたは杖を取り、兄弟アロンと共に共同体を集め、彼らの目の前で岩に向かって、水を出せと命じなさい。あなたはその岩から彼らのために水を出し、共同体と家畜に水を飲ませるがよい。」

20章9節 モーセは、命じられたとおり、主の御前から杖を取った。

20章10節 そして、モーセとアロンは会衆を岩の前に集めて言った。「反逆する者らよ、聞け。この岩からあなたたちのために水を出さねばならないのか。」

20章11節 モーセが手を上げ、その杖で岩を二度打つと、水がほとばしり出たので、共同体も家畜も飲んだ。

20章12節 主はモーセとアロンに向かって言われた。「あなたたちはわたしを信じることをせず、イスラエルの人々の前に、わたしの聖なることを示さなかった。それゆえ、あなたたちはこの会衆を、わたしが彼らに与える土地に導き入れることはできない。」

20章13節 これがメリバ(争い)の水であって、イスラエルの人々が主と争った所であり、主が御自分の聖なることを示された所である。

◆エドム王との交渉

20章14節 モーセはカデシュからエドム王に使者を遣わした。「あなたの兄弟であるイスラエルはこう申します。あなたは、わたしたちの上にふりかかった患難をすべてご存じのことでしょう。

20章15節 わたしたちの先祖はエジプトに下り、長年、エジプトに住んでおりました。エジプト人がわたしたちの先祖もわたしたちも苦しめたので、

20章16節 主に助けを求めて叫びますと、主はわたしたちの声を聞いて御使いを遣わし、エジプトから導き出してくださいました。今、わたしたちは、あなたの国境に近いカデシュの町におります。

20章17節 どうか、あなたの領土を通過させてください。畑やぶどう畑の中を通ったり井戸の水を飲んだりしません。あなたの領土を通過するまで、右にも左にも曲がることなく、『王の道』を通って行きます。」

20章18節 エドム人は彼に答えた。「わたしの領内を通ってはならない。もし、通るようなことがあれば、剣をとってお前を迎え撃つ。」

20章19節 イスラエルの人々は言った。「わたしたちは広い道を通りますし、その際、わたしや家畜があなたの水を飲むことがあれば、その代価は支払います。徒歩で通過するだけです。取るに足らぬことです。」

20章20節 しかしエドム人は、「通過してはならない」と言い、強力な軍勢を率いて迎え撃とうとした。

20章21節 エドム人はこのように、自分の領土をイスラエルが通過することを許さず、イスラエルは迂回しなければならなかった。

◆アロンの死

20章22節 イスラエルの人々、その共同体全体はカデシュを旅立って、ホル山に着いた。

20章23節 ホル山はエドム領との国境にあり、ここで、主はモーセとアロンに言われた。

20章24節 「アロンは先祖の列に加えられる。わたしがイスラエルの人々に与える土地に、彼は入ることができない。あなたたちがメリバの水のことでわたしの命令に逆らったからだ。

20章25節 アロンとその子エルアザルを連れてホル山に登り、

20章26節 アロンの衣を脱がせ、その子エルアザルに着せなさい。アロンはそこで死に、先祖の列に加えられる。」

20章27節 モーセは主が命じられたとおりにした。彼らは、共同体全体の見守る中をホル山に登った。

20章28節 モーセはアロンの衣を脱がせ、その子エルアザルに着せた。アロンはその山の上で死んだ。モーセとエルアザルが山を下ると、

20章29節 共同体全体はアロンが息を引き取ったのを悟り、イスラエルの全家は三十日の間、アロンを悼んで泣いた。


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