黙示録第5章
分類
3 この世の審判と救
4:1 - 18:24
3-(B) 巻物を開き給う
3-(B)-(a)
註解: 本章は神の審判が屠られ給いし
羔羊 なる主イエス、キリストによりて展開されることを示す、かくして前章と本章とをもって三位の神の各々が、その地位を明かに示し給う。
5章1節
口語訳 | わたしはまた、御座にいますかたの右の手に、巻物があるのを見た。その内側にも外側にも字が書いてあって、七つの封印で封じてあった。 |
塚本訳 | そして私は玉座に坐し給う者の右手に(一つの)巻き物(があるの)を見た。それは内側にも外側にも(一杯に)字が書いてあり、七つの封印を以て(固く)封ぜられてあった。 |
前田訳 | そしてわたしは見た、王座に座したもうものの右に、内にも外にも書かれている巻物を。それには七つの封印がなされている。 |
新共同 | またわたしは、玉座に座っておられる方の右の手に巻物があるのを見た。表にも裏にも字が書いてあり、七つの封印で封じられていた。 |
NIV | Then I saw in the right hand of him who sat on the throne a scroll with writing on both sides and sealed with seven seals. |
註解: 神の審判の予定は完全に(七つ ─ 緒言参照)封ぜられし秘密であって、何人もこれを窺い知ることができない。この神の計画を一杯に録せる(裏表に文字あること)巻物は神これをその右の手に持ちて容易に手離したまわない。
辞解
[巻物] biblion は普通「書物」biblos の小なるものを意味するけれども必ずしも小なるものに限られたわけではない。その形は普通巻物の形でパピルスを材料とする。
[裏表に文字あり] 内容の豊富にして充実していることを示す。一つの巻物に七つの封印ありてそれが一つ一つ解かれるようにするには如何なる方法によるかにつき種々の想像説あれどそれは空しき好奇心に過ぎない。かかる巻物が具体的に存在するのでは無いから。その証拠にはこの巻物が読まれたことは一回も録されていない。
5章2節 また
口語訳 | また、ひとりの強い御使が、大声で、「その巻物を開き、封印をとくのにふさわしい者は、だれか」と呼ばわっているのを見た。 |
塚本訳 | 私はまた強い天使が大声で、「誰が(この)巻き物を開いて、その封印を解くに相応しいか」と触れているのを見た。 |
前田訳 | そしてわたしは見た、ひとりの強い天使が大声で叫ぶのを、「封印を解いて、この巻物を開けるにふさわしいものはだれか」と。 |
新共同 | また、一人の力強い天使が、「封印を解いて、この巻物を開くのにふさわしい者はだれか」と大声で告げるのを見た。 |
NIV | And I saw a mighty angel proclaiming in a loud voice, "Who is worthy to break the seals and open the scroll?" |
註解: 神の審判の経綸はこれを地上に実現する力を有てる人が必要である。「巻物を開きて封印を解く」とは単に神の予定の経綸を発見し告知することではなく(このことは御霊により預言者によりて為され得ることである)、これを実現し実行することである。このために強き天使の全世界に響き渡る声をもって、この審判の実行を為し得る人ありや否やが呼びかけられる。
辞解
[巻物を開きてその封印を解く] 順序が転倒しているけれども、これも前述のごとくあまりに具体的に解すべきではなくその精神を見るべきである。
5章3節
口語訳 | しかし、天にも地にも地の下にも、この巻物を開いて、それを見ることのできる者は、ひとりもいなかった。 |
塚本訳 | しかし、天にも地にも地の下にも、誰一人(として)その巻き物を開いて、それ(に書いてあること)を見ることの出来る者が無かった。 |
前田訳 | 天にも地上にも地下にも巻物を開いて読めるものはだれもなかった。 |
新共同 | しかし、天にも地にも地の下にも、この巻物を開くことのできる者、見ることのできる者は、だれもいなかった。 |
NIV | But no one in heaven or on earth or under the earth could open the scroll or even look inside it. |
註解: 天、地、地の下は神の被造物の全体であると考えられた(キリスト、神の羔羊 はこの被造物以外に在ることとなる)。全宇宙に何物もこの巻物を開き得るものなくまたこれを見得る者が無かった。神の審判の経綸は唯神の御旨の中のみにある。
5章4節
口語訳 | 巻物を開いてそれを見るのにふさわしい者が見当らないので、わたしは激しく泣いていた。 |
塚本訳 | 私はさめざめと泣いた。(広いこの宇宙に、)その巻き物を開いて、それを見るに相応しい者が一人も無かったのである。 |
前田訳 | わたしはさめざめと泣いた、巻物を開いて読むにふさわしいものが、だれも見当たらなかったから。 |
新共同 | この巻物を開くにも、見るにも、ふさわしい者がだれも見当たらなかったので、わたしは激しく泣いていた。 |
NIV | I wept and wept because no one was found who was worthy to open the scroll or look inside. |
註解: 天使の呼びかけに応ずる者が無かったのでヨハネの失望は大きかった。キリスト在し給わないならば全宇宙の問題は解決せられずに残るのである。ヨハネは泣くより外になかった。
5章5節
口語訳 | すると、長老のひとりがわたしに言った、「泣くな。見よ、ユダ族のしし、ダビデの若枝であるかたが、勝利を得たので、その巻物を開き七つの封印を解くことができる」。 |
塚本訳 | すると(かの)長老の一人が私に言う、「泣くな。視よ、ユダ族の獅子、ダビデの根(である者)が(既に)勝った(から)、彼がその巻き物と七つの封印とを開く(ことが出来る。)」 |
前田訳 | すると長老のひとりがいう、「泣くな。見よ、ユダ族出の獅子、ダビデの根が勝った。彼が巻物とその七つの封印を解く」と。 |
新共同 | すると、長老の一人がわたしに言った。「泣くな。見よ。ユダ族から出た獅子、ダビデのひこばえが勝利を得たので、七つの封印を開いて、その巻物を開くことができる。」 |
NIV | Then one of the elders said to me, "Do not weep! See, the Lion of the tribe of Judah, the Root of David, has triumphed. He is able to open the scroll and its seven seals." |
註解: ヨハネの哀哭は長老の一人の告知によりて消された。すなわちキリストのみがその巻物と封印とを開くに相応しきことを知ったのである。
辞解
[長老の一人] 黙示文学の特徴として声を発するものは種々あり(黙6:1。黙7:13以下。黙8:13。黙9:13。黙10:4、黙10:8。黙11:15。黙14:7。黙16:1。黙17:1)。
[ユダの族の獅子] 創49:8−12にヤコブがその子ユダを祝福して「獅子の子の如し」と言い諸族中に君臨することを示し、このユダの中より救主が生まれることは当時一般の信念であり、預言もまたこれを裏書した (ヘブ7:14。イザ2:1)。 イエスはユダ族より生れ給いその獅子であつた。
[ダビデの萠蘗 ] メシヤはダビデの子として生れ給うことが預言せられかつかく信じられていた(マタ1:1。ロマ15:12。イザ11:1、イザ11:10。黙22:16)。
5章6節
口語訳 | わたしはまた、御座と四つの生き物との間、長老たちの間に、ほふられたとみえる小羊が立っているのを見た。それに七つの角と七つの目とがあった。これらの目は、全世界につかわされた、神の七つの霊である。 |
塚本訳 | (私は面を上げた。)すると玉座及び(これを取り囲む)四つの活物と、(二十四人の)長老との真中に、(犠牲として)屠られたような、(頚に疵のある)仔羊が立っているのを私は見た。それには七つの角と七つの眼とがあった──この眼は全地に遣わされた神の七つの霊である。── |
前田訳 | そしてわたしは見た、王座と四つの生きものの真ん中、長老たちの真ん中に、ほふられたような小羊が立っているのを。それには七つの角と七つの目があり、それらは全地につかわされた神の七つの霊である。 |
新共同 | わたしはまた、玉座と四つの生き物の間、長老たちの間に、屠られたような小羊が立っているのを見た。小羊には七つの角と七つの目があった。この七つの目は、全地に遣わされている神の七つの霊である。 |
NIV | Then I saw a Lamb, looking as if it had been slain, standing in the center of the throne, encircled by the four living creatures and the elders. He had seven horns and seven eyes, which are the seven spirits of God sent out into all the earth. |
註解: 封印を開くに相応しきは屠られてしかも甦り給える羔羊 であった。イエスはその愛の故に人類の罪を負って屠られ給えるが故にこの封印を解くことを得給う。そしてヨハネは彼が神とその二つの被造物なる天然と教会との間に、換言すれば全宇宙をその舞台として立ち給うを見た。
辞解
[御座 と活物 と長老たちとの中間に] 何れの場所なりやを決定し難いので多くの説を生んでいるけれども、これを文字の外形より決定せんとするのが誤りのもとで上述のごとくに解すべきである。
[屠られたるが如き] 今は復活して神の右に在し給うが故に、彼が屠られ給いしことは唯その創痕 においてこれを認め得たに過ぎないからであろう。
[羔羊 ] 新約聖書に一般に amnos を用いているけれども黙示録にては arnion を用う。本書の特色を発揮させるためであろう。
註解: 「角」は力の表徴、「目」は視力の表徴であり、この目は神の霊であり、全世界に遣されて全世界を監視し、この角の力をもってこれを審くことを意味す。
辞解
[角] 力を表わすことにつきては申33:17。ゼカ2:1。ダニ7:7以下。
[目] 洞察力を示すことにつきてはゼカ4:10参照。
5章7節 かれ
口語訳 | 小羊は進み出て、御座にいますかたの右の手から、巻物を受けとった。 |
塚本訳 | (やがて)彼は行って、玉座に坐し給う物の右手から(その巻き物を)受け取った。 |
前田訳 | 彼は来て、王座に座したもうものの右の手から(巻物を)受けた。 |
新共同 | 小羊は進み出て、玉座に座っておられる方の右の手から、巻物を受け取った。 |
NIV | He came and took the scroll from the right hand of him who sat on the throne. |
3-(B)-(b)
5章8節
口語訳 | 巻物を受けとった時、四つの生き物と二十四人の長老とは、おのおの、立琴と、香の満ちている金の鉢とを手に持って、小羊の前にひれ伏した。この香は聖徒の祈である。 |
塚本訳 | 彼がその巻き物を受け取った時、四つの活物と二十四人の長老とは、各々竪琴と香の一杯入っている金の鉢とを(手に)持って──この香は聖徒の祈りである──仔羊の前に平伏し、 |
前田訳 | 彼が巻物を受けたとき、四つの生きものと二十四人の長老は小羊の前にひれ伏した。おのおのが竪琴と香に満ちた金の鉢とを持っている。香は聖徒の祈りである。 |
新共同 | 巻物を受け取ったとき、四つの生き物と二十四人の長老は、おのおの、竪琴と、香のいっぱい入った金の鉢とを手に持って、小羊の前にひれ伏した。この香は聖なる者たちの祈りである。 |
NIV | And when he had taken it, the four living creatures and the twenty-four elders fell down before the Lamb. Each one had a harp and they were holding golden bowls full of incense, which are the prayers of the saints. |
註解: これよりイエスはいよいよ神の御手より審判の巻物を受けてこれを世界に実現せんとし給う。新しき神の御業が始まらんとしているのである。それ故に自然界を表わす四つの活物 は各々立琴を持って讃美をささげ、神の国を代表する二十四人の長老は各々香の満ちたる金の鉢をもって祈祷をささげんとして、羔羊 の前に平伏しているのである。
辞解
[おのおの] 多く長老のみに関するものと解される(B3、S3、A1)けれどもこの場合前掲註のごとくに解することが適当であろう。
[立琴] kithara 詩を歌う場合に用いし楽器(詩33:2。詩98:5。詩147:7。なお黙14:2。黙15:2)。
[香] 祈を表はすことは詩141:2。ルカ1:10。讃美と祈祷は聖徒の生涯であり、殊にキリストが審判の巻物を主より受取り給う場合になおさらである。
5章9節
口語訳 | 彼らは新しい歌を歌って言った、「あなたこそは、その巻物を受けとり、封印を解くにふさわしいかたであります。あなたはほふられ、その血によって、神のために、あらゆる部族、国語、民族、国民の中から人々をあがない、 |
塚本訳 | 新しい(讃美の)歌をうとうて言う──貴方は巻き物を受け取り、その封印を開くに相応いたもう。貴方は屠られ給うて、その血(の価)によって凡ての種族と国語と民と国民と(の中)から人を神のために買い、 |
前田訳 | 彼らは新しい歌をうたっていう−−「あなたは巻物を受けてその封印を解くにふさわしい。あなたはほふられ、自らの血ですべての部族と国語と民族と国民とから、人々を神へとあがない、 |
新共同 | そして、彼らは新しい歌をうたった。「あなたは、巻物を受け取り、/その封印を開くのにふさわしい方です。あなたは、屠られて、/あらゆる種族と言葉の違う民、/あらゆる民族と国民の中から、/御自分の血で、神のために人々を贖われ、 |
NIV | And they sang a new song: "You are worthy to take the scroll and to open its seals, because you were slain, and with your blood you purchased men for God from every tribe and language and people and nation. |
5章10節
口語訳 | わたしたちの神のために、彼らを御国の民とし、祭司となさいました。彼らは地上を支配するに至るでしょう」。 |
塚本訳 | これをわれらの神のために王国(の民となし、)また祭司となし給うたから。彼らは地上に王となるであろう。 |
前田訳 | 彼らをわれらの神のために王となし、祭司となさったから。彼らは地上で王者となろう」と。 |
新共同 | 彼らをわたしたちの神に仕える王、/また、祭司となさったからです。彼らは地上を統治します。」 |
NIV | You have made them to be a kingdom and priests to serve our God, and they will reign on the earth." |
註解: 再び来りて審判を行い給うべきキリストこそ、新しき歌をもって讃美されるべきである。彼が封印を解くに相応しき所以は、彼が神の子に在し給うからではなく、または彼の奇蹟や伝道や、または彼の立派な道徳的生活等のためでもなく、彼が万民の贖いのために世のために血を流し給えるが故であった。神の前における我らの価値もまた我らが愛のためにどれだけ己を捨てるかにある。そしてキリストの十字架の功績はその血の値によって、神の国とその祭司とが万民の中より神のために贖い出され、彼らがやがて世を支配するに至ることである。それ故に彼はかく屠られて血を流すまでも世を愛せるが故に、彼に服 わざるものを審判 くべき神の経綸の巻物の封印を開くに値し給う。
辞解
[新しき歌を謳う] 何人が謳うかは明示されていないが四つの活物 と四人の長老たちと見るべきである(黙14:3)。
[族・国語・民・国] すなわち人種の別、言語の別、民族の別等を論ぜざること、イエスの救いは如何なる人にも及ばない処が無い。地に関すること故、地に因 める四の数を選んだのであろう。「族」phulê は民族をその区別の方面より見た場合、「民」laos は集団として見た場合、「国」 ethnos は人種的に見た場合、「国語」glossa は言語の差別より見た場合の人類の区別。「国民」basileia は「国」「王国」等と訳することができる。キリストによりて贖われしものは神の「国」である。「祭司」キリスト者はみなことごとく神の祭司である(黙1:6。ヘブ10:20)。
5章11節
口語訳 | さらに見ていると、御座と生き物と長老たちとのまわりに、多くの御使たちの声が上がるのを聞いた。その数は万の幾万倍、千の幾千倍もあって、 |
塚本訳 | また私は見た。そして、玉座と活物と長老との周囲に、多くの天使の声を聞いた。その数は千々万々であって、 |
前田訳 | そしてわたしは見た。そして王座と生きものと長老のまわりに、多くの天使の声を聞いた。その数は万の何万倍、千の何千倍であった。 |
新共同 | また、わたしは見た。そして、玉座と生き物と長老たちとの周りに、多くの天使の声を聞いた。その数は万の数万倍、千の数千倍であった。 |
NIV | Then I looked and heard the voice of many angels, numbering thousands upon thousands, and ten thousand times ten thousand. They encircled the throne and the living creatures and the elders. |
註解: 神の御座の周囲にある天使の群につきては、ここに始めて記載がある。彼らもまた活物 と長老とに和してその讃美の声をあげる。
その
註解: ダニ7:10より取る、天使の無数なることを示す。
5章12節
口語訳 | 大声で叫んでいた、「ほふられた小羊こそは、力と、富と、知恵と、勢いと、ほまれと、栄光と、さんびとを受けるにふさわしい」。 |
塚本訳 | 大声で(仔羊を讃美して)言うた──屠られ給うた仔羊こそ、権能と富と知恵と権力と栄誉と栄光と讃美とを受けるに相応いたもう。 |
前田訳 | 彼らは大声でいう−−「ほふられた小羊こそ力と富と知恵と強さと誉れと栄光と讃美を受けるにふさわしい」と。 |
新共同 | 天使たちは大声でこう言った。「屠られた小羊は、/力、富、知恵、威力、/誉れ、栄光、そして賛美を/受けるにふさわしい方です。」 |
NIV | In a loud voice they sang: "Worthy is the Lamb, who was slain, to receive power and wealth and wisdom and strength and honor and glory and praise!" |
註解: 9、10節はキリストに対して第二人称を用い本節の天使は彼を第三人称として一般的に取扱い、前者がキリストの贖罪の御業をたたえるに反し、後者はキリストに属する凡ての充ち足れる徳(プレーローマ)を讃美している。そしてキリストがこれに相応 しくあられることの原因は同じく彼が屠られ給いしが故である。
辞解
[讃美] eulogia は「祝福」の意味もあるけれどもここでは「讃美」の意(H0、B3、S3)、なおここに七つの性質を掲げたのは七なる数に因 みしものなるべくまたこの七語に唯一の冠詞を用いしのみなるはこの七つを一体と見しが故である。
5章13節
口語訳 | またわたしは、天と地、地の下と海の中にあるすべての造られたもの、そして、それらの中にあるすべてのものの言う声を聞いた、「御座にいますかたと小羊とに、さんびと、ほまれと、栄光と、権力とが、世々限りなくあるように」。 |
塚本訳 | そして、天と地と地の下と海の上に[ある]凡ての造られた物と、その中にある凡てのものとが(これに応えてこう)言うのを私は聞いた──願わくは、玉座に坐し給う者と仔羊とに、讃美と栄誉と栄光と統治とが、永遠より永遠にあらんことを! |
前田訳 | そして天と地上と地下と海上の万物がいうのをわたしは聞いた−−「王座に座したもうものと小羊とに讃美と誉れと栄光と力とが、永遠から永遠にあれ」と。 |
新共同 | また、わたしは、天と地と地の下と海にいるすべての被造物、そして、そこにいるあらゆるものがこう言うのを聞いた。「玉座に座っておられる方と小羊とに、/賛美、誉れ、栄光、そして権力が、/世々限りなくありますように。」 |
NIV | Then I heard every creature in heaven and on earth and under the earth and on the sea, and all that is in them, singing: "To him who sits on the throne and to the Lamb be praise and honor and glory and power, for ever and ever!" |
註解: 天使に続いてヨハネは全被造物の讃美の声をきいた。かくして全宇宙はキリストが封印を解かんとするに際して大なる讃美に包まれたのである。
辞解
[凡てその中にある物] 重複または蛇足のごとくに思われるけれどもこれはあるいは同格的説明と見るか、または出20:11または詩146:6のごとき語気に傚 つたものであろう。
註解: 最後の全被造物の讃美的祈祷は神とキリストとに向けられ第4章、第5章の全体の総括と見るべきである。讃美、尊敬、栄光の三つは第12節の七つの属性の中の最後の三つでありこれに権力を加えて四つとなしたのは四が地に関しまたは被造物に関する数だからであろう。またこの四者の各々に冠詞を付したのはその各々を独立に考えたからである(黙5:12節註参照)。かくして全宇宙はその神に対する大なる讃美を終った。地およびその上にあるものはやがてキリストの再臨により審判を受くべきであるに関らず、なお讃美をささげたのは理由なきがごとくに見えるけれども、ヨハネが天上において見聞せるこの光景は、やがて実現されるべき天国の理想のもしくは代表的の光景であると見るべきであろう。
5章14節
口語訳 | 四つの生き物はアァメンと唱え、長老たちはひれ伏して礼拝した。 |
塚本訳 | 「アーメン」と四つの活物が言うた。そして長老が平伏して拝した。 |
前田訳 | そして四つの生きものはいった、「アーメン」と。そして長老たちはひれ伏して拝した。 |
新共同 | 四つの生き物は「アーメン」と言い、長老たちはひれ伏して礼拝した。 |
NIV | The four living creatures said, "Amen," and the elders fell down and worshiped. |
註解: かくして神とキリストとに対する讃美祈祷礼拝が天において神の御座の前に行われたのである。
要義1 [封印ある巻物]宇宙の運行、世界の変遷、社会の趨移 (移り変わり)、文化の興亡、国家の盛衰、人事の栄枯、天変地異、戦争、飢饉等が何故に行われしかまた今後も行われるかは全く一つの謎であって、人々はその直接の原因結果の一部を説明することができても、その真の理由の何であるかはこれを知ることができない。これらは全く「封ぜられたる書物」である。そして悲しいかな何人もこの封を解きて書物の内容を明かにするの能力が無い。従来幾多の哲人、歴史家がこれを解かんとして解き得なかった。
然るに唯一人これを解き得る人があった。そして彼がこれを解き得る理由は彼が人類の罪を負って屠られ給うたからであった。すなわち彼の完全なる愛の行為が、不可解なる宇宙の問題を解くの鍵となったのである。その故は彼の十字架にあらわれし神の愛と彼の十字架の贖いとが明かにされる時は、人が宇宙人生を観るの眼が全く一変してしまうからである。この屠られ給いし羔羊 を見るにおよび始めて従来全く不可解の謎であった凡ての事柄が、整然たる神の経綸の中にあり、凡てが神との関係において神の御旨によって成り、今後もまた然るであろうことを知ることができるのである。誠に宇宙の謎を解くものは科学にあらず歴史哲学にあらず、実に屠られ給いし羔羊 である。
要義2 [屠られ給える羔羊 ]愛の故に屠られることによって始めて宇宙の神秘がその人のものとなることは一つの争うべからざる事実である。愛の故に屠られることの事実の前には不可解は一つもなく、またこの事実によらざれば何事もこれを真の意味において解することができない。屠られ給える羔羊 なるキリストこそは実にそのために神より至上の権と栄光とを受け給うに相応しき方に在し給う。我らも屠られることなくしてこの栄光と尊貴とに与ることができない。
要義3 [キリストの御業]9、10節には福音の中心真理が要約せられているのを見る。すなわち(1)キリストは十字架上に屠られ給えること。(2)そしてこれは人々を全世界より神のために贖わんがためなること。(3)かくして贖われしものは神の国とせられしこと。(4)かかる神の国の民はみなことごとく祭司たることである。これパウロの福音と全く同一であり新約聖書を貫く中心的真理である。
黙示録第6章
3-(1) 七つの封印の審判
6:1 - 7:17
3-(1)-(イ) 第一
註解: 本章より七つの封印の
審 きに入りその第一より第六までを本章において論じている。始めの四つと後の三つとは異なれる群をなす。四と三の数(緒言参照)に因 んだものである。
6章1節
口語訳 | 小羊がその七つの封印の一つを解いた時、わたしが見ていると、四つの生き物の一つが、雷のような声で「きたれ」と呼ぶのを聞いた。 |
塚本訳 | そして仔羊が七つの封印の(最初の)一つを開いた時、見ると、私は(玉座の傍にいる)四つの活物の一つが雷のような(大きな)声で「来い」と言うのを聞いた。 |
前田訳 | そしてわたしは見た。小羊が七つの封印の第一を開いた。そして四つの生きものの第一が、雷鳴のように、「来たれ」というのを聞いた。 |
新共同 | また、わたしが見ていると、小羊が七つの封印の一つを開いた。すると、四つの生き物の一つが、雷のような声で「出て来い」と言うのを、わたしは聞いた。 |
NIV | I watched as the Lamb opened the first of the seven seals. Then I heard one of the four living creatures say in a voice like thunder, "Come!" |
6章2節 また
口語訳 | そして見ていると、見よ、白い馬が出てきた。そして、それに乗っている者は、弓を手に持っており、また冠を与えられて、勝利の上にもなお勝利を得ようとして出かけた。 |
塚本訳 | そして見ると、視よ、白い馬が顕れて、それに乗っている者は弓を持ち、冠が彼に与えられた。そして彼は勝ちつつまた勝たんとして出て行った。 |
前田訳 | そしてわたしは見た。見よ、白い馬がいて、それに乗るものが弓を持っている。彼に冠が与えられ、勝ちまた勝つために出て行った。 |
新共同 | そして見ていると、見よ、白い馬が現れ、乗っている者は、弓を持っていた。彼は冠を与えられ、勝利の上に更に勝利を得ようと出て行った。 |
NIV | I looked, and there before me was a white horse! Its rider held a bow, and he was given a crown, and he rode out as a conqueror bent on conquest. |
註解: 第一の封印が開かれし時に示されし幻象は弓を持てる騎士が白馬に跨って勝利より勝利へと進んで行く光景であった。白は勝利を表徴することと弓を持てることより推してこの幻象が征服者、覇者を意味するものと見るべきであろう。古来多くの征服者があり彼らは勝ちに勝ちつつ世界をその馬蹄の下に蹂躙 する。彼らは人の目には英雄豪傑として仰がれるけれども、神の目には神の審判を行うための一の道具に過ぎない。
辞解
[四つの活物 の一つ] 第一より第四に至る封印は地上における神の審判の光景故、四つの活物 をもってこれに当てることは相応しいことである。
[来れ] 誰に対して言われたのであるかにつき(1)ヨハネに対す。(2)信ぜよとの意味。(3)キリストに対す(A1、S3)。(4)馬とその騎士らに対す(B3、I0)等の諸説あり。最後の説最も適当である。
[白き馬] 「白き馬」とその騎士は黙19:11のキリストと同一で従ってこの勝利は福音の勝利なりと解する説あり、然れどこの両者は同一ではない。またこの征服者はローマまたはその敵なる東方の強国パルテヤ国を意味すと解する説あれど(ラムゼー)かく特定する必要はない。また封印はこれを解くだけで巻物の内容が読まれしことは一回もないことに注意せよ。これ巻物は神の御旨を指し、これを解くことはこれを実現することを意味するからである。なお四つの活物 の幻象はゼカ6:1−8によつたものであろう。
6章3節
口語訳 | 小羊が第二の封印を解いた時、第二の生き物が「きたれ」と言うのを、わたしは聞いた。 |
塚本訳 | また彼が第二の封印を開いた時、私は第二の活物が「来い」と言うのを聞いた。 |
前田訳 | (小羊が)第二の封印を開くと、第二の生きものが、「来たれ」というのをわたしは聞いた。 |
新共同 | 小羊が第二の封印を開いたとき、第二の生き物が「出て来い」と言うのを、わたしは聞いた。 |
NIV | When the Lamb opened the second seal, I heard the second living creature say, "Come!" |
6章4節
口語訳 | すると今度は、赤い馬が出てきた。そして、それに乗っている者は、人々が互に殺し合うようになるために、地上から平和を奪い取ることを許され、また、大きなつるぎを与えられた。 |
塚本訳 | すると赤い他の馬が出て来た。そしてそれに乗っている者に、地(上)から平和を奪い取ること、また(戦争と内乱とにて)互いに屠り合わせることを許された。そして大きな剣が彼に与えられた。 |
前田訳 | そして炎色の他の馬が出ていった。それに乗るものに、地から平和を取らせ、人が互いに殺すようにさせ、そして彼に大きな剣が与えられた。 |
新共同 | すると、火のように赤い別の馬が現れた。その馬に乗っている者には、地上から平和を奪い取って、殺し合いをさせる力が与えられた。また、この者には大きな剣が与えられた。 |
NIV | Then another horse came out, a fiery red one. Its rider was given power to take peace from the earth and to make men slay each other. To him was given a large sword. |
註解: 第二の封印は戦争を意味する。赤は血の色であり、戦争により地より平和は奪われ人々互に相殺戮して流血は全地をその赤き色をもって掩 う。赤馬の騎士は全地にこの状態を実現することをゆるされる。戦争は実にキリスト再臨の予兆、産みの苦難の始め(マタ24:8)である。
6章5節
口語訳 | また、第三の封印を解いた時、第三の生き物が「きたれ」と言うのを、わたしは聞いた。そこで見ていると、見よ、黒い馬が出てきた。そして、それに乗っている者は、はかりを手に持っていた。 |
塚本訳 | また彼が第三の封印を開いた時、私は第三の活物が「来い」と言うのを聞いた。そして見ると、視よ、黒い馬が顕れて、それに乗っている者は手に秤を持っていた。 |
前田訳 | (小羊が)第三の封印を開くと、第三の生きものが、「来たれ」というのをわたしは聞いた。そしてわたしは見た。見よ、黒い馬がいて、それに乗るものが手に秤を持っている。 |
新共同 | 小羊が第三の封印を開いたとき、第三の生き物が「出て来い」と言うのを、わたしは聞いた。そして見ていると、見よ、黒い馬が現れ、乗っている者は、手に秤を持っていた。 |
NIV | When the Lamb opened the third seal, I heard the third living creature say, "Come!" I looked, and there before me was a black horse! Its rider was holding a pair of scales in his hand. |
6章6節
口語訳 | すると、わたしは四つの生き物の間から出て来ると思われる声が、こう言うのを聞いた、「小麦一ますは一デナリ。大麦三ますも一デナリ。オリブ油とぶどう酒とを、そこなうな」。 |
塚本訳 | そして私は、四つの活物の真中で声のようなものが(こう)言うのを聞いた、「小麦は一ケニックスで一デナリ、大麦は三ケニックスで一デナリ、油と葡萄酒を害してはならぬ。」 |
前田訳 | そして四つの生きものの間に、声のようなものをわたしは聞いた。いわく、「小麦一ますで一デナリ、大麦三ますでも一デナリ、オリブ油とぶどう酒とを損なうな」と。 |
新共同 | わたしは、四つの生き物の間から出る声のようなものが、こう言うのを聞いた。「小麦は一コイニクスで一デナリオン。大麦は三コイニクスで一デナリオン。オリーブ油とぶどう酒とを損なうな。」 |
NIV | Then I heard what sounded like a voice among the four living creatures, saying, "A quart of wheat for a day's wages, and three quarts of barley for a day's wages, and do not damage the oil and the wine!" |
註解: 第三の幻象は飢饉であって神の審判の一部として地上に行われる処のものである。黒色はその惨状を表わすに適し、小麦と大麦の價はその高價なることより飢饉状態を示している。油と葡萄酒も穀物と共に必要なる滋養であるが、これを「害 ふな」との命令は飢饉の程度を緩和せよとの神の思いやりの表われと見るべきである。
辞解
[権衡 ] 「権衡 」をもって食物を計ることは飢饉の状態を示す(エゼ4:16)。レビ26:26。6節末尾の値は重さをもってせず量をもって計られているけれどもこれは「権衡 」をもって示される飢饉をさらに他方面より示したのである。
[小麦、大麦] 「小麦」は高等「大麦」は下等の食物。
[五合] 原語で一コイニツクス choinix で兵士または労働者一日の食料、五−六合に相当する。
[一デナリ] 兵士または労働者一日の賃銭で約三十五銭(マタ20:2参照)この相場はキケロの時代のローマの相場の十二倍にも相当する故(B3)非常な高価であって飢饉を示す。これをもって普通の相場と見、暴利取締りのために最高価を規定せるものと見るは不可なり(S1)。
[油と葡萄酒とを害 うな] 穀物、油、葡萄酒の三つは地より産する必要の食料品としてたびたび一括して掲げられている(申7:13。申11:14。申28:51。U歴32:28その他)。故にこれを害 うなとは飢饉の被害をその程度に限らしめようとの神の御旨である。
[四つの活物 の間より出づるごとき声] 誤訳で「四つの活物 の中より出づる声の如きもの」である。声と明示しないのが本書の神秘的特徴である。
6章7節
口語訳 | 小羊が第四の封印を解いた時、第四の生き物が「きたれ」と言う声を、わたしは聞いた。 |
塚本訳 | また彼が第四の封印を開いた時、私は第四の活物の「来い」と言う声を聞いた。 |
前田訳 | (小羊が)第四の封印を開くと、第四の生きものが、「来たれ」という声をわたしは聞いた。 |
新共同 | 小羊が第四の封印を開いたとき、「出て来い」と言う第四の生き物の声を、わたしは聞いた。 |
NIV | When the Lamb opened the fourth seal, I heard the voice of the fourth living creature say, "Come!" |
6章8節 われ
口語訳 | そこで見ていると、見よ、青白い馬が出てきた。そして、それに乗っている者の名は「死」と言い、それに黄泉が従っていた。彼らには、地の四分の一を支配する権威、および、つるぎと、ききんと、死と、地の獣らとによって人を殺す権威とが、与えられた。 |
塚本訳 | そして見ると、視よ、青ざめた馬が顕れて、それに乗っている者はその名を死という。そして陰府がこれに従っていた。彼らは地の四分の一に住む人々を、(あるいは)剣を以て、(あるいは)飢饉を以て、(あるいは)疫病を以て、(あるいは)また地の(野)獣によって殺す権威を与えられた。 |
前田訳 | そしてわたしは見た。見よ、青ざめた馬がいて、その上に乗るものがある。その名は「死」で、黄泉もそれに従う。地の四分の一を支配して、戦争と、飢えと、疫病と、地の獣によって殺す権威が彼らに与えられた。 |
新共同 | そして見ていると、見よ、青白い馬が現れ、乗っている者の名は「死」といい、これに陰府が従っていた。彼らには、地上の四分の一を支配し、剣と飢饉と死をもって、更に地上の野獣で人を滅ぼす権威が与えられた。 |
NIV | I looked, and there before me was a pale horse! Its rider was named Death, and Hades was following close behind him. They were given power over a fourth of the earth to kill by sword, famine and plague, and by the wild beasts of the earth. |
註解: 第四の封印は「死」と「陰府 」とである。征服者、戦争、飢饉の外に、なお剣、飢饉、疫病、悪獣の禍等あり、キリストの再臨に先立ちてこの種の不幸なる死が地の四分の一を支配する。
辞解
[青ざめたる] 草色と蒼白との二つの意味あり本節はこの後者で人間の死体の色に相当する。
[四分の一] 他の三つの封印との間に等分する意味(A1)に取るよりもむしろ「地」の数の「四」に因 めるものと見るべきであろう。
[剣] 戦争以外の剣で暴君のためまたは争闘のため等に関する場合。
[飢饉] この場合は5、6節の飢饉のみならずこれによりて死に至る場合を指す。
[死] thanatos 本節の基礎となれるレビ26:23。エレ21:7。エゼ5:12−17等の疫病に相当する七十人訳の訳語で従ってこの場合「疫病」を意味する。
[地の獣] 獣が人の生命を奪う場合がある。
以上の四つはエゼ14:21にある「四つの厳しき罰」に相当し、ヨハネはこれを基本として描き出したものであろう。
要義1 [世界の進歩と神の審判]近代科学の進歩は自然を征服すると豪語している。しかしながら科学が自然を征服することの不可能なるは勿論、人間社会のことすらも近代科学の進歩によりてこれを左右することができない。科学の進歩は益々軍国主義の跋扈 を招き、戦争の危険は益々多くなりつつある。要するに征服、戦争、飢饉、疫病これらの諸 の禍害は、神の審判が行われる諸種の形態であって、世の進歩発達によりてこれを除き去ることができない。人類は神に背きつつ神無しにパラダイスを造らんとしつつある時、羔羊 は刻々にその封印を開きて人類をして神の畏るべきことを示さんとし給う。将来永遠に、この種の禍害は、神を畏れざる世界の上に降るであらう。
要義2 [禍害と世の終末]戦争、飢饉、疫病、地震等が起る時、これをもって世の終末であると考え易い。しかしながらこれは単に世の終末の序曲に過ぎない(マタ24:6、7)。これらの事件に遭遇して神の畏るべきことを知り、神に立還る者は幸いである。神の最後の審判が突然に来ることなく、かかる序曲を始めとして徐々に展開されるのは全く神の恩恵によることであって一人でも多くをその救いに入れんとの御旨に外ならない。
要義3 [これらの禍害の順序および回数]これらの禍害はこれを過去派の如くに一々歴史上の実際の事件に当てはめるべきではなくまた必ずしもこの封印の順序に起るものと考えるべきではない。黙示録が我らに示さんとする処の中心的真理は、第一にこれらの禍害が世の終末、キリストの再臨に先立ちて来るべきこと、第二にこれらが偶然に起るのではなく凡て神の御旨の展開であり封印せる巻物が開かれるためなることである。ゆえに我らはこれらがこの順序に循 い一回ずつ起るものと解釈すべきではない。黙示録の示さんとする処は原理であって具体的事実ではない。
6章9節
口語訳 | 小羊が第五の封印を解いた時、神の言のゆえに、また、そのあかしを立てたために、殺された人々の霊魂が、祭壇の下にいるのを、わたしは見た。 |
塚本訳 | また彼が第五の封印を開いた時、私は祭壇の下に、神の言のため、またその立てた証のために(かつて)殺された(殉教)者達の(多くの)霊を見た。 |
前田訳 | (小羊が)第五の封印を開くと、神のことばのゆえに、また守り抜いた証のゆえに殺された人々の魂を、祭壇の下にわたしは見た。 |
新共同 | 小羊が第五の封印を開いたとき、神の言葉と自分たちがたてた証しのために殺された人々の魂を、わたしは祭壇の下に見た。 |
NIV | When he opened the fifth seal, I saw under the altar the souls of those who had been slain because of the word of God and the testimony they had maintained. |
註解: 第五の封印よりはその光景一変する。前四者は世界一般の上に降れる審判であり第五は迫害の下にある教会の状態で殉教者の魂より発する祈の声である。ここに祭壇は天に在る真の宮の中にあるものとして想像され (黙8:3−5、黙9:13。黙11:1。黙14:18。黙16:7) 、燔祭の壇(レビ4:7)に相当する。旧約の祭司は生命または魂を代表する血をこの祭壇の下に注いだ(レビ17:11。レビ4:7参照)。キリストの殉教者の流せる血すなわち彼らの魂も同様に天における神の宮の祭壇の下に在るのを見ることができた。
辞解
[神の言のため] 黙1:9辞解参照、神の福音のために殉教者はその生命を失う、これを「唯一神の信仰」(S3)と解する人あれども不可。
[またその立てし証] 原語「その有ちし証」なるをもってこれをイエスの彼らに与え給える証と解する説あれども(B3)適当ではない、黙1:9と同じくイエスを証する証と見るべきである。
[殺されし] 黙5:6の「屠られたる」と同語、イエスの弟子たる殉教者はまた彼のごとくに屠られなければならない。
[霊魂] psychê はまた生命とも訳される文字、血は生命であること(レビ17:11)より殉教者の血が流されしことを意味す。
[祭壇] 「馨香 の壇」なりや「燔祭の壇」なりやにつき論争あり、後者と見るを可とす。あるいはむしろかかる細別を眼中に置かないのが一層適切であろう。なお「祭壇の下にある霊魂」なる文字を基礎として信者の死後の状態如何を決することは無理である。本書はかかる目的をもって録されたのではない。
6章10節
口語訳 | 彼らは大声で叫んで言った、「聖なる、まことなる主よ。いつまであなたは、さばくことをなさらず、また地に住む者に対して、わたしたちの血の報復をなさらないのですか」。 |
塚本訳 | 彼らは大声で叫んで言うた、「聖なる、真実なる主よ、何時まで審かず(に待ち給うのであるか。何時まで)地上に住む(不信)者どもに、(罪無くして流した)私達の血を復讐し給わないのであるか。(主よ、何時まで?)」 |
前田訳 | 彼らは大声で叫んでいった、「聖かつ真にいます主よ、いつまであなたは裁きをせず、われらの血を地上に住むものどもにお報いなさらないのか」と。 |
新共同 | 彼らは大声でこう叫んだ。「真実で聖なる主よ、いつまで裁きを行わず、地に住む者にわたしたちの血の復讐をなさらないのですか。」 |
NIV | They called out in a loud voice, "How long, Sovereign Lord, holy and true, until you judge the inhabitants of the earth and avenge our blood?" |
註解: 殉教者たちは、地に住む者が彼らに対して為せる不義、すなわち神に対して為せる反逆を、神は必ず復讐し給うことを信じ(ロマ12:19)唯その遅きを怪んでいた。殉教者のこの叫びは祈りとなりて神の御許に達し(ルカ18:7。詩79:5−10)かくしてキリストの再臨と最後の審判が速められるのである。
辞解
[主] despotês は旧約聖書においては神を指し、新約聖書にてはキリストを指すことあれど(Uペテ2:1。ユダ1:4)本節の場合は「神」を指すと解するを良しとす。
[復讐云々] ステパノの祈(使7:60)に比して低き信仰状態なるがごとくに言う学者があるけれども罪の赦されんことを希 う愛の心と、不義の審 かれんことを求める義の心とは両立し得るのみならず両立しなければならない。審判を主題とする黙示録において後者が主となることは当然である。
6章11節
口語訳 | すると、彼らのひとりびとりに白い衣が与えられ、それから、「彼らと同じく殺されようとする僕仲間や兄弟たちの数が満ちるまで、もうしばらくの間、休んでいるように」と言い渡された。 |
塚本訳 | すると各自に白い上衣が与えられ、自分達と同じく殺されねばならぬ僕仲間と兄弟達と(が殺されて、神の定め給うたそ)の数が満つるまで、なお暫くの間休息んで(静かに待って)いるように彼らに言い聞かされた。 |
前田訳 | 彼らのおのおのに白い衣が与えられ、なお少しの間、彼らと同じく殺されようとする仲間や兄弟が満たされるまで、静かにするようにいわれた。 |
新共同 | すると、その一人一人に、白い衣が与えられ、また、自分たちと同じように殺されようとしている兄弟であり、仲間の僕である者たちの数が満ちるまで、なお、しばらく静かに待つようにと告げられた。 |
NIV | Then each of them was given a white robe, and they were told to wait a little longer, until the number of their fellow servants and brothers who were to be killed as they had been was completed. |
註解: 前節のごとくに叫べる殉教者たちに対しては各々白衣を与えられた。これは純潔および勝利の印であって聖徒に相応しき衣服であり、最後に与えらるべき栄光の保証として彼らに与えられた。また彼らは血の復讐につきては決して焦慮することなく安んじているべきことを教えられた。その故はこれは決して無期限に延長するのではなく神の予定の中にある殉教者の数が満つる時までであり、この時はやがて間もなく到達するからである。
辞解
[白き衣を与えられ] 未だ最後の栄光に入つた意味ではない。それは千年時代の後である。白き衣につきては 黙3:4以下。黙4:4、黙7:9、黙7:13。黙19:14等参照。
[数の満つるまで] メシヤの来臨は救われる者が神の予定し給える数に達して後であるとの思想は当時一般に行われていた (ルカ21:24。ロマ11:12、ロマ11:25)。ここではそれを殉教者の数に応用したのである(経外典第四エズラ書4:35以下に殆んど同一の文言あり)。
[僕、兄弟] 同一のものを二重に説明したものと解する説あり(A1、B3)、この説によれば「僕すなわち兄弟」となる、ただしこの解釈は適当ではない。「同じ僕」は特に神に選ばれて福音の宣伝に従事せる人、「兄弟」は普通の信徒と見るべきであろう。また「殺されんとする」を「兄弟」のみにかけてその反対の意味に解する説あり、すなわち「兄弟」は殉教者、「同じ僕」は他の信徒となるけれどもこの説は適切でない。
[安んじて侍つ] 非常なる迫害の中にも最後の勝利を確信して安んじて待ち得る者は幸いである。
[「与えられ」、「言聞けらる」] これを与えまた命令する人の誰たるかは明示されていないが神の答と見るべきであろう。
6章12節
口語訳 | 小羊が第六の封印を解いた時、わたしが見ていると、大地震が起って、太陽は毛織の荒布のように黒くなり、月は全面、血のようになり、 |
塚本訳 | また彼が第六の封印を開いた時、見ると、大きな地震が起こった。太陽は毛の荒布の(喪服の)ように黒くなり、(満)月はすっかり血のようになり、 |
前田訳 | そしてわたしは見た。(小羊が)第六の封印を開くと、大地震がおこり、日は毛の喪服のように黒くなり、月は全面血のようになり、 |
新共同 | また、見ていると、小羊が第六の封印を開いた。そのとき、大地震が起きて、太陽は毛の粗い布地のように暗くなり、月は全体が血のようになって、 |
NIV | I watched as he opened the sixth seal. There was a great earthquake. The sun turned black like sackcloth made of goat hair, the whole moon turned blood red, |
6章13節
口語訳 | 天の星は、いちじくのまだ青い実が大風に揺られて振り落されるように、地に落ちた。 |
塚本訳 | 天の星は(丁度)無花果の樹が大風に揺られてその夏生りの無花果を落とすように地に落ちた。 |
前田訳 | 空の星は地に落ちた、いちじくが大風にゆられて未熟な実が落とされるように。 |
新共同 | 天の星は地上に落ちた。まるで、いちじくの青い実が、大風に揺さぶられて振り落とされるようだった。 |
NIV | and the stars in the sky fell to earth, as late figs drop from a fig tree when shaken by a strong wind. |
6章14節
口語訳 | 天は巻物が巻かれるように消えていき、すべての山と島とはその場所から移されてしまった。 |
塚本訳 | また天は巻き物が巻かれるように消え去り、山と島とは悉くその場所から動かされ(て見えなくなっ)た。 |
前田訳 | そして天は巻物が巻かれるように動かされ、すべての山と島はその場所から移された。 |
新共同 | 天は巻物が巻き取られるように消え去り、山も島も、みなその場所から移された。 |
NIV | The sky receded like a scroll, rolling up, and every mountain and island was removed from its place. |
註解: 第六の封印は天地の大変動を来す。人をして世の終末至れるにあらずやと思わしむるほどの大天変地夭 である。
辞解
[地震] マコ13:8には地震は戦争、飢餓等と共に産みの苦難の始めの中に数えられているけれども、本節の地震はハバ2:6以下(ヘブ12:26以下)の世の終りにおける天地の大異変を指す(なおイザ2:19。イザ29:6参照)。
[荒き毛布] 毛織の黒衣で喪服に用う(イザ50:3)。
[日、月、星の変動] ヨエ2:10、ヨエ3:4。イザ13:10、エゼ32:7その他に多く録さる。
[巻物を捲く如く] 当時の書籍または文書は巻物のごとき形で、これを捲くことによりてその位置が移される。
[去りゆき] 「裂けて」バラバラになると解する説あれど(S3)むしろその位置が変ることの意味に解するを可とす(A1、B3)。
13節の形容についてはイザ34:4を見よ。
[その処を移されたり] 地震に動かされてその位置が変動せること(黙16:20。エレ4:24。ナホ1:5)。以上の諸種の変動もこれを具体的に取るべきではなく、天地の大なる動揺の形容と見るべきであることは次節を見ても明かである。
6章15節
口語訳 | 地の王たち、高官、千卒長、富める者、勇者、奴隷、自由人らはみな、ほら穴や山の岩かげに、身をかくした。 |
塚本訳 | そして(これを見て)地(上)の王、貴人、将軍、富豪、権力者、また凡ての奴隷、自由人は(みな恐れて)洞穴や山の岩の間に身を隠した。 |
前田訳 | 地の王たち、権力者、将軍、金持ち、有力者、すべての奴隷と自由人が、ほら穴や山の岩間に身を隠し、 |
新共同 | 地上の王、高官、千人隊長、富める者、力ある者、また、奴隷も自由な身分の者もことごとく、洞穴や山の岩間に隠れ、 |
NIV | Then the kings of the earth, the princes, the generals, the rich, the mighty, and every slave and every free man hid in caves and among the rocks of the mountains. |
註解: 非常なる天変地異に際しては人々その為す処を知らざるまでに恐怖に襲われるのは当然である。ここに「七」種の人を挙げて凡ての人を代表せしめているけれども、その中特に高きもの有力なるものを多く掲げし所以は、平素意気揚々として暴威を振っている彼らすらも、否彼らが一層はげしく神の審判の前に戦慄することを示したのである。
辞解
[大臣] megistanes は高級官吏 で「王たち」と共にキリスト者を迫害する人々。
[将校] chiliarchoi は千卒長。
[富める者・強き者] 富も力も神の怒りの前には全く無力である。
[匿 れ] イザ2:10、19。
6章16節
口語訳 | そして、山と岩とにむかって言った、「さあ、われわれをおおって、御座にいますかたの御顔と小羊の怒りとから、かくまってくれ。 |
塚本訳 | そして山や岩に(叫んで)言う、「我々の上に倒れ(かかっ)て、玉座に坐し給う者の御顔から、(烈しい)仔羊の御怒りから我々を隠してくれ。 |
前田訳 | 山と岩にいう、「われらの上に落ちて、王座に座したもうもののお顔から、小羊の怒りから、われらを隠せ。 |
新共同 | 山と岩に向かって、「わたしたちの上に覆いかぶさって、玉座に座っておられる方の顔と小羊の怒りから、わたしたちをかくまってくれ」と言った。 |
NIV | They called to the mountains and the rocks, "Fall on us and hide us from the face of him who sits on the throne and from the wrath of the Lamb! |
註解: 彼らは神とキリストの御怒りの前に立つことはできない、彼らの心には過去におけるあらゆる罪が浮び出で、それを審 かれる苦痛より逃れんためには如何に残酷なる死であってもかえってそれを希 うに至る。柔和そのものなる羔羊 すら怒り給う。その怒りの激しさを思うべきである。
辞解
[山と巌とに對 いて言ふ] ホセ10:8。ルカ23:30。非常なる苦痛の際における心持をあらわす。
[羔羊 の怒] 相矛盾するごとき二つの思想を結合してキリストの本質と罪に対する怒りの真相とを示す。羔羊 すらも全憤怒を注ぐほど人類の罪は重い。
6章17節 そは
口語訳 | 御怒りの大いなる日が、すでにきたのだ。だれが、その前に立つことができようか」。 |
塚本訳 | その御怒りの大なる日が来たのだ。誰が立つ(てこの審判に堪える)ことが出来よう!」 |
前田訳 | 神と小羊の大いなる怒りの日が来た。だれがその前に立てよう」と。 |
新共同 | 神と小羊の怒りの大いなる日が来たからである。だれがそれに耐えられるであろうか。 |
NIV | For the great day of their wrath has come, and who can stand?" |
註解: 「大なる日」は神の最後の審判の日(ヨエ2:11、ヨエ3:4。ゼパ1:14。ユダ1:6)。「御怒の日」も同様旧約聖書に最後の審判の日を指す(ゼパ1:15、ゼパ1:18。ゼパ2:3。イザ22:5)。人々は大なる日未だ到らざるに、すでに至れりとして狼狽する。第六の封印が開かれて起る天変地異はかくも恐るべき激しさである。「誰か立つことを得ん」唯ルカ21:36の祈りによるより外にない。
要義1 [羔羊 の怒]神の怒りにつきてはロマ1:18−23要義1、ヨハ2:13−22要義2を見よ。世の人の罪を負い給う神の羔羊 、屠場にひかれる羔羊 のごとき彼(イザ53:7)、傷 える葦を折ることなく煙れる亜麻を消すことなき彼(マタ12:20)、柔和にして心卑 き彼(マタ11:29)が怒り給うというがごときことは不似合である。またもしキリストの怒りを示さんとならば彼を「ユダの族の獅子」(黙5:5)として表視する方が適切であるように思われる。しかしながら黙示録の記者が殊さらに彼を羔羊 として顕わし、この羔羊 が怒り給うことを記したのは故あることであって、怒ることがその自然の傾向である処のもの(例えば獅子のごとき)が怒ったとしてもその怒には格別の意義が無い。然るに元来怒らざる、怒り得ざる、また怒ることを好まざる羔羊 が非常なる忿怒を発し給えりと聞きて、この怒りの実に止むを得ざる怒りであり、愛をもって忍びに忍べる上の最後の怒りであることが判明 )る。最も恐るべきものはかかる怒りである。我らは恐れ戦 いて羔羊 の怒りより免れなければならない。
要義2 [進歩か退歩か]七つの封印の記事が我らに与える印象はその頗 る陰鬱であることである。人文主義者の考えるごとく、この世界は科学、交通、教育、産業の発達と共に次第に進歩して遂には地上に楽園が形成されるものと考えることができるならば、その前途は希望に充てるものとなる。然るに黙示録はこれに反し、非常に陰惨暗澹 たる光景を我らの前に提示しているのであって、果してこの考え方が正しきやにつき疑いを挿むことは有り得る事柄である。しかしながら聖書全体の思想をその根本において把握するならば、我らは神を離れし世界の末路は全くこの黙示録の示すがごときものであることを思わしめられる。その故は神に反ける全世界はそのまま進歩発達してパラダイスを造り得るはずが無いからである。ゆえに本書の示すがごとくこの世界が審 かれ、そのサタンが審 かれて後始めて新天新地が顕出すると見ることは世界歴史の見方としては最も根本的なるものと言わなければならない。