黒崎幸吉著 註解新約聖書 Web版第2テサロニケ書

第2テサロニケ書第3章

分類
4 信徒への教訓 3:1 - 3:15
4-1 信仰に堅く立て 3:1 - 3:5

3章1節 (をはり)()はん、兄弟(きゃうだい)よ、(われ)らの(ため)(いの)れ、[引照]

口語訳最後に、兄弟たちよ。わたしたちのために祈ってほしい。どうか主の言葉が、あなたがたの所と同じように、ここでも早く広まり、また、あがめられるように。
塚本訳最後に、兄弟達よ、どうか私達のために祈ってくれ──君達の場合と同様、主の言が駈け足で弘まり、また(至る所で)崇められるように、
前田訳終わりに、兄弟よ、われらのために祈ってください−−主のことばがあなた方のところでのように、早く広まってあがめられますように、
新共同終わりに、兄弟たち、わたしたちのために祈ってください。主の言葉が、あなたがたのところでそうであったように、速やかに宣べ伝えられ、あがめられるように、
NIVFinally, brothers, pray for us that the message of the Lord may spread rapidly and be honored, just as it was with you.
註解: Tテサ5:25註参照。なお以下と2節とがこの祈りの内容たるべき目的を示す。

(しゅ)(ことば)(なんぢ)らの(うち)における(ごと)く、()(ひろ)まりて(あが)められん(こと)と、

註解: 「汝らの中におけるがごとく」は次節にも関連する。テサロニケにおいては福音が極めて迅速に弘まりかつ崇められたから、パウロはコリントにおいても、また他の場所においても、伝道がかかる迅速なる弘布を見んことを自身も祈り、またこのために祈らんことをテサロニケの信徒に要求した。
辞解
[()(ひろ)まり] trechô は「走る」という語。

3章2節 われらが無法(むほふ)なる惡人(あくにん)より(すく)はれんこととを[(いの)れ]。[引照]

口語訳また、どうか、わたしたちが不都合な悪人から救われるように。事実、すべての人が信仰を持っているわけではない。
塚本訳且つ私達が邪な悪人ども(の手)から救い出されるように!誰にも信仰がある訳ではないのだから。
前田訳そしてわれらが困った悪い人々から救われますように、と。すべての人にまことがあるのではありません。
新共同また、わたしたちが道に外れた悪人どもから逃れられるように、と祈ってください。すべての人に、信仰があるわけではないのです。
NIVAnd pray that we may be delivered from wicked and evil men, for not everyone has faith.
註解: パウロはコリントにおいてもまたテサロニケにおけるがごとく、無法にして悪しき人々から苦しめられた(使18:6使18:12)。パウロは彼らより救われんことを欲し、その祈りをテサロニケの信徒に求めた。彼らもその経験があったのでこの祈りは切なるものがあったろう。
辞解
[無法なる] atopos は、いるべき普通の場所にいないことで、神の法則にも人間社会の通則にも反した行動を取る人。

そは(ひと)みな信仰(しんかう)あるに(あら)ざればなり。

註解: 神に対する信仰は人をして無法と悪より免れしめる。

3章3節 されど(かみ)眞實(まこと)なれば、(なんぢ)らを(かた)うし(なんぢ)らを(まも)りて、()しき(もの)より(すく)(たま)はん。[引照]

口語訳しかし、主は真実なかたであるから、あなたがたを強め、悪しき者から守って下さるであろう。
塚本訳しかし主は忠実であり給う、君達を強くして悪人から守り給うであろう。
前田訳主はまことです。彼はあなた方を強めて、悪者からお守りでしょう。
新共同しかし、主は真実な方です。必ずあなたがたを強め、悪い者から守ってくださいます。
NIVBut the Lord is faithful, and he will strengthen and protect you from the evil one.
註解: パウロは自分たちのために祈らんことを乞いつつその思いはかえって直ちにテサロニケの信徒たちの上に馳せ、彼らを迫める悪人どもの首ともいうべきサタンよりの救いを祈願せざるを得なかった。しかしながらこの祈願は神の真実を信ずるが故に、パウロにとりてはすでに確信となっていた。かくして神は必ずその選び給えるテサロニケの信徒の信仰を堅くしこれをサタンより護り給うであろうと信じた。
辞解
[神] 多くの写本に「主」とあり、キリストを指すと見るべきである。
[悪しき者] 男性なりや中性なりやにつき議論があり、男性とすればサタンを意味し(M0、Z0、B1)(マタ6:13)、中性とすれば悪念、道徳的悪を指す(L2)。前者と解するを可とす。すなわち前節の「悪しき人々」を一括してサタンの輩下と見たのである。

3章4節 かくて(われ)らの(めい)ずることを(なんぢ)らが(いま)(おこな)ひ、(のち)もまた(おこな)はんことを(しゅ)によりて(しん)ずるなり。[引照]

口語訳わたしたちが命じる事を、あなたがたは現に実行しており、また、実行するであろうと、わたしたちは、主にあって確信している。
塚本訳君達が私達の命令を今【も】後も行うであろうことを、主に在って確信している。
前田訳われらは主にあってあなた方を信頼します。われらがのべ伝えたことを実行し、また実行なさるであろうからです。
新共同そして、わたしたちが命令することを、あなたがたは現に実行しており、また、これからもきっと実行してくれることと、主によって確信しています。
NIVWe have confidence in the Lord that you are doing and will continue to do the things we command.
註解: 神(キリスト)の護りによりてテサロニケの信徒はパウロの命ぜし処をこれまでのごとくに今後も行って行くことをパウロは信じていた。
辞解
[今も行い後もまた行はんことを] この一句はこの他に過去を示す文字を加えたるもあり、異本多し。
[主によりて] 何人も人間そのものとしては信じ得ない。

3章5節 (ねが)はくは(しゅ)なんぢらの(こころ)を、(かみ)(あい)とキリストの忍耐(にんたい)とに(みちび)(たま)はんことを。[引照]

口語訳どうか、主があなたがたの心を導いて、神の愛とキリストの忍耐とを持たせて下さるように。
塚本訳願わくは主が君達の心を、神の愛とキリストによる忍耐とに導き給わんことを!
前田訳主があなた方の心を神の愛とキリストの忍耐へとお向けになりますように。
新共同どうか、主が、あなたがたに神の愛とキリストの忍耐とを深く悟らせてくださるように。
NIVMay the Lord direct your hearts into God's love and Christ's perseverance.
註解: 最後にパウロは祈りをささげ、主がテサロニケの信徒の心を導きて神の愛のごとき愛とキリストの忍耐のごとき忍耐を持つに至らしめ給わんことを祈願した。この愛をもって神と人を愛し、この忍耐をもって迫害と苦難とに耐えて行くのが信徒の目的である。
辞解
[神の愛とキリストの忍耐] 「神の愛」を「神を愛する愛」と解する説多し(M0、L2、A1)。また「キリストの忍耐」を「キリストを待ち望みて忍耐する心」(B1)または「キリストを信ずるが故に信者に宿る忍耐」と解する説あり(L2)、上註のごとくに解する説(M0、A1、W2、Z0)を採る。ただしこの神の愛とキリストの忍耐を力としてまた模範として自己の上に作用せしむる(Z0)というのではなく、自分の心をこの理想に至らしめんとするのである。▲本節の「神の愛とキリストの忍耐」を註のように解したのであるが、またこれを「神の我らを愛する愛、キリストの我らを忍ぶ忍耐」の意味にも解することができる。
要義 [神の愛とキリストの忍耐]己に背く者、己を迫害する者をも救わんとしてこれを愛する愛こそ神の愛である。神に対する絶対の信頼をもってあらゆる苦難を忍ぶ忍耐こそキリストの忍耐である。無理解なる敵に迫害されるキリスト者にとりて最も必要なるはこの愛とこの忍耐である。これより以外にキリスト者をして迫害と無理解に対し正しく処せしむる途はない。このことを実験より知ったのがパウロであった。

4-2 我らに效い職務に精勤せよ 3:6 - 3:12

3章6節 兄弟(きゃうだい)よ、(われ)らの(しゅ)イエス・キリストの()によりて(なんぢ)らに(めい)ず、[引照]

口語訳兄弟たちよ。主イエス・キリストの名によってあなたがたに命じる。怠惰な生活をして、わたしたちから受けた言伝えに従わないすべての兄弟たちから、遠ざかりなさい。
塚本訳兄弟達よ、主イエス・キリストの名において命令する。ふしだらな生活をし、私達から受けた言い伝えに拠って歩かぬ兄弟とは誰とも交際を避けよ。
前田訳兄弟よ、主イエス・キリストのみ名によって申します。ふしだらな生活をして、われらから受けたいい伝えに従わないすべての兄弟からお離れなさい。
新共同兄弟たち、わたしたちは、わたしたちの主イエス・キリストの名によって命じます。怠惰な生活をして、わたしたちから受けた教えに従わないでいるすべての兄弟を避けなさい。
NIVIn the name of the Lord Jesus Christ, we command you, brothers, to keep away from every brother who is idle and does not live according to the teaching you received from us.
註解: パウロは使徒の権威をもってこの命令を発している。4節参照。

我等(われら)より()けし(つたへ)(したが)はずして(みだり)(あゆ)(すべ)ての兄弟(きゃうだい)(とほ)ざかれ。

註解: パウロらの伝授せし教えに従わず、勝手な意見と行動とを取る者に対しては、これらより遠ざかるのが最上の途であり、パウロはこのことを命じている。
辞解
[(みだり)に] Tテサ5:14註参照。なお11節に録されるごとく、この場合、再臨の狂信のために自己の職務を(おろそか)にして騒ぎ廻っている人々を指す。

3章7節 如何(いか)にして(われ)らに(なら)ふべきかは、(なんぢ)らの(みづか)()(ところ)なり。[引照]

口語訳わたしたちに、どうならうべきであるかは、あなたがた自身が知っているはずである。あなたがたの所にいた時には、わたしたちは怠惰な生活をしなかったし、
塚本訳どう私達を真似ねばならぬかを、君達は自分で(よく)知っているはずだから。私達は君達の所で(決して)ふしだらな生活をせず、
前田訳われらにいかにならうべきかは自らご存じのはずです。あなた方のところでわれらはふしだらにせず、
新共同あなたがた自身、わたしたちにどのように倣えばよいか、よく知っています。わたしたちは、そちらにいたとき、怠惰な生活をしませんでした。
NIVFor you yourselves know how you ought to follow our example. We were not idle when we were with you,
註解: (みだ)りに歩むものの反対はパウロたちであった。すなわち次に陳ぶるがごとく、自己の権利をも用いずして、己が労働によりて生活していた。この態度をパウロは一般に(なら)わしめんとしたのである。

(われ)らは(なんぢ)らの(うち)にありて(みだり)なる(こと)をせず、

註解: 立派に社会的制約に従って生活した。

3章8節 (あたひ)なしに(ひと)のパンを(しょく)せず、[引照]

口語訳人からパンをもらって食べることもしなかった。それどころか、あなたがたのだれにも負担をかけまいと、日夜、労苦し努力して働き続けた。
塚本訳また無代で他人のパンを食ったこともないではないか。否、誰にも厄介をかけまいとして、苦労し骨折りながら夜も昼も(手ずから)働いた。
前田訳ひとからのただめしをも食わず、あなた方のだれにも世話にならないよう、日夜苦しみ、あくせくして働きました。
新共同また、だれからもパンをただでもらって食べたりはしませんでした。むしろ、だれにも負担をかけまいと、夜昼大変苦労して、働き続けたのです。
NIVnor did we eat anyone's food without paying for it. On the contrary, we worked night and day, laboring and toiling so that we would not be a burden to any of you.
註解: これはユダヤ人またはギリシャ人の間に行われし俚諺(ことわざ)であったろう。他人から只で食わして貰うことはしないとのこと。

(かへ)つて(なんぢ)()のうち一人(ひとり)をも(わずら)はさざらんために(らう)苦難(くるしみ)とをもて、夜晝(よるひる)はたらけり。

註解: パウロはその職業であった天幕製造をなして自己の生活費を稼ぎ、その間に伝道していた。
辞解
[(わずら)わす] 重荷となること、すなわち伝道が信者の重荷とならぬようにしたのであった。Tテサ2:9

3章9節 これは(けん)()なき(ゆゑ)にあらず、(なんぢ)()をして(われ)らに(なら)はしめん(ため)に、(みづか)模範(もはん)となりたるなり。[引照]

口語訳それは、わたしたちにその権利がないからではなく、ただわたしたちにあなたがたが見習うように、身をもって模範を示したのである。
塚本訳これは(何も君達の所でパンを食う)権利がないというのではない。ただ私達の真似をさせるために、自分を君達の手本にしようとしたまでである。
前田訳世話になる権利がないからではなく、あなた方がわれらにならうよう自ら模範を示したのです。
新共同援助を受ける権利がわたしたちになかったからではなく、あなたがたがわたしたちに倣うように、身をもって模範を示すためでした。
NIVWe did this, not because we do not have the right to such help, but in order to make ourselves a model for you to follow.
註解: パウロは使徒の権威を用うることができた。すなわち信徒をしてパウロの生活を支えしめる権利があることを信じていた(Tコリ9:4−6)。それにもかかわらずパウロは、自己の労働によりて生活することが、伝道者としての最上の生活法であることを信じ、これを一般信徒にも(なら)わしめんとしたのであった。

3章10節 また(なんぢ)らと(とも)()りしとき、(ひと)もし(はたら)くことを(ほっ)せずば(しょく)すべからずと(めい)じたりき。[引照]

口語訳また、あなたがたの所にいた時に、「働こうとしない者は、食べることもしてはならない」と命じておいた。
塚本訳君達の所にいた時にも、働きたくない者は食ってはならぬと言ったではないか!
前田訳そちらにいたとき、「働きたくないものは食うべからず」とわれらはいっていたはずです。
新共同実際、あなたがたのもとにいたとき、わたしたちは、「働きたくない者は、食べてはならない」と命じていました。
NIVFor even when we were with you, we gave you this rule: "If a man will not work, he shall not eat."
註解: これはユダヤ人またはギリシャ人の間における格言であったろう。パウロは自ら働きつつ生活していながら、テサロニケの信徒にこの格言を教えて、彼に(なら)わしめたのであった。▲キリスト教の伝道もこの精神で行われたならば、今日より遙かに多くの結果を来したであろう。

3章11節 ()(ところ)によれば、(なんぢ)()のうちに(みだり)(あゆ)みて(なに)(わざ)をもなさず、徒事(むだごと)にたづさはる(もの)ありと。[引照]

口語訳ところが、聞くところによると、あなたがたのうちのある者は怠惰な生活を送り、働かないで、ただいたずらに動きまわっているとのことである。
塚本訳ところが聞くところによると、君達の所にふしだらな生活をする者、(すなわち)何も仕事をせず、無駄事ばかりしている者があるそうである。
前田訳聞くところによると、あなた方の中にふしだらな生活をし、働かないでいたずらに右往左往するものがあるそうです。
新共同ところが、聞くところによると、あなたがたの中には怠惰な生活をし、少しも働かず、余計なことをしている者がいるということです。
NIVWe hear that some among you are idle. They are not busy; they are busybodies.
註解: キリストの再臨近しとの信仰は、往々にして現世生活の職業にいそしむことを無意義と考えるに至らしめ、自己の職責を尽くさずして、(みだ)りに歩み社会的常道を踏外し、しかも徒事(むだごと)にたづさわり、あちこちと駈け廻って自己の責任以外の種々の事柄に干渉するがごときことを為している者ができやすい。テサロニケにもUテサ2:1−12の信仰的動揺の結果かかる者が生じた。
辞解
[何の業をも為さず、徒事(むだごと)にたづさはり] ergazomai と periergazomai とを用いて用語の上の対照を巧みに示している(ロマ5:16ロマ12:3参照)。

3章12節 (われ)()くのごとき(ひと)に、(しづか)(わざ)をなして(おのれ)のパンを(しょく)せんことを、(われ)らの(しゅ)イエス・キリストに()りて(めい)じかつ(すす)む。[引照]

口語訳こうした人々に対しては、静かに働いて自分で得たパンを食べるように、主イエス・キリストによって命じまた勧める。
塚本訳そんな人達に、落ち着いて働き自分のパンを食うように、主イエス・キリストにおいて命令しまた勧める。
前田訳そういう人々にわれらは主イエス・キリストにあって命じ、また勧めます、静かに働いて自ら得たパンを食べるように、と。
新共同そのような者たちに、わたしたちは主イエス・キリストに結ばれた者として命じ、勧めます。自分で得たパンを食べるように、落ち着いて仕事をしなさい。
NIVSuch people we command and urge in the Lord Jesus Christ to settle down and earn the bread they eat.
註解: 前述のごとく、狂信的態度に陥り凡ての落着きを失い、自己の職務を放棄して騒ぎ廻っている者に対し、パウロは彼らが落着いて自己の職務を行い、自ら獲たパンを食うべきことを主イエス・キリストに由り、その権威をもって命じかつ勧めている。この種の熱狂者に対しては単に勧めるだけでは容易に納得せしめ得ないものがあるので、特に「命ず」ることを必要と感じだのであろう。

4-3 反対者と交るな 3:13 - 3:15

3章13節 兄弟(きゃうだい)よ、なんぢら(ぜん)(おこな)ひて()むな。[引照]

口語訳兄弟たちよ。あなたがたは、たゆまずに良い働きをしなさい。
塚本訳しかし兄弟達よ、君達は倦まず善を行え。
前田訳しかしあなた方は、兄弟よ、たゆまずに善をなさい。
新共同そして、兄弟たち、あなたがたは、たゆまず善いことをしなさい。
NIVAnd as for you, brothers, never tire of doing what is right.
註解: キリストの再臨に対する準備として最善の態度は、たゆまずに善事を実行することである。(みだ)りに歩み、空しく騒ぎ廻ることではない。

3章14節 もし()(ふみ)にいへる(われ)らの(ことば)(したが)はぬ(もの)あらば、その(ひと)(みと)めて(まじわ)ることをすな、(かれ)みづから()ぢんためなり。[引照]

口語訳もしこの手紙にしるしたわたしたちの言葉に聞き従わない人があれば、そのような人には注意をして、交際しないがよい。彼が自ら恥じるようになるためである。
塚本訳もし私達のこの手紙の言に従わない者があるならば、その人を注意人物にして付き合わないようにせよ。その人が恥じ(て過ちを改め)るためである。
前田訳もしわれらが手紙でいったことにだれかが従わねば、その人に注意して、交わらないでください。彼が恥じ入るためです。
新共同もし、この手紙でわたしたちの言うことに従わない者がいれば、その者には特に気をつけて、かかわりを持たないようにしなさい。そうすれば、彼は恥じ入るでしょう。
NIVIf anyone does not obey our instruction in this letter, take special note of him. Do not associate with him, in order that he may feel ashamed.
註解: もし前記のごとき命令に従わぬ者がある場合は如何にすべきか。パウロはかかる人を特に公に示してこれと絶交すべきことを教えている。ただしこれはいたずらに彼らを排斥して自らの潔さ正しさを誇るためではなく、彼らをして自らを卑くせしめ、自己の誤謬を悟らしめんがためである。
辞解
[認め] sêmeioô は(しるし)をつけること。明らかにその人として示すこと。
[交る] 混合すること。
[恥づ] 自らを(ひく)くする意味、相済まなかったと思うこと。

3章15節 ()れど(かれ)(あた)(ごと)くせず、兄弟(きゃうだい)として訓戒(くんかい)せよ。[引照]

口語訳しかし、彼を敵のように思わないで、兄弟として訓戒しなさい。
塚本訳しかし敵と思わず、兄弟として訓戒せよ。
前田訳しかし彼を敵とせず、兄弟としていましめてください。
新共同しかし、その人を敵とは見なさず、兄弟として警告しなさい。
NIVYet do not regard him as an enemy, but warn him as a brother.
註解: パウロはかかる絶交が極端に走って仇敵のごとき態度となることを戒めている。絶交は信仰生活の態度を明らかにするための必要からであるから、できるだけ兄弟のごとくに訓戒して愛をもって彼を正しき信仰に引戻さなければならぬ。
要義 [終末の信仰と日常生活]キリストの再臨と世の終末との近きことを信ずる者は、自然日常の生活を軽視しやすい。しかしながらかかる信仰はキリストの再臨により起るべき結果に目を奪われている一種の利己主義的信仰であって真の信仰ではない。真の信仰は来り給う主イエスを愛し、彼を待ち望みつつ、その結果を凡て主イエスに任せ、自らはただその与えられたる日常の生活を全きものたらしめんとする。真の聖潔の生活はかくして始めて完成する。

分類
5 結尾 3:16 - 3:18

3章16節 (ねが)はくは平和(へいわ)(しゅ)、みづから何時(いつ)にても(すべ)ての(こと)平和(へいわ)(なんぢ)らに(あた)(たま)はんことを。(ねが)はくは(しゅ)なんぢら(すべ)ての(もの)(とも)(いま)さん(こと)を。[引照]

口語訳どうか、平和の主ご自身が、いついかなる場合にも、あなたがたに平和を与えて下さるように。主があなたがた一同と共におられるように。
塚本訳願わくは、平和の主自ら、何時如何なる場合においても、君達に平安を与え給わんことを!主が君達一同と共に在し給わんことを!
前田訳平和の主ご自身、いつもどこでもあなた方に平和をお与えになりますように。主が皆さんとともにいますように。
新共同どうか、平和の主御自身が、いついかなる場合にも、あなたがたに平和をお与えくださるように。主があなたがた一同と共におられるように。
NIVNow may the Lord of peace himself give you peace at all times and in every way. The Lord be with all of you.
註解: パウロは最後に祈願をこの書簡に追加している。常にかつ万事に平和を与えられんこととキリストが凡ての者と偕に在らんこととである。この平和は信徒相互間の平和とかまたは神との間の平和と見るよりも、この場合は心の中の平和と見るを適当と思う。その故は、テサロニケの信徒の間には、キリストの再臨に関する異説の故に、心の平和を失いて落着かない生活を送る者が多かったからである。パウロの書簡は単なる形式として録されず、常に生ける実際を相手として録されている処に力強さがある。

3章17節 (われ)パウロ()づから[(ふで)()りて](なんぢ)らの安否(あんぴ)()ふ。[引照]

口語訳ここでパウロ自身が、手ずからあいさつを書く。これは、わたしのどの手紙にも書く印である。わたしは、このように書く。
塚本訳これがパウロの自筆の挨拶で、凡ての手紙の記号である――私は(いつも)こんな風に書く
前田訳わたくしパウロ自らの手でごあいさつします。これはどの手紙にも書く印で、わたくしはこのように書きます。
新共同わたしパウロが、自分の手で挨拶を記します。これはどの手紙にも記す印です。わたしはこのように書きます。
NIVI, Paul, write this greeting in my own hand, which is the distinguishing mark in all my letters. This is how I write.
註解: 当時の習慣として書簡は多く他人をして筆記せしめた。然るにUテサ2:2のごとき事柄が起ったのでパウロは特に書簡の末尾に自筆の結末を記して、彼自身の書簡たることの証拠とすることを必要とした。なおガラ6:11註参照。ただし本書簡の場合はTコリ16:21コロ4:18と同じく、ガラ6:11の場合と異なると解するを可とす。

これ()がすべての(ふみ)記章(しるし)なり。わが()けるものは()くの(ごと)し。

註解: パウロはこの際特に偽造書簡に注意することの必要を感じたことが判る。

3章18節 (ねが)はくは(われ)らの(しゅ)イエス・キリストの恩惠(めぐみ)なんぢら(すべ)ての(もの)(とも)ならんことを。[引照]

口語訳どうか、わたしたちの主イエス・キリストの恵みが、あなたがた一同と共にあるように。
塚本訳願わくは、私達の主イエス・キリストの恩恵、君達一同と共にあらんことを!
前田訳われらの主イエス・キリストの恵みが皆さんとともにありますように。
新共同わたしたちの主イエス・キリストの恵みが、あなたがた一同と共にあるように。
NIVThe grace of our Lord Jesus Christ be with you all.
註解: Tテサ5:28註参照。