ルカ伝第24章
分類
11 復活 24:1 - 24:53
11-1-イ 空虚なる墓 24:1 - 24:12
(マタ28:1-10) (マコ16:1-8)
24章1節 一週の初の日、朝まだき、女たち備へたる香料を携へて墓にゆく。[引照]
口語訳 | 週の初めの日、夜明け前に、女たちは用意しておいた香料を携えて、墓に行った。 |
塚本訳 | (翌日、すなわち)週の始めの日[日曜日]、夜の引明けに、用意しておいた香料(をまぜた香油)を持って墓場に行った。 |
前田訳 | 週の第一日の夜明け前に、用意しておいた香料を持って女たちは墓へ行った。 |
新共同 | そして、週の初めの日の明け方早く、準備しておいた香料を持って墓に行った。 |
NIV | On the first day of the week, very early in the morning, the women took the spices they had prepared and went to the tomb. |
註解: 夜の明けるのを待ち兼ねていたことが窺われる。文章としては前章の末尾と密接に(mên・・・de)関連している。屍骸を完全に手入れして葬るために、前々日に求めた香料や香油を携えて墓に行った。女たちの主なる者の名は10節に記されている。
24章2節 然るに石の既に墓より轉し除けあるを見、[引照]
口語訳 | ところが、石が墓からころがしてあるので、 |
塚本訳 | 墓(の入口)から石がころがしてあるのを見て |
前田訳 | 見ると、石が墓から転がしてあったので、 |
新共同 | 見ると、石が墓のわきに転がしてあり、 |
NIV | They found the stone rolled away from the tomb, |
24章3節 内に入りたるに、主イエスの屍體を見ず、[引照]
口語訳 | 中にはいってみると、主イエスのからだが見当らなかった。 |
塚本訳 | 中に入ったが、主イエスの体は見えなかった。 |
前田訳 | 中に入ると、主イエスの体が見えなかった。 |
新共同 | 中に入っても、主イエスの遺体が見当たらなかった。 |
NIV | but when they entered, they did not find the body of the Lord Jesus. |
24章4節 これが爲に狼狽へをりしに、視よ、輝ける衣を著たる二人の人その傍らに立てり。[引照]
口語訳 | そのため途方にくれていると、見よ、輝いた衣を着たふたりの者が、彼らに現れた。 |
塚本訳 | そのため途方にくれていると、見よ、かがやく着物をきた二人の人が(現われて)彼らに近づいた。 |
前田訳 | そのため途方にくれていると、見よ、かがやく着物を着たふたりの男が近づいた。 |
新共同 | そのため途方に暮れていると、輝く衣を着た二人の人がそばに現れた。 |
NIV | While they were wondering about this, suddenly two men in clothes that gleamed like lightning stood beside them. |
註解: 「主イエスの」はD写本に欠けている。マタ28:1−10の記事との間に若干の共通点と差異の点とがあることに注意すべし、種々の言伝えがあったことは止むを得ない。二人の人は天の使いであると考えられている。
24章5節 女たち懼れて面を地に伏せたれば、その二人の者いふ『なんぞ死にし者どもの中に生ける者を尋ぬるか。[引照]
口語訳 | 女たちは驚き恐れて、顔を地に伏せていると、このふたりの者が言った、「あなたがたは、なぜ生きた方を死人の中にたずねているのか。 |
塚本訳 | ぞっとして面を垂れると、彼らに言った、「なぜ死人の中に生きた者をさがすのか。 |
前田訳 | おそれて顔を地に伏せると、彼らはいった、「なぜ生きた人を死人の中に探すのか。 |
新共同 | 婦人たちが恐れて地に顔を伏せると、二人は言った。「なぜ、生きておられる方を死者の中に捜すのか。 |
NIV | In their fright the women bowed down with their faces to the ground, but the men said to them, "Why do you look for the living among the dead? |
24章6節 彼は此處に在さず、甦へり給へり。尚ガリラヤに居給へるとき、如何に語り給ひしかを憶ひ出でよ。[引照]
口語訳 | そのかたは、ここにはおられない。よみがえられたのだ。まだガリラヤにおられたとき、あなたがたにお話しになったことを思い出しなさい。 |
塚本訳 | ここにはおられない。もう復活されたのだ。まだガリラヤにおられたとき、あなた達に言われたことを思い出してみよ。 |
前田訳 | ここにはいらっしゃらない。復活なさった。まだガリラヤにおいでのころ、あなた方にいわれたことを思い出せ、 |
新共同 | あの方は、ここにはおられない。復活なさったのだ。まだガリラヤにおられたころ、お話しになったことを思い出しなさい。 |
NIV | He is not here; he has risen! Remember how he told you, while he was still with you in Galilee: |
24章7節 即ち「人の子は必ず罪ある人の手に付され、十字架につけられ、かつ三日めに甦へるべし」と言ひ給へり』[引照]
口語訳 | すなわち、人の子は必ず罪人らの手に渡され、十字架につけられ、そして三日目によみがえる、と仰せられたではないか」。 |
塚本訳 | 『人の子(わたし)は罪人どもの手に引き渡され、十字架につけられ、三日目に復活せねばならない』と言われたではないか。」 |
前田訳 | 『人の子は罪びとどもの手に引き渡され、十字架につけられ、三日目に復活せねばならない』と」。 |
新共同 | 人の子は必ず、罪人の手に渡され、十字架につけられ、三日目に復活することになっている、と言われたではないか。」 |
NIV | `The Son of Man must be delivered into the hands of sinful men, be crucified and on the third day be raised again.'" |
註解: 二人の天使は女たちにイエスの復活し給うたことと、ルカ9:22その他においてイエスが十字架の死と復活とについて預言し給うたことを憶い出させんとした。これらの預言はしばしば繰返されたけれども、彼らには「辨へぬやうに隱され(ルカ9:45)」ていたので、彼らはこの時天使の言によってそれら凡てを憶い出したことであろう。絶望の中に陥っていた彼らにとっては、全く蘇生の思いを与えた復活の嘉信であった。
辞解
[死にし者] 神と共に生きる者以外は人間はみな「死にし者」である(マタ8:22。エペ2:1)。我らは肉の人間、すなわち死にたる人間の中にイエスを求めてもこれを見出すことはできない。
[彼は此處に在さず、甦へり給へり] D写本に欠けている。意味には関係がない。またガリラヤに往き給うこと(マタ28:7)および彼らに顕れ給うたこと(同8)を欠く、ルカは主としてエルサレム中心の伝説を録す。
24章8節 ここに彼らその御言を憶ひ出で、[引照]
口語訳 | そこで女たちはその言葉を思い出し、 |
塚本訳 | 女たちはイエスの言葉を思い出して、 |
前田訳 | 女たちはイエスのことばを思い出して、 |
新共同 | そこで、婦人たちはイエスの言葉を思い出した。 |
NIV | Then they remembered his words. |
24章9節 墓より歸りて、凡て此等のことを十一弟子および凡て他の弟子たちに告ぐ。[引照]
口語訳 | 墓から帰って、これらいっさいのことを、十一弟子や、その他みんなの人に報告した。 |
塚本訳 | 墓から帰り、十一人(の使徒)とそのほかみんなの人に、一つのこらずこのことを知らせた。 |
前田訳 | 墓から帰り、十一人とほかのみんなにこのことのすべてを告げた。 |
新共同 | そして、墓から帰って、十一人とほかの人皆に一部始終を知らせた。 |
NIV | When they came back from the tomb, they told all these things to the Eleven and to all the others. |
24章10節 この女たちはマグダラのマリヤ、ヨハンナ及びヤコブの母マリヤなり、而して彼らと共に在りし他の女たちも、之を使徒たちに告げたり。[引照]
口語訳 | この女たちというのは、マグダラのマリヤ、ヨハンナ、およびヤコブの母マリヤであった。彼女たちと一緒にいたほかの女たちも、このことを使徒たちに話した。 |
塚本訳 | これを使徒たちに話したのは、マグダラのマリヤとヨハンナとヤコブの母マリヤと、および、この女たちと一しょにいたほかの女たちとであった。 |
前田訳 | 女たちはマグダラのマリヤとヨハンナとヤコブの母マリヤで、いっしょのほかの女たちも、使徒たちにこのことを話した。 |
新共同 | それは、マグダラのマリア、ヨハナ、ヤコブの母マリア、そして一緒にいた他の婦人たちであった。婦人たちはこれらのことを使徒たちに話したが、 |
NIV | It was Mary Magdalene, Joanna, Mary the mother of James, and the others with them who told this to the apostles. |
註解: ルカの記事によればこの女たちの中、誰も復活のイエスを見た者はなかったが、復活の事実を確信して使徒たちに告げたのであった。「ヤコブ」は小ヤコブと称えられた十二使徒の一人、アルパヨの子、その他の女についてはルカ8:2、3参照。
24章11節 使徒たちは其の言を妄語と思ひて信ぜず。[引照]
口語訳 | ところが、使徒たちには、それが愚かな話のように思われて、それを信じなかった。〔 |
塚本訳 | しかし使徒たちはこの話が冗談のように見えたので、女たちを信じなかった。 |
前田訳 | しかし、使徒たちにはこの話がたわごとのようにみえたので、女たちを信じなかった。 |
新共同 | 使徒たちは、この話がたわ言のように思われたので、婦人たちを信じなかった。 |
NIV | But they did not believe the women, because their words seemed to them like nonsense. |
註解: 女子の妄語を信じないだけならば有りがちなことであるが、使徒とも称えられる者が主イエスの預言を全然念頭に置いていなかったことは全く驚くべき事実である。人間の肉は霊のことに関してはかくも無感覚である。
24章12節 [ペテロは起ちて墓に走りゆき、屈みて布のみあるを見、ありし事を怪しみつつ歸れり][引照]
口語訳 | ペテロは立って墓へ走って行き、かがんで中を見ると、亜麻布だけがそこにあったので、事の次第を不思議に思いながら帰って行った。〕 |
塚本訳 | [無シ] |
前田訳 | 〔しかしペテロは立って墓へ走り行き、かがんで見ると、亜麻布だけがあったので、出来事におどろいて帰った〕。 |
新共同 | しかし、ペトロは立ち上がって墓へ走り、身をかがめて中をのぞくと、亜麻布しかなかったので、この出来事に驚きながら家に帰った。 |
NIV | Peter, however, got up and ran to the tomb. Bending over, he saw the strips of linen lying by themselves, and he went away, wondering to himself what had happened. |
註解: ヨハ20:3−6よりここに挿入されたものと思われる。D写本にこれを欠く。
11-1-ロ エマオ途上のキリスト 24:13 - 24:35
註解: 13節以後の復活のイエスに関する記事はルカ特有であり、これにヨハネ伝にある若干の記事に類する伝説を加えて編纂されている。
24章13節 視よ、この日二人の弟子、エルサレムより三里ばかり隔りたるエマオといふ村に往きつつ、[引照]
口語訳 | この日、ふたりの弟子が、エルサレムから七マイルばかり離れたエマオという村へ行きながら、 |
塚本訳 | するとちょうど同じ日に、二人の弟子がエルサレムから六十スタデオ[十一キロ半]離れたエマオという村へ歩いてゆきながら、 |
前田訳 | 同じ日に弟子たちのふたりがエマオという村へ歩いていた。それはエルサレムから六十スタデオ離れていた。 |
新共同 | ちょうどこの日、二人の弟子が、エルサレムから六十スタディオン離れたエマオという村へ向かって歩きながら、 |
NIV | Now that same day two of them were going to a village called Emmaus, about seven miles from Jerusalem. |
24章14節 凡て有りし事どもを互に語りあふ。[引照]
口語訳 | このいっさいの出来事について互に語り合っていた。 |
塚本訳 | これらの出来事をあれやこれやと話し合っていた。 |
前田訳 | 彼らはこのすべての出来事を話しあっていた。 |
新共同 | この一切の出来事について話し合っていた。 |
NIV | They were talking with each other about everything that had happened. |
註解: 二人の弟子は9節の他の弟子の中の二人であろう。その一人の名がクレオパであることは18節に記されている。このクレオパについて古い伝説はイエスの父ヨセフの兄弟であるとされており、今一人はその息子シメオンで、その従兄に当るイエスの兄弟ヤコブの死後エルサレムの二代目の監督になった人であると伝えられており、教父オリゲネスのごときはこれを既定の事実のごとくに取扱っている(Z0参照)。エマオの位置については諸説あり、「三里」は原文「六十スタディオイ」で異本に「百六十スタディオイ」とあり、前者が正しいであろう。その場所は確定できない。カロニエ(またはクロニエ)説、クベベ説等あり。11節における不信の後三日の時間を経過した後の事であった(21節)。
24章15節 語りかつ論じあふ程に、イエス自ら近づきて共に往き給ふ。[引照]
口語訳 | 語り合い論じ合っていると、イエスご自身が近づいてきて、彼らと一緒に歩いて行かれた。 |
塚本訳 | 二人が(こうして)話したり議論したりしていると、(いつの間にか)御本人のイエスが近づいてきて、一しょに歩いておられたが、 |
前田訳 | 話したり論じたりしていると、イエスご自身が近づいていっしょに歩いておられた。 |
新共同 | 話し合い論じ合っていると、イエス御自身が近づいて来て、一緒に歩き始められた。 |
NIV | As they talked and discussed these things with each other, Jesus himself came up and walked along with them; |
24章16節 されど彼らの目遮へられて、イエスたるを認むること能はず。[引照]
口語訳 | しかし、彼らの目がさえぎられて、イエスを認めることができなかった。 |
塚本訳 | 二人は目をくらまされていたので、それと気がつかなかった。 |
前田訳 | しかし彼らの目がさえぎられて、彼を認めえなかった。 |
新共同 | しかし、二人の目は遮られていて、イエスだとは分からなかった。 |
NIV | but they were kept from recognizing him. |
註解: 「論ず」 zeteô は熱論する意味がある故、イエスの死と復活に関する論議に彼らは熱中していたことが判る。イエスの復活体は非常に特異なものであったことがここにも表われている。すなわち目に見えていながらイエスであることが判明らず、歩み、語り、パンを取りて祝し、しかも突然に消え去り(31節)、觸ることができるけれども(39節)また、閉じられた戸を通して室に入ることもできる等の事実(36節)を併せ考えるならば、復活体は我らの経験世界の外にある事実であることが判明る。「彼らの目遮へられて」とある点から見れば、視力に変化を起させられたことになるのであるが、孰れが事実かを決定することは困難である。
24章17節 イエス彼らに言ひ給ふ『なんぢら歩みつつ互に語りあふ言は何ぞや』かれら悲しげなる状にて立ち止り、[引照]
口語訳 | イエスは彼らに言われた、「歩きながら互に語り合っているその話は、なんのことなのか」。彼らは悲しそうな顔をして立ちどまった。 |
塚本訳 | 二人に言われた、「歩きながら何をそんなに論じ合っているのです。」暗い顔をして二人は立ち止まり、 |
前田訳 | 彼はいわれた、「何のことですか、あなた方が歩きながら論じあっているのは」と。彼らは悲しい顔をして立ち止まり、 |
新共同 | イエスは、「歩きながら、やり取りしているその話は何のことですか」と言われた。二人は暗い顔をして立ち止まった。 |
NIV | He asked them, "What are you discussing together as you walk along?" They stood still, their faces downcast. |
註解: 「語り合う」は antiballô で「投げ合う」こと、議論の激しさを示す、おそらく復活の事実に対して疑う者と信ずる者との間の議論であったろう。突然イエスに言葉をかけれらたので彼らは始めて己に帰り、その興奮を恥ずるかのごとく悲しげに立ち止まった。
24章18節 その一人なるクレオパと名づくるもの答へて言ふ『なんぢエルサレムに寓り居て、獨り此の頃かしこに起りし事どもを知らぬか』[引照]
口語訳 | そのひとりのクレオパという者が、答えて言った、「あなたはエルサレムに泊まっていながら、あなただけが、この都でこのごろ起ったことをご存じないのですか」。 |
塚本訳 | 一人のクレオパという方が答えた、「(見れば御巡礼のようだが、)エルサレムに滞在していながら、あなただけは、この二三日の間にそこで起ったことを何も知らないのですか。」 |
前田訳 | そのひとりのクレオパというものが答えた、「エルサレムにご滞在なのに、あなただけがこのごろそこでおこったことをご存じないのですか」と。 |
新共同 | その一人のクレオパという人が答えた。「エルサレムに滞在していながら、この数日そこで起こったことを、あなただけはご存じなかったのですか。」 |
NIV | One of them, named Cleopas, asked him, "Are you only a visitor to Jerusalem and do not know the things that have happened there in these days?" |
註解: クレオパについては14節註参照。「寓り」は過越の祭のためにエルサレムに上りそこに宿っていたこと。このクレオパの言から判断すれば、当時イエスの死とその復活の噂は全エルサレムに広まっていたものと思わなければならない。この事件を知らないことの方が驚くべきことと思われたのであった。
24章19節 イエス言ひ給ふ『如何なる事ぞ』[引照]
口語訳 | 「それは、どんなことか」と言われると、彼らは言った、「ナザレのイエスのことです。あのかたは、神とすべての民衆との前で、わざにも言葉にも力ある預言者でしたが、 |
塚本訳 | 彼らに言われた、「なんのことです。」彼らが言った、「ナザレ人イエスのことです。──この方はだれが見ても、神の目にさえも、業に言葉に力のある預言者であったのに、 |
前田訳 | 彼はいわれた、「なんのことですか」と。彼らはいった、「ナザレ人イエスのことです。彼は神とすべての民の前にわざとことばに力ある預言者でしたが、 |
新共同 | イエスが、「どんなことですか」と言われると、二人は言った。「ナザレのイエスのことです。この方は、神と民全体の前で、行いにも言葉にも力のある預言者でした。 |
NIV | "What things?" he asked. "About Jesus of Nazareth," they replied. "He was a prophet, powerful in word and deed before God and all the people. |
註解: 知らないふりをし給うた。彼らの信仰を引出すためである。
答へて言ふ『ナザレのイエスの事なり、彼は神と凡ての民との前にて、業にも言にも能力ある預言者なりしに、
24章20節 祭司長ら及び我が司らは、死罪に定めんとて之を付し遂に十字架につけたり。[引照]
口語訳 | 祭司長たちや役人たちが、死刑に処するために引き渡し、十字架につけたのです。 |
塚本訳 | 大祭司連をはじめ(最高法院の)役人たちが(ローマ人に)引き渡して死刑を宣告し、十字架につけてしまったのです。 |
前田訳 | 大祭司や役人たちが引き渡して死刑にし、十字架につけました、 |
新共同 | それなのに、わたしたちの祭司長たちや議員たちは、死刑にするため引き渡して、十字架につけてしまったのです。 |
NIV | The chief priests and our rulers handed him over to be sentenced to death, and they crucified him; |
24章21節 我らはイスラエルを贖ふべき者は、この人なりと望みゐたり、然のみならず、此の事の有りしより今日ははや三日めなるが、[引照]
口語訳 | わたしたちは、イスラエルを救うのはこの人であろうと、望みをかけていました。しかもその上に、この事が起ってから、きょうが三日目なのです。 |
塚本訳 | ほんとうにわたし達は、この方こそイスラエル(の民)をあがなってくださる人だと望みをかけていたのに!そればかりか、かてて加えて、そのことがあってから、きょうはもう三日目になったのです。(もはや生き返られる望みもありません。) |
前田訳 | われらは彼こそイスラエルをあがなう方と望みをかけていましたのに。そればかりか、あのことがおこってからきょうでもう三日目です。 |
新共同 | わたしたちは、あの方こそイスラエルを解放してくださると望みをかけていました。しかも、そのことがあってから、もう今日で三日目になります。 |
NIV | but we had hoped that he was the one who was going to redeem Israel. And what is more, it is the third day since all this took place. |
24章22節 なほ我等のうちの或女たち、我らを驚かせり、即ち彼ら朝夙く墓に往きたるに、[引照]
口語訳 | ところが、わたしたちの仲間である数人の女が、わたしたちを驚かせました。というのは、彼らが朝早く墓に行きますと、 |
塚本訳 | ところがまた、仲間の女たちがわたし達をびっくりさせました。──この女たちは朝早く墓に行ったが、 |
前田訳 | それに、仲間の女たちがわれらをおどろかせました。女たちは朝早く墓に行きましたが、 |
新共同 | ところが、仲間の婦人たちがわたしたちを驚かせました。婦人たちは朝早く墓へ行きましたが、 |
NIV | In addition, some of our women amazed us. They went to the tomb early this morning |
24章23節 屍體を見ずして歸り、かつ御使たち現れて、イエスは活き給ふと告げたりと言ふ。[引照]
口語訳 | イエスのからだが見当らないので、帰ってきましたが、そのとき御使が現れて、『イエスは生きておられる』と告げたと申すのです。 |
塚本訳 | お体が見つからずにかえって来て、天使たちがあらわれ、あの方は生きておられる、と告げたと言うのです。 |
前田訳 | お体が見つからぬまま帰って来て、『彼は生きておられる』という天使の姿を見たと申します。 |
新共同 | 遺体を見つけずに戻って来ました。そして、天使たちが現れ、『イエスは生きておられる』と告げたと言うのです。 |
NIV | but didn't find his body. They came and told us that they had seen a vision of angels, who said he was alive. |
24章24節 我らの朋輩の數人もまた墓に往きて見れば、正しく女たちの言ひし如くにしてイエスを見ざりき』[引照]
口語訳 | それで、わたしたちの仲間が数人、墓に行って見ますと、果して女たちが言ったとおりで、イエスは見当りませんでした」。 |
塚本訳 | そこで仲間の男が二三人墓に行って見ると、はたして女たちの言うとおり(墓は空っぽ)だったが、(生きておられるという)その方は見えなかったのです。」 |
前田訳 | それで、仲間が何人か墓へ行って見ますと、女たちのいったとおりで、彼は見えませんでした」と。 |
新共同 | 仲間の者が何人か墓へ行ってみたのですが、婦人たちが言ったとおりで、あの方は見当たりませんでした。」 |
NIV | Then some of our companions went to the tomb and found it just as the women had said, but him they did not see." |
註解: 以上はクレオパと他の一人との答の要約であるが19節はイエスが如何なる人であったかについて、20節はイエスに対する祭司長や司たちの態度と十字架の死、21節はイエスに対するクレオパその他の弟子の信仰と期待およびこれに対する失望、21−24節はイエスの復活を主張する女たちおよびこれに関するペテロたちの証言を掲げている。そしてクレオパらがこれに対して未だ明確なる信仰と確信に到達しないことが言外に現われていることはイエスにも明らかに見えたのであろう。次節のごとく答え給うた。
24章25節 イエス言ひ給ふ『ああ愚にして預言者たちの語りたる凡てのことを信ずるに心鈍き者よ。[引照]
口語訳 | そこでイエスが言われた、「ああ、愚かで心のにぶいため、預言者たちが説いたすべての事を信じられない者たちよ。 |
塚本訳 | 彼らに言われた、「ああ、預言者たちの言ったことを何一つ信じない、悟りの悪い、心の鈍い人たちよ! |
前田訳 | すると彼はいわれた、「ああ、愚かで心の鈍いものよ、預言者のいったことを何も信じないとは。 |
新共同 | そこで、イエスは言われた。「ああ、物分かりが悪く、心が鈍く預言者たちの言ったことすべてを信じられない者たち、 |
NIV | He said to them, "How foolish you are, and how slow of heart to believe all that the prophets have spoken! |
24章26節 キリストは必ず此らの苦難を受けて、其の榮光に入るべきならずや』[引照]
口語訳 | キリストは必ず、これらの苦難を受けて、その栄光に入るはずではなかったのか」。 |
塚本訳 | 救世主は栄光に入るために、そのような苦しみを受けねばならなかったのではないのですか。」 |
前田訳 | キリストはこれらの苦難を受けてから栄光に入るよう定められていたではないか」と。 |
新共同 | メシアはこういう苦しみを受けて、栄光に入るはずだったのではないか。」 |
NIV | Did not the Christ have to suffer these things and then enter his glory?" |
24章27節 かくてモーセ及び凡ての預言者をはじめ、己に就きて凡ての聖書に録したる所を説き示したまふ。[引照]
口語訳 | こう言って、モーセやすべての預言者からはじめて、聖書全体にわたり、ご自身についてしるしてある事どもを、説きあかされた。 |
塚本訳 | そして(預言者)モーセから始めて、すべての預言者が御自分につき聖書全体において言っていることを説明された。 |
前田訳 | そして、モーセやすべての預言者からはじめて、ご自身についてのことを聖書全体にわたって彼らに説明された。 |
新共同 | そして、モーセとすべての預言者から始めて、聖書全体にわたり、御自分について書かれていることを説明された。 |
NIV | And beginning with Moses and all the Prophets, he explained to them what was said in all the Scriptures concerning himself. |
註解: イエスは彼らの態度を見てその愚にして心鈍きことを叱責し、キリストの受難とその栄光(復活による)とは聖書の預言する処であって、人々は単純率直にこれを信ずべきであることを彼らに説明し、そしてモーセの五書や預言書によってイエスに関する預言の部分を引用して彼らに説明し給うた。これは彼らを信仰に導くに非常に役立ったことであろう。それでも彼らはそれがイエスであることを悟らなかった。
24章28節 遂に往く所の村に近づきしに、イエスなほ進みゆく樣なれば、[引照]
口語訳 | それから、彼らは行こうとしていた村に近づいたが、イエスがなお先へ進み行かれる様子であった。 |
塚本訳 | とかくするうちに目指す(エマオの)村に近づくと、なお先へ行くような様子をされたので、 |
前田訳 | めざす村に近づくと、彼はなお先へ行く様子をされたので、 |
新共同 | 一行は目指す村に近づいたが、イエスはなおも先へ行こうとされる様子だった。 |
NIV | As they approached the village to which they were going, Jesus acted as if he were going farther. |
24章29節 強ひて止めて言ふ『我らと共に留れ、時夕に及びて、日も早や暮れんとす』乃ち留らんとて入りたまふ。[引照]
口語訳 | そこで、しいて引き止めて言った、「わたしたちと一緒にお泊まり下さい。もう夕暮になっており、日もはや傾いています」。イエスは、彼らと共に泊まるために、家にはいられた。 |
塚本訳 | 二人はこう言って無理に引き留めた、「わたし達のところにお泊まりなさい。間もなく夕方で、日もはや傾いたから。」そこで彼らのところに泊まるために、(家に)入られた。 |
前田訳 | ふたりは無理にお引きとめしていった、「わたしたちのところにお泊まりください。夕暮は近く、日ははや傾きましたから」と。そこで彼らのところに泊まるために家に入られた。 |
新共同 | 二人が、「一緒にお泊まりください。そろそろ夕方になりますし、もう日も傾いていますから」と言って、無理に引き止めたので、イエスは共に泊まるため家に入られた。 |
NIV | But they urged him strongly, "Stay with us, for it is nearly evening; the day is almost over." So he went in to stay with them. |
註解: 「進みゆく様なれば」は「進みゆく振りをしたので」とのこと、彼らはなおもイエスの教えを聴かんとして強いて彼を引留めた。「我らと共に留れ」はおそらく彼らの家がエマオにあったのであろう。ただし本文からはそのことを証明することはできない。
24章30節 共に食事の席に著きたまふ時、パンを取りて祝し、擘きて與へ給へば、[引照]
口語訳 | 一緒に食卓につかれたとき、パンを取り、祝福してさき、彼らに渡しておられるうちに、 |
塚本訳 | 一しょに食卓について、(いつものように)パンを(手に)取り、(神を)讃美したのち、裂いて渡されると、 |
前田訳 | 共に食卓について、パンを取って讃美し、裂いて渡されると、 |
新共同 | 一緒に食事の席に着いたとき、イエスはパンを取り、賛美の祈りを唱え、パンを裂いてお渡しになった。 |
NIV | When he was at the table with them, he took bread, gave thanks, broke it and began to give it to them. |
24章31節 彼らの目開けてイエスなるを認む、而してイエス見えずなり給ふ。[引照]
口語訳 | 彼らの目が開けて、それがイエスであることがわかった。すると、み姿が見えなくなった。 |
塚本訳 | (その時)二人の目が開けて、その方とはっきりわかった。すると(また)その姿が見えなくなった。 |
前田訳 | 彼らの目が開けて、彼とわかった。すると彼は見えなくなった。 |
新共同 | すると、二人の目が開け、イエスだと分かったが、その姿は見えなくなった。 |
NIV | Then their eyes were opened and they recognized him, and he disappeared from their sight. |
註解: 彼らはイエスに食卓の主人役を依頼したのであろう。そのパンを擘く態度によって彼らの目に突然イエスを認識することができた。彼らは神によってイエスを見る目が開かれたからである。彼らがイエスを認めるや否やイエスは見えずなって彼らを離れ給うた。この事実は徹頭徹尾夢のような事件で彼らもこれを顧みて現実と夢幻との境を彷徨するごとき心地がしたことであろう。復活そのものもまたこれに類する事実であるに相違ない。
辞解
[目開け] 16節の「目遮へられ」と対応する。
[見えずなり給ふ] 「見えずなりて彼らを離れ給う」の意(M0)。
24章32節 かれら互に言ふ『途にて我らと語り、我らに聖書を説明し給へるとき、我らの心、内に燃えしならずや』[引照]
口語訳 | 彼らは互に言った、「道々お話しになったとき、また聖書を説き明してくださったとき、お互の心が内に燃えたではないか」。 |
塚本訳 | 二人は語り合うのであった、「(そう言えば、)道々わたし達に話をされたり、聖書を説き明かされたりした時に、胸の中が熱くなったではないか」と。 |
前田訳 | 彼らは語りあった、「彼が道でわれらに語って、聖書を説かれたとき、心が燃えたではないか」と。 |
新共同 | 二人は、「道で話しておられるとき、また聖書を説明してくださったとき、わたしたちの心は燃えていたではないか」と語り合った。 |
NIV | They asked each other, "Were not our hearts burning within us while he talked with us on the road and opened the Scriptures to us?" |
註解: 彼らはイエスが見えずなり給うて後に、彼と語り始めてからのことを回想し、彼の説明を聴いている時に彼らの心が心中に燃えていたことを思い出したのであった。そしてそれが復活のイエスのためであったことを悟った。
24章33節 かくて直ちに立ちエルサレムに歸りて見れば、十一弟子および之と偕なる者あつまり居て言ふ、[引照]
口語訳 | そして、すぐに立ってエルサレムに帰って見ると、十一弟子とその仲間が集まっていて、 |
塚本訳 | 時を移さず二人は立ち上がってエルサレムに引き返して見ると、十一人とその仲間とが集まっていて、 |
前田訳 | すぐさま立ちあがって彼らはエルサレムに帰った。すると、十一人とその仲間が集まっていて、 |
新共同 | そして、時を移さず出発して、エルサレムに戻ってみると、十一人とその仲間が集まって、 |
NIV | They got up and returned at once to Jerusalem. There they found the Eleven and those with them, assembled together |
24章34節 『主は實に甦へりて、シモンに現れ給へり』[引照]
口語訳 | 「主は、ほんとうによみがえって、シモンに現れなさった」と言っていた。 |
塚本訳 | 「ほんとうに主は復活して、シモン(・ペテロ)に御自分を現わされた」と話してくれた。 |
前田訳 | 「本当に主は復活してシモンに現われられた」と話しているところであった。 |
新共同 | 本当に主は復活して、シモンに現れたと言っていた。 |
NIV | and saying, "It is true! The Lord has risen and has appeared to Simon." |
註解: 彼らは復活のイエスに逢ったことをエルサレムの弟子たちに告げることを一刻も猶予することができず、「直ちに」「同時刻に」立ちてエルサレムに帰った。そこではその前に主はすでにペテロに現れ給うたので、そのことを二人に告げ、かくて主の復活の事実が益々彼らに確実になった。
24章35節 二人の者もまた途にて有りし事と、パンを擘き給ふによりてイエスを認めし事とを述ぶ。[引照]
口語訳 | そこでふたりの者は、途中であったことや、パンをおさきになる様子でイエスだとわかったことなどを話した。 |
塚本訳 | それで二人も、(エマオへの)道であったことや、また、どうしてパンを裂かれたことで(主と)わかったかを物語った。 |
前田訳 | それで彼らも、道であったことやパンをお裂きになって彼とわかったことを物語った。 |
新共同 | 二人も、道で起こったことや、パンを裂いてくださったときにイエスだと分かった次第を話した。 |
NIV | Then the two told what had happened on the way, and how Jesus was recognized by them when he broke the bread. |
註解: 二人はまたその経験せる処を十一弟子およびその他の弟子たちに告げた。
11-1-ハ エルサレムにおける復活のイエス 24:36 - 24:43
24章36節 此等のことを語る程に、イエスその中に立ち[『平安なんぢらに在れ』と言ひ]給ふ。[引照]
口語訳 | こう話していると、イエスが彼らの中にお立ちになった。〔そして「やすかれ」と言われた。〕 |
塚本訳 | 二人がこう話しているところに、(突然)御自身でみなの真中に出ておいでになった。 |
前田訳 | 彼らがこう話しているところへ、彼が真ん中に立たれた。 |
新共同 | こういうことを話していると、イエス御自身が彼らの真ん中に立ち、「あなたがたに平和があるように」と言われた。 |
NIV | While they were still talking about this, Jesus himself stood among them and said to them, "Peace be with you." |
註解: ヨハ20:19。[ ] 内はD写本にこれを欠く。
24章37節 かれら怖ぢ懼れて、見る所のものを靈ならんと思ひしに、[引照]
口語訳 | 彼らは恐れ驚いて、霊を見ているのだと思った。 |
塚本訳 | ぞっとして震えあがり、幽霊でも見ているように思っていると、 |
前田訳 | おどろきおそれて、幽霊を見ていると思っていると、 |
新共同 | 彼らは恐れおののき、亡霊を見ているのだと思った。 |
NIV | They were startled and frightened, thinking they saw a ghost. |
24章38節 イエス言ひ給ふ『なんぢら何ぞ心騷ぐか、何ゆゑ心に疑惑おこるか、[引照]
口語訳 | そこでイエスが言われた、「なぜおじ惑っているのか。どうして心に疑いを起すのか。 |
塚本訳 | 彼らに言われた、「なにをうろたえるのか。なぜ心に疑いを起すのか。 |
前田訳 | 彼らにいわれた、「なにをおじけるのか。なぜ心に疑いをおこすのか。 |
新共同 | そこで、イエスは言われた。「なぜ、うろたえているのか。どうして心に疑いを起こすのか。 |
NIV | He said to them, "Why are you troubled, and why do doubts rise in your minds? |
24章39節 我が手わが足を見よ、これ我なり。我を撫でて見よ、靈には肉と骨となし、我にはあり、汝らの見るごとし』[引照]
口語訳 | わたしの手や足を見なさい。まさしくわたしなのだ。さわって見なさい。霊には肉や骨はないが、あなたがたが見るとおり、わたしにはあるのだ」。〔 |
塚本訳 | わたしの手と足とを見てごらん。だれでもない、わたしだよ!さわってごらん、幽霊には肉も骨もないが、わたしには、それがあるのがわかるから。」 |
前田訳 | わが手わが足を見なさい。わたし自身だ。さわってごらん。幽霊には肉と骨はないが、わたしにはごらんのとおりそれがある」と。 |
新共同 | わたしの手や足を見なさい。まさしくわたしだ。触ってよく見なさい。亡霊には肉も骨もないが、あなたがたに見えるとおり、わたしにはそれがある。」 |
NIV | Look at my hands and my feet. It is I myself! Touch me and see; a ghost does not have flesh and bones, as you see I have." |
24章40節 [斯く言ひて手と足とを示し給ふ][引照]
口語訳 | こう言って、手と足とをお見せになった。〕 |
塚本訳 | [無シ] |
前田訳 | 〔こういって、手と足をお見せになった。〕 |
新共同 | こう言って、イエスは手と足をお見せになった。 |
NIV | When he had said this, he showed them his hands and feet. |
註解: イエスの復活につき語り合っていた彼らでありながら、現実に彼らの真中にイエスが立ち給うたのを見て彼らは怖じ懼れた。イエスの幽霊が現れたのではないかと疑ったからである(37節)。これに対しイエスは彼らの心の動揺と疑惑を叱責し給い(38節)、その手足を示し、もし幽霊であるならば肉も骨もないはずであるのに、我にはそれがあることはこの通りであるから我はイエスそのもの、すなわち復活したイエスであるといい、彼らに信仰なきを責め給うた(39節)。40節はD写本にない。多分ヨハ20:20からの挿入であろう。この事実から見てイエスの復活体は純然たる霊ではなく、また我らの肉体と同じ肉体でもなく、その中間的性質を有していたことが考えられる。われらの復活体もおそらくかかるものであろう。
24章41節 かれら歡喜の餘に信ぜずして怪しめる時、イエス言ひたまふ『此處に何か食物あるか』[引照]
口語訳 | 彼らは喜びのあまり、まだ信じられないで不思議に思っていると、イエスが「ここに何か食物があるか」と言われた。 |
塚本訳 | 喜びのあまり、彼らがまだ信じられずに怪しんでいると、「ここに何か食べるものがあるか」と言われた。 |
前田訳 | 彼らがよろこびのあまり、まだ信じられず、不思議がっていると、彼はいわれた、「ここに何か食べ物があるか」と。 |
新共同 | 彼らが喜びのあまりまだ信じられず、不思議がっているので、イエスは、「ここに何か食べ物があるか」と言われた。 |
NIV | And while they still did not believe it because of joy and amazement, he asked them, "Do you have anything here to eat?" |
24章42節 かれら炙りたる魚一片を捧げたれば、[引照]
口語訳 | 彼らが焼いた魚の一きれをさしあげると、 |
塚本訳 | 焼いた魚を一切差し上げると、 |
前田訳 | 焼いた魚を一切れ差しあげると、 |
新共同 | そこで、焼いた魚を一切れ差し出すと、 |
NIV | They gave him a piece of broiled fish, |
24章43節 之を取り、その前にて食し給へり。[引照]
口語訳 | イエスはそれを取って、みんなの前で食べられた。 |
塚本訳 | 受け取ってみなの前で食べられた。 |
前田訳 | 受け取って皆の前で食べられた。 |
新共同 | イエスはそれを取って、彼らの前で食べられた。 |
NIV | and he took it and ate it in their presence. |
註解: 再びイエスを彼らの間に見ることができたことの歓喜は非常であったのであるが、それが直ちにイエスの復活し給うたことの信仰となり得ず、彼らの心は怪異の念に充されていた。死に給うた以前の生活に逆戻りしたようにも感ぜられ、また現実か夢か判明らないようにも感ぜられたのであろう。これに対しイエスは食物を求め、炙った魚を自ら食し給うことによって、単なる霊でもなくまた弟子たちの錯覚でも夢でもないことを証明し給うた。イエスの復活体は食物を摂取することさえできたのであった。
要義 [イエスの復活体について]ルカ伝およびその他の福音書の記事より推測する処によれば、イエスの復活体は、我らの経験および想像を超越せる特異なる体であった。墓が空虚になっており、また手足には十字架の痕跡が有ったとのことであるから(ヨハ20:27)屍体そのものが生き反ったのであった。それにも関らずエマオへ行く途中の弟子たちに現れ給うた時も直ちにそれを認め得ず、またマリヤも他の弟子たちも、復活の主を誤認したとある点から見れば(ヨハ20:14−16。ヨハ21:4)、生前の肉体と全く同一でなかったことが判る。殊に戸が閉じられている室に入り(ヨハ20:19)または室内より忽然として消え去り給うた点(ルカ24:31)より見れば普通の肉体が有する物質的制限を有たないように思われ、また食物を取ること、言語をもって語ることなどは普通の肉体と同一であるようにも見える。かかるものがイエスの復活体であった。すなわち物質であるけれども我らの経験し得る物質とは異なっており、霊であるけれども単なる霊ではなく体を備えており、自在に現れ自在に消え、時間空間の制約を突破せる不思議な存在であった。これにより我ら自身の復活体の如何なるものかをほのかに想像し得る以外、我らこれに関し今日の科学による証明を期待し得ず、また科学が証明し得ないとの理由のみでこれを否定し去ることのできない事実である。それは神の新たなる創造 ─ 第二の創造 ─ に関る問題だからである。
11-1-ニ 最後の言
24:44 - 24:49
24章44節 また言ひ給ふ『これらの事は、我がなほ汝らと偕に在りし時に語りて、我に就きモーセの律法・預言者および詩篇に録されたる凡ての事は、必ず遂げらるべしと言ひし所なり』[引照]
口語訳 | それから彼らに対して言われた、「わたしが以前あなたがたと一緒にいた時分に話して聞かせた言葉は、こうであった。すなわち、モーセの律法と預言書と詩篇とに、わたしについて書いてあることは、必ずことごとく成就する」。 |
塚本訳 | それから彼らに言われた、「(あなた達が見聞きした)これらのことは、わたしがまだあなた達と一しょにいたとき、わたしについてモーセの律法と預言書と詩篇と[聖書]に書いてあることは一つのこらずきっと成就する、と話したその言葉(が実現したの)である。」 |
前田訳 | そして彼らにいわれた、「わたしがまだあなた方といっしょにいたとき話したことばは、わたしについてモーセの律法と預言書と『詩篇』とに書かれてあることは皆成就する、ということであった」と。 |
新共同 | イエスは言われた。「わたしについてモーセの律法と預言者の書と詩編に書いてある事柄は、必ずすべて実現する。これこそ、まだあなたがたと一緒にいたころ、言っておいたことである。」 |
NIV | He said to them, "This is what I told you while I was still with you: Everything must be fulfilled that is written about me in the Law of Moses, the Prophets and the Psalms." |
註解: 本節と前節との間に時間的に如何なる間隔があったかについてルカはこれを明かにしていない。原文のみから見れば引き続き言い給うたようにも見える(de)けれども、思想的にはやや時間の隔りがあったと見る方が相応しい。「これらの事」は何を指すかについて問題あり、前節と本節との間に別にイエスの長い教訓があったのをルカが省略または脱落したもの(Z0)との見解もあるけれども、むしろ次のごとくに私訳し、「これらの事」は「聖書の預言は成就すべきである事」と解すべきであろう。すなわち「これらはわが汝らと偕に居りし時汝らに語れる我が言(なり)、すなわちモーセの律法および預言者および詩篇に録されし凡てのことは必ず成就すべきことなり」(私訳)で、これは重要な真理であるので復活のイエスはさらに弟子たちに向ってこれを強調し給うたのであろう。「律法と預言者」は旧約聖書を指す常用語であるが、旧約聖書の第三部「聖文書」中の「詩篇」をここに加えたのは、これによって旧約聖書の全体という意味を強めたと見るよりも聖文書中殊にイエスに関する多くの預言を含むと見られている詩篇だけを加えたと見る方が適当であろう。
24章45節 ここに聖書を悟らしめんとて、彼らの心を開き(給へり。而し)て言ひ給ふ、[引照]
口語訳 | そこでイエスは、聖書を悟らせるために彼らの心を開いて |
塚本訳 | それから聖書をわからせるために彼らの心を開いて |
前田訳 | そこで、聖書をわからせようと彼らの心を開いて、いわれた、 |
新共同 | そしてイエスは、聖書を悟らせるために彼らの心の目を開いて、 |
NIV | Then he opened their minds so they could understand the Scriptures. |
24章46節 『かく録されたり、キリストは苦難を受けて、三日めに死人の中より甦へり、[引照]
口語訳 | 言われた、「こう、しるしてある。キリストは苦しみを受けて、三日目に死人の中からよみがえる。 |
塚本訳 | 言われた、「救世主は苦しみをうけて、三日目に死人の中から復活する。 |
前田訳 | 「聖書にこうある、『キリストは苦難を受けて三日目に死人の中から復活し、 |
新共同 | 言われた。「次のように書いてある。『メシアは苦しみを受け、三日目に死者の中から復活する。 |
NIV | He told them, "This is what is written: The Christ will suffer and rise from the dead on the third day, |
24章47節 且その名によりて罪の赦を得さする悔改は、エルサレムより始りて、もろもろの國人に宣傳へらるべしと。[引照]
口語訳 | そして、その名によって罪のゆるしを得させる悔改めが、エルサレムからはじまって、もろもろの国民に宣べ伝えられる。 |
塚本訳 | また罪を赦されるための悔改め(の福音)が、その名においてすべての国の人に説かれる、エルサレムから始まって、と(聖書に)こう書いてある。 |
前田訳 | 罪のゆるしへの悔い改めがその名によってすべての民に伝えられる、エルサレムからはじまって』と。 |
新共同 | また、罪の赦しを得させる悔い改めが、その名によってあらゆる国の人々に宣べ伝えられる』と。エルサレムから始めて、 |
NIV | and repentance and forgiveness of sins will be preached in his name to all nations, beginning at Jerusalem. |
24章48節 汝らは此等のことの證人なり。[引照]
口語訳 | あなたがたは、これらの事の証人である。 |
塚本訳 | あなた達はこの(苦しみと復活との)証人である。 |
前田訳 | あなた方はこのことの証人である。 |
新共同 | あなたがたはこれらのことの証人となる。 |
NIV | You are witnesses of these things. |
24章49節 視よ、我は父の約し給へるものを汝らに贈る。汝ら上より能力を著せらるるまでは都に留れ』[引照]
口語訳 | 見よ、わたしの父が約束されたものを、あなたがたに贈る。だから、上から力を授けられるまでは、あなたがたは都にとどまっていなさい」。 |
塚本訳 | 待っておいで、わたしが父上のお約束のもの[聖霊]をあなた達におくるから。あなた達は(この)天よりの力を身につけるまで、都に止まっていなさい。」 |
前田訳 | たしかに、わたしは父上のお約束のものをあなた方におくる。あなた方は上からの力を身につけるまで、都にとどまっていなさい」と。 |
新共同 | わたしは、父が約束されたものをあなたがたに送る。高い所からの力に覆われるまでは、都にとどまっていなさい。」 |
NIV | I am going to send you what my Father has promised; but stay in the city until you have been clothed with power from on high." |
註解: 弟子たちの心を開きて聖書を悟る能力を与え給うて後、44節の預言をさらに詳細に内容別に示し給うた。すなわち聖書の預言している処は(1)イエスの受難(イザ53:1以下のごとき)、(2)その復活(ヨナ2:1。マタ12:39、40)、(3)罪の赦しとその宣伝(旧約の祭事、イスラエルの選びとその罪に関する預言者の声)であり、聖書は凡てこれらイエスに関することを預言しているのであるから、もし弟子たちが聖書を悟る心が開かれるならば、もはやイエスの復活について疑うことができず、イエスこそ聖書に預言されている救い主であること、そしてその福音はエルサレムから初まって万国に宣伝えらるべきであろう事を悟るであろう。それなればイエスは弟子たちこそこれらの事、すなわちイエスの死と復活と罪の赦しに関する証人であることを告げ(使2:32)、而して最後に彼らが証人として働くに必要な能力はやがて約束通り(イザ44:3。ヨエ3:1)彼らの上に聖霊が注がれ(使2:2−4、使2:16−21、使2:32、33)ることによって与えられるであろう。それまでは弟子たちはエルサレムに留まって聖霊の降下を待たなければならない。以上によって明かである通り44−49節はイエスの最後の言として、最も根本的なものであり、聖書の全体を要約し、イエスの死と復活とイエスの名による罪の赦しとをその根本とすることを明かにし、弟子たちがその証人であることと、またそれに必要な能力が聖霊として与えられるであろうことを告げている。かくして弟子たちはもはやイエスの死の意義もその復活の事実もまた彼らの使命をも疑い得ざるものとされたのである。この中心点からやがて弟子たちの活動が起ったことをばルカはその第二の著使徒行伝に録している。
11-1-ホ イエスの昇天
24:50 - 24:53
24章50節 遂にイエス彼らをベタニヤに連れゆき、手を擧げて之を祝したまふ。[引照]
口語訳 | それから、イエスは彼らをベタニヤの近くまで連れて行き、手をあげて彼らを祝福された。 |
塚本訳 | それから、彼らを(オリブ山の頂上の)ベタニヤ道のところまでつれてゆき、手を挙げて祝福された。 |
前田訳 | それから彼らをベタニアの近くまで連れて行き、手をあげて祝福された。 |
新共同 | イエスは、そこから彼らをベタニアの辺りまで連れて行き、手を上げて祝福された。 |
NIV | When he had led them out to the vicinity of Bethany, he lifted up his hands and blessed them. |
註解: 使1:3によれば復活より昇天まで四十日の間隔があったけれども本節からはその点がわからない。ルカはこれを省略して使徒行伝に明細を譲ったのであろう。「ベタニヤに連れゆき」は「ベタニヤの方向まで連れゆき」でエルサレムより橄欖山の方に進みベタニヤ行きの途が分かれる辺までの意ならん(Z0)。
24章51節 祝する間に、彼らを離れ[天に擧げられ]給ふ。[引照]
口語訳 | 祝福しておられるうちに、彼らを離れて、〔天にあげられた。〕 |
塚本訳 | そして祝福しながら、(天へと)はなれてゆかれた。 |
前田訳 | そして祝福しながら彼らを離れて行かれた。 |
新共同 | そして、祝福しながら彼らを離れ、天に上げられた。 |
NIV | While he was blessing them, he left them and was taken up into heaven. |
註解: [ ] 内は重要なる数種の写本に欠けている。「離れ給ふ」とすれば必ずしも昇天を意味しないけれども、ルカは昇天の記事をば使1:4−14に譲ったものと見るべきであろう。
24章52節 彼ら[之を拜し]大なる歡喜をもてエルサレムに歸り、[引照]
口語訳 | 彼らは〔イエスを拝し、〕非常な喜びをもってエルサレムに帰り、 |
塚本訳 | 彼らは大喜びでエルサレムに帰り、 |
前田訳 | 彼らは大よろこびでエルサレムヘ帰り、 |
新共同 | 彼らはイエスを伏し拝んだ後、大喜びでエルサレムに帰り、 |
NIV | Then they worshiped him and returned to Jerusalem with great joy. |
24章53節 常に宮に在りて、神を讃めゐたり。[引照]
口語訳 | 絶えず宮にいて、神をほめたたえていた。 |
塚本訳 | いつも宮にいて、神をほめたたえていた。 |
前田訳 | いつも宮にいて神を讃美していた。 |
新共同 | 絶えず神殿の境内にいて、神をほめたたえていた。 |
NIV | And they stayed continually at the temple, praising God. |
註解: 41節はイエスが現れ給うたことの歓喜の余り信仰が明かになり得なかったのであるが四十日後の今日、もはや彼らの確信は動かないものとなり、イエスが彼らを祝福して彼らを離れ給うた後でも彼らは一層の歓喜に充されてエルサレムに帰り、常に宮に在りて讃美を神にささげていた。彼らの霊の目は益々明かにせられ後に五旬節に聖霊の降下により彼らは全く新たに生れるに至ったのであった。彼らは神の子イエスを救い主と仰ぐことによって永遠の勝利を獲得したのであった。