黙示録第7章
分類
3 この世の審判と救
4:1 - 18:24
3-(1) 七つの封印の審判
6:1 - 7:17
3-(1)-(第一挿景) 十四万四千人印せらる(神の予定)
7:1 - 7:8
註解: 第六の封印を解き終り最後の第七の封印が開かれる前に中間挿景として神の救いの方面を示さんがために、第七章が、録されている。一方に神の審判が行われつつある間に神はまたその選びたる者を召し、これに完き救いを約束し給う。この両方面を巧に相交錯せしめた処にヨハネの優れたる筆致を見ることができる。これによりて読者は一方に審判の恐るべき光景を見ると同時に他方救われしものの祝福の光景を予見することができる。そして1−8節は救いの予定であり、9−17節は救われしものの天における祝福の光景である。
7章1節 この
口語訳 | この後、わたしは四人の御使が地の四すみに立っているのを見た。彼らは地の四方の風をひき止めて、地にも海にもすべての木にも、吹きつけないようにしていた。 |
塚本訳 | この後で四人の御使いが地の四隅に立って、地の四方の風を引き留め、風が地の上に、また海の上に、また一切の樹々の上に吹かないようにしているのを私は見た。 |
前田訳 | その後わたしは見た。四人の天使が地の四隅に立って、地の四方の風を押さえていた。それは風が地にも海にも、どの木にも吹かないためであった。 |
新共同 | この後、わたしは大地の四隅に四人の天使が立っているのを見た。彼らは、大地の四隅から吹く風をしっかり押さえて、大地にも海にも、どんな木にも吹きつけないようにしていた。 |
NIV | After this I saw four angels standing at the four corners of the earth, holding back the four winds of the earth to prevent any wind from blowing on the land or on the sea or on any tree. |
註解: ユダヤにおいて世の終末に際し非常なる暴風が襲い来ることの信念があった。四人の使は「風の御使」で風を支配する権を持つ、すなわち神の審判の一方面を担当する御使である。今しばらく彼らは風を吹かせず神の救いの予定に従い印される者の数充つるまで待っている光景を示す。
辞解
[四] 地の数。
[樹] 特に風当りが強いためこれをここに加えたものであろう。なお原語では名詞の格の変化により「樹」に対して特に風当りの強いことを示しているけれども訳語にこれを表わすことはできない。
[御使] 風の御使の外に「火」「水」等の御使もあり(黙14:18。黙16:5参照)、日本の火の神、風の神、水の神というと思想上相類似している。ヨハネは当時通有の信念を利用した。
7章2節 また
口語訳 | また、もうひとりの御使が、生ける神の印を持って、日の出る方から上って来るのを見た。彼は地と海とをそこなう権威を授かっている四人の御使にむかって、大声で叫んで言った、 |
塚本訳 | また私はもう一人(他)の御使いが、活ける神の玉璽を(手に)持って太陽の出る方から上(って来)るのを見た。彼は地と海(と樹々)とを害うことを許された四人の御使いに大声で叫んで |
前田訳 | そしてわたしは見た。別の天使が生ける神の印(いん)を持って日の出る方から上って来た。彼は地と海とを損なうことを許されている四人の天使に大声で叫んだ。 |
新共同 | わたしはまた、もう一人の天使が生ける神の刻印を持って、太陽の出る方角から上って来るのを見た。この天使は、大地と海とを損なうことを許されている四人の天使に、大声で呼びかけて、 |
NIV | Then I saw another angel coming up from the east, having the seal of the living God. He called out in a loud voice to the four angels who had been given power to harm the land and the sea: |
註解: これによりて神の僕の額に印せんとしているのである。
辞解
[いける神] 死ねる神なる偶像に対して用いられる称呼。
[印] 本来公文書、証書、自己の所有物奴隷等に押捺してその有効なることまたはその所有権の証となすものである。この場合は神が己に属するものなることを保証すると同時にこれを保護して正義の中に止らしめ他より害を受けしめざることを表わす (Uテモ2:19。Uコリ1:22。エペ1:13。エペ4:30。ロマ4:11)。
[日の出づる方] 東方を指すこと勿論であるが何故に東方を選びしかにつき諸説あり、おそらくエゼ43:4より取りたるものであろう。その理由は日の東より出でて西に没して全地にその光を及ぼすがごとくに御使が神の印を印する行為が全地に及ぶ有様を描けるものであろう。なお東方より救いが来ること、パラダイスが東方にあること(創2:8。創3:24)、メシヤが東より来る等の思想も当時存在した(ローマイヤー)。
かれ
7章3節 『われらが
口語訳 | 「わたしたちの神の僕らの額に、わたしたちが印をおしてしまうまでは、地と海と木とをそこなってはならない」。 |
塚本訳 | 言うた、「私達が神の(玉璽でその)僕達の額に印をつけ(終わ)るまでは、地をも海をも樹々をも害うな!」 |
前田訳 | いわく、「われらが神の僕らの額に印をするまでは、地も海も木々も損なうな」と。 |
新共同 | こう言った。「我々が、神の僕たちの額に刻印を押してしまうまでは、大地も海も木も損なってはならない。」 |
NIV | "Do not harm the land or the sea or the trees until we put a seal on the foreheads of the servants of our God." |
註解: この御使の言により1節にある四人の天使はその働きを中止した。神がその民を救い給う場合、神の審判はかれらに及ぶことができない。
辞解
[額に印す] 奴隷は額にその主人の名をもって印せられた。神の僕はその額に神の名をもって印されるは当然である。これはパウロの所謂聖霊をもって印することを指したのである。使徒時代以後においてはこの印をバプテスマと解するようになつたけれども聖書にはかく解した形跡がない。
7章4節 われ
口語訳 | わたしは印をおされた者の数を聞いたが、イスラエルの子らのすべての部族のうち、印をおされた者は十四万四千人であった。 |
塚本訳 | すると(間もなく)私は印をつけられた者の数を聞いた。(曰く)──イスラエルのあらゆる種族の子達の中から印をつけられた者が(総計)十四万四千。 |
前田訳 | そしてわたしは印をされたものの数を聞いた。それは十四万四千人で、イスラエルの子らの族(やから)すべてから印をされたものであった。 |
新共同 | わたしは、刻印を押された人々の数を聞いた。それは十四万四千人で、イスラエルの子らの全部族の中から、刻印を押されていた。 |
NIV | Then I heard the number of those who were sealed: 144,000 from all the tribes of Israel. |
註解: ヨハネは額に印される有様を見ず、唯その数を耳にて聴くのみであった、かくしてイスラエルの子らのもろもろの族すなわち全人類の中より救わるべき凡ての人が額に印せられ神の所有として聖別された。これらがやがて9節に白き衣をきて顕われるのである。
辞解
[イスラエルの子らのもろもろの族] かくして印される人はあるいは(1)ユダヤ人の残れるもの、または(2)ユダヤ人中のキリスト者等と解せられているけれども、むしろイスラエルを霊的に解して全キリスト信者と見ることが正しい解釈である。その故は新約聖書では(a)教会は真のイスラエルであり (黙2:9。黙3:9。ロマ2:29。ガラ6:16。ヤコ1:1) 、(b)エルサレムは新しき神の国の都を代表し (黙20:9。黙21:2、黙21:10。ガラ4:26) またその門にはイスラエルの十二の族の名を記す等のことあり、イスラエルと教会とを同視し、(c)黙14:1にも同じく十四万四千人につき記され、そこにては明かに教会を意昧すること等よりこれを知ることができる。
[十四万四千] 神の国の数なる十二の自乗を一千倍せるものであって、自乗は方形すなわち地の形に相応し千はその多数なることを顕わす。すなわち十四万四千は神の国の民として地より選まれし者の数を示す。以上のごとくに解するならば、ある学者のごとく、この部分をユダヤ教の黙示文学の資料によるものと解する必要はない。
7章5節 ユダの
口語訳 | ユダの部族のうち、一万二千人が印をおされ、ルベンの部族のうち、一万二千人、ガドの部族のうち、一万二千人、 |
塚本訳 | (まずユダ族から始めるならば──)ユダ族から一万二千印をつけられ、ルベン族から一万二千、ガド族から一万二千、 |
前田訳 | ユダの族から一万二千が印をされ、ルベンの族から一万二千、ガドの族から一万二千、 |
新共同 | ユダ族の中から一万二千人が刻印を押され、/ルベン族の中から一万二千人、/ガド族の中から一万二千人、 |
NIV | From the tribe of Judah 12,000 were sealed, from the tribe of Reuben 12,000, from the tribe of Gad 12,000, |
7章6節 アセルの
口語訳 | アセルの部族のうち、一万二千人、ナフタリの部族のうち、一万二千人、マナセの部族のうち、一万二千人、 |
塚本訳 | アセル族から一万二千、ネフタリム族から一万二千、マナセ族から一万二千、 |
前田訳 | アセルの族から一万二千、ナフタリの族から一万二千、マナセの族から一万二千、 |
新共同 | アシェル族の中から一万二千人、/ナフタリ族の中から一万二千人、/マナセ族の中から一万二千人、 |
NIV | from the tribe of Asher 12,000, from the tribe of Naphtali 12,000, from the tribe of Manasseh 12,000, |
7章7節 シメオンの
口語訳 | シメオンの部族のうち、一万二千人、レビの部族のうち、一万二千人、イサカルの部族のうち、一万二千人、 |
塚本訳 | シメオン族から一万二千、レビ族から一万二千、イッサカル族から一万二千、 |
前田訳 | シメオンの族から一万二千、レビの族から一万二千、イサカルの族から一万二千、 |
新共同 | シメオン族の中から一万二千人、/レビ族の中から一万二千人、/イサカル族の中から一万二千人、 |
NIV | from the tribe of Simeon 12,000, from the tribe of Levi 12,000, from the tribe of Issachar 12,000, |
7章8節 ゼブルンの
口語訳 | ゼブルンの部族のうち、一万二千人、ヨセフの部族のうち、一万二千人、ベニヤミンの部族のうち、一万二千人が印をおされた。 |
塚本訳 | ザブロン族から一万二千、ヨセフ族から一万二千、ベニヤミン族から一万二千印をつけられた。 |
前田訳 | ゼブルンの族から一万二千、ヨセフの族から一万二千、ベニヤミンの族から一万二千が印をされた。 |
新共同 | ゼブルン族の中から一万二千人、/ヨセフ族の中から一万二千人、/ベニヤミン族の中から一万二千人が/刻印を押された。 |
NIV | from the tribe of Zebulun 12,000, from the tribe of Joseph 12,000, from the tribe of Benjamin 12,000. |
註解: 十二の支族の列挙は数所にあるけれどもその順序、時には名称も必ずしも一致しない。5-8節においても如何なる見地よりこの順序を取りしやは不明である。唯(1)メシヤの生れし族としてユダは最初に掲げられ、(2)ルベンは長子としてこれに次ぎ、(3)ダンは恐らく当時の信念により非キリストの生れる族として、あるいは最も速やかに偶像崇拝に堕落せる族として除外され、(4)その代りにレビ族が加入し、(5)エフライムの代りにヨセフが加えられたことは何れも信仰より見たる重要さよりかくせられしものであろう。その他の点においては最年少のベニヤミンを最後に置いたこと以外は説明すべき理由を持たない。一万二千は十二の千倍で神の国の数の十二と多数を示す千との積であってこの場合最も適当な数である。▲この十四万四千人を古今東西の全キリスト者の実数であるとして宣伝している一派があるが、聖書の読み方が誤っている一例である。
7章9節 この
口語訳 | その後、わたしが見ていると、見よ、あらゆる国民、部族、民族、国語のうちから、数えきれないほどの大ぜいの群衆が、白い衣を身にまとい、しゅろの枝を手に持って、御座と小羊との前に立ち、 |
塚本訳 | この後で(また)私は見た。すると視よ、誰も数えることの出来ない(ほど)多くの群衆が(あった。彼らは)凡ての国と種族と民と国語との中から集ま(った者であ)り、白い上衣を纏い、手に棕櫚(の枝)を持って、玉座の前、仔羊の前に立っていた。 |
前田訳 | その後わたしは見た。見よ、だれも数ええない大勢の群衆がいた。彼らはすべての国民と族と民族と国語からの出で、王座の前に、また小羊の前に立っている。彼らは白い衣を着、棕櫚の枝を手にしている。 |
新共同 | この後、わたしが見ていると、見よ、あらゆる国民、種族、民族、言葉の違う民の中から集まった、だれにも数えきれないほどの大群衆が、白い衣を身に着け、手になつめやしの枝を持ち、玉座の前と小羊の前に立って、 |
NIV | After this I looked and there before me was a great multitude that no one could count, from every nation, tribe, people and language, standing before the throne and in front of the Lamb. They were wearing white robes and were holding palm branches in their hands. |
7章10節
口語訳 | 大声で叫んで言った、「救は、御座にいますわれらの神と小羊からきたる」。 |
塚本訳 | そして(讃美して)大声に叫んで言う、救いは玉座に坐し給う我らの神と仔羊とに! |
前田訳 | そして大声に叫んでいう、「救いは王座にいますわれらの神と小羊に」と。 |
新共同 | 大声でこう叫んだ。「救いは、玉座に座っておられるわたしたちの神と、/小羊とのものである。」 |
NIV | And they cried out in a loud voice: "Salvation belongs to our God, who sits on the throne, and to the Lamb." |
註解: 9−17節は4−8節において印せられし人々すなわち十四万四千人が神の御座の前に表われし光景を叙述す。彼らは勝利の印また羔羊 の血によりて罪を洗われし印なる白衣を纏い、勝利の時に用いられる棕梠 の葉をもち神の御座と羔羊 の前に立ちて大声にその救いを讃美する。
辞解
[この後われ見しに] 前には唯印せられし者の数を聞くのみであつたのに今はこれを見ることができる。多くの学者はこの群衆と十四万四千のイスラエルの子らとは別人であることを主張する。その理由は(1)イスラエルの子らは数えられたけれどもこの群衆は数え尽すことができない。(2)前者は地上にありこれらは天上にある。(3)前者はイスラエルの族、後者は諸国民。(4)前者は苦難より保護せられ後者はすでに勝っていること等であるがこれらは何れも充分の理由とはならない。
[国・族・民・国語] 四つを挙げたのは四の数に因 めるもの。
[数へ尽すこと能はぬ] 多数を示したに過ぎない。4−8節の人々と異なれる群衆であるとの意味ではない。かつ黙14:1の同数の群衆が明かに全キリスト者を意味することより見て上掲註解のごとくに解するを可とす(B3、A1)。
[救は云々] 彼らの讃美は救主なる神とキリストとに向いその救いに対してささげられた。
7章11節
口語訳 | 御使たちはみな、御座と長老たちと四つの生き物とのまわりに立っていたが、御座の前にひれ伏し、神を拝して言った、 |
塚本訳 | すると凡ての御使い達が玉座と長老達と四つの活物との周囲に立って、玉座の前に平伏し、神を拝して |
前田訳 | また、すべての天使は王座と長老と四つの生きもののまわりに立っていた。そして王座の前に顔を伏せ、神を拝して |
新共同 | また、天使たちは皆、玉座、長老たち、そして四つの生き物を囲んで立っていたが、玉座の前にひれ伏し、神を礼拝して、 |
NIV | All the angels were standing around the throne and around the elders and the four living creatures. They fell down on their faces before the throne and worshiped God, |
7章12節 『アァメン、
口語訳 | 「アァメン、さんび、栄光、知恵、感謝、ほまれ、力、勢いが、世々限りなく、われらの神にあるように、アァメン」。 |
塚本訳 | 言うた──アーメン、願わくは讃美と栄光と知恵と感謝と栄誉と権能とが、永遠より永遠に我らの神にあらんことを、アーメン! |
前田訳 | いう、「アーメン、讃美と栄光と知恵と感謝と誉れと力と勢いが、永遠から永遠にわれらの神にあれ。アーメン」と。 |
新共同 | こう言った。「アーメン。賛美、栄光、知恵、感謝、/誉れ、力、威力が、/世々限りなくわたしたちの神にありますように、/アーメン。」 |
NIV | saying: "Amen! Praise and glory and wisdom and thanks and honor and power and strength be to our God for ever and ever. Amen!" |
註解: 群衆の讃美に和して天使の一団もまた平伏して拝しつつ祈りの声をあげ、神の「七つ」の属性を列挙して神を頌めたたえる(黙5:12参照)。最初のアアメンは「誠に」と訳しても可。
7章13節
口語訳 | 長老たちのひとりが、わたしにむかって言った、「この白い衣を身にまとっている人々は、だれか。また、どこからきたのか」。 |
塚本訳 | すると長老の一人が答えて私に言うた、「白い上衣を纏うたこの人達は(一体)誰であるか。また何処から来たか(、お前はそれを知っているか。」 |
前田訳 | 長老の一人がわたしに向かっていった、「これら白い衣を着た人々はだれで、どこから来たか」と。 |
新共同 | すると、長老の一人がわたしに問いかけた。「この白い衣を着た者たちは、だれか。また、どこから来たのか。」 |
NIV | Then one of the elders asked me, "These in white robes--who are they, and where did they come from?" |
口語訳 | わたしは彼に答えた、「わたしの主よ、それはあなたがご存じです」。すると、彼はわたしに言った、「彼らは大きな患難をとおってきた人たちであって、その衣を小羊の血で洗い、それを白くしたのである。 |
塚本訳 | わが主よ、貴方が御存知です」と私は彼に言うた。そこで彼が私に言うた、「この人達は(既に最後の日の)大なる患難を経て来た者である。彼らは仔羊の(流し給うた聖い)血でその上衣を洗ってそれを白くした。 |
前田訳 | わたしはいった、「わが主よ、あなたはご存じです」と。彼はいった、「これらは大きな苦しみを経た人々で、その衣を小羊の血で洗って白くした。 |
新共同 | そこで、わたしが、「わたしの主よ、それはあなたの方がご存じです」と答えると、長老はまた、わたしに言った。「彼らは大きな苦難を通って来た者で、その衣を小羊の血で洗って白くしたのである。 |
NIV | I answered, "Sir, you know." And he said, "These are they who have come out of the great tribulation; they have washed their robes and made them white in the blood of the Lamb. |
註解: 「汝知れり」はヨハネの無智を示す。封印せられし十四万四千人がかかる光景を呈するならんとはヨハネの想像し得ない処であった。この無智を理由として十四万四千人とこの群衆との同一なることを否定する学者があるけれども、ここにかえってヨハネの幻象の深い意義(真のイスラエルはユダヤ人にとりては案外なるものなること)を見ることができる。
かれ
註解: ここより17節までは救われしものの天国における光景(黙21:1以下に示さるべき光景)が予めヨハネに示されたのであるが、これらは同時にまた凡てのキリスト者が現在においてすでにその前味を味うことができることでもである。「大なる患難」は世の終末の前に全世界に臨む(黙3:10。ダニ12:1)。そしてキリスト者は無事にこの中より救い出されるのである。羔羊 の血に衣を洗うことは信仰によりキリストの十字架の血によりて贖われ、この血を通りて神の御前に出づること。かかる人はその血により緋のごとき罪が洗われて雪のごとくに白くせられる。白は勝利を表わすと共にまた純潔無罪を表示する。
7章15節 この
口語訳 | それだから彼らは、神の御座の前におり、昼も夜もその聖所で神に仕えているのである。御座にいますかたは、彼らの上に幕屋を張って共に住まわれるであろう。 |
塚本訳 | この故に(今)彼らは神の玉座の前にあって、昼も夜もその聖所で彼に仕えているのである。そして玉座に坐し給う者は、彼らの上に天幕を張(って彼らを護)り給うであろう。 |
前田訳 | それゆえ彼らは神の王座の前にいて、日夜、宮で神に仕えている。そして王座に座すものは彼らと幕屋を共にしたもう。 |
新共同 | それゆえ、彼らは神の玉座の前にいて、/昼も夜もその神殿で神に仕える。玉座に座っておられる方が、/この者たちの上に幕屋を張る。 |
NIV | Therefore, "they are before the throne of God and serve him day and night in his temple; and he who sits on the throne will spread his tent over them. |
註解: キリスト者の神に対する奉仕の生活と、神との交りの生活を叙述す。羔羊 の血に己が衣を洗われし者すなわちキリスト者はみなことごとく祭司である(万人祭司主義、ヘブ10:19−22)。従って昼夜休むことなく神の前にありて礼拝をなす。換言すれば彼らはその全身を神にささげ神のみに事 えてその日を送る。そして彼らと神の間を隔つる罪はキリストの十字架の血によりて洗い潔められしが故に、彼らは憚 らずして至聖所に入り神の前に立つことができる、換言すれば彼らは祭司の仲保を要せずして直ちに神に近附くことができる。かかる者のために神はやがてその上に幕屋を張り神も共にその中に住み給うであろう。黙21:3、4参照(未来動詞。以下17節迄みな然り)。
辞解
[御座の前、聖所、幕屋] 三つの場所を同一物のごとくに取扱っていることに注意すべし。これらが全く同一物となる処に真の神人の関係が成立する。
[事 う] latreuô は奉仕する意味であるが礼拝の儀式に関しても用いられる。儀式に関して用いられる 1eitourgeô をここに用いない所以は群衆の数多くして宗教的儀式を行うに不適当だから(S3)ではなく、ヨハネは礼拝の儀式よりもその意味、すなわち人が神に事 えることに重きを置いたためである。なお黙21:22に「宮を見ざる」ことを録しているのは新天新地が完全に実現した時であるから。
[幕屋を張りたまふべし] 未来形、幕屋を張ることは神が共に住み給うことを意味す(レビ26:12、ゼカ2:14、エゼ37:27、ヨハ1:14、Uコリ6:16)。
7章16節
口語訳 | 彼らは、もはや飢えることがなく、かわくこともない。太陽も炎暑も、彼らを侵すことはない。 |
塚本訳 | 彼らは最早飢えず、最早渇かず、太陽も如何な暑さも(最早)彼らを襲わないであろう。 |
前田訳 | 彼らはもはや飢えず、渇かず、太陽も、どんな熱風も、彼らを侵さない。 |
新共同 | 彼らは、もはや飢えることも渇くこともなく、/太陽も、どのような暑さも、/彼らを襲うことはない。 |
NIV | Never again will they hunger; never again will they thirst. The sun will not beat upon them, nor any scorching heat. |
7章17節
口語訳 | 御座の正面にいます小羊は彼らの牧者となって、いのちの水の泉に導いて下さるであろう。また神は、彼らの目から涙をことごとくぬぐいとって下さるであろう」。 |
塚本訳 | 玉座の真中にい給う仔羊が彼らを牧し、彼らを生命の水の泉に導き、また神は彼らの目から悉く涙を拭い去り給うからである。」 |
前田訳 | 王座の正面にいます小羊は彼らを牧し、いのちの水の泉へと導き、神は彼らの目からすべての涙を拭われよう」と。 |
新共同 | 玉座の中央におられる小羊が彼らの牧者となり、/命の水の泉へ導き、/神が彼らの目から涙をことごとく/ぬぐわれるからである。」 |
NIV | For the Lamb at the center of the throne will be their shepherd; he will lead them to springs of living water. And God will wipe away every tear from their eyes." |
註解: イザ49:10。イザ25:8を少しく変化したもので、キリスト者がやがて神の国に入るに及べば、彼らは絶対の満足、安全、歓喜の中に永遠に生きることができる。天災または迫害のために苦しむもの、また生命の涸渇になやむもの、人生の悲哀に泣くものにとってはこれらの言は無限の慰安であったろう。
辞解
[牧す]羔羊 が牧するとは本末転倒のごときも羔羊 はキリストを指す故にこれは当然であり問題とすべきではない。牧することにつきては詩23:1以下の美わしき思想を参照すべし。
[御座の前に] 「御座の間に」の意。
[生命の水の泉] 原文は「生命」なる文字を特に強調す。
要義1 [第7章の概観]ユダヤ人の歴史、祭事、儀式はみな新約の型であり予表である。ゆえに旧約は新約によリて完成される。この意味において黙示録においては旧約の思想や事実や語句やを自由に取入れつつこれを新約的意義に用いた場合が非常に多いことを注意しなければならない。学者が文字の末に捉われて往々にしてその真意を見失うことあるはこれがためである。本章のごときも前半は全くユダヤ的に見え後半は全く新約的の外形を持っている。それ故に多くの学者はこの二者を別物として区別しているのである。しかしながらヨハネはこの場合においてもイスラエル人の十二の支族の名をもってキリスト者の全体を表わさんとしたのであって、このヨハネの精神を理解するならば、黙示録全体の解釈の鍵を握ることができ、また本章の意義を明かにすることができるであろう。
要義2 [神の救の終局]神が人類を救い給う目的は、結局において全被造物がことごとく神を讃美するに至らんためである。そして全被造物、殊に救われし人々が神を讃美するに至る時、神の喜びは充ち溢れて、神は彼らと共に住み、彼らを守り、彼らを永遠の生命に導き、彼らの悲しみを取り去り給い、彼らは昼夜休むことなく神に事 えるに至るのである。このことは世の終りにおいて神の国が完成する時に完成するのではあるが、今すでにキリスト者の中にその根本の性質が成就しているのである。すなわちキリスト者は今すでに天国の前味を味っているものであると云うことができる。しかしながらこれは終局ではなく、終局において神は完全なる形においてこの凡ての希望を実現し給う。
要義3 [神に事 うること]ユダヤの祭司は神の宮に入って神に事 えた。しかしながらこれ天の国において神に事 えることの型に過ぎない。神に対する真の奉仕、礼拝は神の前に在りて凡てを神にささげて生きることである。ヨハネの示されし聖徒の姿はこれであった。現在においても聖徒は凡て祭司として神に対しかかる意味において毎日毎夜事 えているのである。
要義4 [神の予定について]ロマ9:33附記を見よ。
黙示録第8章
3-(2) 第七の封印すなわち七つのラッパの審判
8:1 - 11:13
3-(2)-(イ) 序曲
8:1 - 8:5
註解: 第7章の中間挿景を終えて再び審判の光景が展開され、第七の封印が開かれてそれが七つのラッパに分れる。第一
乃至 第六の封印の審判が一般普通の出来事であるのとは反対に、七つのラッパの審判は、極めて特異的でありその被害もまたそれぞれ特別の方面に及んでいるのを見る。これによりて見るときは第七の封印による審判は、いよいよ世の終りの切迫せるために異常にして激甚なる患難が増加していることを示すものと見なければならない。
8章1節
口語訳 | 小羊が第七の封印を解いた時、半時間ばかり天に静けさがあった。 |
塚本訳 | かくて仔羊が(最後に)第七の封印を開いた時、およそ半時の間天が静かであった。(歌は止み、御使い達は固唾を飲んで次に起ころうとすることを待った。) |
前田訳 | (小羊が)第七の封印を開くと、天に半時間ほど、静けさがおとずれた。 |
新共同 | 小羊が第七の封印を開いたとき、天は半時間ほど沈黙に包まれた。 |
NIV | When he opened the seventh seal, there was silence in heaven for about half an hour. |
註解: 暴風雨の前の静寂のごとく、大なる審判の前兆としてこの長き時間の沈黙があった。この間四つの獣も二十四人の長老も御座の廻りの天使も群衆もみな固唾を呑んで何事の起るならんかを待ったことであろう。かくして凡ての上に大なる畏怖が襲い来ったことであろう。劇的効果の偉大なる静寂である。ただしこれは啻 に劇的であるというに止らず、実際においても非常なる平穏無事がかえって大なる禍害の序曲である場合が多い。
8章2節 われ
口語訳 | それからわたしは、神のみまえに立っている七人の御使を見た。そして、七つのラッパが彼らに与えられた。 |
塚本訳 | すると七人の御使いが神の前に立っているのを私は見た。そして彼らに七つのラッパが与えられた。 |
前田訳 | そしてわたしは見た。神の前に立った七人の天使に七つのラッパが与えられた。 |
新共同 | そして、わたしは七人の天使が神の御前に立っているのを見た。彼らには七つのラッパが与えられた。 |
NIV | And I saw the seven angels who stand before God, and to them were given seven trumpets. |
辞解
[七人の御使] 定冠詞を伴う故に、ユダヤ人の間に常識となっていた処の天使で、神の御座の前にいる七人の御使を指すと見るべきであろう。その名はウリエル、ラファエル、ラグエル、ミカエル、サリエル、ガブリエル、レミエルである。ラッパは審判の際に天使により吹かれるものと考えられていた(マタ24:31。Tコリ15:52。Tテサ4:16)。
8章3節 また
口語訳 | また、別の御使が出てきて、金の香炉を手に持って祭壇の前に立った。たくさんの香が彼に与えられていたが、これは、すべての聖徒の祈に加えて、御座の前の金の祭壇の上にささげるためのものであった。 |
塚本訳 | するともう一人(他)の御使いが来て、(手に)金の香炉を持ち、香壇の前に立った。すると沢山の香が彼に与えられた。それは凡ての聖徒達の祈りのため(、これに力を添えるため)に、玉座の前の金の香壇に供えるのであった。 |
前田訳 | そしてもうひとりの天使が来て、金の香炉を手にして祭壇に立った。そして彼に多くの香が与えられた。それは王座の前の金の祭壇に、すべての聖徒の祈りにそえてささげるためであった。 |
新共同 | また、別の天使が来て、手に金の香炉を持って祭壇のそばに立つと、この天使に多くの香が渡された。すべての聖なる者たちの祈りに添えて、玉座の前にある金の祭壇に献げるためである。 |
NIV | Another angel, who had a golden censer, came and stood at the altar. He was given much incense to offer, with the prayers of all the saints, on the golden altar before the throne. |
註解: 半時間の沈黙の後に現われたのは香炉を持てる天使で、3−5節においてラッパの吹かれる前に聖徒の祈が神にささげられ、この祈に応えてラッパの審判が下るもののごとくに録されている。▲「香壇」は前の「祭壇」と同語、訳語はこれを統一する方宜し。口語訳を見よ。
辞解
[他の一人] 七人の天使とは違う一人。
[祭壇] 黙6:9の場合と異なり馨香 の壇である。
[凡ての聖徒の祈] 黙6:10の殉教者の祈よりもさらに一般的であるが、迫害の下にある聖徒の祈故同一の祈と見て可なり。
[金の香炉] 出30:1以下参照。
8章4節
口語訳 | 香の煙は、御使の手から、聖徒たちの祈と共に神のみまえに立ちのぼった。 |
塚本訳 | 香(は焚かれた。そ)の煙が聖徒達の祈りのために御使いの手から神の前に立ち上がった。 |
前田訳 | 聖徒の祈りとともに香の煙は天使の手から神の前へと上った。 |
新共同 | 香の煙は、天使の手から、聖なる者たちの祈りと共に神の御前へ立ち上った。 |
NIV | The smoke of the incense, together with the prayers of the saints, went up before God from the angel's hand. |
辞解
[祈とともに] 3節の「祈に加えて」と同語で「祈の加勢をして」というごとき意味。
8章5節
口語訳 | 御使はその香炉をとり、これに祭壇の火を満たして、地に投げつけた。すると、多くの雷鳴と、もろもろの声と、いなずまと、地震とが起った。 |
塚本訳 | (遂に祈りは聴かれた)──御使いが(再びその)香炉を取り、これに香壇の火を盛って(天から)地上に投げつけた。すると(たちまち恐ろしい)雷と轟と電光と(大)地震とが(地上に)起こった。 |
前田訳 | 天使は香炉を取り、それを祭壇の火で満たして地に投げつけた。すると雷とひびきといなずまと地震とがおこった。 |
新共同 | それから、天使が香炉を取り、それに祭壇の火を満たして地上へ投げつけると、雷、さまざまな音、稲妻、地震が起こった。 |
NIV | Then the angel took the censer, filled it with fire from the altar, and hurled it on the earth; and there came peals of thunder, rumblings, flashes of lightning and an earthquake. |
註解: 第4節において聖徒の祈は香の煙に助けられて神の前に達した。第5節においてこの香炉は反対に審判の具に用いられ、神の怒の祭壇の火を盛りて地に投げられた。「雷霆 」「声」「電光 」「地震」の四者は審判が始まらんとする時の神の合図のごときものであると見られている。黙11:19。黙16:18も同様である。なおエゼ10:2参照。
8章6節 ここに
口語訳 | そこで、七つのラッパを持っている七人の御使が、それを吹く用意をした。 |
塚本訳 | すると七つのラッパを持った七人の御使いが、(それを)吹く準備をした。 |
前田訳 | 七つのラッパを持つ七人の天使は、それを吹く用意をした。 |
新共同 | さて、七つのラッパを持っている七人の天使たちが、ラッパを吹く用意をした。 |
NIV | Then the seven angels who had the seven trumpets prepared to sound them. |
註解: 次に来るべき七つのラッパによる禍害も四と三との二種に分つことができる。始めの四つは地、海、水、天体等自然界に対する神の審判で人間は唯間接にこれに影響されるに過ぎず後の三つは直接に人間の上に及ぶ災害である。この順序は黙16章の七つの金の鉢の審判の順序と同一である。災害の多くは出7章−10章にあるエジプトの災害に因 めるものであり(他にもあれど)、これによりて神に敵する者に及ぶべき大審判を予告しているがごとくに思われる。
8章7節
口語訳 | 第一の御使が、ラッパを吹き鳴らした。すると、血のまじった雹と火とがあらわれて、地上に降ってきた。そして、地の三分の一が焼け、木の三分の一が焼け、また、すべての青草も焼けてしまった。 |
塚本訳 | 第一の御使いがラッパを吹いた。すると血の混じった火が起こって、地上に降った。そして地の三分の一が焼かれ、樹の三分の一が焼かれ、(その三分の一の地にあった)青草が悉く焼かれ(てしまっ)た。 |
前田訳 | 第一の天使がラッパを吹いた。すると、血のまじった雹と火があらわれて地に降って来た。地の三分の一が焼け、木の三分の一が焼け、すべての青草が焼けた。 |
新共同 | 第一の天使がラッパを吹いた。すると、血の混じった雹と火とが生じ、地上に投げ入れられた。地上の三分の一が焼け、木々の三分の一が焼け、すべての青草も焼けてしまった。 |
NIV | The first angel sounded his trumpet, and there came hail and fire mixed with blood, and it was hurled down upon the earth. A third of the earth was burned up, a third of the trees were burned up, and all the green grass was burned up. |
註解: 第一のラッパは地に対する審判であって、普通に見ることができない災害であることと地の三分の一だけが害を受け、全地に及ばないことがその特徴である。
辞解
[雹と火] 出9:23−25の災禍に類似し、「血」は出7:20以下の災害を連想せしめる。
[三分の一] 三は天に因 める数であって天より降れる審判故この数を用いたのであろう。全部ではないが大部分という意。なお後続の黙8:8−12節、黙9:15、黙9:18。黙12:4参照。
[もろもろの青草] 直訳「凡ての青草」で一見全地の青草みな焼け失せたように見えるけれども(A1、S3)恐らく地の三分の一の上に生ぜる青草の意味ならん。黙9:4を見よ(B1、H0)。
8章8節
口語訳 | 第二の御使が、ラッパを吹き鳴らした。すると、火の燃えさかっている大きな山のようなものが、海に投げ込まれた。そして、海の三分の一は血となり、 |
塚本訳 | 第二の御使いがラッパを吹いた。すると火に燃えている大きな山のようなものが海の中に放り込まれた。そして海の三分の一が血になり、 |
前田訳 | 第二の天使がラッパを吹いた。すると、火の燃える大きな山のようなものが海へ投げ込まれた。海の三分の一は血になり、 |
新共同 | 第二の天使がラッパを吹いた。すると、火で燃えている大きな山のようなものが、海に投げ入れられた。海の三分の一が血に変わり、 |
NIV | The second angel sounded his trumpet, and something like a huge mountain, all ablaze, was thrown into the sea. A third of the sea turned into blood, |
8章9節
口語訳 | 海の中の造られた生き物の三分の一は死に、舟の三分の一がこわされてしまった。 |
塚本訳 | 生命を有つ海中の被造物の三分の一が死に、舟の三分の一が破壊された。 |
前田訳 | 海の中の被造物でいのちのあるものの三分の一が死に、船の三分の一が沈んだ。 |
新共同 | また、被造物で海に住む生き物の三分の一は死に、船という船の三分の一が壊された。 |
NIV | a third of the living creatures in the sea died, and a third of the ships were destroyed. |
註解: 第二のラッパは海に対する審判である。火にて燃ゆる大なる山のごときものが海に投入れられたことがヴェスヴィアスまたはその他の小アジヤ地方の噴火山の噴火より連想せるものとする説あれど(S3)かく考えることは本文との間に一致しない。経外典エノク書にやや類似の一節あれどこれより取りたるものとも思われず、ヨハネに与えられし特別の黙示であり、具体的の事実によりてこれを説明することはできない。天より降る審判なることを示さんがために天より海中に投入れられしことを描いたのであろう。四つのラッパはみなこの形を取る。
辞解
[血に変じ] 水が血に変化することは出7:17以下の災害を連想せしめる。この天変が何であるかを具体的に考えるべきではない。
8章10節
口語訳 | 第三の御使が、ラッパを吹き鳴らした。すると、たいまつのように燃えている大きな星が、空から落ちてきた。そしてそれは、川の三分の一とその水源との上に落ちた。 |
塚本訳 | 第三の御使いがラッパを吹いた。すると炬火のように燃えている大きな星が天から落ちた。そして河の三分の一と水の源(の三分の一)との上に落ちた。 |
前田訳 | 第三の天使がラッパを吹いた。すると、たいまつのように燃える大きな星が天から落ちた。それは川の三分の一とそれらの水源に落ちた、 |
新共同 | 第三の天使がラッパを吹いた。すると、松明のように燃えている大きな星が、天から落ちて来て、川という川の三分の一と、その水源の上に落ちた。 |
NIV | The third angel sounded his trumpet, and a great star, blazing like a torch, fell from the sky on a third of the rivers and on the springs of water-- |
8章11節 この
口語訳 | この星の名は「苦よもぎ」と言い、水の三分の一が「苦よもぎ」のように苦くなった。水が苦くなったので、そのために多くの人が死んだ。 |
塚本訳 | その星の名を苦艾という。そして水の三分の一は(そのため)苦艾(のよう)に(苦く)なり、多くの人は水が苦くなったので(飲むことが出来ずに)死んだ。 |
前田訳 | その星の名は「にがよもぎ」といわれ、水の三分の一が「にがよもぎ」になった。水がにがくなったので多くの人が死んだ。 |
新共同 | この星の名は「苦よもぎ」といい、水の三分の一が苦よもぎのように苦くなって、そのために多くの人が死んだ。 |
NIV | the name of the star is Wormwood. A third of the waters turned bitter, and many people died from the waters that had become bitter. |
註解: 第三のラッパは水に対する審判であって、苦艾 (茵陳 とも訳せらる、エレ9:14、エレ23:15)は神の懲戒を意味し、これによりて水はその味を失い多くの人死するに至る。
辞解
[水の源泉の上] 三分の一の意味と見て可なり。一つの星が如何にして川の三分の一と水の源泉の三分の一の上に堕ち得るや等の問題は本書の性質上無益の穿鑿 である。要するに上より降れる大なる審判が地の諸種の方面に及ぶことを言ったに過ぎない。また世の終りにおいてグルチハル Gurzihar なる星が天より隕ちるというペルシャの神話を強いてここに関係せしむる必要は無い。「苦艾 」はそれ自身毒ではない、人が死んだのは水を飲用し得なかつたため。
8章12節
口語訳 | 第四の御使が、ラッパを吹き鳴らした。すると、太陽の三分の一と、月の三分の一と、星の三分の一とが打たれて、これらのものの三分の一は暗くなり、昼の三分の一は明るくなくなり、夜も同じようになった。 |
塚本訳 | 第四の御使いがラッパを吹いた。すると太陽の三分の一と月の三分の一と星の三分の一とが撃たれて、(各々)その(光の)三分の一が暗くなり、昼もその三分の一は(太陽が)照らず、夜も同様に(三分の一は暗く)なった。 |
前田訳 | 第四の天使がラッパを吹いた。すると、日の三分の一と月の三分の一と星の三分の一とが打たれ、これらの三分の一が暗くなり、昼はその三分の一が光らず、夜も同じであった。 |
新共同 | 第四の天使がラッパを吹いた。すると、太陽の三分の一、月の三分の一、星という星の三分の一が損なわれたので、それぞれ三分の一が暗くなって、昼はその光の三分の一を失い、夜も同じようになった。 |
NIV | The fourth angel sounded his trumpet, and a third of the sun was struck, a third of the moon, and a third of the stars, so that a third of them turned dark. A third of the day was without light, and also a third of the night. |
註解: 第四のラッパは天体に対する審判であって、出10:21以下の災害に類似している。この天体の三分の一に対する異変が如何なる状態において起るかは本節の文字よりこれを決定し難く、本節もこの点につき不精確であるけれども、ヨハネの目的は他の場合と同じく驚くべき天変地異が神の御旨に従って行われ人類に警戒を与えんとし給うことを述ぶるに在るが故に、この文字の表面に余りに拘泥すべきではない。
辞解
[日、月、星の三分の一] 光の強さの三分の一か、面積または数の三分の一か等の問題もこれを研究する必要がない。昼の三分の一についても同様である。
8章13節 また
口語訳 | また、わたしが見ていると、一羽のわしが中空を飛び、大きな声でこう言うのを聞いた、「ああ、わざわいだ、わざわいだ、地に住む人々は、わざわいだ。なお三人の御使がラッパを吹き鳴らそうとしている」。 |
塚本訳 | すると(その時)私は見た、そして一羽の(大)鷲が中空を飛びながら大声で(こう)言うのを聞いた、「禍なる哉、禍なる哉、禍なる哉、地に住む者、三人の御使いが吹こうとしている残るラッパの声の故に!」 |
前田訳 | そしてわたしは見た。一羽の鷲が中空を飛び、大声でいうのを聞いた、「わざわい、わざわい、わざわいなのは地に住む人々、なお三人の天使がこれから吹こうとしているラッパのひびきのゆえに」と。 |
新共同 | また、見ていると、一羽の鷲が空高く飛びながら、大声でこう言うのが聞こえた。「不幸だ、不幸だ、不幸だ、地上に住む者たち。なお三人の天使が吹こうとしているラッパの響きのゆえに。」 |
NIV | As I watched, I heard an eagle that was flying in midair call out in a loud voice: "Woe! Woe! Woe to the inhabitants of the earth, because of the trumpet blasts about to be sounded by the other three angels!" |
註解: この一節により七つのラッパが明かに四と三の二部に分たれていることを知る。そして後の三つのラッパにおいて、一層大なる禍害が地に住むものすなわち神に背ける者の上に下ることを警戒しているのである。
辞解
[鷲] 往々にして審判と連想せられている(マタ24:28)。
[中空] 空の頂点。
[地に住める者ども] 天国の民の反対、神を信ぜざるものを指す(黙3:10辞解参照)。他の場合と同じく「地に住む者ども」と訳すべきである。
[禍害なるかな] ouai 三唱せるは次に来るべき三つのラッパに当てはめたものである。
要義1 [四つのラッパの意義]第一より第四に至るラッパの審判は普通に起り得ざる特種の天変地異に過ぎず、霊的に何ら意義なきごとくに見えるけれども、実はこれらによリて審判がいよいよ進展し、禍害が益々畏 るべき形において降り、神の特別の御手によりて特別の審判が行われることあたかもエジプトにおけるモーセとパロとの争いの場合におけるがごとくであることを示したのである。それ故に我らはこの記事を読みつつ特別なる審判の前に立ちて畏 れ戦 かなければならない。その奇矯 なるの故をもって我らと関係なきもののごとくに考え、文字に拘泥してその背後にある重大なる真理を見逃してはならない。
要義2 [神の義と愛との顕現]四つのラッパの審判は神の義と神の愛との現れである。ゆえに我らもし異常なる天変地異の襲い来るに会う時はそこに明かに神の御顔を拝し奉らなければならない。神はかくしてその義を示し給うと、同時に、全地を亡ぼさしてなお幾分を残すことによリて全人類を救わんとするその愛を示し給う。我らは異常なる出来事に直面して、直ちにこの義と愛との神を見奉るべきである。
附記 [四つのラッパの審判の種々の解釈について]この四つのラッパが何を意味するかにつきては種々の解釈がある。あるいはこの各々を五世紀頃までにローマに侵入してこれを荒せる種々の蛮族に譬え、あるいはこれを教会内の種々の異端、悪思潮、法王権等に譬え、またはこの世の政治界宗教界実業界等の大立物にたとえる等種々の見方があるけれども何れも牽強付会 を免れず、一々これを実際の歴史に当てはめんとすることは無意義である。