コロサイ書第4章
分類
4 実践の部 3:1 - 4:6
4-3 家庭の諸関係 3:18 - 4:1
4章1節
口語訳 | 主人たる者よ、僕を正しく公平に扱いなさい。あなたがたにも主が天にいますことが、わかっているのだから。 |
塚本訳 | 主人達よ、正義と公平をもって奴隷に対せよ、君達にも(一人の)主人が天にあることを知って。 |
前田訳 | 主人たちよ、僕を正しく公平に扱いなさい。あなた方も天に主を持つことをご承知です。 |
新共同 | 主人たち、奴隷を正しく、公平に扱いなさい。知ってのとおり、あなたがたにも主人が天におられるのです。 |
NIV | Masters, provide your slaves with what is right and fair, because you know that you also have a Master in heaven. |
註解: エペ6:9註参照。「正義と公平」とは主人がその僕に対して取るべき根本的態度である。殊に主人たる者は専横なるべからず、天の主に仕うる心より推して僕の心持を考え、天の主が己を扱い給うごとくに僕を扱うべきである。
口語訳 | 目をさまして、感謝のうちに祈り、ひたすら祈り続けなさい。 |
塚本訳 | 撓まず祈れ、感謝をもって祈りつつ目を覚まし居れ。 |
前田訳 | 祈りをつねにし、目覚めて感謝のうちに祈ってください。 |
新共同 | 目を覚まして感謝を込め、ひたすら祈りなさい。 |
NIV | Devote yourselves to prayer, being watchful and thankful. |
註解: (▲「常にす」 proskartereô はある事に対して強く執着すること。)信仰生活の衰弱の原因は祈りが足りないからである場合が最も多い。祈祷に固執し、しかも「その中に在りて目を覚ましつつ」(直訳)、明瞭なる意識をもって祈ることが必要である。殊に祈祷は単に祈願や要求のみであってはならず、必ず感謝に溢れた祈りでなければならぬ。祈りは信者の霊の呼吸である。これなしには信仰の生命は死滅する。
4章3節 また
口語訳 | 同時にわたしたちのためにも、神が御言のために門を開いて下さって、わたしたちがキリストの奥義を語れるように(わたしは、実は、そのために獄につながれているのである)、 |
塚本訳 | 同時に私達のためにも祈って、神が御言の門を私達に開いてキリストの奥義を語らせ給うよう──(実に)そのために私も(今)縄目についているのであるが── |
前田訳 | 同時にわれらのためにも、神がわれらにことばの門を開いて、キリストの奥義を語れるよう祈ってください。このためにわたしは捕えられているのです。 |
新共同 | 同時にわたしたちのためにも祈ってください。神が御言葉のために門を開いてくださり、わたしたちがキリストの秘められた計画を語ることができるように。このために、わたしは牢につながれています。 |
NIV | And pray for us, too, that God may open a door for our message, so that we may proclaim the mystery of Christ, for which I am in chains. |
4章4節
口語訳 | また、わたしが語るべきことをはっきりと語れるように、祈ってほしい。 |
塚本訳 | また私が命ぜられるままにその奥義を顕し得るようにしてもらいたい。 |
前田訳 | そしてわたしが語るべきとおりに奥義を示せるよう祈ってください。 |
新共同 | わたしがしかるべく語って、この計画を明らかにできるように祈ってください。 |
NIV | Pray that I may proclaim it clearly, as I should. |
註解: エペ6:19参照。パウロは切に信仰の同志の加祷を要求した。人を教うるものは教えられる者の想像以上に祈りの援助を必要とするものである。パウロがコロサイの信者の祈りを要求せる諸点は、その一はキリストの奥義を語らんために言の門を神が開き給うこと、すなわち伝道の機会が与えられることである。パウロは当時幽囚の中にいたけれどもなおローマにおいても多くの伝道の手蔓 が与えられんことを欲したに相異なく、さらにでき得べくば釈放せられて自由に福音を伝える機会が与えられんことを欲したのであった。その二は第一に附随したことであるが、人の面を恐れず、世の迫害を恐れずして語るべきことを曲げず、語るべきままに語ることを得んことであった。伝道者にとりて必要なのは、この大胆さである。エペ6:20註参照。そしてパウロの伝道の内容は「キリストの奥義」であって、この奥義なる語の中には種々の意味が包含されているけれども、この場合異邦人の使徒として異邦人もキリストによりて救われることの真理を指したと見るべきであろう。パウロがユダヤ人に憎まれて獄に投ぜられたのはそのためであった。
辞解
[門を開く] Tコリ16:9。Uコリ2:12参照
4章5節 なんぢら
口語訳 | 今の時を生かして用い、そとの人に対して賢く行動しなさい。 |
塚本訳 | (信者ならぬ)外部の人に対しては知恵をもって接し、(福音のためにあらゆる)機会を利用せよ。(時は迫っている。) |
前田訳 | 今の時を利用して、外の人々に対して知恵をもってふるまいなさい。 |
新共同 | 時をよく用い、外部の人に対して賢くふるまいなさい。 |
NIV | Be wise in the way you act toward outsiders; make the most of every opportunity. |
註解: 「機をうかがひ」は「時を買占め」で凡ての時を充分に自分のものとして利用すること。すなわち「あらゆる機会において」というごとき意味。なおエペ5:16註を見よ。「外の人」は未信者を指す。Tコリ5:12、13。Tテサ4:12。未信者に対する愚なる態度は、福音の伝播に大なる妨害となる。
4章6節
口語訳 | いつも、塩で味つけられた、やさしい言葉を使いなさい。そうすれば、ひとりびとりに対してどう答えるべきか、わかるであろう。 |
塚本訳 | (また彼らに対する)君達の言は何時も気持よく、且つ塩で味をつけよ。そうすれば一人一人に如何に答うべきかを知るであろう。 |
前田訳 | あなた方のことばがつねに親切で、塩で味をつけられていて、おのおのにどう答えるべきかをわきまえてください。 |
新共同 | いつも、塩で味付けされた快い言葉で語りなさい。そうすれば、一人一人にどう答えるべきかが分かるでしょう。 |
NIV | Let your conversation be always full of grace, seasoned with salt, so that you may know how to answer everyone. |
註解: 前節の「外の人」に対する態度の継続である。「外の人」に対する言葉は常に「気持ちよい言を用うること」が必要である。辞解参照。ただし唯気持ちがよいだけではいけない。塩にて味付け、心を引きしめる力があり、効き目のある言をもってしなければならぬ。人の心に響かないような当らず障らずの言は用いるべきではない。これが各人に対する適当の答である。不愉快な言を用い、または味のない言を用いることは、外の人に対して答える所以を知らない者である。
辞解
「惠 を用ひ」(B1)は適訳ではない、むしろ「快 からしめ」(M0、L3、Z0、A1、E0、L2)と訳すべきである。上記註はこれによった。
[鹽 ] 腐敗を止める作用と食物に味をつける作用とがあり、本節の場合はこの双方の意味を含むと解し得ないことはないが、むしろ味の方面のみを取る方が適当であろう。
分類
5 結尾の挨拶 4:7 - 4:17
5-1-イ テキコとオネシモ 4:7 - 4:9
4章7節
口語訳 | わたしの様子については、主にあって共に僕であり、また忠実に仕えている愛する兄弟テキコが、あなたがたにいっさいのことを報告するであろう。 |
塚本訳 | 私自身のことは、愛する兄弟であり、主に在る忠実な世話役また奴隷仲間であるテキコが、皆君達に知らせるであろう。 |
前田訳 | わたしについては主にあって愛する兄弟、忠実な奉仕人で同労者テキコがすべてをお知らせしましょう。 |
新共同 | わたしの様子については、ティキコがすべてを話すことでしょう。彼は主に結ばれた、愛する兄弟、忠実に仕える者、仲間の僕です。 |
NIV | Tychicus will tell you all the news about me. He is a dear brother, a faithful minister and fellow servant in the Lord. |
註解: テキコは本書の持参人でアジヤ人である。緒論およびエペ6:21註参照。パウロは彼を呼ぶに個人的には愛する同信の兄弟であり、職務としてはパウロの忠実なる役者として伝道の仕事を助け、キリストに対してはパウロと共に僕であることをもってして彼を高く評価している。これによって彼の如何なる人であるかがコロサイの人に明らかにされた訳である。パウロの身辺の事柄は、各地の信徒とも心配していたことは、本節およびエペ6:21よりもこれを推察することができる。
辞解
「主にありて」を「忠実なる役者」にも懸ける読み方(L3)あり、「具 に」は「凡て」。「テキコ」につきてはエペ6:21辞解参照。
4章8節 われ
口語訳 | わたしが彼をあなたがたのもとに送るのは、わたしたちの様子を知り、また彼によって心に励ましを受けるためなのである。 |
塚本訳 | (今この手紙を持たせて)彼を君達に遺るのは、私達のことを知らせて(少しでも)君達の心を慰めるために外ならない。 |
前田訳 | わたしが彼をつかわすのは、われらのことをお知らせしてあなた方の心を慰めるためです。 |
新共同 | 彼をそちらに送るのは、あなたがたがわたしたちの様子を知り、彼によって心が励まされるためなのです。 |
NIV | I am sending him to you for the express purpose that you may know about our circumstances and that he may encourage your hearts. |
註解: エペ6:22と同文、その註を参照すべし。
辞解
「我らの事を知らしめ」は「汝らをして」が略され、「なんぢらの心を慰めしめん為」には「彼をして」が略されたこととなり日本文として不精確なり。原文を直訳すれば「汝らが我らの事を知り、彼が汝らを慰めん為、このことの為に我は彼を汝らに遣す」となる。
4章9節
口語訳 | あなたがたのひとり、忠実な愛する兄弟オネシモをも、彼と共に送る。彼らはあなたがたに、こちらのいっさいの事情を知らせるであろう。 |
塚本訳 | なお忠実な愛する兄弟であり、君達の所の者であるオネシモも一緒に遺る。二人が何くれとなく此処のことを君達に知らせるであろう。 |
前田訳 | 忠実な愛する兄弟オネシモも同行します。彼はあなた方のひとりです。彼らはこちらのことのすべてをお知らせしましょう。 |
新共同 | また、あなたがたの一人、忠実な愛する兄弟オネシモを一緒に行かせます。彼らは、こちらの事情をすべて知らせるでしょう。 |
NIV | He is coming with Onesimus, our faithful and dear brother, who is one of you. They will tell you everything that is happening here. |
註解: オネシモにつきてはピレモン書を見よ。彼はコロサイ人で、ピレモンの僕であったのが、主人に対して罪があり、逃れてローマに行き、パウロの下に改心して立派なキリスト者になった。この度テキコに伴われてピレモンの許に送られて来たのであるが、パウロは彼をコロサイの教会にも紹介しておく必要を認めたのがパウロの愛心の結果であった。前科者として取り扱わず、主に在る兄弟として取扱えとのことである。ローマの幽囚生活およびパウロの周囲の事情は彼らより聞くべしとのことである。
4章10節
口語訳 | わたしと一緒に捕われの身となっているアリスタルコと、バルナバのいとこマルコとが、あなたがたによろしくと言っている。このマルコについては、もし彼があなたがたのもとに行くなら、迎えてやるようにとのさしずを、あなたがたはすでに受けているはずである。 |
塚本訳 | 私と同じ因われの身であるアリスタルコと、バルナバの従兄弟マルコから君達によろしく。【マルコのことについては(既に私からの)指図を受け取ったに違いない。彼が君達の所に行ったら歓迎してもらいたい。】 |
前田訳 | わが同囚のアリスタルコとバルナバのいとこのマルコとからあなた方によろしく。マルコについては、彼がそちらへ行ったらお迎えくださいとの指図をお受けのはずです。 |
新共同 | わたしと一緒に捕らわれの身となっているアリスタルコが、そしてバルナバのいとこマルコが、あなたがたによろしくと言っています。このマルコについては、もしそちらに行ったら迎えるようにとの指示を、あなたがたは受けているはずです。 |
NIV | My fellow prisoner Aristarchus sends you his greetings, as does Mark, the cousin of Barnabas. (You have received instructions about him; if he comes to you, welcome him.) |
註解: 「共に囚人となれる」 synaichmalôtos は本来戦争において共に捕虜とせられし者の意、同時に認 められしピレ1:23、24にはアリスタルコは「同労者」として記され、反対にエパフラスが「共に囚人となれる者」として記さる。そのために、この語の意味が問題となり、あるいは福音の戦線に共に戦い共に捕虜となった者の意味に解し、「同労者」と同じ意味に取る説もあり(L2)、あるいはパウロの幽囚に伴い短期に交替して彼と共に幽囚生活を別つ意味と解し(E0、M0)ている。この後者が事実であろう。すなわち短期に交替してパウロと幽囚生活を別っている人々をパウロはかく呼んだので、本書を認 める時とピレモン書を認 める時との間に若干日の差があり、この間にアリスタルコとエパフラスとが交替したのであろう。アリスタルコはテサロニケ人で(使20:4)パウロの最後のエルサレム行に伴い、それよりパウロのローマ行まで行動を共にしていたと思われる(使19:29。使27:2)。「バルナバ」につきては使徒行伝に録される処を参照すべし(使4:36)。「マルコ」はマルコ伝の記者で、この時パウロと共にローマにいた。註解マルコ伝緒言参照。「汝ら命を受けたり」は察する処、以前に何らかの機会に何らかの便で、パウロより命を受けたものであろう。その命の内容は次に記されるごとく、マルコがコロサイを訪問することあるべきこととその場合の種々の注意であったろう。
4章11節 またユストと
口語訳 | また、ユストと呼ばれているイエスからもよろしく。割礼の者の中で、この三人だけが神の国のために働く同労者であって、わたしの慰めとなった者である。 |
塚本訳 | またユストというイエスからよろしく。割礼ある者の中でこの人達だけが神の王国のために一緒に働いてくれて、私の慰めとなった者である。 |
前田訳 | ユストと呼ばれるイエスからもよろしく。割礼あるものの中で彼らだけが神の国への同労者で、わが慰めになりました。 |
新共同 | ユストと呼ばれるイエスも、よろしくと言っています。割礼を受けた者では、この三人だけが神の国のために共に働く者であり、わたしにとって慰めとなった人々です。 |
NIV | Jesus, who is called Justus, also sends greetings. These are the only Jews among my fellow workers for the kingdom of God, and they have proved a comfort to me. |
註解: 「ユスト」はラテン語の「正義」の意味で律法に忠実なるユダヤ人の好んで用いた名称であった(新約聖書にこの名の人三人あり。使1:23。使18:7)。このイエス・ユストにつきては他に何も知られていない。ユダヤ人のキリスト者は他にもあったけれども、この三人だけが神の国のため、福音のためのパウロの同労者であった。この事実がユダヤ人の不信のために歎き苦しんでいるパウロにとりてのせめてもの心の慰安であった。
辞解
[慰安 ] parhêgoria 「話しかける」意味で医術上「軽減」の意味に用う。この意味より来れる慰めを意味す。
[割禮の者] ユダヤ人。
4章12節
口語訳 | あなたがたのうちのひとり、キリスト・イエスの僕エパフラスから、よろしく。彼はいつも、祈のうちであなたがたを覚え、あなたがたが全き人となり、神の御旨をことごとく確信して立つようにと、熱心に祈っている。 |
塚本訳 | 君達の所のエパフラからよろしく。彼はキリスト・イエスの奴隷であるが、君達が完成され、如何なる神の御意にも確信に満ちて立ち得るよう、何時も君達のために祈りにおいて戦っている。 |
前田訳 | あなた方のひとりでキリスト・イエスの僕エパフラスからよろしく。彼はあなた方が全きものとなり、神のみ心をすべて確信して立つようにと、つねにあなた方のために祈って苦闘しています。 |
新共同 | あなたがたの一人、キリスト・イエスの僕エパフラスが、あなたがたによろしくと言っています。彼は、あなたがたが完全な者となり、神の御心をすべて確信しているようにと、いつもあなたがたのために熱心に祈っています。 |
NIV | Epaphras, who is one of you and a servant of Christ Jesus, sends greetings. He is always wrestling in prayer for you, that you may stand firm in all the will of God, mature and fully assured. |
註解: エパフラスはコロサイ人でコロサイに伝道した人である(コロ1:7)。彼はその同郷の信徒たち、殊に、彼の伝道によりて入信した人々のことは始終念頭を去らなかったに相違ない。かかることは自分からは言いにくいことなので、パウロはこれをコロサイの人々に告げた。すなわちエパフラスは、コロサイの信徒がその信仰においても行為においても何時までも幼稚の域に止まらず「全くなりかつ神の凡ての御意に確信して立つ」ことを祈っていること、しかもその祈りの中に彼らのために苦闘していたことを告げた。
辞解
[力を盡す] agônizomai はコロ1:29辞解参照。
[確信し] また「満されて」とも訳す(L3)、但し現行訳のままにて可なり。
4章13節
口語訳 | わたしは、彼があなたがたのため、またラオデキヤとヒエラポリスの人々のために、ひじょうに心労していることを、証言する。 |
塚本訳 | 彼が君達と、ラオデキヤ及びヒエラポリスの人達とのために非常に苦労していることは、私が証明する。 |
前田訳 | わたしは彼のために証言しますが、彼はあなた方とラオデキアとヒエラポリスの人々のために多くの労苦をしています。 |
新共同 | わたしは証言しますが、彼はあなたがたのため、またラオディキアとヒエラポリスの人々のために、非常に労苦しています。 |
NIV | I vouch for him that he is working hard for you and for those at Laodicea and Hierapolis. |
註解: パウロはここに自ら証人としてエパフラスの心労を彼らに告げた。また啻 に彼らのみならずコロサイに近きラオデキヤおよびヒエラポリスの人々についても彼は苦心していることを告げた。彼らはこれを聴いて如何に喜ぶことであろう。パウロが人情の機微に触れている点を見逃してはならない。
4章14節
口語訳 | 愛する医者ルカとデマスとが、あなたがたによろしく。 |
塚本訳 | 愛する医者ルカとデマからよろしく。 |
前田訳 | 愛する医者ルカとデマスとからよろしく。 |
新共同 | 愛する医者ルカとデマスも、あなたがたによろしくと言っています。 |
NIV | Our dear friend Luke, the doctor, and Demas send greetings. |
註解: ルカは疑いなくルカ伝の記者のルカである。彼につきてはルカ伝緒言参照。パウロの善き助手として彼の最後のエルサレム行に伴い(使20:1以下)この時も彼と共に在り、またパウロの第二ローマ幽囚の際も彼と共にあった(Uテモ4:11)。「デマス」後にこの世を愛してパウロを棄て去った(Uテモ4:10)。パウロがデマスに関してのみここに何らの推奨的説明を与えていないのは、あるいはこの頃よりすでに彼の信仰に幾分の不安さがあったことをパウロは認識したのであるかも知れない。
4章15節
口語訳 | ラオデキヤの兄弟たちに、またヌンパとその家にある教会とに、よろしく。 |
塚本訳 | ラオデキヤの兄弟達、ニンフアとその家の教会に宜しく伝えてくれ。 |
前田訳 | ラオデキアの兄弟とヌソパとその家の集まりとによろしく。 |
新共同 | ラオディキアの兄弟たち、および、ニンファと彼女の家にある教会の人々によろしく伝えてください。 |
NIV | Give my greetings to the brothers at Laodicea, and to Nympha and the church in her house. |
註解: これはコロサイ書をラオデキヤに送る時(次節)の序に宜しくとの伝言を依頼する意味であろう。ヌンパはラオデキヤにいる信者でその家に集会を持っていた人であったらしい。その他のことは知られていない。なお「家の教会」についてはロマ16:5辞解参照。
辞解
[その家] 「その」は種々の異本あり、「かれの」「かの女の」「かれらの」である。「かれらの」の場合解釈上困難を来たすのであるが、おそらくヌンパ一族の家の意味であろう。「その」はこの中の何れを採用したか不明である。
4章16節 この
口語訳 | この手紙があなたがたの所で朗読されたら、ラオデキヤの教会でも朗読されるように、取り計らってほしい。またラオデキヤからまわって来る手紙を、あなたがたも朗読してほしい。 |
塚本訳 | この手紙を君達の所で読んだら、ラオデキヤ人の教会にも読ませてくれ。また君達もラオデキヤから廻って来る手紙を読むように。 |
前田訳 | この手紙があなた方のところで読まれたら、ラオデキアの集まりでも読まれるようにしてください。そしてあなた方もラオデキアからの手紙を読んでください。 |
新共同 | この手紙があなたがたのところで読まれたら、ラオディキアの教会でも読まれるように、取り計らってください。また、ラオディキアから回って来る手紙を、あなたがたも読んでください。 |
NIV | After this letter has been read to you, see that it is also read in the church of the Laodiceans and that you in turn read the letter from Laodicea. |
註解: 「ラオデキヤより来る書」はパウロの書簡たることは自然に了解される処であるがこの書簡が紛失したのであるか、あるいは所謂エペソ書がそれに当っているかが問題とされている。おそらくエペソ書が一つの回章でそれがラオデキヤを経てコロサイに回さるべきものであったとの想像が最も事実に近いであろう。エペソ書緒言参照。
4章17節 アルキポに
口語訳 | アルキポに、「主にあって受けた務をよく果すように」と伝えてほしい。 |
塚本訳 | アルキッポに、「主に在って受けた職責に注意し、これを果たせ」と言ってもらいたい。 |
前田訳 | そしてアルキポにいってください、「主にあって受けた務めは、心してそれを果たすように」と。 |
新共同 | アルキポに、「主に結ばれた者としてゆだねられた務めに意を用い、それをよく果たすように」と伝えてください。 |
NIV | Tell Archippus: "See to it that you complete the work you have received in the Lord." |
註解: アルキポにつきてはピレ1:2にあるのみで他に記されていない。何故パウロが直接に彼に言わずに、間接にコロサイの教会をして言わしめたのであるかにつきては(1)彼をラオデキヤに住していたと見る説(L3)、(2)教会をして言わしむる方が有効であるとする説(L3、B1)、(3)老年または病気のために教会に出席し得ないためとする説(B1)等があるが、推察する処彼はコロサイの一般教会の一員であったのがピレモンの家の教会(ピレ1:2)において福音を伝える職を神より受けて、ピレモンの家の集会に関係していたのであろう。それ故にパウロはコロサイの信徒たちをしてこの激励をアルキポに送らせたのであろう。かく解すれば「主にありて受けし職」はピレモンの家の教会の伝道の職であることとなる。
辞解
[職] diakonia であるがここでは執事の職であると解する必要はない。
[愼みて盡せ] 「全うするように注意せよ」と直訳し得る語。
分類
6 附言と頌栄 4:18
口語訳 | パウロ自身が、手ずからこのあいさつを書く。わたしが獄につながれていることを、覚えていてほしい。恵みが、あなたがたと共にあるように。 |
塚本訳 | これが私パウロの手による挨拶である。どうか私の縄目を記憶してもらいたい。恩恵君達と共にあらんことを! |
前田訳 | パウロが自筆でごあいさつします。わたしが捕われていることをお忘れなく。お恵みがあなた方とともにありますように。 |
新共同 | わたしパウロが、自分の手で挨拶を記します。わたしが捕らわれの身であることを、心に留めてください。恵みがあなたがたと共にあるように。 |
NIV | I, Paul, write this greeting in my own hand. Remember my chains. Grace be with you. |
註解: パウロは彼の習慣に従いこの書簡を代筆せしめ、最後に自らの署名のごとき意味においてこの最後の一節を附加した。手づから録せることを殊更に明らかにしてある箇所はTコリ16:21。ガラ6:11。Uテサ3:17。ピレ1:19。またこれをもって真正のパウロの書簡たる証拠としていた(Uテサ3:17b)。
わが
註解: パウロのために祈らんがため、また福音のためにかかる苦難を甞 むるパウロのことを思いて信仰に励まんがためである。
註解: 「御恵 」は父なる神および主イエス・キリストより来る恩恵である。この恩恵の下に在りて人はみな平安を得ることができる。