黒崎幸吉著 註解新約聖書 Web版黙示録

黙示録第15章

分類
3 この世の審判と救 4:1 - 18:24
3-(3) 第七のラッパ 11:14 - 18:24
3-(3)-(ロ) 第二序曲 15:1 - 15:8

註解: 前章にて中間挿景は一段落を告げ、本章よりいよいよ最後の第七のラッパの展開とも見るべき七つの苦難を盛れる七つの金の鉢の審判が開始される。而して本章はその序曲とも見るべきものである。

15章1節 (われ)また(てん)(ほか)(おほい)なる(あや)しむべき(しるし)()たり。(すなは)七人(しちにん)御使(みつかひ)ありて最後(いやはて)(なな)つの苦難(くるしみ)()てり、(かみ)憤恚(いきどほり)(これ)にて(まった)うされるなり。[引照]

口語訳またわたしは、天に大いなる驚くべきほかのしるしを見た。七人の御使が、最後の七つの災害を携えていた。これらの災害で神の激しい怒りがその頂点に達するのである。
塚本訳また私はもう一つ(他)の大きな、驚くべき徴を天に見た──最後の災厄を持つ七人の天使。(最後というのは)この災厄によって神の(烈しい)憤怒は成就される(からである)。
前田訳そしてわたしは見た。偉大で驚くべき別の徴が天におこった。七人の天使が最後の七つのわざわいを持つ。それらで神の怒りがきわまる。
新共同わたしはまた、天にもう一つの大きな驚くべきしるしを見た。七人の天使が最後の七つの災いを携えていた。これらの災いで、神の怒りがその極みに達するのである。
NIVI saw in heaven another great and marvelous sign: seven angels with the seven last plagues--last, because with them God's wrath is completed.
註解: 本節は16−18章に録される最後の大苦難に関する表題または序曲のごときものである。
辞解
[他の] 黙12:1と相対応し教会の敵に対する審判の徴である。
[最後の七つの苦難] これは第七のラッパの展開であることについては附記を見よ。七は完全を示す。
[全うせらる] 神の憤恚(いきどおり)は17−19章のバビロンの滅亡によって完成される。それまでの凡ての災害や苦難はその前奏曲である。

15章2節 (われ)また()(まじ)りたる玻璃(はり)(うみ)()しに、(けもの)とその(ざう)とその()數字(すうじ)とに()ちたる(もの)ども(かみ)立琴(たてごと)()ちて玻璃(はり)(うみ)(ほとり)()てり。[引照]

口語訳またわたしは、火のまじったガラスの海のようなものを見た。そして、このガラスの海のそばに、獣とその像とその名の数字とにうち勝った人々が、神の立琴を手にして立っているのを見た。
塚本訳また私は火の混じった(真赤な)玻璃の海のようなものを(天に)見た。(また)獣とその像とその名の数字とに勝った者が玻璃の海の辺に立ち、神の竪琴を持っている(のを見た)。
前田訳そしてわたしは見た。火の混ったガラスの海のようなものがある。獣とその像とその名の数とに勝った人々が神の竪琴を手にガラスの海に立っている。
新共同わたしはまた、火が混じったガラスの海のようなものを見た。更に、獣に勝ち、その像に勝ち、またその名の数字に勝った者たちを見た。彼らは神の竪琴を手にして、このガラスの海の岸に立っていた。
NIVAnd I saw what looked like a sea of glass mixed with fire and, standing beside the sea, those who had been victorious over the beast and his image and over the number of his name. They held harps given them by God
註解: 最後の苦難の起る前に、これに関する天上の動きがあることあたかも七つのラッパの前の黙8:1の光景のごとくである。黙8:1は沈黙の光景でありここでは聖徒の歌となってあらわれる。
辞解
[玻璃(はり)の海] 黙4:6を見よ。
[火の混りたる] 審判の火をそこにたたえている貌。
[・・・・・・とに勝ちたる者] 「勝ちて・・・・・・の中より出でし者」というごとき意味で獣の偉大なる力に勝ちてその囲を突破せるごとき貌。
[神の立琴] 神を讃えるための立琴。
[海の辺] 「海の上」と訳す方宜しからん(B1、S3)。

15章3節 (かれ)(かみ)(しもべ)モーセの(うた)羔羊(こひつじ)(うた)とを(うた)ひて()ふ『(しゅ)なる全能(ぜんのう)(かみ)よ、なんぢの御業(みわざ)(おほい)なるかな、(たへ)なるかな、萬國(ばんこく)(わう)よ、なんぢの(みち)()なるかな、(まこと)なるかな。[引照]

口語訳彼らは、神の僕モーセの歌と小羊の歌とを歌って言った、「全能者にして主なる神よ。あなたのみわざは、大いなる、また驚くべきものであります。万民の王よ、あなたの道は正しく、かつ真実であります。
塚本訳彼らは神の僕モーセの歌と仔羊の歌をうたって言う──主なる神よ、全能者よ、御業は大なるかな、驚くべきかな!諸々の国の王よ、なんじの道は義しきかな、真実なるかな!
前田訳彼らは神の僕モーセの歌と小羊の歌とをうたう。いわく−−全能の主なるみ神、みわざは偉大、また驚異、 万民の王、なんじの道は義、また真。
新共同彼らは、神の僕モーセの歌と小羊の歌とをうたった。「全能者である神、主よ、/あなたの業は偉大で、/驚くべきもの。諸国の民の王よ、/あなたの道は正しく、また、真実なもの。
NIVand sang the song of Moses the servant of God and the song of the Lamb: "Great and marvelous are your deeds, Lord God Almighty. Just and true are your ways, King of the ages.

15章4節 (しゅ)よ、たれか(なんぢ)(おそ)れざる、(たれ)御名(みな)(たふと)ばざる、(なんぢ)のみ(せい)なり、諸種(もろもろ)國人(くにびと)きたりて御前(みまへ)(はい)せん。なんぢの審判(さばき)(すで)(あらは)れたればなり』[引照]

口語訳主よ、あなたをおそれず、御名をほめたたえない者が、ありましょうか。あなただけが聖なるかたであり、あらゆる国民はきて、あなたを伏し拝むでしょう。あなたの正しいさばきが、あらわれるに至ったからであります」。
塚本訳主よ、誰が汝を畏れず、御名を崇めないであろう。(ただ)汝のみ聖にいまし給う。万国(の民)は来たって汝の前に跪くであろう。汝の(義しき)審判が(既に)顕れたから!
前田訳主よ、だれがなんじをおそれずに、み名をたたえずにいましょう。聖にいますはただひとり。すべての民は来て、み前にひれ伏しましょう。正しい摂理のお示しのゆえに。
新共同主よ、だれがあなたの名を畏れず、/たたえずにおられましょうか。聖なる方は、あなただけ。すべての国民が、来て、/あなたの前にひれ伏すでしょう。あなたの正しい裁きが、/明らかになったからです。」
NIVWho will not fear you, O Lord, and bring glory to your name? For you alone are holy. All nations will come and worship before you, for your righteous acts have been revealed."
註解: 4節後半私訳「そは汝のみ聖に在し、凡ての国人来りて御前に拝し、汝の審判既に現れたればなり」出15:1以下に苦難の下にありしイスラエルが紅海を渡り神の力によりてエジプト王パロより救出されしことに対し、全民衆が声高らかに神を讃美するの歌を歌ったことが録されている。これが所謂モーセの歌である。3、4節に歌われる天上の歌もまたその性質においてこれに類似しており、イエスの十字架の贖いによって罪のエジプトより救出されて紅海を渡りしものがサタンの支配の下にあるバビロンの審判を見て歌う讃美の歌である。この意味においてこの歌は予表または型たりしモーセの歌と、その実現なる羔羊(こひつじ)の救いの歌との双方の性質を有し、従って旧約と新約の両経綸を打って一丸となせるものと見ることができる。これを「モーセの歌と羔羊(こひつじ)の歌」と称する所以はここにある。この讃美の内容は神の御業の至大絶妙なること、神の道の正義にして真正なること、そしてこの神を畏敬礼拝しない者はいないこととである。その以下はその理由の説明である。この讃美は旧約のモーセの歌(出15:1以下)の場合と同じく、自己の業に関する誇りは微塵もない。この歌も他の場合と同じく凡ての苦難が終りて聖徒たちが天に集められし時の光景を予見して言えるものと見るべきである。
辞解
[萬国の王] むしろ「萬民の王」と訳するを可とす。
[なんぢの審判] 直訳「なんぢの義しき所業」dikaiôma で罪に対する審判もその一つである。

15章5節 この(のち)われ()しに、(てん)にある(あかし)幕屋(まくや)聖所(せいじょ)ひらけて、[引照]

口語訳その後、わたしが見ていると、天にある、あかしの幕屋の聖所が開かれ、
塚本訳この後また私は見た。天にある証の天幕の聖所が開かれ、
前田訳その後わたしは見た。天にある証の幕屋の宮が開け、
新共同この後、わたしが見ていると、天にある証しの幕屋の神殿が開かれた。
NIVAfter this I looked and in heaven the temple, that is, the tabernacle of the Testimony, was opened.

15章6節 かの(なな)つの苦難(くるしみ)()てる七人(しちにん)御使(みつかひ)、きよき(かがや)ける亞麻(あま)(ぬの)()(きん)(おび)(むね)(つか)ねて聖所(せいじょ)より()づ。[引照]

口語訳その聖所から、七つの災害を携えている七人の御使が、汚れのない、光り輝く亜麻布を身にまとい、金の帯を胸にしめて、出てきた。
塚本訳七つの災厄を持つ七人の天使が聖所(の中)から出て来た。(彼らは)輝いた潔い麻の衣を纏い、胸には金の帯を締めていた。
前田訳七つのわざわいを持つ天使が宮から出た。彼らは純に輝く亜麻布を着、胸には金の帯をしている。
新共同そして、この神殿から、七つの災いを携えた七人の天使が出て来た。天使たちは、輝く清い亜麻布の衣を着て、胸に金の帯を締めていた。
NIVOut of the temple came the seven angels with the seven plagues. They were dressed in clean, shining linen and wore golden sashes around their chests.
註解: 七人の御使は金帯白衣すなわち祭司あるいは他の天的存在に相応しき装束をもって聖所より出で来るのをヨハネが見た。その聖所より出で来れるは神より直接に遣されしことを示す。
辞解
[証の幕屋] 沙漠における神の幕屋の別名で(出38:21民9:15民17:22以下、民18:2。旧約には「律法[新共同訳では掟]の幕屋」と訳さる、「証の幕屋」と訳すべきである)ここでは天における神の住み給う所を意味す。
[聖所] 神の在し給う処で祭司はこの処で神に見える。
[潔き輝ける亜麻布] 天に在る者の貌に最も相応し (黙19:8マタ17:2マタ28:3使1:10
[金の帯] 黙1:13註参照。
[聖所ひらけ] この時始めてヨハネは七人の御使を見しものとすれば第1節と重複するがごときも第1節はこれを表題のごときものと見れば差支えなし。

15章7節 ()つの活物(いきもの)(ひと)つ、その七人(しちにん)御使(みつかひ)世々(よよ)(かぎ)りなく()きたまふ(かみ)憤恚(いきどほり)滿()ちたる(なな)つの(きん)(はち)(あた)へしかば、[引照]

口語訳そして、四つの生き物の一つが、世々限りなく生きておられる神の激しい怒りの満ちた七つの金の鉢を、七人の御使に渡した。
塚本訳すると四つの活物の一つが、永遠より永遠に活き給う神の憤怒の盛られた七つの金の鉢を(この)七人の天使に渡した。
前田訳四つの生きもののひとつが、七人の天使に七つの鉢を渡した。それらは世々とこしえに生きたもう神の憤りで満ちていた。
新共同そして、四つの生き物の中の一つが、世々限りなく生きておられる神の怒りが盛られた七つの金の鉢を、この七人の天使に渡した。
NIVThen one of the four living creatures gave to the seven angels seven golden bowls filled with the wrath of God, who lives for ever and ever.

15章8節 聖所(せいじょ)(かみ)榮光(えいくわう)とその權力(ちから)とより()づる(けむり)にて滿()ち、七人(しちにん)御使(みつかひ)(なな)つの苦難(くるしみ)(をは)るまでは(たれ)聖所(せいじょ)()ること(あた)はざりき。[引照]

口語訳すると、聖所は神の栄光とその力とから立ちのぼる煙で満たされ、七人の御使の七つの災害が終ってしまうまでは、だれも聖所にはいることができなかった。
塚本訳(たちまち)聖所は神の栄光とその権能からの煙で一杯になった。そして七人の天使の七つの災厄が終わるまでは、誰も聖所に入ることが出来なかった。
前田訳すると宮は神の栄光と力との煙で満たされた。七人の天使の七つのわざわいがきわまるまでは、だれも宮に入れなかった。
新共同この神殿は、神の栄光とその力とから立ち上る煙で満たされ、七人の天使の七つの災いが終わるまでは、だれも神殿の中に入ることができなかった。
NIVAnd the temple was filled with smoke from the glory of God and from his power, and no one could enter the temple until the seven plagues of the seven angels were completed.
註解: ここに苦難を持てる御使は神の憤恚(いきどおり)による審判としてこの苦難を注がんがために、この神の憤恚(いきどおり)の満てる金の鉢を与えらる。神怒り給う時人は神の御顔を()ることができない。その栄光の輝きとその権力をもって行い給う審判が余りにも恐ろしいからである。このことはここで聖所に満つる煙をもって表徴されているのを見る(出19:18詩18:8イザ6:4イザ65:5)。従って七つの苦難終るまでは聖所に入る人はない。それまでは神の最後の憤恚(いきどおり)が注がれる最も恐るべき時である。
附記 [第七のラッパと七つの金の鉢との関係]第七の封印が七つのラッパに展開したことは黙8:1によりて明かに示されているけれども、第七のラッパがさらに七つの金の鉢に展開せることは何処にも明示されていない。唯第五のラッパは「第一の禍害」(黙9:12)であり、第六、第七のラッパが第二、第三の禍害であることは黙8:13によりて明かである以上第七のラッパは第三の禍害でなければならない。然るに黙11:15−19は第三の禍害の序曲に過ぎず、未だ第三の禍害至れるがごとくに思われない。そして第12−14章は明かに挿景として教会とその迫害とを録し、黙12:1黙15:1とに二つの大なる徴を見しことが録されている以上第11章の終と第16章とは密接の関係にある。そして黙11:15−19は黙8:3−5に相当し黙15:1−4は黙8:1黙15:5−8は黙8:2に相当し、黙8:1−5が七つのラッパの序曲であるごとく黙11:15−19および黙15:1−8は七つの金の鉢の序曲であると見得るのであって、これら諸種の点を綜合して、ヨハネは第七のラッパが七つの金の鉢に展開せるものとして録したものと見なければならない。かく解することによりて始めて黙示録の全構造が整頓する。

黙示録第16章
3-(3)-(ハ) 第一乃至(ないし)第四の金の鉢の審判 16:1 - 16:9

16章1節 (われ)また聖所(せいじょ)より(おほい)なる(こゑ)ありて七人(しちにん)御使(みつかひ)に『()きて(かみ)憤恚(いきどほり)(はち)()(うへ)(かたむ)けよ』と()ふを()けり。[引照]

口語訳それから、大きな声が聖所から出て、七人の御使にむかい、「さあ行って、神の激しい怒りの七つの鉢を、地に傾けよ」と言うのを聞いた。
塚本訳すると私は大きな声が聖所から(出て)七人の天使に(こう)言うのを聞いた、「行って、神の憤怒の(盛られた)七つの鉢を地に注げ!」
前田訳そしてわたしは宮から七人の天使に大声でいわれるのを聞いた、「行け、そして神の憤りの七つの鉢を地に注げ」と。
新共同また、わたしは大きな声が神殿から出て、七人の天使にこう言うのを聞いた。「行って、七つの鉢に盛られた神の怒りを地上に注ぎなさい。」
NIVThen I heard a loud voice from the temple saying to the seven angels, "Go, pour out the seven bowls of God's wrath on the earth."
註解: 七人の御使は神の命を受けて今まさに七つの金の鉢を順次に傾けんとしつつある。
辞解
[大なる声] 普通天使の発する声である故 (黙5:2黙10:3黙14:7黙14:9黙14:18) 本節の場合もかく解して差支えがない (黙14:15黙14:18参照) 。ただし神自らの声と解する人もある。なお七つの鉢と七つのラッパの関係については前章末尾附記を見よ。

16章2節 (かく)第一(だいいち)(もの)ゆきて()(はち)()(うへ)(かたむ)けたれば、(けもの)徽章(しるし)()てる人々(ひとびと)とその(ざう)(はい)する人々(ひとびと)との()()しき(くる)しき腫物(しゅもつ)(しゃう)じたり。[引照]

口語訳そして、第一の者が出て行って、その鉢を地に傾けた。すると、獣の刻印を持つ人々と、その像を拝む人々とのからだに、ひどい悪性のでき物ができた。
塚本訳第一の天使が行ってその鉢を地に注いだ。すると悪い痛い腫物が、獣の印を有つ者とその像を拝む人々(の身)に生きた。
前田訳第一の天使が出てその鉢を地に注いだ。すると獣の目じるしを持ち、その像を拝む人々にひどい悪性の腫れものができた。
新共同そこで、第一の天使が出て行って、その鉢の中身を地上に注ぐと、獣の刻印を押されている人間たち、また、獣の像を礼拝する者たちに悪性のはれ物ができた。
NIVThe first angel went and poured out his bowl on the land, and ugly and painful sores broke out on the people who had the mark of the beast and worshiped his image.
註解: 七つの鉢の禍害も四と三との二組に区別することができる。第一−第四は第一−第四のラッパに類似しており唯その程度および性質を異にするに過ぎない。第一の鉢は第一のラッパの禍およびエジプトにおける第六の禍害とに類似す、共に地の上に下れる審判である(黙8:7出9:10)。エジプトの法術士が腫物に襲われしことを連想してこれを選んだものと思わる。かくしてこの損害を被る者はサタンを拝するものすなわち神に敵する者のみである。
辞解
[苦しき] ponêron は「意地悪の」「悪性の」というような意味で彼らを苦しめんことを欲するごとき腫物として描写されている。

16章3節 第二(だいに)(もの)その(はち)(うみ)(うへ)(かたむ)けたれば、(うみ)死人(しにん)()(ごと)くなりて(うみ)にある生物(いきもの)ことごとく()にたり。[引照]

口語訳第二の者が、その鉢を海に傾けた。すると、海は死人の血のようになって、その中の生き物がみな死んでしまった。
塚本訳第二の天使がその鉢を海に注いだ。するとそれが死人(の体)から出たような血になり、海にいる生物は悉く死んでしまった。
前田訳第二の天使がその鉢を海に注いだ。すると死人の血のようになり、海にある生きものは皆死んだ。
新共同第二の天使が、その鉢の中身を海に注ぐと、海は死人の血のようになって、その中の生き物はすべて死んでしまった。
NIVThe second angel poured out his bowl on the sea, and it turned into blood like that of a dead man, and every living thing in the sea died.
註解: 第二のラッパおよびエジプトにおける第二の禍害に対応し(黙8:8出7:19−24)、神の大審判は海中の凡ての生物に及ぶ。
辞解
[生物] psychê zôês なる特殊の語を用いる「生命の魂」と直訳し得べき文字。神秘的にして表徴的である。

16章4節 第三(だいさん)(もの)その(はち)を[もろもろの](かは)と、[もろもろの](みづ)源泉(みなもと)との(うへ)(かたむ)けたれば、[みな]()となれり。[引照]

口語訳第三の者がその鉢を川と水の源とに傾けた。すると、みな血になった。
塚本訳第三の天使がその鉢を河と水の源に注いだ。するとそれが血になった。
前田訳第三の天使がその鉢を川や水の源に注いだ。すると血になった。
新共同第三の天使が、その鉢の中身を川と水の源に注ぐと、水は血になった。
NIVThe third angel poured out his bowl on the rivers and springs of water, and they became blood.

16章5節 われ(みづ)(つかさ)どる御使(みつかひ)の『いま(いま)(むかし)います(せい)なる(もの)よ、なんぢの()(さだ)(たま)ひしは(ただ)しき(こと)なり。[引照]

口語訳それから、水をつかさどる御使がこう言うのを、聞いた、「今いまし、昔いませる聖なる者よ。このようにお定めになったあなたは、正しいかたであります。
塚本訳そして私は水の天使が(こう)言うのを聞いた、「(今)在り給う者、(昔)在り給いし者、聖なる者よ、かく審き給うた汝は義しい。
前田訳わたしは水の天使がいうのを聞いた、「今いまし、昔いました全きもの、かくお裁きのゆえに義にいます。
新共同そのとき、わたしは水をつかさどる天使がこう言うのを聞いた。「今おられ、かつておられた聖なる方、/あなたは正しい方です。このような裁きをしてくださったからです。
NIVThen I heard the angel in charge of the waters say: "You are just in these judgments, you who are and who were, the Holy One, because you have so judged;

16章6節 (かれ)らは聖徒(せいと)預言者(よげんしゃ)との()(なが)したれば、(これ)()()ませ(たま)ひしは相應(ふさは)しきなり』と()へるを()けり。[引照]

口語訳聖徒と預言者との血を流した者たちに、血をお飲ませになりましたが、それは当然のことであります」。
塚本訳彼らは聖徒、預言者(を迫害してそ)の血を流し、(その報復として今)汝は彼らに血を飲ましめ給うたのであるから。(主よ、)それは当然である!」
前田訳彼らは聖徒と預言者に血を流させ、なんじは彼らに血を飲ませたもう。彼らはそれにふさわしい」と。
新共同この者どもは、聖なる者たちと/預言者たちとの血を流しましたが、/あなたは彼らに血をお飲ませになりました。それは当然なことです。」
NIVfor they have shed the blood of your saints and prophets, and you have given them blood to drink as they deserve."
註解: 第三の鉢の審判は水の上に下り淡水を血に変じて飲むことをできないようにした(黙8:10)。この時水を(つかさど)る天使と祭壇とより各々この神の審判を讃頌(さんしょう)する声が発せらる。水を(つかさど)る御使の言は、地に住む者は聖徒と預言者の血を流した故にこれに相当する報いとして、水が血に変ることの相応しきことをたたえている。
辞解
[血となれり] 第三のラッパでは苦艾(にがよもぎ)となつた。ここでは聖徒と預言者の血の復讐の意味で血に変つた。
[水を(つかさど)る御使] 黙7:1辞解参照。「後来り給う」を省略せる所以はこの時すでに審判のために来り給えるとほとんど同一の程度に世の終りが切迫しているからである。

16章7節 (われ)また祭壇(さいだん)(もの)()ふを()けり『(しか)(しゅ)なる全能(ぜんのう)(かみ)よ、なんぢの審判(さばき)(まこと)なるかな、()なるかな』と。[引照]

口語訳わたしはまた祭壇がこう言うのを聞いた、「全能者にして主なる神よ。しかり、あなたのさばきは真実で、かつ正しいさばきであります」。
塚本訳すると私は祭壇が(これに応えて)言うのを聞いた、「然り、主なる神よ、全能者よ、汝の審判は真実にして義しい!」
前田訳わたしは祭壇からいわれるのを聞いた、「然り、全能の神なる主よ、み裁きは真また義」と。
新共同わたしはまた、祭壇がこう言うのを聞いた。「然り、全能者である神、主よ、/あなたの裁きは真実で正しい。」
NIVAnd I heard the altar respond: "Yes, Lord God Almighty, true and just are your judgments."
註解: 黙15:3に類似する頌詞(しょうし)なり。声は祭壇そのものより出でているけれども、恐らく祭壇の下にある殉教者の魂か(黙6:9)または祈りつつある聖徒の声ならん。前者と見ることがこの場合一層適当である。神の審判の真にして誤らず、義にして(さば)くべきものを(さば)き給うことをたたえている。

16章8節 第四(だいし)(もの)その(はち)太陽(たいやう)(うへ)(かたむ)けたれば、太陽(たいやう)()をもて(ひと)()くことを(ゆる)さる。[引照]

口語訳第四の者が、その鉢を太陽に傾けた。すると、太陽は火で人々を焼くことを許された。
塚本訳第四の天使がその鉢を太陽の上に注いだ。そしてそれは火で人を焼くことを許された。
前田訳第四の天使がその鉢を太陽に注いだ。すると太陽が火で人々を焼くことをゆるされた。
新共同第四の天使が、その鉢の中身を太陽に注ぐと、太陽は人間を火で焼くことを許された。
NIVThe fourth angel poured out his bowl on the sun, and the sun was given power to scorch people with fire.
辞解
[上に] 第四乃至(ないし)第七の鉢の場合は epi を用う。第一−第三の場合には神の憤恚(いきどおり)が注がれし地、海、水そのものに変化を来したことを示すために eis を用いた。
[人] 定冠詞あり。多分2節の「人々」を意味するならん(A1)。

16章9節 (かく)人々(ひとびと、)(はげ)しき(ねつ)()かれて(これ)()苦難(くるしみ)(つかさ)どる權威(けんゐ)()たちまふ(かみ)()(けが)し、かつ悔改(くいあらた)めずして(かみ)榮光(えいくわう)()せざりき。[引照]

口語訳人々は、激しい炎熱で焼かれたが、これらの災害を支配する神の御名を汚し、悔い改めて神に栄光を帰することをしなかった。
塚本訳そこで人々は(その)烈しい熱で焼かれた。しかし彼らは(却つて)これらの災厄を支配する権を有ち給う神の名を涜した。そして悔い改めて彼に栄光を帰することをしなかった。
前田訳人々は高い熱で焼かれ、これらわざわいの権限のある神の名を汚した。そして彼に栄光を帰すよう悔い改めはしなかった。
新共同人間は、激しい熱で焼かれ、この災いを支配する権威を持つ神の名を冒涜した。そして、悔い改めて神の栄光をたたえることをしなかった。
NIVThey were seared by the intense heat and they cursed the name of God, who had control over these plagues, but they refused to repent and glorify him.
註解: 第四のラッパの場合は(黙8:12)これに類似し天体の変動による暗黒が地上に臨み、本節の場合は非常なる熱となりて不信なる人々を苦しめる。かかる場合に彼らは神の権威の前に平伏しその罪を悔改むべきであるのに、彼らはエジプト王パロのごとく益々心を頑固にして神を涜した。天災は神の審判である。しかしながら神はこれによりて罪人を悔改めしめんとの熱望をもってこれを行い給う。

3-(3)-(ニ) 第五、第六の金の鉢の審判 16:10 - 16:16

16章10節 第五(だいご)(もの)その(はち)(けもの)座位(くらゐ)(うへ)(かたむ)けたれば、(けもの)(くに)(くら)くなり、[その國人(くにびと)](いたみ)によりて(おのれ)(した)()み、[引照]

口語訳第五の者が、その鉢を獣の座に傾けた。すると、獣の国は暗くなり、人々は苦痛のあまり舌をかみ、
塚本訳第五の天使がその鉢を獣の王座の上に注いだ。するとその王国は真暗になり、人々は疼痛のために舌を噛んだ。
前田訳第五の天使がその鉢を獣の王座に注いだ。するとその国は暗くなり、人々は苦しさに舌をかみ、
新共同第五の天使が、その鉢の中身を獣の王座に注ぐと、獣が支配する国は闇に覆われた。人々は苦しみもだえて自分の舌をかみ、
NIVThe fifth angel poured out his bowl on the throne of the beast, and his kingdom was plunged into darkness. Men gnawed their tongues in agony

16章11節 その(いたみ)腫物(しゅもつ)とによりて(てん)(かみ)(けが)し、かつ(おの)行爲(おこなひ)悔改(くいあらた)めざりき。[引照]

口語訳その苦痛とでき物とのゆえに、天の神をのろった。そして、自分の行いを悔い改めなかった。
塚本訳そしてその疼痛と腫物のために天の神を涜し、自分の(悪い)業を悔い改めなかった。
前田訳苦しみとただれのために天の神を汚した。そしてそのわざを悔い改めなかった。
新共同苦痛とはれ物のゆえに天の神を冒涜し、その行いを悔い改めようとはしなかった。
NIVand cursed the God of heaven because of their pains and their sores, but they refused to repent of what they had done.
註解: 神の審判はますます進展するにもかかわらず、人々の心は益々頑陋(がんろう)となり、その冒涜とその罪行とを継続する。
辞解
[獣の座位] 黙13:2註参照。サタンの座位の上に鉢を頃ける時これに服従する者の国の上に禍害下る。
[暗くなり] 黙9:2の光景を連想すべし、なお出10:21−23の禍害が標本となっていると見ることが適当である。
[獣の国] 獣すなわちサタンの支配の下にあるもの。
[痛により] 非常なる暗黒が大なる苦痛を与えたものと解すべきであろう。ただし多くの学者はこの「痛」は第一乃至(ないし)第四の災害により起れる苦痛で暗黒はこれを助長したものと解している(A1、B3、S3、H0)。けれどもそれよりはむしろサタンの襲撃によりヨブのごとき苦痛に陥るかまたは罪に陥りて良心の苦痛を()めることを指したものであろう。
[・・・とによりて] 「・・・の故に」の意。

16章12節 第六(だいろく)(もの)その(はち)(おほい)なる(かは)ユウフラテの(うへ)(かたむ)けたれば、(かは)(みづ)()れたり。これ()()づる(かた)より(きた)(わう)たちの(みち)(そな)へん(ため)なり。[引照]

口語訳第六の者が、その鉢を大ユウフラテ川に傾けた。すると、その水は、日の出る方から来る王たちに対し道を備えるために、かれてしまった。
塚本訳第六の天使がその鉢を大ユーフラテス河の上に注いだ。するとその水が(皆)涸れてしまった。それは太陽の出る方から来る王達に道を備えるためであった。
前田訳第六の天使がその鉢を大河エウフラテスに注いだ。するとその水がかれた。東の王たちの道がそなえられるためである。
新共同第六の天使が、その鉢の中身を大きな川、ユーフラテスに注ぐと、川の水がかれて、日の出る方角から来る王たちの道ができた。
NIVThe sixth angel poured out his bowl on the great river Euphrates, and its water was dried up to prepare the way for the kings from the East.
註解: 第六のラッパと同じく第六の鉢はユウフラテ河の禍である。当時ユウフラテ河の東にあるパルテヤ国がローマを襲うならんとの風説あり、ヨハネはこれを利用したのである(黙9:14註及辞解参照)。そしてローマの敵なるパルテヤもやがてはローマと連盟して神の敵となることが次節以下によりて知ることを得。河水の涸渇と徒渉(としょう)については出14:21以下の紅海の徒渉(としょう)ヨシ3:13−17のヨルダンの徒渉(としょう)、およびイザ11:15等参照。
辞解
[日の出づる方] 黙7:2辞解参照。

16章13節 (われ)また(たつ)(くち)より、(けもの)(くち)より、(にせ)預言者(よげんしゃ)(くち)より、(かはづ)のごとき()つの(けが)れし(れい)()づるを()たり。[引照]

口語訳また見ると、龍の口から、獣の口から、にせ預言者の口から、かえるのような三つの汚れた霊が出てきた。
塚本訳また私は(サタンである)竜の口からと、(反キリストである)獣の口からと、(その手先である)偽預言者の口から、蛙のような(格好をした)三つの穢れた霊が出て来るのを見た。
前田訳そしてわたしは見た。竜の口からと獣の口からと偽預言者の口から、蛙のような三つの汚れた霊が出た。
新共同わたしはまた、竜の口から、獣の口から、そして、偽預言者の口から、蛙のような汚れた三つの霊が出て来るのを見た。
NIVThen I saw three evil spirits that looked like frogs; they came out of the mouth of the dragon, out of the mouth of the beast and out of the mouth of the false prophet.
註解: 龍は黙12:3のサタン、獣は龍より権威を授けられたる地的権威(黙13:1)、偽預言者は明かに黙13:11の第二の獣を指す、なお黙19:20黙20:10参照。この三者はサタンの三位一体であってこの各々の口より蛙のごとき穢れし霊が出で行く。この三つの蛙は連合して神の敵を糾合(きゅうごう)する。
辞解
[偽預言者] 黙13:11にはこの名称が無いけれども、その説明よりこれを知ることができる。
[蛙] 出8:2より取る。なお引照を参照すべし。

16章14節 これは(しるし)をおこなふ惡鬼(あくき)(れい)にして、全能(ぜんのう)(かみ)(おほい)なる()戰鬪(たたかひ)のために全世界(ぜんせかい)王達(わうたち)(あつ)めんとて、その(もと)()でゆくなり。[引照]

口語訳これらは、しるしを行う悪霊の霊であって、全世界の王たちのところに行き、彼らを召集したが、それは、全能なる神の大いなる日に、戦いをするためであった。
塚本訳これら(の蛙)は(不思議な)徴を行う悪鬼の霊である。彼らは全能者なる神の大なる日の戦闘のために、全世界の王達を集めようとして出て行く。──
前田訳奇跡をする悪鬼の霊である。それらは全世界の王たちのところへ行って、全能の神の大いなる日の戦いへと彼らを召集する。
新共同これはしるしを行う悪霊どもの霊であって、全世界の王たちのところへ出て行った。それは、全能者である神の大いなる日の戦いに備えて、彼らを集めるためである。
NIVThey are spirits of demons performing miraculous signs, and they go out to the kings of the whole world, to gather them for the battle on the great day of God Almighty.
註解: 前節の「穢れし霊」の説明である。この三つの霊は、黙19:11−21に録される最後の決戦の準備として全世界の王らの連盟を画策する(なお黙17:14参照)。彼らは徴を行い、人を惑す偉大なる力を有っているが故に、これによりてその目的を達することができる。ただし第六の鉢はこの大戦闘に対する準備たるに止まり、未だ大戦闘は起らない。これは最後の事件として進展する。
辞解
[徴をおこなう] 黙13:13参照。
[全能の神の大なる日] 最後の審判の日を指す(ヨエ2:11ヨエ4:14)。パウロは主の再臨の日を「主の日」「イエス・キリストの日」等と呼ぶ(Tコリ3:13引照2参照)。
[全世界の王等] 12節の「日の出づる方より来る王たち」とは別の諸王を指すと解するのが通説であるが(B3、S3、H0)、東方の諸王も神に敵する連盟に加入する者と見る方が適当であろう。全世界が神の民を攻める思想についてはエゼ38章−39章その他外典に多くの例あり。

16章15節 ()よ、われ盜人(ぬすびと)のごとく(きた)らん、(はだか)にて(あゆ)羞所(はじどころ)()らるること()からん(ため)に、()(さま)してその(ころも)(まも)(もの)幸福(さいはひ)なり)[引照]

口語訳(見よ、わたしは盗人のように来る。裸のままで歩かないように、また、裸の恥を見られないように、目をさまし着物を身に着けている者は、さいわいである。)
塚本訳(主言い給う、)視よ、我は盗人のように来る。幸福なる哉、(絶えず)目を覚まして自分の着物を守っている者!彼は(その時)裸で歩かず、またその恥所を見られない(で済む)からである。──
前田訳見よ、わたしは盗びとのように来る。さいわいなのは目ざめていて、裸で歩いて恥を見られないよう身仕度する人。
新共同――見よ、わたしは盗人のように来る。裸で歩くのを見られて恥をかかないように、目を覚まし、衣を身に着けている人は幸いである。――
NIV"Behold, I come like a thief! Blessed is he who stays awake and keeps his clothes with him, so that he may not go naked and be shamefully exposed."
註解: 全世界の諸王が神の敵として相集うことは神の民にとりては由々しき事件である。それ故にここに卒然として主の御声が聞え、これによりてキリスト者を慰めまた戒めんとしているのである。主は盗人のごとくに思わざる時に来り給う。目を覚しているもの、主より賜る義の衣を守りて決してこれを脱ぎ棄てざるもののみが、主の救いに与ることができる。
辞解
[盗人の如く来らん] 主のしばしば教え給いし処、パウロ、ペテロもまたこれを強調した。黙3:3註および引照を見よ。
[裸] 黙3:18参照。
[幸福なり] 黙1:3註解参照。

16章16節 かの()つの(れい)(わう)たちをヘブル()にてハルマゲドンと(とな)ふる(ところ)(あつ)めたり。[引照]

口語訳三つの霊は、ヘブル語でハルマゲドンという所に、王たちを召集した。
塚本訳彼ら(三つの霊)はヘブライ語でハルマゲドンと呼ばれる処に王達を集めた。
前田訳彼らは王たちをヘブライ語でハルマゲドンというところに召集した。
新共同汚れた霊どもは、ヘブライ語で「ハルマゲドン」と呼ばれる所に、王たちを集めた。
NIVThen they gathered the kings together to the place that in Hebrew is called Armageddon.
註解: ここで神の軍とサタンの軍との決戦が行われんとするのである。
辞解
[ハルマゲドン] もとより表徴的の名称で実際の場所があるわけではない。ただし何を表徴しているかに関しては「ハル」はヘブル語にて「山」を意味し「マゲドン」は「メギドン」また「メギド」に通じ、ナザレの南方キション河の流域エスドレロンの平原の一市で要塞地の名称である。古来ここで多くの決戦が行われた(士1:27士5:19U列9:27U列23:29以下。U歴35:22)。ゆえに神の軍勢とサタンの軍勢の決戦地の表徴として適当である。ただしこの地は平原であって山(ハル)ではない。恐らくヨハネはエゼ39:2よりイスラエルとその敵との決戦地が「イスラエルの山々」なるより「ハル」を附加したものであろう。このエゼ39章の光景は本節と最も関係深き黙19:17−21。黙20:7−10 の中に多く引用されているのを見てもこの解釈が最も適当であろう。要するに地上の具体的の地名ではなく神の軍とサタンの軍との関ケ原の戦場である。

3-(3)-(ホ) 第七の金の鉢の審判 16:17 - 18:24
3-(3)-(ホ)-(甲) 序曲 16:17 - 16:21

16章17節 第七(だいしち)(もの)その(はち)空中(くうちゅう)(かたむ)けたれば、聖所(せいじょ)より、御座(みくら)より(おほい)なる(こゑ)いでて『(こと)すでに()れり』と()ふ。[引照]

口語訳第七の者が、その鉢を空中に傾けた。すると、大きな声が聖所の中から、御座から出て、「事はすでに成った」と言った。
塚本訳(最後に)第七の天使がその鉢を空中に注いだ。すると大きな声が(天の)聖所から、(神の)玉座から出て言うた──「(事は)成った」と。
前田訳第七の天使がその鉢を空中に注いだ。すると宮から大声が出た。王座から「事は成った」といわれたのであった。
新共同第七の天使が、その鉢の中身を空中に注ぐと、神殿の玉座から大声が聞こえ、「事は成就した」と言った。
NIVThe seventh angel poured out his bowl into the air, and out of the temple came a loud voice from the throne, saying, "It is done!"
註解: これは全審判の最後のものであり21節までにその概況を叙述し、17−18章においてバビロンの覆滅(ふくめつ)の詳細を論じてこれをもって神の憤恚(いきどおり)の最後の鉢の傾け尽されしことを示す。「事すでに成れり」はこの完結を予じめ叫んだものである。
辞解
[大なる声] 第1節の場合と同じ。
[事すでに成れり] gegonen なる一字をもって表わさる。

16章18節 (かく)數多(あまた)電光(いなづま)(こゑ)雷霆(いかづち)とあり、また(おほい)なる地震(ぢしん)おこれり、(ひと)()(うへ)()りし以來(このかた)かかる(おほい)なる地震(ぢしん)なかりき。[引照]

口語訳すると、いなずまと、もろもろの声と、雷鳴とが起り、また激しい地震があった。それは人間が地上にあらわれて以来、かつてなかったようなもので、それほどに激しい地震であった。
塚本訳すると(たちまち)電光と轟きと雷とがあり、また大地震が起こった。人間が地上に出来て以来かつて無い程のもの──そんな大きな地震であった。
前田訳するといなずまとひびきと雷がおこり、人が地上に住んでから、未だなかったほどの大地震がおこった。それほどの激しい地震であった。
新共同そして、稲妻、さまざまな音、雷が起こり、また、大きな地震が起きた。それは、人間が地上に現れて以来、いまだかつてなかったほどの大地震であった。
NIVThen there came flashes of lightning, rumblings, peals of thunder and a severe earthquake. No earthquake like it has ever occurred since man has been on earth, so tremendous was the quake.
註解: この四種の天変地異は 黙8:5黙11:19 と同じく大審判の始まらんとする合図のごときものである。小アジア地方は地震の多き地方で、殊にその当時しばしば大地震があった。それ故にヨハネは特にこれらの何れよりも大なる地震の起ることを録して最後の災害の恐るべきことを示している。

16章19節 (おほい)なる(みやこ)()つに()かれ、諸國(しょこく)町々(まちまち)(たふ)れ、(おほい)なるバビロンは、(かみ)(まへ)におもひ()されて(はげ)しき御怒(みいかり)葡萄酒(ぶだうしゅ)()りたる酒杯(さかづき)(あた)へられたり。[引照]

口語訳大いなる都は三つに裂かれ、諸国民の町々は倒れた。神は大いなるバビロンを思い起し、これに神の激しい怒りのぶどう酒の杯を与えられた。
塚本訳大なる都は三つに分かたれ、諸国の町々も倒れた。大なるバビロンは(遂にその不義を)神の前に思い出され、神の怒りの憤怒酒(を飲むべく、そ)の酒杯が与えられた。
前田訳大きな町は三つに割れ、諸国民の町々は倒れた。大きなバビロンは神の前に覚えられて、み怒りにたぎる酒の杯が渡される。
新共同あの大きな都が三つに引き裂かれ、諸国の民の方々の町が倒れた。神は大バビロンを思い出して、御自分の激しい怒りのぶどう酒の杯をこれにお与えになった。
NIVThe great city split into three parts, and the cities of the nations collapsed. God remembered Babylon the Great and gave her the cup filled with the wine of the fury of his wrath.
註解: 黙11:13に比してこの地震の災害の激甚にして広汎なることを知ることができる。大なる都すなわちバビロンをもって表徴されるローマが全く分裂せるのみならず、「諸国の町々」も倒れ、この地震の与えし禍害の(はなはだ)しさが判明(わか)る。そしてこのバビロンはこれまで神がその罪を見(のが)し給うたのに、今や「神の前に思ひ出され」その審判を免れることを得ざるに至った。この神の怒りの葡萄酒を盛れる酒杯を飲みたるバビロンの姿は次の二章に録される処である。故にローマにとりては地震が災害の全部ではなかった。
辞解
[(はげ)しき御怒] thumos tês orgês「怒の憤恚(いきどおり)黙14:10辞解参照。

16章20節 (すべ)ての(しま)()げさり、(やま)()えずなれり。[引照]

口語訳島々はみな逃げ去り、山々は見えなくなった。
塚本訳(地震のために)島は悉く逃げ去り、山は見えなくなった。
前田訳島はみな消え、山々は見えなくなった。
新共同すべての島は逃げ去り、山々も消えうせた。
NIVEvery island fled away and the mountains could not be found.

16章21節 また(てん)より(ひゃく)(きん)ほどの(おほい)なる(へう)人々(ひとびと)(うへ)(くだ)りしかば、人々(ひとびと)(へう)苦難(くるしみ)によりて(かみ)(けが)せり。(これ)その苦難(くるしみ)(はなは)だしく(おほい)なればなり。[引照]

口語訳また一タラントの重さほどの大きな雹が、天から人々の上に降ってきた。人々は、この雹の災害のゆえに神をのろった。その災害が、非常に大きかったからである。
塚本訳また百斤ほどの大きな雹が天から人の上に降って来る。その雹の災厄が非常に大きいので、人々はその災厄の故に(また)神を涜した。
前田訳大きな重い雹が空から人々へと降った。人々は雹のわざわいゆえに神を汚した。そのわざわいは、じつに大きかったのである。
新共同一タラントンの重さほどの大粒の雹が、天から人々の上に降った。人々は雹の害を受けたので、神を冒涜した。その被害があまりにも甚だしかったからである。
NIVFrom the sky huge hailstones of about a hundred pounds each fell upon men. And they cursed God on account of the plague of hail, because the plague was so terrible.
註解: 地震による地殻の変動は島を水底に没し山を崩壊せしめた。しかしそれよりも恐るべきことは大なる雹の害であった(雹は昔よりイスラエルの敵に対する神の怒りの表徴であった。出9:24ヨシ10:11)。かかる災害にもかかわらず神に叛ける人々はなおもその涜神的行為を()めなかった。かくして彼らは全き滅亡に陥るに至ったのである。
辞解
[百斤] 原語は「タラントの重量」の意味で一タラントの重量は時代と国とによりて種々ありて一定しない。平均十貫目内外のものであろう。
附記 [神の審判の特質]七つの封印、七つのラッパ、七つの金鉢の審判につき、その相互関係を観察することは神の審判の性質、その成立を知る上において極めて必要である。本書において註解せるごとく第七の封印は七つのラッパに展開し、第七のラッパは七つの鉢に展開したとするならば、結局において第七の封印が最後の災害となる訳である。これがさらに七つに分れ、その最後のものがさらにまた七つに分れたことは、神の審判として降る災害は今や最後に達したるがごとくに見える場合においても、終末は未だ至らず、さらに再び第一のラッパよリ始まるがごとき状態において展開するものなることを示すと解すべきであろう。殊に七つのラッパと七つの鉢とは下のごとくに相対応していることに注意すべし。
第一のラッパ第一の鉢
第二のラッパ第二の鉢
第三のラッパ第三の鉢
第四のラッパ天体第四の鉢天体
第五のラッパサタン第五の鉢サタン
第六のラッパユーフラテ川第六の鉢ユーフラテ川

この事実が示す意義は神の(さば)きの災禍は、前述のごとく終りに近付けるがごとくにしてまたさらに始めより繰返されるのみならず、往々にして同一の災禍が繰返されるものであることを示す。
それ故にキリスト者は非常なる忍耐を要する。もしこの真理を知らずして、苦痛の余り今こそ最後の苦難が来たのであると思ったならば非常なる失望に陥り遂にその忍耐力を失うに至り、また反対に一つの災害終わってもなお世の終末が来たらずとして安心するならば思わざる時に終わりが来るであろう。
しかしながら以上の諸々の災害は決して単に無限に反覆されているのではなく、反覆のごとくに見える中に程度の増大があり、遂には最後の大苦難に到達するのである。
かくのごとくにして黙示録の第七の封印によりて凡ての審判は完成せられ新天新地が出顕するに至るのである。ヨハネのこの歴史観は黙示録を理解する上に非常に重大なる関係がある。