第1テサロニケ書第5章
分類
3 道徳的、教理的部分 4:1 - 5:24
3-2 再臨問題 4:13 - 5:11
3-2-ロ 主の日の時期とこれに対する覚悟 5:1 - 5:11
5章1節 兄弟よ、時と期とに就きては汝らに書きおくるに及ばず。[引照]
口語訳 | 兄弟たちよ。その時期と場合とについては、書きおくる必要はない。 |
塚本訳 | 兄弟達よ、(来臨までの)時間と(その)時期とについては、(更めてここに)書く必要はあるまい。 |
前田訳 | 兄弟よ、その時と場合についてはお書きするに及びません。 |
新共同 | 兄弟たち、その時と時期についてあなたがたには書き記す必要はありません。 |
NIV | Now, brothers, about times and dates we do not need to write to you, |
註解: その理由は次節に由りて明らかである。ゆえに書き送ることが役に立たずとか不可能であるとか、または汝らは常に再臨に対して準備している故(B1)等と解するは誤りである。
辞解
[時] chronos 一般に「時」の意味で期間、時間等に用う。
[期] kairos はある目的を眼中に置きそのために定められる時または期間を指す。ここに複数形を用いたのは、その間に種々の事情を含むからである。
5章2節 汝らは主の日の盜人の夜[きたるが]如くに來ることを、自ら詳細に知ればなり。[引照]
口語訳 | あなたがた自身がよく知っているとおり、主の日は盗人が夜くるように来る。 |
塚本訳 | 主の日が夜の盗人のように(不意に)来ることを君達は精密く知っているのだから。 |
前田訳 | よくご承知のとおり主の日は夜の盗びとのように来ます。 |
新共同 | 盗人が夜やって来るように、主の日は来るということを、あなたがた自身よく知っているからです。 |
NIV | for you know very well that the day of the Lord will come like a thief in the night. |
註解: 「主の日」なる語は旧約聖書にも「エホバの日」としてすでに用いられている(イザ2:12。イザ13:6、イザ13:9。エレ30:7。エゼ13:5。アモ5:18。ヨエ1:15。ヨエ2:1、ヨエ2:11等)。ただしそれは審判の恐るべき日として考えられた。新約時代においては「エホバ」すなわち「主」をイエスに当てはめ、イエスの再来の日として、この世が終りを告げ、聖徒の復活、万人の審判、万物の復興、神の国の完成の行われる日として考えられた。この日は盗人の夜来るごとく、突然に予期せざる時に来る。必ずしも主の再臨が夜間に起ることを意味したのではない。マタ24:42−44にすでにイエスはこのことを告げ給うた。パウロはこれを伝え聞いていたものと考えられる。
5章3節 人々の平和無事なりと言ふほどに、滅亡にはかに彼らの上に來らん、妊める婦に産の苦痛の臨むがごとし、必ず遁るることを得じ。[引照]
口語訳 | 人々が平和だ無事だと言っているその矢先に、ちょうど妊婦に産みの苦しみが臨むように、突如として滅びが彼らをおそって来る。そして、それからのがれることは決してできない。 |
塚本訳 | 人々が無事だ、大丈夫だと言っている時に、丁度妊婦に陣痛が起こると同じように、思いもかけず滅亡が来て、決して逃げ出すことは出来ない。 |
前田訳 | 「平和で無事」と人々がいうとき、突然の滅びが彼らにのぞむでしょう。それは妊婦にのぞむ苦しみのようで、決してのがれえません。 |
新共同 | 人々が「無事だ。安全だ」と言っているそのやさきに、突然、破滅が襲うのです。ちょうど妊婦に産みの苦しみがやって来るのと同じで、決してそれから逃れられません。 |
NIV | While people are saying, "Peace and safety," destruction will come on them suddenly, as labor pains on a pregnant woman, and they will not escape. |
註解: キリストの再臨に際し彼を信ぜざる者または名のみの信徒はこれを信ぜず、平和無事なりと唱えて安心しきっている時に突然に大なる苦痛と滅亡とが臨む、これは妊婦に産みの苦痛が臨むごとくである。すなわちその時期の不明と、必ず来ることとの二点において類似している。唯妊婦に出産が来ることは何人にも明らかであるが、キリストの再臨は不信者にとりては信じられない事実である点はこの比喩は必ずしも当たらないがやむを得ない。比喩には常にこの種の不完全さを伴うことに注意すべきである。
5章4節 されど兄弟よ、汝らは暗に居らざれば、盜人の來るごとく其の日なんぢらに追及くことなし。[引照]
口語訳 | しかし兄弟たちよ。あなたがたは暗やみの中にいないのだから、その日が、盗人のようにあなたがたを不意に襲うことはないであろう。 |
塚本訳 | しかし兄弟達よ、君達は暗の中にいないから、その日が君達に盗人のように襲いかかることは無い。 |
前田訳 | 兄弟よ、あなた方は闇の中にはいませんから、その日が盗びとのように襲いはしますまい。 |
新共同 | しかし、兄弟たち、あなたがたは暗闇の中にいるのではありません。ですから、主の日が、盗人のように突然あなたがたを襲うことはないのです。 |
NIV | But you, brothers, are not in darkness so that this day should surprise you like a thief. |
註解: 私訳「されど兄弟よ、汝らは暗きにおらず、これその日盗人のごとく汝らに追及くことなからんためなり」。キリスト者は神の恩恵により光の子(ヨハ3:21。ヨハ12:36。エペ5:8)とせられたのである。それ故に神の守護により主の日がキリスト者の上に盗人のごとくに来ることはない。
5章5節 それ汝等はみな光の子ども晝の子供なり。我らは夜に屬く者にあらず、暗に屬く者にあらず。[引照]
口語訳 | あなたがたはみな光の子であり、昼の子なのである。わたしたちは、夜の者でもやみの者でもない。 |
塚本訳 | 皆光の子、昼の子なのだから。私達(主を信ずる者)は夜の者でも、暗の者でもない。 |
前田訳 | 皆さんは光の子、昼の子です。われらは夜のものでも闇のものでもありません。 |
新共同 | あなたがたはすべて光の子、昼の子だからです。わたしたちは、夜にも暗闇にも属していません。 |
NIV | You are all sons of the light and sons of the day. We do not belong to the night or to the darkness. |
註解: 前節の理由を説明する。すなわちキリスト者の性格を最も適切に示す処の語は光の子供ということである。神は光であり(Tヨハ1:5)イエスは真の光である(ヨハ1:9)。ゆえにキリスト者は光の子であり、この光の支配する昼の子である。従って主の日が盗人のごとくに彼らの上に来ることができない。この昼、夜は勿論霊的の意味であり、比喩もここに至って霊的部分と物質的部分とが混流する。
5章6節 されば他の人のごとく眠るべからず、目を覺して愼むべし。[引照]
口語訳 | だから、ほかの人々のように眠っていないで、目をさまして慎んでいよう。 |
塚本訳 | だから、他の人のように眠っていずに、(いつも)目を覚まし、白面でいようではないか。 |
前田訳 | それで、他の人々のように眠らず、目を覚まして慎みましょう。 |
新共同 | 従って、ほかの人々のように眠っていないで、目を覚まし、身を慎んでいましょう。 |
NIV | So then, let us not be like others, who are asleep, but let us be alert and self-controlled. |
註解: 「他の人」は不信者、「眠る」は霊的惰眠であって善悪の差別を辨えず霊魂の救いにつきて無関心なること。光の子供、昼の子供たるキリスト者はかかる状態にあってはならない、反対に彼らは霊の目を覚まして善を行い、悪を避け、救いを望む真面目なる生涯を送らなければならない。これがキリストの再臨に対する最善の準備である。
5章7節 眠る者は夜眠り、酒に醉ふ者は夜醉ふなり。[引照]
口語訳 | 眠る者は夜眠り、酔う者は夜酔うのである。 |
塚本訳 | 眠る者は夜眠り、(酒に)酔う者は夜酔うのである。 |
前田訳 | 眠るものは夜眠り、酔うものは夜酔っています。 |
新共同 | 眠る者は夜眠り、酒に酔う者は夜酔います。 |
NIV | For those who sleep, sleep at night, and those who get drunk, get drunk at night. |
註解: 不信の子らの生活の中心は夜にあり前後不覚の睡りと酩酊放恣の生活をなし、多くの罪悪は夜間に行わる。かくのごとく彼らの霊的生活もまた、善悪正邪を辨えざる暗黒の中の眠りのごとく、また酔漢のごとく放恣であって霊の救いにつき無関心である。あたかも敵前において備えなき兵隊のごとくである。そして主の日は盗人のごとく突然彼らの上に来るのである。
5章8節 されど我らは晝に屬く者なれば、信仰と愛との胸當を著け、救の望の兜をかむりて愼むべし。[引照]
口語訳 | しかし、わたしたちは昼の者なのだから、信仰と愛との胸当を身につけ、救の望みのかぶとをかぶって、慎んでいよう。 |
塚本訳 | しかし私達は昼の者だから、信仰と愛の“鎧と、救いの”希望の“兜とに身を固め”て、白面でいようではないか。 |
前田訳 | われらは昼のものですから、信仰と愛の胸当てをつけ、救いの望みをかぶとにして慎んでいましょう。 |
新共同 | しかし、わたしたちは昼に属していますから、信仰と愛を胸当てとして着け、救いの希望を兜としてかぶり、身を慎んでいましょう。 |
NIV | But since we belong to the day, let us be self-controlled, putting on faith and love as a breastplate, and the hope of salvation as a helmet. |
註解: 昼の子たちは目を覚まして敵の襲撃より自己を守らなければならない。その武器は信仰と愛の胸当てであって、これにより不信と利己心の攻撃に対し自己の心を守り、また救いの望みの兜であって、救いを高く掲げて敵に示すと共にその頭脳を多くの誤れる思想の攻撃より守りかくして慎みてその救いを全うせんとするのである。かくしてキリスト者はキリストの再臨に備えて己を守り、己を潔くすることができる。
5章9節 それ神は我らを怒に[遭はせんとに]あらず、主イエス・キリストに頼りて救を得させんと定め給へるなり。[引照]
口語訳 | 神は、わたしたちを怒りにあわせるように定められたのではなく、わたしたちの主イエス・キリストによって救を得るように定められたのである。 |
塚本訳 | 何故なら神が私達に定め給うた運命は御怒りによる滅亡でなく、私達の主イエス・キリストによって救いを得ることであるから。 |
前田訳 | 神はわれらを怒りへとお定めではなく、われらの主イエス・キリストによる救いの獲得へとお定めです。 |
新共同 | 神は、わたしたちを怒りに定められたのではなく、わたしたちの主イエス・キリストによる救いにあずからせるように定められたのです。 |
NIV | For God did not appoint us to suffer wrath but to receive salvation through our Lord Jesus Christ. |
註解: キリスト者は神の摂理によりて滅亡より救い出され救いに定められたのである故、これを考えて主の再臨を待ち望み、かつこれを迎えるに相応しき者となるべきである。
5章10節 主の我等のために死に給へるは、我等をして寤めをるとも眠りをるとも己と共に生くることを得しめん爲なり。[引照]
口語訳 | キリストがわたしたちのために死なれたのは、さめていても眠っていても、わたしたちが主と共に生きるためである。 |
塚本訳 | 主は、私達が(その日)目を覚ましていても(あるいは既に墓に)眠っていても、(皆等しく)彼と共に生きることが出来るように、私達のために死に給うたのである。 |
前田訳 | 彼はわれらのためにお死にになりました。それは、われらが目覚めていても眠っていても彼とともに生きるためです。 |
新共同 | 主は、わたしたちのために死なれましたが、それは、わたしたちが、目覚めていても眠っていても、主と共に生きるようになるためです。 |
NIV | He died for us so that, whether we are awake or asleep, we may live together with him. |
註解: 前節「キリストに頼る救」を受け、この救いは主イエスの死によることとこの死は我らをして彼と共に永遠に生きしめんがためなることを述べ、結局キリストの再臨によりて凡てのキリスト者が永遠にキリストと共に生きるものとなることを示す。「寤めをるとも眠りをるとも」は一種の語呂による戯れであって、6節の「眠る」「目を覚ます」とは異なる意味に用いられている。すなわち「生ける者も死ねる者も」との意味である。▲イエスの死の目的は、復活して彼を信ずるものと共に生きるためであった。単にバプテスマを授けて多くの人を教会員にするためではなかった。
5章11節 此の故に互に勸めて各自の徳を建つべし、これ汝らが常に爲す所なり。[引照]
口語訳 | だから、あなたがたは、今しているように、互に慰め合い、相互の徳を高めなさい。 |
塚本訳 | だから、今既にそうしているように、互いに慰め合い、また互いに励まし合え。 |
前田訳 | それゆえ、あなた方は今なさっているように互いに慰め、互いに向上させてください。 |
新共同 | ですから、あなたがたは、現にそうしているように、励まし合い、お互いの向上に心がけなさい。 |
NIV | Therefore encourage one another and build each other up, just as in fact you are doing. |
註解: 各自の徳を建てること(Tコリ8:1。ロマ14:19辞解参照)がキリストの再臨に関する凡ての教訓の結論である。キリストの再臨はこれを神学的理論として組立つるために学ぶべきではなく、また好奇心よりこれを穿鑿すべきではない。これは各自の徳を建てることがその目的でなければならぬ。この目的をもって互に勧めることが本書簡において再臨につきてパウロの教えし目的であった。そして彼は最後にテサロニケの信者が常にこれを実行しつつあることを加えて彼らを賞揚し、自己の満足を表明している。
要義 [キリスト再臨の時期とこれに対する準備]キリスト再臨の時期につきダニエル書、ゼカリヤ書、黙示録等の任意の章節を材料として年月日を計算し、その結果を得てキリストがその日に来り給うことを唱え、そしてその誤謬のために多くの躓きを生じた例は歴史上非常に多い。第二世紀にポントの監督が六ヶ月以内にキリストの再臨があることを唱えて信徒を迷わせたることあり。その後も欧米の諸国最近には日本にもこの種の説を唱えて人々を迷わせた例は少なくない。これは明らかに5:2−4に反することであって、我らはこの迷いを繰返してはならない。全然父の御意の中にある事柄を我らは濫りに忖度してはならない。唯我らとしてはこれに対する準備をしていることが必要であり、そしてそれで充分である。備えある者はそれで満足しており、主の来り給う時の如何を問題としない。そしてその準備は6節以下に示されるごとくである。
3-3 教会関係 5:12 - 5:243-3-イ 教会生活 5:12 - 5:22
5章12節 兄弟よ、汝らに求む。なんぢらの中に勞し、主にありて汝らを治め、汝らを訓戒する者を重んじ、[引照]
口語訳 | 兄弟たちよ。わたしたちはお願いする。どうか、あなたがたの間で労し、主にあってあなたがたを指導し、かつ訓戒している人々を重んじ、 |
塚本訳 | 兄弟達よ、願う、君達の所で働き、主にあって世話し、また訓戒する人々(の骨折り)を認め、 |
前田訳 | 兄弟よ、お願いします。あなた方のうち労苦し、主にあってあなた方を指導し、助言する人々を重んじてください。 |
新共同 | 兄弟たち、あなたがたにお願いします。あなたがたの間で労苦し、主に結ばれた者として導き戒めている人々を重んじ、 |
NIV | Now we ask you, brothers, to respect those who work hard among you, who are over you in the Lord and who admonish you. |
註解: 12−22節は一般的訓戒である。本節は教会の中において教会のために奉仕して種々の労を取ることを厭わぬ者、または教会を治めてその秩序を維持することに努力する者、または教会の人々を訓戒してこれを道徳的信仰的に向上せしむる者らをば、その価値を認めてこれを尊重すべきである。これら三つの働きは必ずしも一人(M0)の仕事の三方面を指すとは限らず、一人の場合も二人以上の場合も有り得ることと解して可なり(B1)。そしてこれは監督なる公職に任命せられし者と見る(M1)べきではなく、むしろ人々の霊的賜物の如何によりて、特別の奉仕を為す場合を指せるものと見るべきである(L2)。ただしこの主の人を尊重するの習慣がついに監督なる公職に付与せられし権威の源となった。▲教会の職制が二次的のものであったことの一つの証拠である。
辞解
[労し、治め] 「労する者」、「治める者」と訳すべきである。
5章13節 その勤勞によりて厚く之を愛し敬へ。[引照]
口語訳 | 彼らの働きを思って、特に愛し敬いなさい。互に平和に過ごしなさい。 |
塚本訳 | その仕事の故に特別に彼らを愛し尊重せよ。互いに仲善くせよ。 |
前田訳 | 彼らをそのわざゆえに愛の中に尊敬してください。互いに平和であってください。 |
新共同 | また、そのように働いてくれるのですから、愛をもって心から尊敬しなさい。互いに平和に過ごしなさい。 |
NIV | Hold them in the highest regard in love because of their work. Live in peace with each other. |
註解: 私訳「その業のゆえに愛を以って厚くこれを教え」教会のためにこれらの業をなす事は充分尊敬に値している事柄である。
[また]互に相和ぐべし。
註解: 信者相互間の平和を重んずべきこと。
5章14節 兄弟よ、汝らに勸む、妄なる者を訓戒し、[引照]
口語訳 | 兄弟たちよ。あなたがたにお勧めする。怠惰な者を戒め、小心な者を励まし、弱い者を助け、すべての人に対して寛容でありなさい。 |
塚本訳 | 兄弟達よ、なお勧める、ふしだらな者を戒め、気の小さい者を励まし、(心の)弱い者の面倒を見てやり、誰に対しても寛大であれ。 |
前田訳 | 兄弟よ、お勧めします。わがままものをいましめ、小心ものを励まし、弱いものを助け、すべての人に寛容であってください。 |
新共同 | 兄弟たち、あなたがたに勧めます。怠けている者たちを戒めなさい。気落ちしている者たちを励ましなさい。弱い者たちを助けなさい。すべての人に対して忍耐強く接しなさい。 |
NIV | And we urge you, brothers, warn those who are idle, encourage the timid, help the weak, be patient with everyone. |
註解: 「妄なる者」 ataktos とは政治的社会的規律に服せざる人を指す、教会の規律に対する場合にもこれを用いることができる。かかる人々をば教会はこれを訓戒して矯正しなければならぬ。
落膽せし者を勵まし、
註解: 不幸のため、罪のため、その他の事柄のために落胆している者がある場合これを励まし元気をつけてやるべきである。
弱き者を扶け、
註解: この「扶け」 antechomai は親しみて注意し世話すること、弱きは霊肉ともに関連す。
凡ての人に對して寛容なれ。
註解: 単にキリスト者同士の間のみならず、一般の人に対しても寛容の態度を必要とする。
5章15節 誰も人に對し惡をもて惡に報いぬやう愼め。[引照]
口語訳 | だれも悪をもって悪に報いないように心がけ、お互に、またみんなに対して、いつも善を追い求めなさい。 |
塚本訳 | 誰も悪で悪に仕返しせぬように注意し、互いに、また何人にも、常に親切であるように努めよ。 |
前田訳 | 気をつけて、だれも悪に悪を報いないように。つねに互いにまたすべての人に善をおつとめなさい。 |
新共同 | だれも、悪をもって悪に報いることのないように気をつけなさい。お互いの間でも、すべての人に対しても、いつも善を行うよう努めなさい。 |
NIV | Make sure that nobody pays back wrong for wrong, but always try to be kind to each other and to everyone else. |
註解: マタ5:44の教訓はキリスト者として特に強調せられし道徳であった。ペテロも(Tペテ3:9)パウロも(ロマ12:17)これを強調した。「目には目を」の一般の道徳水準に比して一段の高さにある。
ただ相互に、また凡ての人に對して常に善を追ひ求めよ。
註解: 「善」は道徳的の善を指す。常に凡ての人に対して善を行わんとする場合、復讐の念のごときは起り得ない。
5章16節 常に喜べ、[引照]
口語訳 | いつも喜んでいなさい。 |
塚本訳 | 常に喜べ、 |
前田訳 | つねによろこび、 |
新共同 | いつも喜んでいなさい。 |
NIV | Be joyful always; |
註解: ピリ4:4。患難にも、不幸にも喜び得るはキリスト者の特権である。何となれば神の溢れる恩恵の中に生きるが故にその歓喜の大なるが故に他の小なる悲嘆に打勝ち得るからである。
5章17節 絶えず祈れ、[引照]
口語訳 | 絶えず祈りなさい。 |
塚本訳 | 絶え間なく祈れ、 |
前田訳 | たえまなくお祈りなさい。 |
新共同 | 絶えず祈りなさい。 |
NIV | pray continually; |
註解: 神との絶えざる霊の交わりは絶えざる祈りとなる(エペ6:18。コロ4:2。ロマ12:12)。祈りは霊の呼吸である。
5章18節 凡てのことを感謝せよ、[引照]
口語訳 | すべての事について、感謝しなさい。これが、キリスト・イエスにあって、神があなたがたに求めておられることである。 |
塚本訳 | (幸不幸、)何事についても(神に)感謝せよ。これ(ら三つ)は神がキリスト・イエスに於て君達に求め給うものである。 |
前田訳 | 何につけても感謝なさい。それこそ神がキリスト・イエスにあってあなた方にお求めのことです。 |
新共同 | どんなことにも感謝しなさい。これこそ、キリスト・イエスにおいて、神があなたがたに望んでおられることです。 |
NIV | give thanks in all circumstances, for this is God's will for you in Christ Jesus. |
註解: 喜びにおいても悲しみにおいても凡てにおいて感謝すべきである。何となれば神は愛にして、如何なることをも我らの幸福のために我らに与え給うが故である。
これキリスト・イエスに由りて神の汝らに求め給ふ所なり。
註解: 「これ」は「凡てのことを感謝せよ」を受くるものと見ることが最も適当であろう。すなわちこのことは神の要請であり御意である。神与え給う以上如何なることも感謝より外になきはずであり、従って神はまたこの感謝の心を喜び給う。
註解: 19−22節は霊のことに関す。御霊のこと、預言のこと等はみな常識以上の働きである故、自然一方には非常識なる狂信的態度となり、他方常識的立場より御霊を熄し、預言を蔑すようになる。ゆえにこれを試みて善を取り悪を棄つることを要する。
5章19節 御靈を熄すな、[引照]
口語訳 | 御霊を消してはいけない。 |
塚本訳 | (他人に燃えている)霊(の火)を消すな。 |
前田訳 | 霊を消さないように。 |
新共同 | “霊”の火を消してはいけません。 |
NIV | Do not put out the Spirit's fire; |
註解: 霊のことに対して鋭敏なる感覚を保持しなければならない、時に御霊の働きと称して狂信的態度に陥る者があり、これを注意するべきではあるけれども、一面御霊は心の中に燃えていなければならない。これを消してはならない。御霊の火を消すのは罪の力である。
5章20節 預言を蔑すな、[引照]
口語訳 | 預言を軽んじてはならない。 |
塚本訳 | (殊に)預言(する者があれば、それ)を軽蔑するな。 |
前田訳 | 預言を軽んじないようにし、 |
新共同 | 預言を軽んじてはいけません。 |
NIV | do not treat prophecies with contempt. |
註解: 預言すと称してこれを濫用し、またはこれによりて人も欺き、またはこれによりて自ら迷いの中に陥る者らありその結果預言を蔑する者も生じたけれども、真の預言はかかるものではなく、神に代りて神の御旨を語るものである故これを蔑してはならぬ。
5章21節 凡てのこと試みて善きものを守り、[引照]
口語訳 | すべてのものを識別して、良いものを守り、 |
塚本訳 | 何事についても真偽を見別け、善いもの(だけ)を保存せよ。 |
前田訳 | すべてを見分けて、よいものを守り、 |
新共同 | すべてを吟味して、良いものを大事にしなさい。 |
NIV | Test everything. Hold on to the good. |
5章22節 凡て惡の類に遠ざかれ。[引照]
口語訳 | あらゆる種類の悪から遠ざかりなさい。 |
塚本訳 | “あらゆる”種類の“悪に遠ざかれ”。 |
前田訳 | あらゆる形の悪を避けてください。 |
新共同 | あらゆる悪いものから遠ざかりなさい。 |
NIV | Avoid every kind of evil. |
註解: 御霊のこと、預言のことの中にも善きものと悪しきものとあり、これを試みることが必要である。またその他の事柄につきてもこれを試験し検討して善悪の区別を明らかにし、善をばこれを守り悪の類をばこれを遠ざけなければならぬ。
3-3-ロ 結尾の祈 5:23 - 5:24
5章23節 願はくは平和の神、みづから汝らを全く潔くし、[引照]
口語訳 | どうか、平和の神ご自身が、あなたがたを全くきよめて下さるように。また、あなたがたの霊と心とからだとを完全に守って、わたしたちの主イエス・キリストの来臨のときに、責められるところのない者にして下さるように。 |
塚本訳 | 願わくは、平和の神自ら君達を潔め尽くし、私達の主イエス・キリストの来臨の時咎められることの無いように、君達の霊と心と体を完全に守り給わんことを。 |
前田訳 | 平和の神ご自身があなた方をくまなくお聖めになり、あなた方の霊と心と体を健やかに保って、われらの主イエス・キリストの来臨に際してとがなくしてくださいますように。 |
新共同 | どうか、平和の神御自身が、あなたがたを全く聖なる者としてくださいますように。また、あなたがたの霊も魂も体も何一つ欠けたところのないものとして守り、わたしたちの主イエス・キリストの来られるとき、非のうちどころのないものとしてくださいますように。 |
NIV | May God himself, the God of peace, sanctify you through and through. May your whole spirit, soul and body be kept blameless at the coming of our Lord Jesus Christ. |
註解: 最後にパウロはテサロニケの信徒に関して神に対する祈願、厳密に言えば希望を述べている。その第一は平和の神御自身がテサロニケの信徒を全く潔くすることである。聖潔はイエスの再臨を待望む聖徒に欠くべからざる性質である。
汝らの靈と心と體とを全く守りて、我らの主イエス・キリストの來り給ふとき責むべき所なからしめ給はん事を。
註解: 再臨のイエスの前に責むべき所なからんためには我らは我らの全心、全霊、全体が神によりて完全に守られなければならぬ。かくして始めてイエスの再臨の時、憶するすることなくその御前に出づることができる。
辞解
[霊、心、体] 「霊」はこの場合神の霊と見るよりも人の精神の最高の機関を指し、「心」は五官によりて刺激せられこれに対して働く心の部分であり、「体」とは肉体で、これは神の宮として常に神を迎えている場合始めて責むべき所なきものとなる。而して凡てこれらは神によりて守られるより外に実現し得ない事実である。「霊」はパウロは一般に「神の霊」を指すけれどもここでは人間の霊で人間の精神の最高の機関として考えられ、「心」はそれより卑きものとして取扱われている。
5章24節 汝らを召したまふ者は眞實なれば、之を成し給ふべし。[引照]
口語訳 | あなたがたを召されたかたは真実であられるから、このことをして下さるであろう。 |
塚本訳 | 君達を召し給うお方は真実だから、このことをも(きっと)成し遂げ給うであろう。 |
前田訳 | あなた方をお招きの方はまことにいますゆえ、そうなさるでしょう。 |
新共同 | あなたがたをお招きになった方は、真実で、必ずそのとおりにしてくださいます。 |
NIV | The one who calls you is faithful and he will do it. |
註解: 23、24節の祈願は一見実現困難のようであるが、汝らを召し給える神は真実に在すが故にその約束をば必ず実行したまうであろう。
分類
4 結尾の挨拶 5:25 - 5:28
5章25節 兄弟よ、我らのために祈れ。[引照]
口語訳 | 兄弟たちよ。わたしたちのためにも、祈ってほしい。 |
塚本訳 | 兄弟達よ、私達のために【も】祈ってくれ。 |
前田訳 | 兄弟よ、われらのためにもお祈りください。 |
新共同 | 兄弟たち、わたしたちのためにも祈ってください。 |
NIV | Brothers, pray for us. |
註解: 伝道者や使徒は信仰の指導者である関係上他人のために祈るべき人であり、一見他人より祈ってもらう必要がないかのごとくに思われているけれども反対に最も多く祈ってもらう必要がある。サタンは最も激しく信仰の勇者を攻撃するからである(Uテサ3:1。エペ6:20)。
5章26節 きよき接吻をもて凡ての兄弟の安否を問へ。[引照]
口語訳 | すべての兄弟たちに、きよい接吻をもって、よろしく伝えてほしい。 |
塚本訳 | 潔い接吻で兄弟一同に宜しく(と伝えてくれ)。 |
前田訳 | きよい口づけですべての兄弟によろしくお伝えください。 |
新共同 | すべての兄弟たちに、聖なる口づけによって挨拶をしなさい。 |
NIV | Greet all the brothers with a holy kiss. |
註解: 接吻はギリシャおよび西部アジア地方の挨拶の形式であった(ロマ16:16註参照)。本書簡はテサロニケ教会の主脳者に渡され、それらの人々が、凡ての兄弟に安否を問うことを命じている。すなわち主脳者を中心とする全教会の一致の姿である。
5章27節 主によりて汝らに命ず、この書を凡ての兄弟に讀み聞かせよ。[引照]
口語訳 | わたしは主によって命じる。この手紙を、みんなの兄弟に読み聞かせなさい。 |
塚本訳 | 主に誓って君達に願う、兄弟一同にこの手紙を読み聞かせよ。 |
前田訳 | 主によってお願いします。この手紙をすべての兄弟に読み聞かせてください。 |
新共同 | この手紙をすべての兄弟たちに読んで聞かせるように、わたしは主によって強く命じます。 |
NIV | I charge you before the Lord to have this letter read to all the brothers. |
註解: 教会の主脳者たちがこれを凡ての兄弟に読みきかせることをパウロは絶対的要求として指示している。その故はこの書簡が重要なる内容を有するからでもあり、殊にパウロがテサロニケの兄弟たちの全部を心に置きつつこれを認めたのであって少数の主脳者たちのみを目的に書いたのではないからである。
辞解
[主によりて汝らに命ず] 「主によりて汝らに誓いて命ず」というごとき意味で極めて厳粛なる命令である。パウロがかかる態度を取りたる理由として種々の推測が行われ、或はテサロニケには最初に回心せるユダヤ人の信者がありこれが他の人々と不和であるために全体に及ばないことを恐れたと想像され(W2)、または主脳者たちがこれを私用してしまうことを恐れたためと考えられ、その他種々のことが考えられているけれども前掲註のごとくであろう。
5章28節 願はくは主イエス・キリストの恩惠、なんぢらと偕に在らんことを。[引照]
口語訳 | わたしたちの主イエス・キリストの恵みが、あなたがたと共にあるように。 |
塚本訳 | 願わくは私達の主イエス・キリストの恩恵、君達と共にあらんことを! |
前田訳 | われらの主イエス・キリストの恵みがあなた方とともにありますように。 |
新共同 | わたしたちの主イエス・キリストの恵みが、あなたがたと共にあるように。 |
NIV | The grace of our Lord Jesus Christ be with you. |
註解: パウロがその書簡の結尾に用いた形式で、豊かなる内容を有している言葉である(Tコリ16:23その他)。なおこれに神の愛、聖霊の交わりを加えて三位の神に呼びかけている場合もある(Uコリ13:13)。