黙示録第11章
分類
3 この世の審判と救
4:1 - 18:24
3-(2) 第七の封印すなわち七つのラッパの審判
8:1 - 11:13
3-(2)-(第四挿景) 福音の証者
11:1 - 11:13
註解: 1-13節は福音を宣伝うべき二人の証人の幻象である。この二人はこれを形容している語句より見れば、モーセとエリヤに相当しているけれども、具体的にこれらを指すのではなく、この二人をもって神の言の証人とその殉教の死とを表徴したのである(なお附記参照)。
11章1節
口語訳 | それから、わたしはつえのような測りざおを与えられて、こう命じられた、「さあ立って、神の聖所と祭壇と、そこで礼拝している人々とを、測りなさい。 |
塚本訳 | そして(命令により)杖のような(一本の)間棹が私(の手)に渡されて、(天使がこう)言う(のを私は聞いた、)「起って(エルサレムにある)神の聖所と(燔)祭(の)壇と其処で礼拝をしている者達とを測れ。 |
前田訳 | そして竿に似た葦がわたしに与えられて、こういわれる、「立って、神の宮と祭壇とそこで礼拝するものらをはかれ。 |
新共同 | それから、わたしは杖のような物差しを与えられて、こう告げられた。「立って神の神殿と祭壇とを測り、また、そこで礼拝している者たちを数えよ。 |
NIV | I was given a reed like a measuring rod and was told, "Go and measure the temple of God and the altar, and count the worshipers there. |
註解: (▲「香壇」は「祭壇」と訳すべきである。口語訳参照。)ここは文字の上からは天の聖所ではなく (黙4:2以下。黙6:9。黙8:3) 地上の聖所すなわちエルサレムの神殿 hieron の中の聖所 naos を指す、従ってそこに入って拝し得る者は祭司のみである。しかしながらここに示さんとせる真の意味は事実上のエルサレムとその神殿とその祭司とではなく、神に選ばれし真の信者の真の教会である。かかる人は神の宮であり (Tコリ3:16-17。Uコリ6:16。エペ2:21) また祭司であって (Tペテ2:5。黙1:6。黙5:10) 彼らの在る処が至聖所であり彼らはそこにて神を拝する。ヨハネはかかる人を度 ることを命ぜられた。ヨハネがこの命令を実行したかは記されていない。なおこの間竿 をもって度 ることは 黙21:15-16。エゼ40:3以下参照。
辞解
[間竿 ] 葦のごとき一種の植物で長き茎を有するものにて造れる竿(エゼ40:3)。ゼカ2:5、6。
[神の聖所云々] 事実上のエルサレムの町と解し、従って以下の記述を凡てイスラエルに関するものと解する学者が多いけれども(B3、H0)本書の預言の性質上かく解する必要が無い、8節もこのことを証明する。thusiastêrion は「香壇」と訳するよりも燔祭の壇と解すべしとの説あれど(B3)不可。
11章2節
口語訳 | 聖所の外の庭はそのままにしておきなさい。それを測ってはならない。そこは異邦人に与えられた所だから。彼らは、四十二か月の間この聖なる都を踏みにじるであろう。 |
塚本訳 | ただ聖所の外の庭(すなわち異教人の庭)を除け、それを測るな。それは異教人(の荒らす)に任されたのであるから。(彼らをしてエルサレムを懲らさしめる。)彼らは四十二か月の間(この)聖なる都を蹂躙るであろう。 |
前田訳 | 宮の外の庭はそっとして、それをはかるな。それは異教徒に与えられたもの、彼らは四十二か月、聖都を踏みにじろうから。 |
新共同 | しかし、神殿の外の庭はそのままにしておけ。測ってはいけない。そこは異邦人に与えられたからである。彼らは、四十二か月の間、この聖なる都を踏みにじるであろう。 |
NIV | But exclude the outer court; do not measure it, because it has been given to the Gentiles. They will trample on the holy city for 42 months. |
註解: エルサレムの神殿の聖所の外側に異邦人の庭があると同様に、神に選ばれし真の信者以外に偽の信者および不信者がある。これらを差措きて(放り出して)、度 るなとは、これらが真の神の都にあらざることを意味する。その故はある期間は(四十二ケ月、辞解を見よ)この外庭および聖なる都エルサレム、換言すれば地上における神の都は神を信ぜざる異邦人に与えられその蹂躙 にまかせられているからである。ここで天のエルサレムと地上のエルサレムとを対比したのはガラ4章における今のエルサレムと上なるエルサレムとの比較とは異なり(其処註参照)選ばれしものの真の教会と(▲この真のエクレシヤに属するものは、聖所の中にいて神との交りを持つ者である。)、キリストを主と信ぜざる凡ての人(ここにこれを異邦人と称す)との対比である。キリストを受けざるユダヤ人、およびこの世と妥協し、これに従う名義のみの信者もこの後者に属する。
辞解
[外の庭] 神殿の聖所を囲んでイスラエルの男子の庭と婦人の庭あり、その外側に異邦人の庭あり、彼らはヱホバを拝せんとて集っているけれども、ユダヤ人ではない。本節の場合これをもってキリストを信ぜざる人の中に数える。
[差措 きて] 原語「外に投出して」の意、たといそれがユダヤ人であっても名義上のキリスト者であっても彼らは投出される。
[四十二ヶ月] あるいは三年半ともいい (黙12:14) または千二百六十日ともいい (黙12:6) 同一の期間の長さである。これはダニ7:25より取りたるもので (なおルカ4:25。ヤコ5:17) 七年すなわち完全なる期間の半分で不完全なる有限なる期間を意味する。ゆえにこの数を基礎として数学的にキリスト再臨の年を計算することは誤っている。
[聖なる都] エルサレムを指す(マタ4:5。イザ48:2)。ただしこの場合抽象的なる地上の神の都を意味するものと見なければならぬ。かく解することにより多くの学者の躓となる第8節の「大なる都」の意味が明かとなる。
11章3節
口語訳 | そしてわたしは、わたしのふたりの証人に、荒布を着て、千二百六十日のあいだ預言することを許そう」。 |
塚本訳 | そして我は我が二人の証人(モーセとエリヤと)に、(預言する)権を与える。彼らは荒布を着て千二百六十日の間(悔い改めの)預言をするであろう── |
前田訳 | わたしはわがふたりの証人にいいつけて、麻の衣をきせ、千二百六十日預言させよう」と。 |
新共同 | わたしは、自分の二人の証人に粗布をまとわせ、千二百六十日の間、預言させよう。」 |
NIV | And I will give power to my two witnesses, and they will prophesy for 1,260 days, clothed in sackcloth." |
註解: 二は証しに関する数である。従って二人は実在せる具体的の二人と限るべきではない。キリストの教会には証人たるべき人々が起され、預言せしめられ、遂に十字架の死の轍を踏まなければならないことを示す。この二人の証人は6節によれば最もよくモーセとエリヤとに類似しているけれども(マラ3:22、23)直接に彼らを指したのではなく彼らによりて代表される律法と預言者(マタ17:1−8参照)すなわち聖書、換言すれば神の言の証人を意味する。彼らは神より権を与えられて、一定の有限なる期間預言する。荒布は悔改めまたは審判の接近を示す。彼らがこの荒布を着ているのはその使命に相応しき態度である。キリスト教の預言者はかく無ければならない。
辞解
[権を] 原文になし、次に来る文言が含まれていると見るべきである。
[荒布] 預言者の着用せる粗服でエリヤもこれを着ていた。また悔改めの際等にこれを着用する(U列1:8。ゼカ13:4。ヨナ3:5、6)。
[二] 意味については緒言参照。
[預言する] 神の奥義を示されてこれを他に伝えること。
[二人の証人] 誰なるやにつきて種々の説ありまたこれを律法と預言者、律法と福音、旧約と新約そのものを示す等と解する説あれどもモーセとエリヤに因 んでいると見るのが最も的を得ている。従って「聖書の証人」の意味でこれを表徴的に示したものと解することによりてこの個所の意義が明かにせられるのである。
11章4節
口語訳 | 彼らは、全地の主のみまえに立っている二本のオリブの木、また、二つの燭台である。 |
塚本訳 | 彼ら(二人)は(聖書に誌されているように、全)地の主の前に立つ二本の橄欖の木と、二つの燭台である。── |
前田訳 | 彼らは地の主の前に立つふたつのオリブとふたつの燭台である。 |
新共同 | この二人の証人とは、地上の主の御前に立つ二本のオリーブの木、また二つの燭台である。 |
NIV | These are the two olive trees and the two lampstands that stand before the Lord of the earth. |
11章5節 もし
口語訳 | もし彼らに害を加えようとする者があれば、彼らの口から火が出て、その敵を滅ぼすであろう。もし彼らに害を加えようとする者があれば、その者はこのように殺されねばならない。 |
塚本訳 | もし彼らを害しようと思う者があれば、彼らの口から火が出てその敵を焼き尽くす。然り、もし彼らを害しようと思う者があれば、その人はこのようにして殺されvければならない。 |
前田訳 | もし彼らを害なおうとするものがあれば、火が彼らの口から出て敵を食いつくそう。もし彼らを損なおうとするものがあれば、このように殺されねばならない。 |
新共同 | この二人に害を加えようとする者があれば、彼らの口から火が出て、その敵を滅ぼすであろう。この二人に害を加えようとする者があれば、必ずこのように殺される。 |
NIV | If anyone tries to harm them, fire comes from their mouths and devours their enemies. This is how anyone who wants to harm them must die. |
註解: 神の言の証人は主の前にあるオリブの樹であって、聖霊の油はこれより流れて人々に注がれまた灯台であって暗黒を照す(二つは共に証しに関する数)。そして証人はその使命の存する間何人もこれを害すること能わず、これを害 わんとする者はかえってその口より出づる神の言によりて審 かれて死に至るであろう。
辞解
[オリブの樹、灯台] ゼカ4:2−14を連想せしめるけれどもヨハネは独特の方面にこれを用いる。
[火その口より出づる] U列1:10以下の意味もあるべくまたエレ5:14の意味をも含むものと見ることができる。
11章6節
口語訳 | 預言をしている期間、彼らは、天を閉じて雨を降らせないようにする力を持っている。さらにまた、水を血に変え、何度でも思うままに、あらゆる災害で地を打つ力を持っている。 |
塚本訳 | 彼らはその預言する日の間雨を降らせぬ(ようにする)ため、天を閉ずる権力を有っている。また彼らは水を変えて血となし、また思うままに(何時でも)幾度でも、あらゆる災厄を以て地を撃つ権力を有っている。 |
前田訳 | 彼らは天を閉じる力を持ち、彼らの預言の間、雨を降らせない。彼らは水を血に変え、何度でも思うまま、あらゆるわざわいで地を打つ力がある。 |
新共同 | 彼らには、預言をしている間ずっと雨が降らないように天を閉じる力がある。また、水を血に変える力があって、望みのままに何度でも、あらゆる災いを地に及ぼすことができる。 |
NIV | These men have power to shut up the sky so that it will not rain during the time they are prophesying; and they have power to turn the waters into blood and to strike the earth with every kind of plague as often as they want. |
註解: これによりてこの証人はエリヤを連想せしむるごとき人であることが判る(T列17:1。ルカ4:25。ヤコ5:17)。神の命を帯びて預言する者にはエリヤのごとく自然を制御するの力さえも与えられる。
また
註解: 出7:20の水を血に変らしめしことおよびその他多くの苦難をもってエジプトの地を撃ちしモーセを連想することができる。二人の証人すなわち福音の証人はその証を為している間はモーセやエリヤのごとく神の護の下に偉大なる力を発揮することができる。
11章7節
口語訳 | そして、彼らがそのあかしを終えると、底知れぬ所からのぼって来る獣が、彼らと戦って打ち勝ち、彼らを殺す。 |
塚本訳 | しかし(四十二か月が過ぎ)彼らがその証明を終ると、奈落(の底)から(一匹の)獣が上って来て、彼らと戦闘をなし、彼らに勝ってこれを殺すであろう。 |
前田訳 | 彼らが証を終わると、奈落から上り来る獣が彼らと戦い、彼らを負かして殺そう。 |
新共同 | 二人がその証しを終えると、一匹の獣が、底なしの淵から上って来て彼らと戦って勝ち、二人を殺してしまう。 |
NIV | Now when they have finished their testimony, the beast that comes up from the Abyss will attack them, and overpower and kill them. |
註解: 神の言の証人はその証を終るまですなわち神の定め給う時至るまでは何物にも害せられない。されどその任務を終ればこの安全さを失い、底なき所(黙9:1参照)より上る獣すなわちサタンの力を帯ぶる地上の権力保持者(黙13:1参照)の迫害によりて殺される。
辞解
[獣] 定冠詞あり既知のものとして取扱われているのはサタンを指すからである。黙13:1以下にその詳細の記載あり。
11章8節 その
口語訳 | 彼らの死体はソドムや、エジプトにたとえられている大いなる都の大通りにさらされる。彼らの主も、この都で十字架につけられたのである。 |
塚本訳 | そしてその屍体は大な都(エルサレム)の大通りに置かれ(人目に曝され)る。この都は霊的にソドムまたエジプトと呼ばれる。其処で彼らの主(イエス)もまた十字架につけられ給うた。 |
前田訳 | 彼らの死体は大きな都の巷に横たわろう。都は霊的に ソドムとエジプトと呼ばれよう。彼らの主もそこで十字架につけられた。 |
新共同 | 彼らの死体は、たとえてソドムとかエジプトとか呼ばれる大きな都の大通りに取り残される。この二人の証人の主も、その都で十字架につけられたのである。 |
NIV | Their bodies will lie in the street of the great city, which is figuratively called Sodom and Egypt, where also their Lord was crucified. |
註解: 神の言の証人の殺される処は道徳的腐敗堕落の支配する処(ソドム)、この世の富と神に敵する精神の支配する処(エジプト)である。彼らの主イエスが十字架につけられ給いし場所もまた同一の主義の支配している場所であった。かくして殺されし証人の屍体は大なる都の大通に曝しものにされて万人の眺める処となる。
辞解
[大なる都] 本書においてバビロンすなわちローマを指しているけれども (黙16:19。黙17:18。黙18:10−21) これとてもローマなる現実の都市そのものよりもこの都を支配する原理すなわち政治的経済的権力、この世の富と快楽を追及する精神等を指す、この意味においてエルサレムのごとき小さき都市も大なる都と同一の主義に支配され、主の十字架につき給いし場所として相応わしいこととなる。すなわち主イエスはソドムにおいてまたはエジプトにおいてまたはバビロン、ローマ、エルサレムにおいて十字架につき給うたということができる。それゆえにこの「大なる都」をバビロン、ローマ、エルサレム等特定の一都市を指すと見るは誤である。
[譬へて] pneumatikôsで「霊的意味において」の意。
[ソドム] その腐敗堕落のために神に滅ぼされし邑、エルサレムがソドムと呼ばれし例は他にもあり(イザ1:10)。
[エジプト] その富と力とをもってイスラエルを誘いまたこれを迫害して神の民を責めた国。
11章9節 もろもろの
口語訳 | いろいろな民族、部族、国語、国民に属する人々が、三日半の間、彼らの死体をながめるが、その死体を墓に納めることは許さない。 |
塚本訳 | そして(あらゆる)民と種族と国語と国と(の人々)は三日半の間その屍体を見、その屍体を墓に葬ることを許さない。 |
前田訳 | (すべての)民族と族と国語と国民から出たある人々が、死体を三日半見るが、死体が墓に葬られるのをゆるさない。 |
新共同 | さまざまの民族、種族、言葉の違う民、国民に属する人々は、三日半の間、彼らの死体を眺め、それを墓に葬ることは許さないであろう。 |
NIV | For three and a half days men from every people, tribe, language and nation will gaze on their bodies and refuse them burial. |
註解: 全世界のあらゆる諸民諸族はこの屍体に対してあらゆる侮辱と非礼とを行う。
辞解
[三日半] 七の半数、不完全を示す、すなわち有限なるある期間のこと、三年半に比して短き期間に用う。屍体を埋葬しないのは大なる侮辱である。
11章10節
口語訳 | 地に住む人々は、彼らのことで喜び楽しみ、互に贈り物をしあう。このふたりの預言者は、地に住む者たちを悩ましたからである。 |
塚本訳 | そして、地上に住む者は彼ら(が殺されたこと)について喜び楽しみ、(嬉しさのあまり)互いに贈り物をするであろう。それはこの二人の預言者が(生前)地上に住む者を(散々に)苦しめ(悩まし)たからである。」 |
前田訳 | 地に住むものは彼らのことをよろこび、祝い、贈り物を交わす。このふたりの預言者が地に住むものを苦しめたから。 |
新共同 | 地上の人々は、彼らのことで大いに喜び、贈り物をやり取りするであろう。この二人の預言者は、地上の人々を苦しめたからである。 |
NIV | The inhabitants of the earth will gloat over them and will celebrate by sending each other gifts, because these two prophets had tormented those who live on the earth. |
註解: 神の言を証する預言者は神に逆ける者、不義に親しむ者にとりては邪魔物であり、妨害であり、彼らを苦しめる大なる力である。ゆえに彼らが死ねることは不義者にとりて非常に大なる喜びである。福音の証人は、この世より何時もかかる取扱いを受ける(ヨハ16:20)。
辞解
[地に住む者] 黙3:10辞解参照、神を信ぜざる人々。本節までが天の使の言である。
11章11節
口語訳 | 三日半の後、いのちの息が、神から出て彼らの中にはいり、そして、彼らが立ち上がったので、それを見た人々は非常な恐怖に襲われた。 |
塚本訳 | しかし三日半の後、生命の息が神から(出て)彼らの中に入った。すると彼らは(生き返ってやおら)足で立ち上がった。大なる恐怖が彼らを見ていた者を襲った。 |
前田訳 | しかし三日半ののち、いのちの霊が神から彼らに入り、彼らはおのが足で立ちなおった。大きなおそれが彼らを見るものをおそった。 |
新共同 | 三日半たって、命の息が神から出て、この二人に入った。彼らが立ち上がると、これを見た人々は大いに恐れた。 |
NIV | But after the three and a half days a breath of life from God entered them, and they stood on their feet, and terror struck those who saw them. |
11章12節
口語訳 | その時、天から大きな声がして、「ここに上ってきなさい」と言うのを、彼らは聞いた。そして、彼らは雲に乗って天に上った。彼らの敵はそれを見た。 |
塚本訳 | 彼ら(二人の証人)は、天から大きな声が(あって、)「此処に昇って来い」と言うのを聞いた。そして(人々の目の前で)雲に乗って天に昇った。然り、彼らの敵も(また)それを見た。 |
前田訳 | すると彼らは天から大きな声が、「ここにのぼれ」というのを聞いた。彼らは、敵が彼らを見る前で雲に乗って天に上った。 |
新共同 | 二人は、天から大きな声があって、「ここに上って来い」と言うのを聞いた。そして雲に乗って天に上った。彼らの敵もそれを見た。 |
NIV | Then they heard a loud voice from heaven saying to them, "Come up here." And they went up to heaven in a cloud, while their enemies looked on. |
註解: 殉教せる証人たちの復活と昇天の幻象である。彼らが侮辱せる屍体の復活を見て彼らの恐懼は甚だしく、その昇天を見て彼らの驚きは一層甚だしいに相違ない、何となれば、勝誇れる彼らの喜びは一場の夢に過ぎないことを見たからである。
辞解
[生命の息] 創6:17参照、またエゼ37:7−10の光景を連想せしむ。
[雲に乗りて] キリストの昇天(使1:9)および再臨の貌(黙1:7)に似ている。なおこの復活、昇天が何時行われるかはここでは重大なる関心を示して居ない。黙20:5の第一の復活の時とすれば、それまでの間を三日半として数うることとなる。要するにこれらの数の表徴的であることを見る。
11章13節 このとき
口語訳 | この時、大地震が起って、都の十分の一は倒れ、その地震で七千人が死に、生き残った人々は驚き恐れて、天の神に栄光を帰した。 |
塚本訳 | (丁度)その時大地震があって、都の十分の一が倒れ、七千人の者達がこの地震で殺された。(生き)残った人々は(これを見て非常に)懼れ、(悔い改めて)天の神に栄光を帰した。 |
前田訳 | そのとき大地震がおこって、都の十分の一が倒れ、この地震で七千の人が殺され、残りのものはおそれに包まれ、天の神に栄光を帰した。 |
新共同 | そのとき、大地震が起こり、都の十分の一が倒れ、この地震のために七千人が死に、残った人々は恐れを抱いて天の神の栄光をたたえた。 |
NIV | At that very hour there was a severe earthquake and a tenth of the city collapsed. Seven thousand people were killed in the earthquake, and the survivors were terrified and gave glory to the God of heaven. |
註解: 二人の証人の昇天と共に、これに伴い驚くべき天変発生す。あたかもキリストの十字架の後に大なる地震が有ったのと同様である。人間界において神に反ける事件が起れば、同時に天然界の大変動があることは往々である。都すなわちエルサレムが神の証人を迫害する場合、彼女もまたかかる審判を受けなければならない。しかしながらこの場合損害は都の十分の一、七千人の生命に過ぎず、他の人々はこれにより懼をいだき神まことに在し給うことを新たに痛感した。神の審判の真の目的は悔改めを促がすにあり。
辞解
[都] エルサレム、またはローマのごとき特定の都市のみを指したのではなく、一般的に神の言の証人を迫害しこれを殺せる人々の上に下る審判を叙べたのである。
[神に栄光を帰したり] 神の存在を信じ神を神として当然に為すべき崇敬を払うことを意味する。この場合、証人を殺せしことの罪を認め、神に対してその行為を懺悔する心持を示す。回心して福音を信ずるに至つたものと解することは行き過ぎである。なお黙16:9。ヨハ9:24。ヨシ7:19。エレ13:16参照。
要義1 [神の言の証人 とその殉教の死]神の審判が行われつつある間といえども福音を宣伝えることが罷 められているのではない。神はその間に常に証人を送りて預言せしめ給う。そして彼らがその使命を果しつつある間は神は彼らを如何なる敵の手よりも保護して無害ならしめ給う。それ故にもし彼らが殉教の死を遂ぐることある場合においては、その時は最旱や彼らの使命は終ったのである。ゆえに彼らは何物をも懼れずしてその使命に向って突進することができる。
要義2 [神の言の証人とこの世]この世は神の言の証人を置くに耐えない。それ故にソドムでありエジプトであるこの世は必ずこれらの証人を十字架につける。もしソドムやエジプトに歓迎されるごとき証人が有るならば、それは真の神の言の証人ではない。それ故に神の言の証人としては大なる都において殺され、その屍骸が衆人の前に恥しめを受けることに優りて大なる光栄はない。これがキリストと同じ道を行く所以である。そしてキリスト・イエスを甦えらせ給える神は必ずまたかかる証人をも甦えらしめ給うであろう。
要義3 [ソドムとエジプト]ソドムは罪悪殊に性的罪悪のために腐爛の極に達せる邑、エジプトはその富によりて誇り、神の民を迫害して勇敢に神に敵対せるパロを王としていただく国である。この肉慾と財宝と権力こそ人類を支配する最大の力である。その意味においてこの世は常にソドムでありまたエジプドである。たとえ程度において彼らに及ばなくとも、主義において全く彼らと同一である。そして神に反するものにしてこの肉慾と財宝と権力のごときはない。キリストは完全に神に従い給いしが故にソドムとエジプトにおいて十字架に釘けられ給うた。我らもまたこの世に対して十字架につけられ、この世が我らに対して十字架につけられてしまわなければならない(ガラ6:14参照)。
11章14節
口語訳 | 第二のわざわいは、過ぎ去った。見よ、第三のわざわいがすぐに来る。 |
塚本訳 | (かくして)第二の禍は過ぎた。(しかし、この悔い改めはほんの一時であった。だから)視よ、第三の禍が直に来る(であろう)! |
前田訳 | 第二のわざわいは過ぎた。見よ、第三のわざわいがすぐに来る。 |
新共同 | 第二の災いが過ぎ去った。見よ、第三の災いが速やかにやって来る。 |
NIV | The second woe has passed; the third woe is coming soon. |
註解: 第二の禍害は9章をもって終った。今や第三の禍害が速かに来らんとしつつある(11:14−19がその開始、15章がその序曲、16−18章が第三の禍害である)。15節以後の構造は甚だ難解なる故、予じめ説明を要する(多くの異なれる解あれど一々これを紹介することはできない)。15−19節は第七のラッパが吹き鳴らされてその審判が起る前の序曲のごときもので、あたかも第七の封印が解かれてその審判が行われる前の黙8:3−5、第七の金の鉢傾けられてその審判が行われる迄の間の黙16:18の部分に相当する。そして第七のラッパの審判は黙16:1以下の七つの鉢の審判となりて展開する(このことは第七の封印が七つのラッパに展開する場合ほど明瞭ではないが、黙11:15−19が黙8:3−5に相当し、黙15:1−8が黙8:1−2に相当すること、および全体の構造よりかく解することが至当である)。そしてその中間にある12、13、14の長き三つの章は、凡て地上の教会とこれをなやます敵との有様および最後の審判の接近せることの諸々の告知とを描いたのであって、あたかも七つの封印の開かれる前に第4章および第5章の二章に天上における神の御座の光景が描かれしと同じく、今や最後の苦難たる七つの鉢の傾けられる前に地上の教会およびその敵の光景が描かれたのである。そして第15章は次章以下に始まるべき審判に対する讃美と準備とを録し、第16章以下は七つの鉢の審判すなわち第三の禍害の進展である。
11章15節
口語訳 | 第七の御使が、ラッパを吹き鳴らした。すると、大きな声々が天に起って言った、「この世の国は、われらの主とそのキリストとの国となった。主は世々限りなく支配なさるであろう」。 |
塚本訳 | (やがて)第七の御使いがラッパを吹いた。すると(沢山の)大きな声が天に起こってこう言うた──(今や)この世の王国は我らの主(なる神)とそのキリストの有となった。彼は永遠より永遠に王となり給うであろう。 |
前田訳 | 第七の天使がラッパを吹いた。すると、天に大きな声がした。いわく、「今やこの世の王権はわれらの主と、そのキリストのもの。彼は世々とこしえに王であろう」と。 |
新共同 | さて、第七の天使がラッパを吹いた。すると、天にさまざまな大声があって、こう言った。「この世の国は、我らの主と、/そのメシアのものとなった。主は世々限りなく統治される。」 |
NIV | The seventh angel sounded his trumpet, and there were loud voices in heaven, which said: "The kingdom of the world has become the kingdom of our Lord and of his Christ, and he will reign for ever and ever." |
註解: キリストの国が地上に成立することに対し天に讃美の声が上った。第七の封印が開かれる前には大なる沈黙が有ったことと対照せよ(黙8:1)。すでにキリストの国が実現せるごとくに記してあるのは本書の性質上未来に完成せらるべき事柄をすでに完成せる姿において眺めているからである。
辞解
[数多の大なる声] 四つの活物 より出でしものと想像することができる。
[この世の国] この世の支配とも訳することができ(Z0)この世を神が支配し給うことを意味す。
[我らの主] ここでは神を意味す (黙12:10。黙19:6、黙19:16。ダニ7:13)。
11章16節 かくて
口語訳 | そして、神のみまえで座についている二十四人の長老は、ひれ伏し、神を拝して言った、 |
塚本訳 | すると神の前でその座に坐っていた二十四人の長老が平伏し、神を拝して |
前田訳 | すると神のみ前でおのが座につく二十四人の長老は、ひれ伏して神を拝した。 |
新共同 | 神の御前で、座に着いていた二十四人の長老は、ひれ伏して神を礼拝し、 |
NIV | And the twenty-four elders, who were seated on their thrones before God, fell on their faces and worshiped God, |
11章17節 『
口語訳 | 「今いまし、昔いませる、全能者にして主なる神よ。大いなる御力をふるって支配なさったことを、感謝します。 |
塚本訳 | 言うた──主なる全能の神、(今)在り給う者、(昔)在り給いし者、貴神が(再び)その大なる権能を取り(自ら)王となり給うたことを感謝する。 |
前田訳 | 彼らはいう、「あなたに感謝します。今いまし、昔いました主なる全能のみ神、あなたは偉大な力をみ手に受けて王となってくださいました。 |
新共同 | こう言った。「今おられ、かつておられた方、/全能者である神、主よ、感謝いたします。大いなる力を振るって統治されたからです。 |
NIV | saying: "We give thanks to you, Lord God Almighty, the One who is and who was, because you have taken your great power and have begun to reign. |
註解: 二十四人の長老は前者の声に和しさらにこれを敷衍してその感謝を神にささげる。すなわち神の力とその支配に対する讃美と感謝である。キリスト再臨による天地の完成まではこの世の君はサタンであって神ではない。
辞解
「後来りたまふ」の語を欠くのは黙16:5と同じくここに録される未来の時においてはキリストすでに来り給いし後なるが故である。
[大なる能力を執り] 預言されるごとく最後の審判と支配を実現せんがため。二十四人の長老がひれふしたる場合は 黙4:10。黙5:8。黙19:4 と本節で、何れも最も重大なる事件が起らんとする前である。
11章18節
口語訳 | 諸国民は怒り狂いましたが、あなたも怒りをあらわされました。そして、死人をさばき、あなたの僕なる預言者、聖徒、小さき者も、大いなる者も、すべて御名をおそれる者たちに報いを与え、また、地を滅ぼす者どもを滅ぼして下さる時がきました」。 |
塚本訳 | 諸国の民は怒っ(て貴神に反抗し)た。しかし(今や)貴神の御怒りが来た。死人が審判されて、貴神の僕達すなわち預言者と聖徒に、また貴神の御名を懼れる小さい大きい者達に報酬を与え、地を滅ぼす者を滅ぼし給う時が来た! |
前田訳 | 異教徒は怒りましたが、そこにあなたのお怒りがのぞんで、死人が裁かれ、あなたの僕である預言者と聖徒と、み名をおそれる大小のものとに報いを与え、地を滅ぼすものを滅ぼしたもう時が来ました」と。 |
新共同 | 異邦人たちは怒り狂い、/あなたも怒りを現された。死者の裁かれる時が来ました。あなたの僕、預言者、聖なる者、/御名を畏れる者には、/小さな者にも大きな者にも/報いをお与えになり、/地を滅ぼす者どもを/滅ぼされる時が来ました。」 |
NIV | The nations were angry; and your wrath has come. The time has come for judging the dead, and for rewarding your servants the prophets and your saints and those who reverence your name, both small and great-- and for destroying those who destroy the earth." |
註解: 諸国の民はその最後の戦を神に向って戦うべく、猛烈なる怒を懐き、これに対して神もまた怒をもって働きたまう。神の支配とサタンの支配との最後の関ヶ原である。
註解: 神がその正しき審判を行い、この世においては極めて不公平なる報を受けていた人々に対して正しき審判を行い、すでに死せる者にもその審判を及ぼし、また神を信ずる凡ての人に報賞を与え、地を亡ぼす者なるサタン(黙19:2)を亡ぼす時が来たのである。これがこの世において聖徒たちの永く待ち望んでいた処である。
辞解
[預言者、聖徒、汝の名を畏 れる者] これら三者の限界は明かでない。おそらくここでは「聖徒」hoi hagioi は「聖き者」の意味でその身分よりも性質に重きを置き事実上聖潔なる生涯を送つた特に優れた信徒を指すと見るべく、「神の御名を畏 れるもの」は「聖き者」までに至らざる一般の信者を指したものであろう。かく見ることによりてこの三種は階級をなすことがわかる。なおマタ10:41以下の三種類を参照せよ。
[地を亡ぼす者] 黙19:2のごとく地を道徳的に腐敗せしむることにより壊滅に帰せしむる者でサタンを意味す。
11章19節
口語訳 | そして、天にある神の聖所が開けて、聖所の中に契約の箱が見えた。また、いなずまと、もろもろの声と、雷鳴と、地震とが起り、大粒の雹が降った。 |
塚本訳 | すると天にある神(の至)聖所が開いて、(至)聖所の中にあるその契約の櫃が見えた。そして、(地には恐ろしい)電光と轟きと雷と地震と大きな雹とがあった。 |
前田訳 | すると天にある神の宮が開かれ、その宮の中に契約の箱が見えた。するといなずまとひびきと雷と地震と大雹とがあった。 |
新共同 | そして、天にある神の神殿が開かれて、その神殿の中にある契約の箱が見え、稲妻、さまざまな音、雷、地震が起こり、大粒の雹が降った。 |
NIV | Then God's temple in heaven was opened, and within his temple was seen the ark of his covenant. And there came flashes of lightning, rumblings, peals of thunder, an earthquake and a great hailstorm. |
註解: いよいよ最後の審判が始まらんとして、神の至聖所がヨハネの前に展 かれた。至聖所の中を望見することができることはやがてその中に入り得ることの前提として人々に希望と確信とを与える(黙15:5参照)。そして亞 いで起こるべき多くの審判はその源をここに発することの意味がこれによりて明かにせられたのである。そして神の契約の櫃が見えたのは神がその約束を忠実に実行し、彼を信じる者にその報を与え給うべきことを示し(18節)、電光 以下の諸現象は 黙4:5。黙8:5。黙16:18と同じく重大なる審判がまさに行われんとすることを示している。かくして第七のラッパが吹かれて天におけるあらゆる準備が整っているのを見ることができる。
附記 15−19節により第七のラッパの審判がまさに開始されんとするがごとくに見えているけれども(黙8:1−5と対照せよ)実際は第七のラッパが神の怒りを盛れる七つの金の鉢の審判として実現するのは第15章からである。その間に第12章乃至 第14章の三章は一大中間挿景であって、これにより教会の成立と、荒野における教会の生活と、教会に対するサタンの迫害と、最後に(14章)キリストの勝利の宣言とが録されているのである。かくして最後に行わるべき七つの金の鉢の審判がキリストの教会のもろもろの敵に対するものであることが明かにせられて来るのである。第15章は審判の序曲、第16章より審判始まる。
黙示録第12章
3-(3)-(第五挿景) サタンと教会
12:1 - 12:18
3-(3)-(第五挿景)-(a) 地上の教会の成立とサタン
12:1 - 12:6
註解: 1−6節に録される女とその男子の表徴は極めて難解である。一般に女はマリヤ、男子は第5節よりキリスト・イエスと解せられているけれども、本書においては(1)キリストは屠られ給える
羔羊 として既存の事実であり、今更ここに生れ給うはずがなく、また(2)キリストは天上に生れて直ちに神の御座の下に挙げられ給うたのではなく、一旦地上に下り、死して甦りて後天に挙げられ給うたのであり、(3)本書においてキリストは常に神と御座を共にし給うように記されその下に(「前に」5節)あるように録されていない (黙5:6。黙7:9。黙22:1、黙22:3) 。それ故にこの男子はキリストをもって代表される神の国の子らを意味し、これを生む女は旧新約を貫く霊の神の国(教会もその一つの相)であり、その子らは世の創めの先よりキリストの中に選ばれ(エペ1:4)キリストと共に神の中に隠れ在る生命(コロ3:3)であると見るを可とす。あたかも黙11:6にモーセとエリヤとを連想せしむる二つの人物をもって一般の「証人」を代表せしめしと同じく、ここにキリストを連想せしむる人物をもって一般の神の子らを代表せしめ、神の子らとサタンとの戦を記載したものであると解する。すなわちサタンはその本質として神の子らを嫌いこれに敵対するものである。その事実が地上にあらわれたのが現在の教会の姿であることを記述せんがためにヨハネはまず天上におけるサタンと神の子との関係を原理的に示したのが1−6節である。なおこの表徴が如何なる資料によるかにつきて博学なる学者たちはエルサレム、ギリシャ、バビロニヤ、ペルシャ、エジプト等の神話を引用して、これと関連せしめんとしているけれども、何れも適切ではない。もしこの部分を上記のごとくに解するならば、キリスト教の一般的観念より自然に創造し得る表徴であって、他にその資料を求める必要はない。従来このキリストを一つの原理と見ずキリスト御自身と見んとしたことが多くの困難の原因であった。
12章1節 また
口語訳 | また、大いなるしるしが天に現れた。ひとりの女が太陽を着て、足の下に月を踏み、その頭に十二の星の冠をかぶっていた。 |
塚本訳 | また大きな徴が天に顕れた──太陽を着た(一人の)女が、足の下には月を足台とし、頭には十二の星の冠を戴いていた。 |
前田訳 | そして天に大きな徴が見えた。それは太陽を着た女で、月はその足もとにあり、その頭には十二の星の冠をいただき、 |
新共同 | また、天に大きなしるしが現れた。一人の女が身に太陽をまとい、月を足の下にし、頭には十二の星の冠をかぶっていた。 |
NIV | A great and wondrous sign appeared in heaven: a woman clothed with the sun, with the moon under her feet and a crown of twelve stars on her head. |
註解: この女は神の国の天における姿を表徴する。すなわちイスラエルおよび教会を一貫せる神の支配の天における姿である。これが地上に実現せるものがイスラエルでありまた教会である。神の国の天における姿の如何に壮大無比なるかを見よ。この一節は難解にして種々に説明せられているけれども、ここにかく解する所以は(1)それが天にあること、(2)日を着、月を足の下に踏むことによりて天における最高の地位を占むることを示し、(3)十二の星は十二なる神の国の数(緒言参照)に因 み、十二支族十二使徒を連想せしめ、(4)そしてこの女がキリストをもって表徴される神の国の民の母なるが故である(5節)。これを主イエスの母マリヤと解することは後の13−18節に差支えを生ずる。
12章2節 かれは
口語訳 | この女は子を宿しており、産みの苦しみと悩みとのために、泣き叫んでいた。 |
塚本訳 | そして懐妊していて、子を産もうとする痛みと苦しみのために(大声に)叫んでいる。 |
前田訳 | 身ごもっていて、生みの痛みと苦しみで叫んでいる。 |
新共同 | 女は身ごもっていたが、子を産む痛みと苦しみのため叫んでいた。 |
NIV | She was pregnant and cried out in pain as she was about to give birth. |
註解: この子は5節の男子を指しメシヤをもって表徴されるキリスト者を意味する。なお5節参照。神の子が生れるがためには天に大なる苦悩がある。そはサタンに対する神の戦の開始であるから。信仰の復興を出産の苦痛に譬えし例は多くある(ミカ4:10。ヨハ16:21。ガラ4:19
12章3節 また
口語訳 | また、もう一つのしるしが天に現れた。見よ、大きな、赤い龍がいた。それに七つの頭と十の角とがあり、その頭に七つの冠をかぶっていた。 |
塚本訳 | するともう一つ(他)の徴が天に顕れた。そして視よ、大きな赤い竜が七つの頭と十の角を有ち、その頭には七つの冠があった。 |
前田訳 | もうひとつの徴が天に見えた。見よ、火のように赤い大きな竜で、七つの頭と十の角を持ち、頭には七つの王冠をいただいている。 |
新共同 | また、もう一つのしるしが天に現れた。見よ、火のように赤い大きな竜である。これには七つの頭と十本の角があって、その頭に七つの冠をかぶっていた。 |
NIV | Then another sign appeared in heaven: an enormous red dragon with seven heads and ten horns and seven crowns on his heads. |
註解: この龍はかつてアダムとエバとを誘えるサタンであり(創3:1)、また悪魔 Diabolos または古き蛇(12:9。20:2)と称えられ神の敵であり、従って神の国の破壊者、神の民の迫害者である。その形は「大」にして天地に充ち、その色は火のごとく「赤」くして罪の色をなし、「七つの頭」はその智慧の完きことを示し、「十の角」はその力の強きことを示す、七つの王冠は彼が「この世の君」たることを示す。
辞解
[冠冕 ] diadêma は1節の冠冕 stephanos と異なる。前者は王の着する王冠であり後者は勝利の栄冠である。本節および 黙13:1。黙19:12 の場合はこれを王冠と訳して区別すべきである。
[赤] 血の色で殺人を意味す(ヨハ8:44)と解することもでき、また緋の色のごとく罪を示すとも見ることができる(イザ1:18)。
12章4節 その
口語訳 | その尾は天の星の三分の一を掃き寄せ、それらを地に投げ落した。龍は子を産もうとしている女の前に立ち、生れたなら、その子を食い尽そうとかまえていた。 |
塚本訳 | またその尾は天の星の三分の一を引き摺って、それを地に(投げ)落とした。竜は子を産もうとしている女の前に立ち、子を産んだならば(直に)その子を食い尽くそうとして(待ち構えて)いた。 |
前田訳 | その尾は天の星の三分の一を引きずり、それらを地上に投げた。竜は生もうとしている女の前に立った。生むときその子を飲み込むためである。 |
新共同 | 竜の尾は、天の星の三分の一を掃き寄せて、地上に投げつけた。そして、竜は子を産もうとしている女の前に立ちはだかり、産んだら、その子を食べてしまおうとしていた。 |
NIV | His tail swept a third of the stars out of the sky and flung them to the earth. The dragon stood in front of the woman who was about to give birth, so that he might devour her child the moment it was born. |
註解: サタンの力の偉大なることを示す。神の力にも比すべきほどである(黙8:12。ダニ8:10参照)。
註解: 女の生まんとするものは神の子である、そしてサタンは神の子を嫌いこれを迫害する。従って神がその国の民たらしめんとして産まんとする神の子らはサタンの攻撃の的である。そしてこの攻撃は最も強くキリストに向けられたことは勿論である(マタ2:23要義1参照)。
12章5節
口語訳 | 女は男の子を産んだが、彼は鉄のつえをもってすべての国民を治めるべき者である。この子は、神のみもとに、その御座のところに、引き上げられた。 |
塚本訳 | 彼女は(遂に子を)──鉄の杖を以て凡ての国民を牧すべき男の子を産んだ。するとその子は(竜が手出しをする前に、)神の御許に、その御座の許に挙げられた。 |
前田訳 | 彼女は男の子を生んだ。その子はすべての民を鉄の杖で牧しよう。その子は神のところ、王座のところへと移された。 |
新共同 | 女は男の子を産んだ。この子は、鉄の杖ですべての国民を治めることになっていた。子は神のもとへ、その玉座へ引き上げられた。 |
NIV | She gave birth to a son, a male child, who will rule all the nations with an iron scepter. And her child was snatched up to God and to his throne. |
註解: 「鉄の杖を以て諸種の国人を治むる」ことはユダヤ人がメシヤに関して期待している思想であった。この意味において詩2:9はメシヤの預言と見られていた。ゆえに本節はまず第一にキリストに当てはまる(黙19:15参照)。しかしながらこの思想はまた一般キリスト者が神の国を嗣ぐ場合にも適用される処であって(黙2:27)、本節の場合は直接にキリストを指すのではなく、キリストの姿を例として一般にキリスト者に関する原理を指したるものと解するを可とす。すなわちサタンは天にありて神の子に対して迫害を加えんとしていることと、サタンが如何に本質的に神の子を憎むかを示す。黙11:3(参照箇所との連携が不明であるが原典のまま記す:編者)の場合も同様なり(同節註参照)。
辞解
[男子] huios と arsen なる二語を重複せしめて意味を強めている(エレ20:15)。
[鉄の杖] 力を示す、征服者の被征服者に臨む態度。
[諸種の国人] メシヤの来臨によりてユダヤ人は凡ての異邦人を支配することの確信を持っていた。
かれは
註解: この男子をキリストと見る場合は、その受難も十字架の死も復活もなく、またすでに神の御座の前に坐し給うキリスト(黙5:6)と重複することとなる。ゆえにこれは神の子らの生命は神の特別の守護の下にありすでにキリストと共に神の許 に隠れていて (エペ1:3。エペ2:6。コロ3:3) サタンの攻撃に対して安全であることを示すものと解すべきである。すなわちキリストに類似せる一表徴をもって神の子たちの本質を示したのである。
口語訳 | 女は荒野へ逃げて行った。そこには、彼女が千二百六十日のあいだ養われるように、神の用意された場所があった。 |
塚本訳 | またその女は(竜を)逃げて荒野に行った。──其処には千二百六十日の間彼女を其処で養うために、神の備え給うた場所がある。 |
前田訳 | 女は荒野へ逃れた。そこに千二百六十日の間養われるよう神から備えられた場所がある。 |
新共同 | 女は荒れ野へ逃げ込んだ。そこには、この女が千二百六十日の間養われるように、神の用意された場所があった。 |
NIV | The woman fled into the desert to a place prepared for her by God, where she might be taken care of for 1,260 days. |
註解: 神の子の生命は神の御座の下にあるにもかかわらず、神の子を産む母体たる神の国、神の教会自らは、この世の荒野にさまよわなければならない。これは一層強くサタンに迫害されんがためである。キリストの荒野の試誘 を見よ。そしてこの世はその中に快楽と罪が充ちており、神の民に対しては全くの荒野でありその中に霊の養となるべきものがない。あたかもイスラエルにとりての四十年の荒野の生活のごときものである。
註解: 霊のイスラエル、神の教会はあたかも荒野の中のイスラエルのごとく、荒野の中においても神これを養い給う。神かかる場所を備え給うが故に少しも心配はない。その期間は千二百六十日すなわち三年半で不完全なる一定期間を意味し、また教会が地上において苦しむべき期間に等しい(黙12:14。黙13:5)。ダニ7:25。
辞解
[千二百六十日] 一ケ月を三十日として計算せる三年半である。七年の半分すなわち完全数の半分である(黙11:3参照)。
要義1 [神の国と教会]天国または神の国という名称の示すがごとく、この国(すなわち神の支配)は天地を貫ける一つの事実であることに充分の注意を向けることが必要である。神の御旨の中には神の国はすでに存在し、天においてキリストの中に選ばれし神の民は、この神の国の民たるべく選ばれ預言されているのである。神の選民たる神のイスラエルまたは霊のイスラエルはこれである (ガラ6:16。ロマ2:28-29) 。そしてこの霊のイスラエルの何たるかを知らしめんために、神はアブラハムとその子孫を特に選び別ち給い、そして後にイエスによリ贖われし教会をその花嫁として聖別し給うた。これらの神の国の民は、その天にある生命についていえば栄光の教会であり、その地上における地位よりいえば荒野における戦闘の教会である。何れも神の国の一つの姿であるということができる。
要義2 [荒野における教会]神はその教会を荒野に逐いやり、そこに隠家を備え給うた。これ神を目の当りに見ることなく、唯信仰によりて神につらなり、これによリて荒野の苦難の試練に耐え、サタンの試誘 に打勝つことを学ばしめんがためであった。荒野の苦難と試誘 は信仰の必要なる道場である。かくしてサタンは天において神の子を迫害することによりて、教会を荒野に逐いやり彼女をして益々苦難と試練に耐うる力を養わしめ、遂にサタンは如何にしても教会に打勝つことを得ざるに至らしめられ、かくしてサタンの計画は全く破壊されるに至ったのである。そこにも神の経綸の驚くべき深さがあらわれているのである。
12章7節
口語訳 | さて、天では戦いが起った。ミカエルとその御使たちとが、龍と戦ったのである。龍もその使たちも応戦したが、 |
塚本訳 | すると天に戦闘が起こって、(天使の首なる)ミカエルとその使い達が竜と戦った。そして竜もその使い達も(一所にこれに対して)戦ったけれども、 |
前田訳 | そして天に戦いがおこり、ミカエルとその天使たちが竜と戦おうと現われた。竜とその使いたちは戦いはじめた。 |
新共同 | さて、天で戦いが起こった。ミカエルとその使いたちが、竜に戦いを挑んだのである。竜とその使いたちも応戦したが、 |
NIV | And there was war in heaven. Michael and his angels fought against the dragon, and the dragon and his angels fought back. |
12章8節
口語訳 | 勝てなかった。そして、もはや天には彼らのおる所がなくなった。 |
塚本訳 | 勝つことが出来なかった。そして最早天には彼らの(いる)場所が無くなった。 |
前田訳 | しかし力足らず、天にはもう彼らの場所がなかった。 |
新共同 | 勝てなかった。そして、もはや天には彼らの居場所がなくなった。 |
NIV | But he was not strong enough, and they lost their place in heaven. |
註解: サタンは神の子を殺さんとしてその目的を達せざりしが、なお神に敵対することをやめず、天において神の子らを襲撃せんとしたので、神の御使の主座を占むるミカエルは天使の軍を率いて龍と戦い、龍はついに敗れて天にその居所を失った。
辞解
[ミカエル] イスラエルの守護の天使で(ダニ10:21。ダニ12:1)最も重きをなす御使である。7節は文法的に難解であるが意味は改訳に異なる処はない。本節のサタンの反逆は種々に解せられているけれども上述のごとくに解するを可とす。エデンの園におけるサタンの反逆ではなく、また天をもって教会を意味すと見ることも誤っている。
12章9節 かの
口語訳 | この巨大な龍、すなわち、悪魔とか、サタンとか呼ばれ、全世界を惑わす年を経たへびは、地に投げ落され、その使たちも、もろともに投げ落された。 |
塚本訳 | かくて(この)大きな竜は(天から)落とされた──(昔エバを惑わしたあの)旧い蛇、悪魔またサタンと呼ばれ、全世界を惑わす者は、地に(叩き)落とされた。その使い達もまた彼と共に落とされた。 |
前田訳 | 大きな竜は投げられ、悪魔またサタンと呼ばれ、全世界を惑わす古い蛇は地に投げられ、その使いたちももろともであった。 |
新共同 | この巨大な竜、年を経た蛇、悪魔とかサタンとか呼ばれるもの、全人類を惑わす者は、投げ落とされた。地上に投げ落とされたのである。その使いたちも、もろともに投げ落とされた。 |
NIV | The great dragon was hurled down--that ancient serpent called the devil, or Satan, who leads the whole world astray. He was hurled to the earth, and his angels with him. |
註解: 天におけるサタンの襲撃のために教会は荒野なる地上に逃れた。然るにサタンはその後も天において神の国なる天の教会の生める神の子を迫害せんとして神に敵対し、天において戦争となったことは前節の録す処であった。そしてサタンは敗れ天より地に落されてついに地上における神の国なる教会を迫害することとなるのである。サタンについてはマタ4:11要義1参照。旧約時代に比し新約時代においてサタンの働きが著しくなって来たことは事実である。これ一方に神の国が地上に実現したためであって、光のある処暗黒が益々深まると同様、教会が地上に来りてサタンもまた地上にその暴威を振うに至ったのである。
辞解
[サタン] ヘブル語で本来「敵」を意味す、人格的名称としては十九回(ヨブ記に多く用いられその他ゼカ3:1等)、「敵」または「敵す」る意味において十四回用いられている。ギリシャ語においてもこの音のままにこれを用い、新約聖書においては二十四回何れも人格的意味において用いられていることは著しい事実である。
[悪魔] diabolos はギリシャ語でサタンと同義に用いらる。
[古き蛇] 創3:1以下の物語にある蛇はサタンの代表である。サタンは昔から今日に至るまでその活動を止めない。
[地に落さる] ルカ10:18。ヨハ12:31 参照。活動の場所が変更したものと見られたのである。聖霊もキリストの昇天と共に地上に降り(ヨハ14:16)そこに聖霊とサタンとの戦が今も行われている。
[まどわす] Uコリ2:11。Uコリ11:3。Tテモ2:14 および引照の箇所参照。
12章10節
口語訳 | その時わたしは、大きな声が天でこう言うのを聞いた、「今や、われらの神の救と力と国と、神のキリストの権威とは、現れた。われらの兄弟らを訴える者、夜昼われらの神のみまえで彼らを訴える者は、投げ落された。 |
塚本訳 | すると大きな声が天で(こう)言うのを私は聞いた──今や我らの神の救いと権能と王国と、そのキリストの権力とは来た。われらの兄弟達を訴うる者、昼も夜も彼らを神の前に訴うる者が(地に)落とされたからである。 |
前田訳 | そしてわたしは天に大きな声を聞いた。いわく−− 「今や成る、われらの神の救いと力と王権と、そのキリストの権威とが。われらの兄弟の訴え手、彼らを、日夜、神の前に訴えるものが投げられたから。 |
新共同 | わたしは、天で大きな声が次のように言うのを、聞いた。「今や、我々の神の救いと力と支配が現れた。神のメシアの権威が現れた。我々の兄弟たちを告発する者、/昼も夜も我々の神の御前で彼らを告発する者が、/投げ落とされたからである。 |
NIV | Then I heard a loud voice in heaven say: "Now have come the salvation and the power and the kingdom of our God, and the authority of his Christ. For the accuser of our brothers, who accuses them before our God day and night, has been hurled down. |
註解: 天上において神の国は既に完成しキリストの権威は確立した。その故はサタン地上に投落されたからである。「救」と「能力」と「国」(支配を意味す)とは神の働きの三方面で人および万物に及ぶ。
辞解
[神のキリスト] 「神の受膏者」イエス・キリストを指す。
[訴ふるもの] 現在分詞形で訴うることをその仕事とするものを意味す。
[訴うる] 悪しざまに言うこと。サタンを指すことは勿論である(ヨブ1章参照)。
12章11節
口語訳 | 兄弟たちは、小羊の血と彼らのあかしの言葉とによって、彼にうち勝ち、死に至るまでもそのいのちを惜しまなかった。 |
塚本訳 | (然り、今や)彼ら(兄弟達)は仔羊の血により、また彼らの(立てた)証明の言によって、彼に勝ったのである。──彼らは死に至るまで(羊のために戦い、少しも)自分の生命を愛しなかった。 |
前田訳 | 兄弟は小羊の血によって、また彼らの証のことばによって彼に勝ち、おのがいのちをおしまずに、死に至った。 |
新共同 | 兄弟たちは、小羊の血と/自分たちの証しの言葉とで、/彼に打ち勝った。彼らは、死に至るまで命を惜しまなかった。 |
NIV | They overcame him by the blood of the Lamb and by the word of their testimony; they did not love their lives so much as to shrink from death. |
註解: すでに死してその霊が神の御許にある聖徒たちにつきてその勝利を歌っている。すなわち彼らは(兄弟たちは)二つの原因によりて勝利を得た、その一はキリストの十字架の贖罪の血で(黙7:14)この血によりて、人類の罪は贖われ、死は滅ぼされ、サタンはその働き場所を失い、敗北に帰した。その二は兄弟たちの証の言、すなわち自ら人の前にその信仰を告白したことによりサタンの弟子にあらざることを明かにした、彼らはかくして勝利を得、死に至るまで、その生命を惜まなかった。己が救い主のためにその生命を棄ててかかったのである。かくして天において神とキリストとそして兄弟たちとの全体の勝利の凱歌が奏でられたのである(10、11節)。
辞解
[惜む] 「愛する」で「勝つ」と共に不定過去形を用いている、恐らくその全生涯を一つのものとして見たる表顕法であろう。
12章12節 この
口語訳 | それゆえに、天とその中に住む者たちよ、大いに喜べ。しかし、地と海よ、おまえたちはわざわいである。悪魔が、自分の時が短いのを知り、激しい怒りをもって、おまえたちのところに下ってきたからである」。 |
塚本訳 | この故に、喜べ、天とその中に住む者達!(しかし)禍なる哉、地と海!悪魔が時の迫ったことを知り、大なる憤怒をもってお前達の所に下り(て行っ)たからである。 |
前田訳 | このゆえによろこべ、天とそこに住むものよ。わざわいなのは地と海。悪魔がなんじらのところに下り、余命いくばくもないと知って怒り狂っているから」と。 |
新共同 | このゆえに、もろもろの天と、/その中に住む者たちよ、喜べ。地と海とは不幸である。悪魔は怒りに燃えて、/お前たちのところへ降って行った。残された時が少ないのを知ったからである。」 |
NIV | Therefore rejoice, you heavens and you who dwell in them! But woe to the earth and the sea, because the devil has gone down to you! He is filled with fury, because he knows that his time is short." |
註解: サタンが地上に落されてより天と地との間に大なる差異が起った、地上の教会は苦しまなければならない。
辞解
[天に住めるもの] 「住むもの」と訳すべきである。skênoô「幕屋を張る」 (黙7:15。黙13:6) なる文字を用いたのはUコリ5:1のごとくに一時的住居の意味ではなく本書においては神の国を神の幕屋と見ているので(黙21:3)この文字を用う。それ故に「地に住むもの」に用いられている katoikeô とは異なる意義に用いられている。「天に住むもの」は天使なりとの解あれど(S3、H0、ブーセット)、前後の関係および黙13:6よりやはり天にある聖徒(黙7:9以下)と解すべきである。「地に住むもの」に対する意味においては凡てのキリスト者は霊的意味において天に住むものと称することを得。
[地と海] 全世界を指す、かつ次章の二つの獣と関連す(黙13:1、黙13:11)。
[おのが時の暫時なるを知り] サタンが地上よりさらに深き「底なき所」、また進んで「火と硫黄との池」に投入れられる時が近付いたことを知ったから(黙20:3、黙20:10)。
[大なる憤恚 ] この憤恚 をキリストの教会に向けて晴らさんとするのがサタンの活動である。13章の光景がそれである。
12章13節
口語訳 | 龍は、自分が地上に投げ落されたと知ると、男子を産んだ女を追いかけた。 |
塚本訳 | かくて竜は自分が地に落とされたのを見た時、男の子を産んだ(かの)女を迫害した。 |
前田訳 | 竜は地に投げられたと知ると、男の子を生んだ女を迫害した。 |
新共同 | 竜は、自分が地上へ投げ落とされたと分かると、男の子を産んだ女の後を追った。 |
NIV | When the dragon saw that he had been hurled to the earth, he pursued the woman who had given birth to the male child. |
12章14節
口語訳 | しかし、女は自分の場所である荒野に飛んで行くために、大きなわしの二つの翼を与えられた。そしてそこでへびからのがれて、一年、二年、また、半年の間、養われることになっていた。 |
塚本訳 | すると女に大鷲の両の翼が与えられた。荒野にある(神の予め備え給うた)彼女の場所に飛んで行って、其処で蛇の顔を避けて一年と二年とまた半年の間養われるためであった。 |
前田訳 | そして女に大鷲のふたつの翼が与えられた。荒野の彼女の場所へと飛ぶためである。そこで彼女は蛇をのがれて三年半養われる。 |
新共同 | しかし、女には大きな鷲の翼が二つ与えられた。荒れ野にある自分の場所へ飛んで行くためである。女はここで、蛇から逃れて、一年、その後二年、またその後半年の間、養われることになっていた。 |
NIV | The woman was given the two wings of a great eagle, so that she might fly to the place prepared for her in the desert, where she would be taken care of for a time, times and half a time, out of the serpent's reach. |
註解: 男子を生みし女なる神の国は地上に逃れてそこに寄寓することとなった。サタンはその全力を挙げてこの教会を迫害することを始めた。しかしながらエホバはイスラエルをその翼をもって保護し給いしごとく(出19:4。申32:11。イザ40:31)、教会は自ら飛ぶ両翼を与えられて、そのおるべき荒野に飛び去り、蛇の前を離れ、蛇よりの害を被らずにいることができた。この状況は今日に至っている。すなわちたとえ教会に対するサタンの迫害は絶えることなく、また教会の中の個々の信徒(裔の残れるもの、17節)はその迫害を被ったけれども、神の教会は今日に至るまで、荒野の中に神より養われているのである。その期間は三年半、すなわちある有限の期間であって必ず終る時がある。この終る時はサタンが亡ぼされて教会が完全なる勝利と栄光とに達する時である。
辞解
[一年、二年、また半年] 「一期、二期、また半期」で、ダニ7:25。ダニ12:7と同語、意味は改訳と同一で四十二ケ月(黙11:2。黙13:5)も千二百六十日(黙11:3。黙12:6)も同じ期間である。聖徒が敵に迫害される期間。
12章15節
口語訳 | へびは女の後に水を川のように、口から吐き出して、女をおし流そうとした。 |
塚本訳 | 蛇はその口から(大)河のような水を女の後に吐き出して、彼女を浚おうとしたけれども、 |
前田訳 | 蛇は女を溺れさせようと、口から女の背へ川のように水を吐いた。 |
新共同 | 蛇は、口から川のように水を女の後ろに吐き出して、女を押し流そうとした。 |
NIV | Then from his mouth the serpent spewed water like a river, to overtake the woman and sweep her away with the torrent. |
12章16節
口語訳 | しかし、地は女を助けた。すなわち、地はその口を開いて、龍が口から吐き出した川を飲みほした。 |
塚本訳 | 地が女を助け、地がその口を開けて、竜の口から吐き出した河(の水)を(悉く)飲み干した。 |
前田訳 | すると地が女を助けた。地は口を開いて、竜がその口から吐いた川を飲み干した。 |
新共同 | しかし、大地は女を助け、口を開けて、竜が口から吐き出した川を飲み干した。 |
NIV | But the earth helped the woman by opening its mouth and swallowing the river that the dragon had spewed out of his mouth. |
註解: サタンは全世界の「諸々の民、群衆、国、国語」すなわち全世界の国民を総動員することによりて教会を滅亡せしめんとするけれども、不思議にも地は教会を助け、諸国民を呑み尽し、諸国民が滅びて教会は永続している。この事実は16−18章の審判においてあらわれているけれども、本書が録されし当時はなお充分に事実とならなかった。今日よりこれを見ればこれは偉大なる預言であったことが判る。従ってこれはローマ軍、ユダヤ民族、またはローマ政府の迫害等のごとき特定の事実のみを指したとする解釈の不適当であることは勿論である。
辞解
[「水」また「川」] これの何たるかにつきては古来種々の解釈あり、また 詩18:4。詩32:6。詩124:4 以下等に悪の力を大水にたとえし場合あれど本節は黙17:15により上記のごとくに解した。なお審判の力強さを水にたとえた場合もある黙1:15。黙14:2。黙19:6。ホセ5:10)。
12章17節
口語訳 | 龍は、女に対して怒りを発し、女の残りの子ら、すなわち、神の戒めを守り、イエスのあかしを持っている者たちに対して、戦いをいどむために、出て行った。 |
塚本訳 | そこで竜は女を怒り、彼女の裔の残っている者、すなわち神の戒律を守り、イエスの証明を有っている者達と戦闘をするために出て行った。 |
前田訳 | 竜は女を怒り、彼女の末の残りと戦いをするために出て行った。彼らは神のおきてを守り、イエスの証を持っている。 |
新共同 | 竜は女に対して激しく怒り、その子孫の残りの者たち、すなわち、神の掟を守り、イエスの証しを守りとおしている者たちと戦おうとして出て行った。 |
NIV | Then the dragon was enraged at the woman and went off to make war against the rest of her offspring--those who obey God's commandments and hold to the testimony of Jesus. |
口語訳 | そして、海の砂の上に立った。 |
塚本訳 | 彼は海の砂の上に立った。 |
前田訳 | 竜は海の砂浜に立った。 |
新共同 | そして、竜は海辺の砂の上に立った。 |
NIV |
註解: サタンは終りまで神に敵せずにいることができない、始めに男子を責め、次に、女を責め、何れも失敗して遂に女の裔の残れるものと戦闘を挑まんとするのである。而して彼は一時女の裔に勝つに至るのである (黙13:7、黙13:15) 。この残れるものとはキリスト者を意味することは、それが神の誡命を守りイエスに対する信仰を証する者なることをもって知ることを得、龍は海辺の砂の上に立ちてまさに現れんとする二つの獣を見守るがごとき貌である。
辞解
[女の裔 ] 創3:15より取りたるもの、キリストの預言であると同時にキリストに属する凡ての者を指すと解することができる。キリストは凡ての兄弟の嫡子に在し(ロマ8:29)教会はその母である(ガラ4:26)。
[立てり] 異本に「我立てり」とあり。この方劣っている。
要義1 [教会の成立およびその性質]本章より教会の性質を推論すれば(1)教会と霊的神の国とは本来同一物である。その故は本章の女はイスラエルではないことは、それが天上に在ること(1節)とその裔がイエスの証を有つこと(17節)とをもってこれを知ることができ、また彼女が地上の教会のみを指さないことは、それがメシヤの母であること(5節)よりこれを知ることができる。(2)教会はサタンが天において神の国と神の子を甚だしく嫌い、神の子を襲撃せる結果、霊的神の国が地上に逃れて成立するに至ったものと見られている(6節)、すなわち霊的神の国の一つの態様である。パウロが教会をもって新たに啓示せられし奥義であると言ったのもこの意味である(エペ3:4−6)。(3)神の国および教会の生める子らはメシヤすなわちキリストを始めとしてみな天に住み、サタンの襲撃より安全に保護せられ(5節、10−12節)、教会のみサタンの迫害の中に残される。(4)しかしながら遂にはサタンとその使たちは凡て審かれ教会はその子らなる聖徒よりなる新しきエルサレムとして天より降りキリストの花嫁となる(黙21:9)。
要義2 [サタンの活動]旧約時代におけるサタンの活動は徴々たるものであった。始めにアダムとエバとを誘えることは著しき事実であるがその後ヨブを誘えること以外にはサタンとしての活動は極めて少い(サターンなる文字は「敵」なる意味において用いられていることはマタ4:11要義1参照)。然るに新約時代に至りてその活動が著しく強くなったことは注意を要することであって、サタンはまずイエスを誘い、その後凡ての聖徒を誘いまた苦しめることを止めない。これを本書においてヨハネはサタンが天より地上に落され専ら地上において活動しつつあるものと解したのである。この解釈は最も当を得たものであって、聖霊が地上に降り給いて (ヨハ16:7-8。使2:2−4) 、教会を形成することに対し、サタンはその全力をもってこれを妨害せんとし、地に住む者はサタンとその使なる獣とを拝して聖徒を迫害するのである。神の力の強く働く所にサタンもまたその力を振うことは当然であって、新約の世界となってサタンの力が一層強くなったのはそのためである。ゆえに我らはこれと戦い苦難の下に忍耐しなければならない。
附記 本章は黙示録中最も難解の一章である。その故は
(1)もし5節の男子をキリストと解する時はその地上の生活、十字架の死および復活等を全く無視する点が不可解となること。
(2)17節より見れば「女」は明かに教会を指すがごときも、教会がキリストを生む(5節)ということは考え得ざること。
(3)イスラエルはキリストを生むと考えることができるけれども、イスラエルはその以前に地上にあり(6節と矛盾し)またイスラエルはキリスト者の母にあらず(17節と矛盾する)、そこに難解の点あること。
以上のごとくこの一章はキリスト教的にもあらずユダヤ教的にもあらざるをもって註解家は非常にその取扱いに困窮しあるいはこれをキリスト者の作にあらずとし、ユダヤの黙示文学の一片をここに挿入せしものとして説明せんとし、あるいはこれをユダヤ人の間に伝われる古き神話の改竄であるとなし、従ってまたこの一章は一つの統一せるものではなく、多くの断片の集輯 であるとなし、編集者が種々加除せるものとして想像せられているけれども、かく解することによりて益々本章の意味が不明となり、結局において編集者がかかるものを作り出したる目的を解し得ないこととなる。多岐亡羊、学者はその材料の多きに迷わされてヨハネが示さんとする根本原理を見失ったのである。本章の註解のごとくに解するならば、ヨハネの思想が統一せる一つの思想であることが判明 りまた聖書全体の立場とも一致することとなるであろう。