黒崎幸吉著 註解新約聖書 Web版

新共同訳サムエル記上第28章

◆サウル、口寄せの女を訪れる

28章1節 そのころ、ペリシテ人はイスラエルと戦うために軍を集結させた。アキシュはダビデに言った。「あなたもあなたの兵もわたしと一緒に戦陣に加わることを、よく承知していてもらいたい。」

28章2節 ダビデはアキシュに答えた。「それによって、僕の働きがお分かりになるでしょう。」アキシュはダビデに言った。「それなら、常にあなたをわたしの護衛の長としよう。」

28章3節 サムエルが死んだ。全イスラエルは彼を悼み、彼の町ラマに葬った。サウルは、既に国内から口寄せや魔術師を追放していた。

28章4節 ペリシテ人は集結し、シュネムに来て陣を敷いた。サウルはイスラエルの全軍を集めてギルボアに陣を敷いた。

28章5節 サウルはペリシテの陣営を見て恐れ、その心はひどくおののいた。

28章6節 サウルは主に託宣を求めたが、主は夢によっても、ウリムによっても、預言者によってもお答えにならなかった。

28章7節 サウルは家臣に命令した。「口寄せのできる女を探してくれ。その女のところに行って尋ねよう。」家臣は答えた。「エン・ドルに口寄せのできる女がいます。」

28章8節 サウルは変装し、衣を替え、夜、二人の兵を連れて女のもとに現れた。サウルは頼んだ。「口寄せの術で占ってほしい。あなたに告げる人を呼び起こしてくれ。」女は言った。

28章9節 「サウルのしたことをご存じでしょう。サウルは口寄せと魔術師をこの地から断ちました。なぜ、わたしの命を罠にかけ、わたしを殺そうとするのですか。」

28章10節 サウルは主にかけて女に誓った。「主は生きておられる。この事であなたが咎を負うことは決してない。」

28章11節 女は尋ねた。「誰を呼び起こしましょうか。」「サムエルを呼び起こしてもらいたい」と彼は頼んだ。

28章12節 その女は、サムエルを見ると、大声で叫び、サウルに言った。「なぜわたしを欺いたのですか。あなたはサウルさまではありませんか。」

28章13節 王は言った。「恐れることはない。それより、何を見たのだ。」女はサウルに言った。「神のような者が地から上って来るのが見えます。」

28章14節 サウルはその女に言った。「どんな姿だ。」女は言った。「老人が上って来ます。上着をまとっています。」サウルにはそれがサムエルだと分かったので、顔を地に伏せ、礼をした。

28章15節 サムエルはサウルに言った。「なぜわたしを呼び起こし、わたしを煩わすのか。」サウルは言った。「困り果てているのです。ペリシテ人が戦いを仕掛けているのに、神はわたしを離れ去り、もはや預言者によっても、夢によってもお答えになりません。あなたをお呼びしたのは、なすべき事を教えていただくためです。」

28章16節 サムエルは言った。「なぜわたしに尋ねるのか。主があなたを離れ去り、敵となられたのだ。

28章17節 主は、わたしを通して告げられた事を実行される。あなたの手から王国を引き裂き、あなたの隣人、ダビデにお与えになる。

28章18節 あなたは主の声を聞かず、アマレク人に対する主の憤りの業を遂行しなかったので、主はこの日、あなたに対してこのようにされるのだ。

28章19節 主はあなたのみならず、イスラエルをもペリシテ人の手に渡される。明日、あなたとあなたの子らはわたしと共にいる。主はイスラエルの軍隊を、ペリシテ人の手に渡される。」

28章20節 サウルはたちまち地面に倒れ伏してしまった。サムエルの言葉におびえたからである。また彼はこの日、何も食べていなかったため、力が尽きていたのである。

28章21節 その女はサウルに近づき、サウルがおびえきっているのを見て、言った。「はしためはあなたの声に聞き従いました。命をかけて、あなたが言った言葉に聞き従ったのです。

28章22節 今度は、あなたがはしための声に聞き従ってください。ささやかな食事をあなたに差し上げますから、それを召し上がり、力をつけてお帰りください。」

28章23節 サウルは拒み、食べたくないと言った。しかし、家臣もその女も強く勧めたので、彼らの勧めに従い、地面から起き上がって、床の上に座った。

28章24節 女の家には肥えた子牛がいたので急いで屠り、小麦粉を取ってこね、種なしパンを焼いた。

28章25節 女が、サウルと家臣にそれを差し出すと、彼らは食べて、その夜のうちに立ち去った。


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