黙示録第17章
分類
3 この世の審判と救
4:1 - 18:24
3-(3) 第七のラッパ
11:14 - 18:24
3-(3)-(ホ) 第七の金の鉢の審判
16:17 - 18:24
3-(3)-(ホ)-(乙) 大淫婦の審判
17:1 - 17:18
3-(3)-(ホ)-(乙)-(a) 淫婦の姿
17:1 - 17:6
註解: 本章は次章と共に第七の鉢の審判の詳述であって、大なる都バビロンなるローマは大淫婦と称せられ、この政治的大都市の権力保持者たる諸王は獣と七つの頭とをもって表徴せられ全世界の諸王は「十の角」をもって表示せられている。なお17、18両章の審判を堕落せる教会の審判と解する見方も多いけれども(ミリガンその他)本文の自然の意味としてはかく解し難い。
17章1節
口語訳 | それから、七つの鉢を持つ七人の御使のひとりがきて、わたしに語って言った、「さあ、きなさい。多くの水の上にすわっている大淫婦に対するさばきを、見せよう。 |
塚本訳 | すると(神の憤怒の盛られた)七つの鉢を持つ七人の天使の一人が来て、私に語って言うた、「さあ(此処に来い)、多くの水の上に坐っている大淫婦の審判(の異象)を(今から)お前に示そう。 |
前田訳 | 七つの鉢を持つ七人の天使のひとりが来た。わたしと語っていう、「来たれ、多くの水の上にすわる大淫婦の裁きを見せよう。 |
新共同 | さて、七つの鉢を持つ七人の天使の一人が来て、わたしに語りかけた。「ここへ来なさい。多くの水の上に座っている大淫婦に対する裁きを見せよう。 |
NIV | One of the seven angels who had the seven bowls came and said to me, "Come, I will show you the punishment of the great prostitute, who sits on many waters. |
17章2節
口語訳 | 地の王たちはこの女と姦淫を行い、地に住む人々はこの女の姦淫のぶどう酒に酔いしれている」。 |
塚本訳 | 地の王達は(皆)彼女と淫行をなし、地に住む者は彼女の淫行の葡萄酒に酔っぱらった。」 |
前田訳 | 地の王たちはそれと淫し、地に住むものはその姦淫の酒に酔った」と。 |
新共同 | 地上の王たちは、この女とみだらなことをし、地上に住む人々は、この女のみだらな行いのぶどう酒に酔ってしまった。」 |
NIV | With her the kings of the earth committed adultery and the inhabitants of the earth were intoxicated with the wine of her adulteries." |
註解: 大淫婦はサタンの姿であって地上の政治的、経済的、文化的、宗教的の姿を取り、その進歩と華美と奢侈 と能力とによりて地上の凡てのものを支配する。ヨハネはこの大淫婦がその座をローマ帝国の中心たるローマに占めて世界を風靡し殊にキリスト信徒に対してその毒牙を振っていることを示す。すなわち大淫婦はローマの都であり、地に住む者の権力文化の中心である(黙17:18節)。
辞解
[七人の御使の一人] すなわちこの後に録される審判は第七の鉢の審判の内容を為すことを意味す(B3)。第七の金の鉢の審判黙16:17より新天新地の完成に至るまでに現れる七人の御使 (黙17:1。黙18:1、黙18:21。黙19:17。黙20:1。黙21:9) はおそらく、みな金の鉢を傾けし御使ならんかと思わる。ただし明かにかくと録されるは本節と黙21:9のみなり。
[多くの水] 黙17:15節の解説に明かなるごとく多くの国民、民族を指す。エレ51:13よりその着想を取りたるもの、イザ8:7以下にも国民を水に譬えし例あり。
[地の王たち] この世の支配者たちの概称(S3)。
[淫を行う] 神を離れてこの地の権力、肉の快楽を神としてこれに仕えること。
[地に住む者] 黙3:10辞解参照。
[その淫行の葡萄酒] 「その」は「彼女の」、淫行は人を酔わせこれを堕落せしむる葡萄酒である。
17章3節
口語訳 | 御使は、わたしを御霊に感じたまま、荒野へ連れて行った。わたしは、そこでひとりの女が赤い獣に乗っているのを見た。その獣は神を汚すかずかずの名でおおわれ、また、それに七つの頭と十の角とがあった。 |
塚本訳 | そして彼は私を霊にて荒野に連れて行った。私は(其処で一人の)女が、(神を)涜す名にて(全身を)蔽われた、七つの頭と十の角のある緋色の獣に乗っているのを見た。 |
前田訳 | 天使は霊に感じたわたしを荒野へ連れ去った。わたしは緋色の獣の上にすわる女を見た。獣は神を汚す名で包まれ、七つの頭と十の角を持っていた。 |
新共同 | そして、この天使は“霊”に満たされたわたしを荒れ野に連れて行った。わたしは、赤い獣にまたがっている一人の女を見た。この獣は、全身至るところ神を冒涜する数々の名で覆われており、七つの頭と十本の角があった。 |
NIV | Then the angel carried me away in the Spirit into a desert. There I saw a woman sitting on a scarlet beast that was covered with blasphemous names and had seven heads and ten horns. |
註解: この御使は説明者であると同時に、案内者であった。ここにバビロンすなわちローマの都すなわちこの世の権力、文化とその王たち、その支配者たる権力保持者たちの姿がヨハネに示される。都は女性なるが故に女でありサタンと姦淫して神に叛く大淫婦である。その乗れる獣は 黙13:1、黙13:14。黙19:20 の獣と同一物である(黙13:1註参照)。唯ここに緋色とあるは黙12:3の龍と同色にしてサタン的なることを示すと同時にその華美壮麗さを示し(黙18:16)万人仰視の的であることを意味す、この女と獣とが「荒野」に在ることは一見殷賑 なるローマの都に相応わしからぬごとくに見えるけれども然らず、この世は神の都に比すれば霊的の荒野である。この荒野は教会の所在地であり (黙12:6、黙12:14) 教会が迫害される場所である。
辞解
[荒野] (1)淋しき内面的生活。(2)神なき生活の荒涼たる姿(S3)。(3)ローマが荒廃に帰したる後の姿。(4)別段の意味なく唯ヨハネが御霊に感じたる場所の光景に種々の変化を与うるため(B3)等種々に解せられるけれども前述の註のごとく黙12:6との関係においてこれを解した。
[緋色] 殉教者の血の色と解する説あれどこの場合適切でない。
17章4節
口語訳 | この女は紫と赤の衣をまとい、金と宝石と真珠とで身を飾り、憎むべきものと自分の姦淫の汚れとで満ちている金の杯を手に持ち、 |
塚本訳 | その女は紫と緋の衣を着、金と宝石と真珠とにて(身を)飾り、手に嫌悪むべきものと彼女の淫行の穢れとの一杯入った金の酒杯を持っていた。 |
前田訳 | 女は紫と緋色で装い、金と宝石と真珠で飾られ、手には悪事と姦淫の汚れに満ちた金の杯を持っていた。 |
新共同 | 女は紫と赤の衣を着て、金と宝石と真珠で身を飾り、忌まわしいものや、自分のみだらな行いの汚れで満ちた金の杯を手に持っていた。 |
NIV | The woman was dressed in purple and scarlet, and was glittering with gold, precious stones and pearls. She held a golden cup in her hand, filled with abominable things and the filth of her adulteries. |
註解: 紫色と緋とは相類似しており時に混用されることもある(マタ27:28辞解参照)。王者の姿または奢侈 の意味に用いられる。ここでは双方の意味を併有するものと見て差支えがない。金、宝石、真珠は何れも華美贅沢の貌、金の鉢は外観は立派であるけれどもその中には不信仰と不道徳とが充満している。これ実にバビロンの姿でありまた今日の世界文化の姿である。
辞解
[憎むべきもの] bdelugma マタ24:15。ダニ9:27。ダニ11:31。ダニ12:11。旧約聖書に多く用いられる語で嫌悪にたえざるものを指す。従ってイスラエル人にとりては偶像または偶像崇拝に関連せる事物につき用いられる場合が多い(T列11:6。T列20:26。U列16:3。U列21:2等)。本節の場合偶像崇拝とこれに伴う不道徳とを指すと解すべきであろう。なお黙21:27参照。
17章5節
口語訳 | その額には、一つの名がしるされていた。それは奥義であって、「大いなるバビロン、淫婦どもと地の憎むべきものらとの母」というのであった。 |
塚本訳 | そしてその額には(こういう)一つの名、すなわち奥義が書きつけてあった、「大バビロン、淫婦らと地の嫌悪むべきものとの母!」 |
前田訳 | そして額には名が書かれている。それは奥義で、「大バビロン、淫婦と地の悪事の母」である。 |
新共同 | その額には、秘められた意味の名が記されていたが、それは、「大バビロン、みだらな女たちや、地上の忌まわしい者たちの母」という名である。 |
NIV | This title was written on her forehead: MYSTERY BABYLON THE GREAT THE MOTHER OF PROSTITUTES AND OF THE ABOMINATIONS OF THE EARTH. |
註解: ローマの貴婦人たちは額にバンドを巻きその上に自己の名または所属を録す習慣があった。そのごとくこの大淫婦の額にも自己の本質を示す名称が録されていた。そしてその名は第一に「奥義」mystêrion であって福音の奥義と正反対の位置に立つ処のものであり、神に敵する神秘的の力である、第二の名は「大なるバビロン」であってこの世の凡ての権力と文化との結晶であり、第三の名は「地の淫婦らと憎むべきものとの母」で地上のあらゆる不信仰、偶像崇拝、不道徳、堕落の母として全世界にこれを産み出す処の原動力である。
辞解
[奥義] 「名」の同格名詞と見「神秘的なる名あり」または「名、すなわち奥義あり」とも訳することもできる。
[母] 一国の首都は常に母たる役割を演じ、その影響を全世界に及ぼす、バビロン然りローマ然り、今日もまた同一の事象を目撃する。
17章6節
口語訳 | わたしは、この女が聖徒の血とイエスの証人の血に酔いしれているのを見た。この女を見た時、わたしは非常に驚きあやしんだ。 |
塚本訳 | また私はその女が聖徒の(流した)血とイエスの証人達の血とに酔っぱらっているのを見た。彼女を見た時私は大なる驚きに打たれた。 |
前田訳 | そしてわたしは見た。女が聖徒の血とイエスの証人の血に酔っていた。その女を見てわたしは驚き入った。 |
新共同 | わたしは、この女が聖なる者たちの血と、イエスの証人たちの血に酔いしれているのを見た。この女を見て、わたしは大いに驚いた。 |
NIV | I saw that the woman was drunk with the blood of the saints, the blood of those who bore testimony to Jesus. When I saw her, I was greatly astonished. |
註解: ここに大淫婦の特徴の中最も著しくかつキリスト者に関係ある点を掲げている。これが本書にとっては最も重大な点である。すなわち一見非常に美わしく威儀堂々たるバビロンは、キリスト者の迫害者でありその血に酔う処の者である。
辞解
[聖徒、証人] 同一の人々を指すと解する学者があるけれども前者は一般のキリスト者であり後者はその中特に福音の証人として殉教せる者を指す(黙11:18辞解参照)。
3-(3)-(ホ)-(乙)-(b) 淫婦と獣との関係
17:7 - 17:14
17章7節
口語訳 | すると、御使はわたしに言った、「なぜそんなに驚くのか。この女の奥義と、女を乗せている七つの頭と十の角のある獣の奥義とを、話してあげよう。 |
塚本訳 | すると天使が私に言うた、「何故驚くのか。私がこの女と、それを背負っている七つの頭と十の角のある獣との奥義をお前に話してやろう。── |
前田訳 | すると天使はいった、「なぜ驚いたのか。わたしが女と女をになう七つの頭と十の角の獣との奥義をいおう。 |
新共同 | すると、天使がわたしにこう言った。「なぜ驚くのか。わたしは、この女の秘められた意味と、女を乗せた獣、七つの頭と十本の角がある獣の秘められた意味とを知らせよう。 |
NIV | Then the angel said to me: "Why are you astonished? I will explain to you the mystery of the woman and of the beast she rides, which has the seven heads and ten horns. |
註解: ヨハネは審 かるべき大淫婦およびその乗れる獣の姿のあまりに華麗なのに非常におどろいた。何人もこの世界都市ローマの文化的の姿を見て、これがやがて審 かるべきものであることを感じないであろう。それ故に御使がこれを説明することが必要であった。本節以下本章の終りまでは御使がヨハネに対して為せる説明である。ただし(1)主として獣の説明であって女につきては説明の少きこと。(2)獣とその頭と角との関係は必ずしも明瞭でないこと等の困難はあるけれども我らはこの説明によりてこの獣とそれに乗れる女の真相を闡明 しなければならない。
17章8節 なんぢの
口語訳 | あなたの見た獣は、昔はいたが、今はおらず、そして、やがて底知れぬ所から上ってきて、ついには滅びに至るものである。地に住む者のうち、世の初めからいのちの書に名をしるされていない者たちは、この獣が、昔はいたが今はおらず、やがて来るのを見て、驚きあやしむであろう。 |
塚本訳 | お前が見た獣は以前にはいたが今はいない。しかし(直にまた)奈落(の底)から上って来るであろう。そして(時期が来ると再び永遠の)滅亡に(落ち)行くのである。そして地に住む者で、宇宙開闢の時からその名を生命の書に記されていない者は、その獣が以前にはいたが今はいず、再び来るのを見て驚くであろう。 |
前田訳 | なんじが見た獣は前にいたが、今はいない。また奈落から上って滅びへと消えよう。地に住みながら世の初めからその名をいのちの書に記されていないものは、獣が前にいて今いず、また現われるのを見て驚こう。 |
新共同 | あなたが見た獣は以前はいたが、今はいない。やがて底なしの淵から上って来るが、ついには滅びてしまう。地上に住む者で、天地創造の時から命の書にその名が記されていない者たちは、以前いて今はいないこの獣が、やがて来るのを見て驚くであろう。 |
NIV | The beast, which you saw, once was, now is not, and will come up out of the Abyss and go to his destruction. The inhabitants of the earth whose names have not been written in the book of life from the creation of the world will be astonished when they see the beast, because he once was, now is not, and yet will come. |
註解: 黙13:3と同一の事実を異なりたる表顕をもって示したのである。同節註参照。死せるネロの復活に関する風説を利用したる表徴。サタンの権を与えられたる国家的権力は一時はキリスト教を迫害することを休止せるごとくに見えていてもまた間もなく復活するものであることを暗示する。
辞解
[前にありしも今あらず] 黙1:4等の神の形容と相類似し、「後に底なき所より上りて滅亡に往かん」はイエス・キリストが陰府 より甦りて最後の勝利を得給うことと相対応する。
註解: 黙13:8と同義で殆んど同一の語を用いるのを見ても同一事実を指すことを知る。
辞解
[世 の創 より] 神は世 の創 の先より我らをキリストの中にて選び給ふ(エペ1:4)。
口語訳 | ここに、知恵のある心が必要である。七つの頭は、この女のすわっている七つの山であり、また、七人の王のことである。 |
塚本訳 | 「知恵ある理知がここに要る!七つの頭(というの)はこの女の坐っている七つの山(のこと)であり、(同時に)また七人の王(のこと)である。 |
前田訳 | 知恵のある心はこれである。七つの頭は七つの山で女はその上にすわる。それらは七人の王である。 |
新共同 | ここに、知恵のある考えが必要である。七つの頭とは、この女が座っている七つの丘のことである。そして、ここに七人の王がいる。 |
NIV | "This calls for a mind with wisdom. The seven heads are seven hills on which the woman sits. |
註解: 黙13:18参照。読者の智慧とこれをもってする悟りの心はこの場合に必要である。然らざればこの表徴的記載の意義を悟ることができない。ヨハネはこの表徴をもって一般的真理を示すと共に、現に当時のキリスト者の目前に迫っているローマ国権の迫害に対して読者を強めまたこれを慰めんとしているからである。
註解: ローマの都には七つの丘あり七丘の都と呼ばれていた、従ってこの獣の七つの頭はローマの七丘を代表し、この獣はローマの都を中心とするローマ帝国を指す、またこの七頭は今一つの意味ありすなわち七人の王を指す(七人の王が何を指示するかにつきては次節註及本章末尾附記を見よ)。すなわち獣がローマ帝国ならばその頭はその王たちである。
17章10節
口語訳 | そのうちの五人はすでに倒れ、ひとりは今おり、もうひとりは、まだきていない。それが来れば、しばらくの間だけおることになっている。 |
塚本訳 | (その中)五人は(既に)倒れ、一人は今(現に)いる。他の(もう)一人はまだ来ていない。来れば(ただ)少しの間(だけ王位に)留まるはずである。 |
前田訳 | その五人は倒れ、ひとりは今おり、もうひとりはまだ来ない。来れば、しばしとどまらねばならない。 |
新共同 | 五人は既に倒れたが、一人は今王の位についている。他の一人は、まだ現れていないが、この王が現れても、位にとどまるのはごく短い期間だけである。 |
NIV | They are also seven kings. Five have fallen, one is, the other has not yet come; but when he does come, he must remain for a little while. |
註解: この場合も七たる数は全体を意味している。ローマの皇帝またはこれに匹敵すべきサタンの部下が過去にもあり現在も存在し、未来にも存するであろうけれどもこの最後の者の存続の期間は「暫時」に過ぎず、如何に彼らが暴威を振うとも、その終りは近付いている。汝ら耐忍ぶべしとの意を含む。第六が現在の王であることの意味は六と七との間に特別の意義を持たしむる他の場合と同様に(すなわち第六の封印と第七の封印との間、および第六のラッパと第七のラッパとの間のごとき)終末が近付いてしかもなお未だ終末に至らざることの表徴である。なおこの七人の王を歴史上におけるローマの諸王の何れにか適用せんとする試みの不当にして困難なることについては附記を見よ、なおヨハネはローマ国およびその皇帝を心に思ひ浮かべつつこれを録したのであるがヨハネの本旨はこれと同一の凡ての事実に適用される原理を指示するにあった。そしてこの原理は永遠に真理であって凡て地上の権力を握って神の民を迫害する凡ての者について適用せられる。
17章11節
口語訳 | 昔はいたが今はいないという獣は、すなわち第八のものであるが、またそれは、かの七人の中のひとりであって、ついには滅びに至るものである。 |
塚本訳 | また以前にいて今いない獣、それが第八(番目)であり、しかも(前の)七つ(の頭)から(出たの)である。そして(遂に)滅亡に(落ち)行く。 |
前田訳 | 前にあって今いない獣も自ら第八であり、七つの頭の出であるが、滅びへと消える。 |
新共同 | 以前いて、今はいない獣は、第八の者で、またそれは先の七人の中の一人なのだが、やがて滅びる。 |
NIV | The beast who once was, and now is not, is an eighth king. He belongs to the seven and is going to his destruction. |
註解: 最後に現わるべき第八の王は 黙13:3。黙17:8 に録される処の獣であって、すでに死してまた復活するとの噂があったネロ帝である。すなわち前の七人の一人であってこれがすなわち非キリストとして最も強くキリストとその信徒らに敵する者である。しかしながらこの最後の敵がついにキリストのために滅ぼされる(黙19:19−21)。ただしネロなる具体的王を代表的に指摘したのであって、実はキリスト者を迫害する権力の復活を意味する。なお第八の王はドミティアヌスであるとしネロとの類似をその理由としている説があるけれども(S3)ヨハネは具体的にこれを指したものとも思えない。
17章12節
口語訳 | あなたの見た十の角は、十人の王のことであって、彼らはまだ国を受けてはいないが、獣と共に、一時だけ王としての権威を受ける。 |
塚本訳 | またお前が見た十の角(というの)は十人の王(のこと)である。彼らはまだ王権を受けていないけれども、獣と共に一時王のような権力を受ける(であろう)。 |
前田訳 | なんじが見た十の角は十の王で、まだ王権を受けなかったが、獣とともに一時、王としての権威を受けよう。 |
新共同 | また、あなたが見た十本の角は、十人の王である。彼らはまだ国を治めていないが、ひとときの間、獣と共に王の権威を受けるであろう。 |
NIV | "The ten horns you saw are ten kings who have not yet received a kingdom, but who for one hour will receive authority as kings along with the beast. |
註解: 世界に暴威を振い、キリスト教徒を迫害しキリストに敵するような王権は必ずしも常に一人に集っているわけではない。例えばローマ帝国のごとくその領土内に皇帝に従属する多くの大名、諸侯があった。彼らは未だローマ国王のごとき権を持たないけれども、獣なるローマ皇帝と共力して王のごとき権威を振う、角は力を意味し、十は人間的完全の数、すなわち人間社会における権力の総体を意味す。
辞解
[十の角] ダニ7:7、ダニ7:24より取つた思想であるけれども内容は全く異なっている。なおこの十の角の何を指すかにつきては(1)小アジアにおけるローマの代官。(2)パルテヤ国の総督たち。(3)ローマ国の将来の未知の連盟国。(4)七人の王以外の三人の王(附記参照)。(5)将来ローマに代わるべき諸王等種々に解せらてているけれども適当ではない。
17章13節
口語訳 | 彼らは心をひとつにしている。そして、自分たちの力と権威とを獣に与える。 |
塚本訳 | 彼らは一つの思いをもって(獣を助け、)自分達の能力と権力とを獣に与える。 |
前田訳 | 彼らの持つ意図はひとつで、力と権威を獣に与える。 |
新共同 | この者どもは、心を一つにしており、自分たちの力と権威を獣にゆだねる。 |
NIV | They have one purpose and will give their power and authority to the beast. |
註解: 十の角をもって代表される諸侯は一致して獣なる非キリストを援助する。すなわち全世界の凡ての権力はみな一致して神とそのキリストとに反対する。そしてついに亡ぼされる(黙19:20)。
辞解
[心] gnômê は(1)知る性能。(2)知つた結果到達せる意見。(3)これを発表せる忠告承諾(ピレ1:14)等を意味す。本節は(2)に相当する。
17章14節
口語訳 | 彼らは小羊に戦いをいどんでくるが、小羊は、主の主、王の王であるから、彼らにうち勝つ。また、小羊と共にいる召された、選ばれた、忠実な者たちも、勝利を得る」。 |
塚本訳 | 彼らは仔羊と戦い、仔羊が彼らに勝ち給うであろう。(彼こそ)主の主、王の王にいまし給うからである。また召されて彼と共にある者、選ばれた者、忠実な者が共に戦い、共に勝つであろう。」 |
前田訳 | 彼らは小羊とともに戦おうが、小羊は彼らに勝とう。小羊は主の主、王の王で、彼とともにあるのは召され、選ばれた真実のものらである」と。 |
新共同 | この者どもは小羊と戦うが、小羊は主の主、王の王だから、彼らに打ち勝つ。小羊と共にいる者、召された者、選ばれた者、忠実な者たちもまた、勝利を収める。」 |
NIV | They will make war against the Lamb, but the Lamb will overcome them because he is Lord of lords and King of kings--and with him will be his called, chosen and faithful followers." |
註解: 御使は十の角の将来の運命をヨハネに示す。黙19:11−21のキリストと非キリストとの最後の戦闘をここに予示し、そして羔羊 の勝利および彼と偕に戦うキリスト者の勝利を予告する。その理由とする所は極めて簡単であって、キリストが諸王の王に在し給うことに帰している。
辞解
[主の主、王の王] 旧約聖書にもしばしば用いられる神の称呼(ダニ2:47。詩136:3。Tテモ6:15)。
[召されたる者] (ロマ1:6。Tコリ1:2等)。
[選ばれたるもの] (ロマ16:13。Tペテ1:2)。
[忠実なるもの] (エペ1:1。コロ1:2)。何れもキリスト者を呼ぶ名称。
[勝を得べし] 原文に無し。省略せられしものと見る。他の語を補允せんとする説あれど不可。なお本節がここに存することを不適当としてこれを除かんとする学者あれど、その理由薄弱なり。
17章15節
口語訳 | 御使はまた、わたしに言った、「あなたの見た水、すなわち、淫婦のすわっている所は、あらゆる民族、群衆、国民、国語である。 |
塚本訳 | すると天使が私に言う、「お前が見た(あの)淫婦の坐っている(多くの)水(というの)は、(諸々の)民と群衆と、国と国語である。 |
前田訳 | 天使はいう、「淫婦がすわるのをなんじが見た水は、民族と群衆と国民と国語である。 |
新共同 | 天使はまた、わたしに言った。「あなたが見た水、あの淫婦が座っている所は、さまざまの民族、群衆、国民、言葉の違う民である。 |
NIV | Then the angel said to me, "The waters you saw, where the prostitute sits, are peoples, multitudes, nations and languages. |
註解: 1節の説明ならびに14節より16節に連絡する鎖。ローマの都は種々の人種、国語、国民の集合よりなるローマ帝国の主都であるのでそれらの上に坐していることとなるわけである。これを水にたとえることについては1節註参照。なおイザ8:7。エレ47:2。
辞解
[民、群衆、国、国語] 黙5:10辞解参照、なお黙7:9。黙10:11。黙11:9。黙13:7。黙14:6(その他ダニ3:4、ダニ3:29。ダニ3:31。ダニ5:19。ダニ6:26。ダニ7:14)みな四つづつ並べられていることに注意すべし。
17章16節 なんぢの
口語訳 | あなたの見た十の角と獣とは、この淫婦を憎み、みじめな者にし、裸にし、彼女の肉を食い、火で焼き尽すであろう。 |
塚本訳 | またお前が見た十の角と、(淫婦を背負っている)獣──彼らが(今度は)淫婦を憎み、彼女を荒れ果てさせ、裸にするであろう。またその肉を喰い、彼女を火で焼くであろう。 |
前田訳 | なんじが見た十の角と、かの獣とは、淫婦を憎み、彼女を荒らし裸にして、その肉を食い、彼女を火で焼こう。 |
新共同 | また、あなたが見た十本の角とあの獣は、この淫婦を憎み、身に着けた物をはぎ取って裸にし、その肉を食い、火で焼き尽くすであろう。 |
NIV | The beast and the ten horns you saw will hate the prostitute. They will bring her to ruin and leave her naked; they will eat her flesh and burn her with fire. |
註解: これまで淫婦を乗せその栄華を自己の誇りとしていた十の角と獣、すなわちローマの王とローマ領内の諸侯とは、従来の同盟者なるその淫婦ローマ市を憎み、これを完き破滅に帰せしめるであろう。18章はその細説である。内乱と反逆とが相続いで起っていた当時のローマ国の状態を目撃しているものは本節の意義を容易に了解したことであろう。またこれは如何なる文化もそれ自身の中より崩壊することの事実を示す。
辞解
[荒涼、裸] ホセ2:3参照。
[肉を喰ふ] 詩27:2参照。何れも悲惨なる状態を表わす。かくしてローマはその支持者讃美者によりて亡ぼされる。その故は次節にこれを示す。
17章17節 (そは)
口語訳 | 神は、御言が成就する時まで、彼らの心の中に、御旨を行い、思いをひとつにし、彼らの支配権を獣に与える思いを持つようにされたからである。 |
塚本訳 | というのは、神が彼らの心を動かしてその御意を行わせ、彼らの思いを一つにして、神の御言が成就するまでは彼らの王権を獣に与えさせ給うたからである。 |
前田訳 | 神は彼らにその意図を行ない、ひとつの意図を行なって、王国を獣に与える心を与えられた。神のことばが成就するまでである。 |
新共同 | 神の言葉が成就するときまで、神は彼らの心を動かして御心を行わせ、彼らが心を一つにして、自分たちの支配権を獣に与えるようにされたからである。 |
NIV | For God has put it into their hearts to accomplish his purpose by agreeing to give the beast their power to rule, until God's words are fulfilled. |
註解: ローマがかくも案外なる途によりて亡ぼされるに至る所以は外ではない、神がこの世の権力を使役してその御旨を行わしめ給うが故である。すなわち十の角なる諸王は自らは意識せずに神に動かされて一致してローマ国王に支配権を与え、ローマの滅亡を企ててこれを実行するに至るというのである。この世の文化、富、権力は結局この世そのものの力によりて崩壊すること今日も同様である。ヨハネは本書によりてこの原理を最も明瞭に示している。
辞解
[思わしめ給ひたればなり] 「彼らの心に与え給えるが故なり」で前節の事実が実現する時より見て過去となる。
[御旨、心] 同一文字 gnômê でローマ滅亡に対する心持を示す。
[神の言の成就] 黙19:19以下にイエスの完全なる勝利あり。これによりて獣は亡ぼされるに至る。ローマを滅ぼすものがローマ自身であることは深い真理を含む、歴史もまたこれを実証する。文化は人間がこれを滅ぼす、しかしこの人間を支配するサタンはキリストこれを滅ぼし給う。
17章18節 なんぢの
口語訳 | あなたの見たかの女は、地の王たちを支配する大いなる都のことである」。 |
塚本訳 | そしてお前が見たあの女こそ、地の王達の上に王権を有つ大なる都(バビロン)である。」 |
前田訳 | なんじが見た女は地の王たちの上に王権を持つ大都市である」と。 |
新共同 | あなたが見た女とは、地上の王たちを支配しているあの大きな都のことである。」 |
NIV | The woman you saw is the great city that rules over the kings of the earth." |
註解: これはバビロンでありまたローマである。しかしながら同時にまた凡ての大都市、大国家の中心都市はこれと同一の運命に遭わなければならない。このことは事実として歴史がこれを裏書している。
要義1 [この世の権力とこの世の文化]第17章においてヨハネはこの世の権力とその文化との関係について極めて意義ある解釈を与えている。ヨハネによれば、この世の富、栄華、交通、商工業、科学、芸術等凡ての文化は一国の主都たる大都市に集中し、サタンの代表者たる地上の権を示す獣に乗っているとのことである。すなわち文化は都市においてその花を開き国家的権力を利用してその最高潮に達し、その華美を誇る。そしてこの世の文化は結局においてこの世の権力と淫を行い、神とその民とを迫害する。そしてこの世の権力たる獣もまた、大淫婦たる文化都市をその飾りとしてその権力行使の舞台とするというのである。
しかしながらついにはその大都市とその文化は地上の権力そのものによリて滅ぼされるに至るとのことである。そしてこれ神の経綸によることであって、神は往々にしてその敵を使役して御自身の経綸を実行し給う。神の御旨である場合、世界文化の粋を集めた大都市さえも一朝にして滅亡に帰してしまう。
要義2 [地上の権力とその運命]七つの頭と十の角を持てる獣はサタンよりその能力と座位と権威とを与えられたる地上の権力者である(黙13:1−2)。地上の権力者はことごとくサタンの僕であるというのではない (黙21:24。ロマ13:1-2) 。しかしながらローマ皇帝のごとくに神を涜 し、キリスト者を迫害する者は、明かにサタンの僕であり、そして事実この世の権力者の多くは神に事 えずしてサタンに事 える。ヨハネはその代表的たるものとしてローマの国権とその国王とを眼中に置いて本章を録したのである。そしてサタンの僕たる地上の権力者は七人の王であって完全数であり、如何なる世にも存在する。そして一時はその迫害の手が弛むごとくであっても再びそれが復活する。ゆえにキリスト来りてサタンとその僕たる国権とを滅ぼし給うまでは(黙19:19−20)絶ゆることが無い。
サタンの僕たる獣は七人の王であるのみならずまた十人の王として活躍する。ローマ帝国の実状よリ着想を得たものと思われる。かくしてサタンの僕たる全権力は、文化の擁護者であると同時にその破壊者であり、そして彼ら自身は遂にキリストの軍勢のために滅ぼされる。このヨハネの解釈が恐らく文化史論として最も深い理解を有つものというべきであろう。
附記 [七つの頭とローマ皇帝との関係]黙13:3および黙17:11等よリ「前にあって今あらず後又来るべき獣」の頭の一つは、当時ネロ帝がすでに殺されているけれども復活して再びローマを攻めんとするとの風説があったのを利用したものと思われる。しかしながらこれを強いてネロその人を指すと解する必要が無く、キリストおよびその弟子を迫害するこの世の力は、一旦死ねるがごとくに見えてまた盛返すことを表徴したものとも見ることを得。かつ非キリストは凡てにおいてキリストと正反対であり、キリストが屠られてまた甦り給いしと同じく獣の頭の一つも死ぬるばかりにしてまた甦ったものとして描かれたものとも解することができる。
多くの学者は七つの頭をローマの皇帝の七代に当はめんと努力する。しかしながらこの試みは非常なる困難を伴い結局成功しない。その理由は
(1)ローマの第一代皇帝をケーザルとするかアウグストゥスとするかにつき決定し難い。
(2)極めて短期間皇位にあり、普通皇帝として数えられざるガルバ、オソー、ヴィテリウスを数の中に入るべきか否かにつきても説が分れる。
以上の二つを組合せて下の四つの数え方が生れる。
皇帝名 年代 T U V W ケーザル 〜30 1 1 アウグストゥス 30 - 14 2 2 1 1 チベリウス 14 - 37 3 3 2 2 カリグラ 37 - 41 4 4 3 3 クラウディウス 41 - 54 5 5 4 4 ネロ 54 - 68 6 6 5 5 ガルバ 68 - 69 7 6 オーソー 68 - 69 8 7 ヴィテリウス 69 - 69 8 ヴェスパシアヌス 69 - 79 7 6 ティトゥス 79 - 81 8 7 ドミティアヌス 81 - 96 8
黙17:10によれば五人はすでに倒れ現在の皇帝は第六代であることとなる。然るに第六代はI、IIによればネ口でありVによればガルバでありWによるもヴェスパシアヌスとなる。然るに黙示録の録されたのは緒言にも述べた通りドミティアヌスの時代と見ることが最も適当している故この四つの計算法の何れとも適合しない(I、IIにより本書をネロ帝時代の作とする説がある)。
要するに七つの頭をローマの七人の王に当てはめんとせる凡ての試みは必ず何らかの欠点がこれに伴う故に成功しない。結局この七人の王も表徴的に見るべきであって、地上の王を示す完全数と見るべく、現在が第六代であるとの意味も、第六の封印第六のラッパ等と同じく、最後のものが未だ現わされざることを意味したものと解すべきであろう。マンダ教の神話がこれに類似しているとしこれによりて説明せんとする試みも結局無意義に終るであろう(ローマイヤー)。要するにヨハネをしてこの記述をなさしめた原因はローマの七丘や、ネロ帝に関する風説等であったとしても、ヨハネはあくまでも全体の表徴的構成に重きを置いたものと解すべきであろう。
黙示録第18章
3-(3)-(ホ)-(丙) バビロンの覆滅
18:1 - 18:24
3-(3)-(ホ)-(丙)-(a) 天よりの声
18:1 - 18:8
註解: 前章において一人の天使がローマの都の性質とローマの国権、すなわち皇帝と諸侯との関係を録し、やがて後者が前者を壊滅に帰せしむべきことを説明したのであるが、本章においてはこれが実現する。すなわち他の一人の天使あらわれ、いよいよバビロンの滅亡を宣言し(1−3)、これに伴い天より声ありて神の民がその滅ぶべき都を逃るべきことを警告し(4−5)、彼女(大淫婦なるローマ市)にその罪に応じて報復すべきこととその結果とを述べ(6−8)、これに次で王たちの歎き(9、10)、商人たちの歎き(11−17a)、海上商人の歎き(17b−19)、最後に天使の言葉あり(20)、そうして後他の御使あらわれてバビロン
覆滅 の有様を示してその惨状につき預言する(21−24)。かくしてバビロン覆滅 の光景はありありとヨハネの眼前に展開した。ここに神に反する世界文化の終局の姿があり、今日の我らにとりても生ける教訓である。そしてこの文化を利用せしサタンと獣と偽預言者との審判は後に最後の審判に到って実現する(黙19:20。黙21:10)。
18章1節 この
口語訳 | この後、わたしは、もうひとりの御使が、大いなる権威を持って、天から降りて来るのを見た。地は彼の栄光によって明るくされた。 |
塚本訳 | この(異象の)後私はもう一人(他)の、大なる力を有つ天使が天から下りて来るのを見た。地はその栄光によって輝いた。 |
前田訳 | その後わたしは見た。別の天使が大きな権威を持って天から降り、地は彼の栄光で輝いた。 |
新共同 | その後、わたしは、大きな権威を持っている別の天使が、天から降って来るのを見た。地上はその栄光によって輝いた。 |
NIV | After this I saw another angel coming down from heaven. He had great authority, and the earth was illuminated by his splendor. |
註解: この御使がバビロンの壊滅を行ったのではなく、これを宣言している姿である。
辞解
[他の] 黙17:1に対す。
[権威] 御使は地の王をしてバビロンを滅させるべき使命と権威とを持つ故にその栄光は全地に輝く。この形容はエゼ43:2による。
18章2節 かれ
口語訳 | 彼は力強い声で叫んで言った、「倒れた、大いなるバビロンは倒れた。そして、それは悪魔の住む所、あらゆる汚れた霊の巣くつ、また、あらゆる汚れた憎むべき鳥の巣くつとなった。 |
塚本訳 | 彼は強い声で叫んで言うた、「倒れた、倒れた、大バビロンが! そして悪鬼の住家、あらゆる穢れた霊の逃げ場、またあらゆる穢れた憎むべき鳥の逃げ場となった。 |
前田訳 | 彼は強い声で叫んだ。いわく、「倒れた、倒れた、大バビロンは。それは悪鬼たちの住み家、すべての汚れた霊の巣、すべての汚れたいとわしい鳥の巣になった。 |
新共同 | 天使は力強い声で叫んだ。「倒れた。大バビロンが倒れた。そして、そこは悪霊どもの住みか、/あらゆる汚れた霊の巣窟、/あらゆる汚れた鳥の巣窟、/あらゆる汚れた忌まわしい獣の巣窟となった。 |
NIV | With a mighty voice he shouted: "Fallen! Fallen is Babylon the Great! She has become a home for demons and a haunt for every evil spirit, a haunt for every unclean and detestable bird. |
註解: 御使はここにローマが壊滅に帰せるものとしての叫びを挙げている。黙14:8にすでに予告された通りである。そしてバビロンが壊滅に帰せる後はあたかもイザ13:19−22。エレ50:39にあるバビロン滅亡の預言のごとく、人間の住み得ざる荒地と化してしまう。
辞解
[鳥] 往々悪魔的意味に用いられる(マタ13:32参照)故に「悪魔」「悪の霊」と共に凡て悪鬼を指し、華々しかった都が凡て魑魅魍魎 の住家となること。
[檻 ] phulakê を物見櫓 の意味に取る説もあれどここでは檻 と見る方可ならん。すなわち歓楽の都は牢獄のごとき陰欝の場所となること。
18章3節 (そは)もろもろの
口語訳 | すべての国民は、彼女の姦淫に対する激しい怒りのぶどう酒を飲み、地の王たちは彼女と姦淫を行い、地上の商人たちは、彼女の極度のぜいたくによって富を得たからである」。 |
塚本訳 | 何故なら、万国の民は彼女の淫行の憤怒の葡萄酒を飲み、地の王達は(皆)彼女と淫行をなし、地の商人達は彼女の豪勢な |
前田訳 | すべての民が彼女の姦淫の憤りの酒を飲み、地の王たちが彼女と姦淫を行ない、地の商人が彼女の奢りの力で富んだからである」と。 |
新共同 | すべての国の民は、/怒りを招く彼女のみだらな行いのぶどう酒を飲み、/地上の王たちは、彼女とみだらなことをし、/地上の商人たちは、/彼女の豪勢なぜいたくによって/富を築いたからである。」 |
NIV | For all the nations have drunk the maddening wine of her adulteries. The kings of the earth committed adultery with her, and the merchants of the earth grew rich from her excessive luxuries." |
註解: ローマ市が審 かれて壊廃する原因はその与えし悪影響のためであった。その悪影響は諸国民、国王、商人の三つの階級に及ぶ。これらは何れもローマの奢侈 と淫を行い共に奢侈 に陥りまたはこれを利用して自ら富めるが故であった。
辞解
[淫行の憤恚 の葡萄酒] 黙14:8辞解参照。
[王たち] 9節を見よ。
[奢 ] strênos 非常なる奢 りに耽溺 しつつこれを誇っていること。
[勢力 ] dunamis で力を意味す。奢侈 は一つの力である。今日の経済力は奢侈 の力に過ぎない。このハビロンの姿は今日の世界の姿に酷似す。今日世界万民の上に下っている審判もこのバビロンの滅亡の姿の一種である。
18章4節 また
口語訳 | わたしはまた、もうひとつの声が天から出るのを聞いた、「わたしの民よ。彼女から離れ去って、その罪にあずからないようにし、その災害に巻き込まれないようにせよ。 |
塚本訳 | また私はもう一つ(他)の声が天から(こう)言うのを聞いた、「私の民よ、彼女(の所)から出て来い。その罪に干与らず、またその災厄の巻き添えを喰わないために! |
前田訳 | そしてわたしは別の声が天からいうのを聞いた、「わが民よ、彼女を去れ、彼女と罪を共にせず、彼女のわざわいを受けないために。 |
新共同 | わたしはまた、天から別の声がこう言うのを聞いた。「わたしの民よ、彼女から離れ去れ。その罪に加わったり、/その災いに巻き込まれたりしないようにせよ。 |
NIV | Then I heard another voice from heaven say: "Come out of her, my people, so that you will not share in her sins, so that you will not receive any of her plagues; |
18章5節 かれの
口語訳 | 彼女の罪は積り積って天に達しており、神はその不義の行いを覚えておられる。 |
塚本訳 | 彼女の罪は天に達し、(今や)神はその悪事を思い出し給うたのである。 |
前田訳 | 彼女の罪は天にまでとどき、神は彼女の不義をおぼえたもう。 |
新共同 | 彼女の罪は積み重なって天にまで届き、/神はその不義を覚えておられるからである。 |
NIV | for her sins are piled up to heaven, and God has remembered her crimes. |
註解: ローマに審判が下る前に神の民に勧告が発せられる。これ神の民の純潔を保ちその平安を守らんがためである。そはローマの罪の甚だしき積り積って天に達しているからである。
辞解
[他の声] 神、キリスト、天使等種々に解せられるけれども4節より見て天使と解すべきであろう。
[中を出でよ] イスラエルの信仰の表徴とも云うべき語でイザ48:20。エレ50:8。エレ51:6、エレ51:45等のバビロンよりの脱出、アブラハムの故郷脱出(創12:1)。ロトのソドム脱出(創19:12)。その他 Uコリ6:17。エペ5:11。Tテモ5:22も同精神である。なおマコ13:14以下参照。
[積りて天に至り] 直訳「天まで密着し」で罪と罪とが次第に重畳 して天に到れる貌。
18章6節
口語訳 | 彼女がしたとおりに彼女にし返し、そのしわざに応じて二倍に報復をし、彼女が混ぜて入れた杯の中に、その倍の量を、入れてやれ。 |
塚本訳 | 彼女が(自分で他人に)為たように彼女にもせよ。その行為に応じて(報復を)二倍にせよ。彼女が(他人に)注いだ酒杯に、倍にして彼女に注げ。 |
前田訳 | 彼女も報いたように、彼女に報いよ。そのわざによる罰を二重にせよ。彼女が混ぜた杯に二倍混ぜよ。 |
新共同 | 彼女がしたとおりに、/彼女に仕返しせよ、/彼女の仕業に応じ、倍にして返せ。彼女が注いだ杯に、/その倍も注いでやれ。 |
NIV | Give back to her as she has given; pay her back double for what she has done. Mix her a double portion from her own cup. |
18章7節 かれが
口語訳 | 彼女が自ら高ぶり、ぜいたくをほしいままにしたので、それに対して、同じほどの苦しみと悲しみとを味わわせてやれ。彼女は心の中で『わたしは女王の位についている者であって、やもめではないのだから、悲しみを知らない』と言っている。 |
塚本訳 | 彼女が自分を誇り且つ奢っていただけの苦痛と悲歎とを彼女に与えよ。彼女は心の中で『私は女王として(王座に)坐っている。私は寡婦ではない。決して悲嘆に遭わないであろう』と言うからである。 |
前田訳 | 彼女が飾り奢っただけ、悩みと悲しみを与えよ。心の中で彼女はいうから、『わたしは女王として座し、やもめではなく、悲しみを見ない』と。 |
新共同 | 彼女がおごり高ぶって、/ぜいたくに暮らしていたのと、/同じだけの苦しみと悲しみを、/彼女に与えよ。彼女は心の中でこう言っているからである。『わたしは、女王の座に着いており、/やもめなどではない。決して悲しい目に遭いはしない。』 |
NIV | Give her as much torture and grief as the glory and luxury she gave herself. In her heart she boasts, `I sit as queen; I am not a widow, and I will never mourn.' |
註解: この命令は4節の神の民に与えられたものでなく、審判の行使に当る御使に与えられたと見るべきである(黙16:1)。行為の程度に従いて報いられるとの思想は旧約聖書を貫ける思想で幾分新約聖書にも及んでいる(マタ7:2)。神の正義は不公正を許容し給わないからである。この二節よりローマの罪は悪行(迫害等の)、淫行および奢侈 の三つであることがわかる。
辞解
lex talionis 復讐法につきてはイザ40:2。エレ16:18。エレ17:18。出22:3、出22:6、出22:8。詩137:8等参照。すなわち倍してまたは同一のことをもって受けし悪に報ゆることを当然と考えていた。
[自ら尊び] 「自ら栄光を帰し」でここでは悪しき意味に用いられている。
(
註解: イザ47:8より取る。ローマの都の高慢なる心持が表わされている。文化はその殷盛 時に当っては決してその没落を想像しない。人間の眼の暗さを示す一つの事実である。
18章8節 この
口語訳 | それゆえ、さまざまの災害が、死と悲しみとききんとが、一日のうちに彼女を襲い、そして、彼女は火で焼かれてしまう。彼女をさばく主なる神は、力強いかたなのである。 |
塚本訳 | だから(わずか)一日の中に(様々な)彼女の災厄、死と悲嘆と飢饉とが来、また火で焼かれるであろう。彼女を審き給うた主なる神は強くいまし給うからでる。 |
前田訳 | それゆえ彼女のわざわいが一日のうちに来よう−−疫病と悲しみと飢えが。そして彼女は火に焼かれよう。彼女を裁きたもう主なる神は強くいますから」と。 |
新共同 | それゆえ、一日のうちに、さまざまの災いが、/死と悲しみと飢えとが彼女を襲う。また、彼女は火で焼かれる。彼女を裁く神は、/力ある主だからである。」 |
NIV | Therefore in one day her plagues will overtake her: death, mourning and famine. She will be consumed by fire, for mighty is the Lord God who judges her. |
註解: ヨハネは前節より継続してイザ47:8以下を脳中に描きつつ筆を進める。すなわちローマなるバビロンは以上のごとく誇り、神を無視するが故に、力強き神は一朝にして彼を大なる禍害と破滅とに陥れ給うであろう。神に叛ける文化は思わざる時に神の審判を受ける。
辞解
[この故に] 前節のごとき理由ある故の意。
[一日のうちに] 「時の間に」(10、17、19節)と同じく一瞬にして、忽 にしての意。二十四時間と限定する要なし。
[死、悲歎、饑饉、火] 四つを掲げたのは四の数によりたるもの。
[強ければなり] 人はその文化に誇っている間は神の力を無視する。しかしながら神は如何なる文化よりも力強く在し給う。▲原子爆弾の危険が迫っている今日、この予言は具体的に我らの心に響く。
18章9節
口語訳 | 彼女と姦淫を行い、ぜいたくをほしいままにしていた地の王たちは、彼女が焼かれる火の煙を見て、彼女のために胸を打って泣き悲しみ、 |
塚本訳 | そして彼女と淫行をなし、(共に)奢っていた地の王達は、彼女の焼かれる煙を見た時、彼女のために泣いて胸を打ち、 |
前田訳 | 「彼女と姦淫して奢った地の王たちは、彼女の炎の煙を見て、彼女のために泣き悲しもう。 |
新共同 | 彼女とみだらなことをし、ぜいたくに暮らした地上の王たちは、彼女が焼かれる煙を見て、そのために泣き悲しみ、 |
NIV | "When the kings of the earth who committed adultery with her and shared her luxury see the smoke of her burning, they will weep and mourn over her. |
18章10節 その
口語訳 | 彼女の苦しみに恐れをいだき、遠くに立って言うであろう、『ああ、わざわいだ、大いなる都、不落の都、バビロンは、わざわいだ。おまえに対するさばきは、一瞬にしてきた』。 |
塚本訳 | (且つ)彼女の呵責の恐ろしさのため遠くに立って言うであろう、『禍なる哉、禍なる哉、大なる都、堅固なる都バビロン! 一時の間にお前の刑罰は来たではないか!』 |
前田訳 | 彼らは彼女の苦しみをおそれて、遠くに立っていう、『わざわい、わざわい、偉大な町、強い町バビロン。ひとときでなんじの裁きが来た』。 |
新共同 | 彼女の苦しみを見て恐れ、遠くに立ってこう言う。「不幸だ、不幸だ、大いなる都、/強大な都バビロン、/お前は、ひとときの間に裁かれた。」 |
NIV | Terrified at her torment, they will stand far off and cry: "`Woe! Woe, O great city, O Babylon, city of power! In one hour your doom has come!' |
註解: 前節までの審判によりていよいよ壊滅に帰せんとするを見て地の王たち(9−10節)、陸上商人たち(11−17a)、海上関係の人々(17b−19)が各々これに対して哀悼の歌をうたう。彼らはみなこの大都市のために富み栄えたものであるから。地の王たちはかつて彼女(ローマの都)と共に淫を行いかつ奢侈 に耽っており、大都市の文化とその奢侈 とを彼らの偶像となし、またその遊女としていた。然るに一朝その滅亡が襲い来るに及んで、彼らは驚駭と恐怖とのためにこれに近付かず遙かに立ちてこれを悲しむ有様はまことにその卑しき心情を穿っている。
辞解
[彼と淫をおこない彼と共に奢 りたる] 「彼とともに淫を行いかつ奢 りたる」と訳すべきである。
[地の王たち] 黙17:2、黙17:18。黙18:3参照。
[堅固なる都] 直訳「強き都」で8節の「強き神」と対応す。なお9節以下の哀悼詞につきてはエゼ27章参照。
18章11節
口語訳 | また、地の商人たちも彼女のために泣き悲しむ。もはや、彼らの商品を買う者が、ひとりもないからである。 |
塚本訳 | また地の商人達は彼女のために泣き悲しむ。最早誰もその商品を買う者がないからである── |
前田訳 | 地の商人も彼女のために泣き悲しもう、もはやだれも彼らの品を買わぬから。 |
新共同 | 地上の商人たちは、彼女のために泣き悲しむ。もはやだれも彼らの商品を買う者がないからである。 |
NIV | "The merchants of the earth will weep and mourn over her because no one buys their cargoes any more-- |
註解: 商人の悲しみも王たちの悲しみと同様全く利己的の動機に支配されているに過ぎない。この世の文化とその奢侈 とが滅ぼされる時、最大の苦痛を蒙 るものは、先に最大の利益を得ていた輩であるのは当然である。
口語訳 | その商品は、金、銀、宝石、真珠、麻布、紫布、絹、緋布、各種の香木、各種の象牙細工、高価な木材、銅、鉄、大理石などの器、 |
塚本訳 | すなわち金、銀、宝石、真珠(の商品も)、細布、紫色、絹、緋色の商品(も)、あらゆる(種類の)香木、あらゆる象牙の器(も)、究めて高価な木、青銅、鉄、大理石の器(も)、 |
前田訳 | 品とは金、銀、宝石、真珠、麻布、紫の布、絹、緋の布で、またあらゆる香木、あらゆる象牙の器、あらゆる名木、銅、鉄、大理石の器、 |
新共同 | その商品とは、金、銀、宝石、真珠、麻の布、紫の布、絹地、赤い布、あらゆる香ばしい木と象牙細工、そして、高価な木材や、青銅、鉄、大理石などでできたあらゆる器、 |
NIV | cargoes of gold, silver, precious stones and pearls; fine linen, purple, silk and scarlet cloth; every sort of citron wood, and articles of every kind made of ivory, costly wood, bronze, iron and marble; |
註解: 12−14節はエゼ27章に倣 える商品の列挙であるが、これを七種類に区別し第七類を除きその各を四つづつに組合せることができる。その第一類は直訳すれば「金・銀・宝石・真珠の商品」で貴金属宝石類およびこれらより造れる品物を指す。古来最も普通の奢侈 品。
註解: 第二類は直訳「細布・紫色・絹・緋色の商品」で高価なる衣類を指す。
辞解
[細布] bussinos は麻製の細糸にて織れる布 (黙19:8、黙19:14)。
[紫色] porphura は高貴人の衣服、 マコ15:17、マコ15:20。ルカ16:19 に「紫色の衣」と訳されしもの。
[絹] 当時の贅沢品。
[緋色] kokkinos も紫色と同様高貴の衣服の材料(マタ27:28)。この二者相類似せるものであることにつきてはマタ27:28とマコ15:17とを比較せよ。
および
口語訳 | 肉桂、香料、香、におい油、乳香、ぶどう酒、オリブ油、麦粉、麦、牛、羊、馬、車、奴隷、そして人身などである。 |
塚本訳 | 肉桂、香料、香、香油、乳香、葡萄酒、油、麦粉、穀物(も)、家畜、羊、馬、馬車、奴隷、人の霊魂(も)、凡て最早買うことが出来ない。 |
前田訳 | 肉桂、香料、香没薬、乳香、ぶどう酒、油、粉、小麦、牛、羊、馬、車、奴隷、人身。 |
新共同 | 肉桂、香料、香、香油、乳香、ぶどう酒、オリーブ油、麦粉、小麦、家畜、羊、馬、馬車、奴隷、人間である。 |
NIV | cargoes of cinnamon and spice, of incense, myrrh and frankincense, of wine and olive oil, of fine flour and wheat; cattle and sheep; horses and carriages; and bodies and souls of men. |
註解: 第三類はまた四種よりなり、その中第三種はまた四つの材料(木、真鍮、鉄、蝋石)に分たれている。これらは凡て室内を装飾する贅沢品類である。
辞解
[香木] xulon thuinon は北アフリカに産する芳香を有しかつ種々の木目、色沢 を有する木材で家屋内の建具や香料等として用いらる。
[肉柱] kinnamômon は種々の説あれど、やはりセイロン、南支那等を主産地とする肉桂樹のことでその皮より香料または香油を採る。香料の一種なるをもってこれを次の第四類の中に属せしめる方が普通であるけれども予は、これを室内の香料として用いるものと見て第三類の中に入れた。
註解: 第四類は香油類で祭事用その他上流婦人の必要品と目せられている種類のもの。
辞解
[香料] amômon 東方諸国に産する葡萄に類する植物でその種子より香料を採り頭髪用などに用いられる。
[香] thumiama は香壇に焼く場合に用いられる香。
[香油] myron は香料を加えたる油で化粧用に用いられる高貴なるもの、マリヤがイエスの御足に塗りしはこの香油であつた(マタ26:7その他)。
[乳香] libanos マタ2:11辞解参照。礼拝用その他に用いらる。
註解: 第五類は食料品四種を列挙して凡てを代表する。
辞解
[麦粉] semidalis は非常に細く製したもので贅沢品、「麦」はエジプトよりローマに輸入された。
註解: 第六類は当時の貴人のために使役または利用される動物および人間を指す。一見六種を列挙せるごときもこの中、馬・車・奴隷の三者のみ文法上の第二格が用いられており一括して貴人用の乗物を意味すと見ることができる(ただしこの格の変化を多くの学者は文章の単調を破るためと解す)。
辞解
[牛] ktênê は一般の家畜、「獣」と訳されるもの。
[車] rhedê は四輪の大車。
[奴隷] sômata すなわち「身体」なる文字の複数で奴隷の意味に用いられる(創36:6)。
[人の魂] psychai anthrôpôn は「人の身」で同じく奴隷の意味に用いられている(エゼ27:13。T歴5:21)。従って前の奴隷 sômata と同義となるので「および」を「すなわち」と読む説(B3)あれど、むしろ前者を馬車の御者のごときものと見てこれを区別するか(B1)または後者をさらに一層深き意味に解し、商業の力は往々にして人間をしてその霊の自由を失わしめ、その奴隷とならしめ商人は金銭をもって人間の霊魂を売るごとき意味に解することもできる。遊女のごときその見易き例である。
18章14節 なんぢの
口語訳 | おまえの心の喜びであったくだものはなくなり、あらゆるはでな、はなやかな物はおまえから消え去った。それらのものはもはや見られない。 |
塚本訳 | またお前の霊魂の欲しがる果物はお前から(逃げ)去った。あらゆる(お前の)華やかなもの、きらびやかなものもお前から消え失せた。それは最早決して(再び)見られないであろう。 |
前田訳 | なんじの心のよろこびの実は消え、あらゆる輝きとはなやかさは失せた。それらはもはや見られない。 |
新共同 | お前の望んでやまない果物は、/お前から遠のいて行き、/華美な物、きらびやかな物はみな、/お前のところから消えうせて、/もはや決して見られない。 |
NIV | "They will say, `The fruit you longed for is gone from you. All your riches and splendor have vanished, never to be recovered.' |
註解: 第七類は三つより成る。衣食住の贅沢品の概称と見るべきである。
辞解
[嗜 みたる] 貪り求めたるという意。
[果物] opôra は実りてまさに刈入れられんとする果物類。
[華美なる物] lampra は派手なる衣服調度品類。これらは凡て滅失して今後はもはやこれを見ることすらできないような有様となる。なお本節前半は第二人称をもって録され、前後と連絡宜しからず、その結果これを23節の後に置かんとする学者がある(B1、ローマイヤー)。けれどもこの種の文書においてはかかる不規則は少くない。
18章15節 これらの
口語訳 | これらの品々を売って、彼女から富を得た商人は、彼女の苦しみに恐れをいだいて遠くに立ち、泣き悲しんで言う、 |
塚本訳 | これらの(物を商う)商人、(すなわち)彼女によって富んだ者達は、彼女の呵責の恐ろしさのため遠くに立ち、泣き悲しみつつ |
前田訳 | これらの品で富んだ商人は彼女の苦しみをおそれて遠く立ち、泣き悲しんで、 |
新共同 | このような商品を扱って、彼女から富を得ていた商人たちは、彼女の苦しみを見て恐れ、遠くに立って、泣き悲しんで、 |
NIV | The merchants who sold these things and gained their wealth from her will stand far off, terrified at her torment. They will weep and mourn |
18章16節 「
口語訳 | 『ああ、わざわいだ、麻布と紫布と緋布をまとい、金や宝石や真珠で身を飾っていた大いなる都は、わざわいだ。 |
塚本訳 | 言うであろう、『禍なる哉、禍なる哉、大なる都、細布と紫と緋の衣を着、金と宝石と真珠とにて(身を)飾っている者、 |
前田訳 | いおう、『わざわい、わざわい、大きな町−−麻布、紫の布、緋の布を着、金と宝石と真珠で飾られた町。 |
新共同 | こう言う。「不幸だ、不幸だ、大いなる都、/麻の布、また、紫の布や赤い布をまとい、/金と宝石と真珠の飾りを着けた都。 |
NIV | and cry out: "`Woe! Woe, O great city, dressed in fine linen, purple and scarlet, and glittering with gold, precious stones and pearls! |
18章17節
口語訳 | これほどの富が、一瞬にして無に帰してしまうとは』。また、すべての船長、航海者、水夫、すべて海で働いている人たちは、遠くに立ち、 |
塚本訳 | こんな(大きな)富が一時の間に荒れ果て(てしまっ)たではないか!』また凡ての船長、沿海を航海する凡ての人達、水夫達、海で働く人達も(悉く)遠くに立ち、 |
前田訳 | ひとときであれほどの富が無に帰した』と。すべての船長、舟びと、水夫、およそ海で働くものは、遠く立ち、 |
新共同 | あれほどの富が、ひとときの間に、/みな荒れ果ててしまうとは。」また、すべての船長、沿岸を航海するすべての者、船乗りたち、海で働いているすべての者たちは、遠くに立ち、 |
NIV | In one hour such great wealth has been brought to ruin!' "Every sea captain, and all who travel by ship, the sailors, and all who earn their living from the sea, will stand far off. |
註解: 10節の王たちの悲嘆の詞に相当する商人の悲嘆の詞であって、苦難を懼れて遙かに立つ点は王たちの場合と同一であるけれども(10節)その悲嘆の理由は異なり、王たちの場合はローマの力に関し商人の場合はその富と奢侈 とに関す。
18章18節 バビロンの
口語訳 | 彼女が焼かれる火の煙を見て、叫んで言う、『これほどの大いなる都は、どこにあろう』。 |
塚本訳 | 彼女の焼かれる煙を見て叫んで言うた、『(世界の)どの都が(かつて)この大なる都のようであったか!(しかしそれがあのように焼かれた!)』 |
前田訳 | 彼女が燃える煙を見て叫んだ、『この大きな町にどれが比べられよう』と。 |
新共同 | 彼女が焼かれる煙を見て、「これほど大きい都がほかにあっただろうか」と叫んだ。 |
NIV | When they see the smoke of her burning, they will exclaim, `Was there ever a city like this great city?' |
註解: 17b−19節は海上商人およびその関係者の悲嘆の詞である。ローマは直接の海港ではないけれどもローマに供給される物質の海路によるもの多きと、およびエゼ27章の模範とによりかく記したものであろう。
辞解
[すべての海をわたる人々] 原文やや不明、おそらく「各処を航海するすべての人」と訳するか(S3)または誤字ありと認むべきであろう(B3)。
[いづれの都か云々] 讃美に用いられる定形句黙13:4辞解参照。
[海によりて生活をなすもの] 原文、海仕事をなすものというごとき意。
18章19節
口語訳 | 彼らは頭にちりをかぶり、泣き悲しんで叫ぶ、『ああ、わざわいだ、この大いなる都は、わざわいだ。そのおごりによって、海に舟を持つすべての人が富を得ていたのに、この都も一瞬にして無に帰してしまった』。 |
塚本訳 | そして頭に塵を被り、泣き悲しみつつ叫んで言うた、『禍なる哉、禍なる哉、大なる都、海に船を有つ者は皆其処で彼女の(夥しい)珍宝によって富んだのに、(今)その都が一時の間に荒れ果て(てしまっ)たではないか!』」 |
前田訳 | 彼らは頭にちりを被り、泣き悲しんで叫んだ、『わざわい、わざわい、大きな町、すべて海に舟を持つものが彼女の繁栄で富んだのに、町はひとときで無に帰した』と。 |
新共同 | 彼らは頭に塵をかぶり、泣き悲しんで、こう叫んだ。「不幸だ、不幸だ、大いなる都、/海に船を持つ者が皆、/この都で、高価な物を取り引きし、/豊かになったのに、/ひとときの間に荒れ果ててしまうとは。」 |
NIV | They will throw dust on their heads, and with weeping and mourning cry out: "`Woe! Woe, O great city, where all who had ships on the sea became rich through her wealth! In one hour she has been brought to ruin! |
註解: 船主やその関係者の富はバビロンの奢侈 のためであった。彼らはその富の源とその商売とを失ふ悲みのためにこの呻吟 の声を発している。
辞解
[塵を首 に被 る] 灰を被 ると同じく悲みまたは懺悔のしるし(引照1参照)。
18章20節
口語訳 | 天よ、聖徒たちよ、使徒たちよ、預言者たちよ。この都について大いに喜べ。神は、あなたがたのために、この都をさばかれたのである」。 |
塚本訳 | 天よ(喜べ、)聖徒、使徒、預言者達よ、彼女について喜べ、お前達の(流した血の)ために神が彼女に罰を加え給うたのだ! |
前田訳 | 彼女のことをよろこべ、天よ、聖徒よ、使徒よ、預言者よ。神はおん身らの彼女への裁きを全うされたから」と。 |
新共同 | 天よ、この都のゆえに喜べ。聖なる者たち、使徒たち、預言者たちよ、喜べ。神は、あなたがたのために/この都を裁かれたからである。 |
NIV | Rejoice over her, O heaven! Rejoice, saints and apostles and prophets! God has judged her for the way she treated you.'" |
註解: 最後に天よりの声(4節)が自ら叫び天地に向って喜ぶべきことをすすめている。勿論この喜びは私的鬱憤を晴らせることを喜ぶ意味ではなく、不義がその正しき報いを受け、キリスト者はこれによりてその正義を証明することができたことに対する喜びである。現に迫害の下に苦痛を忍んでいる多くの人々はこの声を聴いて喜びに溢れることであろう。
辞解
[天よ] 詩69:34。イザ44:23。エレ51:48参照。地上に神の正義が成ることは天における喜びである。
[聖徒] 全キリスト教会。
[使徒、預言者] その中の特種の賜物を持てるもの。
[なんぢらの為にこれを審 き給ひたればなり] 直訳「彼より汝の審 き(または訴訟、B3)を審 き給いたればなり」で汝らのための審判を彼の上に下し彼を処罰したとの意味である。
18章21節
口語訳 | すると、ひとりの力強い御使が、大きなひきうすのような石を持ちあげ、それを海に投げ込んで言った、「大いなる都バビロンは、このように激しく打ち倒され、そして、全く姿を消してしまう。 |
塚本訳 | すると一人の強い天使が大きな碾臼のような石を持ち上げ、海に投げ込んで言うた、「大なる都バビロンは(丁度)このように烈しい力で投げ倒され、最早決して(再び)見られないであろう。 |
前田訳 | ひとりの強い天使が大きな臼のような石を持ちあげ、海に投げていう、「このような激しさで大きなバビロンの町は倒され、もはや見られまい。 |
新共同 | すると、ある力強い天使が、大きいひき臼のような石を取り上げ、それを海に投げ込んで、こう言った。「大いなる都、バビロンは、/このように荒々しく投げ出され、/もはや決して見られない。 |
NIV | Then a mighty angel picked up a boulder the size of a large millstone and threw it into the sea, and said: "With such violence the great city of Babylon will be thrown down, never to be found again. |
註解: 1−20節の御使の言が21節において具体的に、実例をもって実演せられ22−23a節にその状況が説明せられ、23b−24節にその理由が述べられる。そしてこの理由は1−20節の場合と異なり宗教的方面に関連する。そしてバビロンの滅亡はあたかも大なる碾臼 が海に投げ入れられるごとく忽 ちにして人間社会よりその姿を消してしまうであろう。この譬はエレ51:63によりたるもの。
辞解
[大なる碾臼 ] 驢馬に引かせる石臼は非常に大きい。
[烈しく] 石を投げる時の勢いのごとき烈しき衝動をいう。
[撃ち倒されて] 直訳「投げ付けられて」。
18章22節
口語訳 | また、おまえの中では、立琴をひく者、歌を歌う者、笛を吹く者、ラッパを吹き鳴らす者の楽の音は全く聞かれず、あらゆる仕事の職人たちも全く姿を消し、また、ひきうすの音も、全く聞かれない。 |
塚本訳 | また竪琴を弾く者、歌うたう者、笛を吹く者、ラッパを吹く者達の声は最早決してお前の中にて聞かれず、凡ての細工をする凡ての細工人も最早決してお前の中にて見られず、また碾臼の音も最早決してお前の中にて聞かれないであろう。 |
前田訳 | 琴ひき、楽人、笛吹き、ラッパ吹きの音は、もはやそこで聞かれず、あらゆる技術の職人がもはやそこで見られず、臼の音はもはやそこで聞かれまい。 |
新共同 | 竪琴を弾く者の奏でる音、歌をうたう者の声、/笛を吹く者やラッパを鳴らす者の楽の音は、/もはや決してお前のうちには聞かれない。あらゆる技術を身に着けた者たちもだれ一人、/もはや決してお前のうちには見られない。ひき臼の音もまた、/もはや決してお前のうちには聞かれない。 |
NIV | The music of harpists and musicians, flute players and trumpeters, will never be heard in you again. No workman of any trade will ever be found in you again. The sound of a millstone will never be heard in you again. |
註解: 凡ての音楽はバビロン(ローマ)の中より絶えて今日までの歓楽郷は全く死の衢 と化す。神の審判の前にあるゆる人間文化の快楽は破壊される時が来る。
辞解
[楽を奏するもの] 肉声をもって歌うもの、または立琴、笛、ラッパ以外の楽器をもって楽を奏する者を指したのであろう。
[声] 「音」
註解: 衣食住の必要品を生産する人々は全くその影をひそめ、粉ひく碾臼 の音すら絶えてバビロン(ローマ)の大都市は狐狸 の住家となる。
辞解
[細工人] 金属工、木材工、職工等の何れにも用いられる。
18章23節
口語訳 | また、おまえの中では、あかりもともされず、花婿、花嫁の声も聞かれない。というのは、おまえの商人たちは地上で勢力を張る者となり、すべての国民はおまえのまじないでだまされ、 |
塚本訳 | また燈火の光は最早決してお前の中にて(照り)輝かず、新郎新婦の(喜ばしい)声も最早決してお前の中にて聞かれないであろう。何故なら、お前の商人は地の権力者となり(て奢り楽しみ)、万国の民はお前の(淫行の)呪術によって誑かされ、 |
前田訳 | ともしびの光はもはやそこで輝かず、花むこ花よめの声はもはやそこで聞かれまい。なんじの商人は地の有力者であったし、なんじの魔術ですべての国民があざむかれ、 |
新共同 | ともし火の明かりも、/もはや決してお前のうちには輝かない。花婿や花嫁の声も、/もはや決してお前のうちには聞かれない。なぜなら、お前の商人たちが/地上の権力者となったからであり、/また、お前の魔術によって/すべての国の民が惑わされ、 |
NIV | The light of a lamp will never shine in you again. The voice of bridegroom and bride will never be heard in you again. Your merchants were the world's great men. By your magic spell all the nations were led astray. |
註解: 日常生活のための燈火のみならず饗宴、夜会等の歓楽のための燈火すらみな消え去って蕭條 たる光景と化す。
註解: 人生の最も潔きよろこびすらもこれを失いたる荒蕪 に帰せる土地の有様を録す場合にこの形容はしばしば用いられている(エレ7:34。エレ16:9。エレ25:10。エレ33:11)。
そは
註解: 「大臣」は最有力者の意味で(黙6:15)地の商人がその富をもって地上に最高の勢力を振いしことがバビロン(ローマ)の審 かれる原因の第一として数えられている。その故は、富の力は多くの人をして正義の道を踏み迷わしめるからである。第二の原因としては、諸国民がバビロン(ローマ)の呪術に迷わされたことを掲げている。すなわちその文化と享楽のために心は高ぶり、良心は麻痺して神を無視し肉慾に支配される生活に陥ったからである。
18章24節 また
口語訳 | また、預言者や聖徒の血、さらに、地上で殺されたすべての者の血が、この都で流されたからである」。 |
塚本訳 | また預言者、聖徒達の血と、地上で屠られた凡ての(殉教)者の血が彼女の中にて見られたからである。」 |
前田訳 | 預言者と聖徒とすべて地上で殺されたものの血がそこで流されたから」と。 |
新共同 | 預言者たちと聖なる者たちの血、/地上で殺されたすべての者の血が、/この都で流されたからである。」 |
NIV | In her was found the blood of prophets and of the saints, and of all who have been killed on the earth." |
註解: バビロン(ローマ)滅亡の第三の原因はそれが多くの殉教者の血を流したということである。神を信ぜざる者は神の民を迫害する。そしてその迫害の血は再び彼らの上に還って来る(マタ23:35 )。勿論キリスト教徒の血はローマの都の中にのみ流されたのではない。ヨハネが「この都の中に見出された」ということをもって見ても、バビロンもローマも何れも表徴に過ぎず、実は神を離れしこの世の文化とその有する力を指したのであることが判明 る。
要義1 [バビロソ滅亡の姿]我らは今日の世界苦の中にこのバビロンの覆滅 に類する姿をさながらに見ることができる。第十九世紀の終りまでは文化の華咲き乱れ、この世界がまさに天国の美しさに化せんとしているもののごとくであった。然るに一朝にして欧洲の文化に夕の鐘の音が響き渡るにおよび、地上の王は欧洲文化の没落を悲しみ、その商人は過去の栄華を夢みて現在の不況を嘆き、その海上商人は海上貿易の頓挫によりて悲痛の呻吟 をあげている。この有様がさらに永続し、一層強き程度において起るならば世界の文化は全く壊滅に帰し、22−23節のごとき有様が文字通りに実現するであろう。ヨハネがこの世の文化に対してかかる判断を持つことができるのは神の黙示によることである。
要義2 [バビロンの滅亡と今日の文化]バビロン(ローマ)の滅亡の原因はその罪悪(2、3、5節)その奢侈 (16節)、その物質的勢力(3、23節)、その偶像崇拝(23節)および聖徒の迫害殺戮である(24節)。そしてこれらの凡ては今日の文明もまた同じく陥っている処のものであって、凡ての国および時代の人間的文化の共通の性質であると見なければならない。それ故にバビロン(ローマ)の滅亡に関する黙示録の預言は単にローマのみを指したのではなく、凡ての人間的文化の末路を指摘したものであることは明かである(24節の終りおよび、黙11:8註参照)。人間的文化の進歩に対する楽観的の見方と聖書の見方とは、かくのごとく全く正反対の立場にあることに注意しなければならない。而してこの神の言は廃 ることなく必ず成就するであろう。
要義3 [文明、文化の意味]文明とか文化とかが何を意味するかを定義することは困難であるが、もしそれが人間の知識、智慧、才能、思想より生れ出たものであるとするならば、それ自身としては感謝して受くべきものであって決して棄つべきものでもなく、また詛わるべきものでないけれども、これらは多くの場合サタンの使役の下に置かれるのであって(例えば今日の物質文明と科学的発明の凡てがその精華を殺人機械の製造に用いられるごとき)、かかる文明や文化はすなわちバビロンであって必ず神の審判を受けなければならない。かかる文化はそれ自身が自己の破壊者となる。その個人主義文化たると社会主義文化たるとを問わず、資本主義社会たると共産主義社会たるとを問わない。