黙示録第14章
分類
3 この世の審判と救
4:1 - 18:24
3-(3) 第七のラッパ
11:14 - 18:24
3-(3)-(第七挿景) 最後の審判の前提たる七つの光景
14:1 - 14:20
3-(3)-(第七挿景)-(a) シオンの山の
註解: 第12、13章が教会に対するサタンの迫害を示すに対し、本章はこの迫害にもかかわらず
羔羊 の勝利の姿および福音の進展の有様を描く、七つの苦難の金の鉢が傾けられ最後の苦難が来る前に希望に充てる幻象を示しているのはヨハネの偉大なる技巧である。この幻象は七つに分れこれが四と三とに分れ、シオンの山に始まり次第に高きに上りて遂に天の至聖所の光景に至っており、整然たる秩序をもって録されている、そしてその光景は救いと審判との全体に及んでいる。
14章1節 われ
口語訳 | なお、わたしが見ていると、見よ、小羊がシオンの山に立っていた。また、十四万四千の人々が小羊と共におり、その額に小羊の名とその父の名とが書かれていた。 |
塚本訳 | また私は(一つの異象を)見た。すると視よ、仔羊がシオンの山(の頂)に立ってい給うた。そして、額に仔羊の名とその父(なる神)の名とを書かれている十四万四千人(の者)が彼と一緒にいた。(四十二か月の獣の時代は過ぎ、今や仔羊の支配が始まったのである。) |
前田訳 | そして、わたしは見た。見よ、シオンの山に、小羊と、彼とともに十四万四千人が立つ。彼らの額には、小羊の名とその父の名が書かれている。 |
新共同 | また、わたしが見ていると、見よ、小羊がシオンの山に立っており、小羊と共に十四万四千人の者たちがいて、その額には小羊の名と、小羊の父の名とが記されていた。 |
NIV | Then I looked, and there before me was the Lamb, standing on Mount Zion, and with him 144,000 who had his name and his Father's name written on their foreheads. |
註解: 一方に教会の迫害あり(12−13章)荒野における戦闘の教会の姿が録されている間に、本章において勝利の教会の姿と神の敵の審判とが予じめ示され、これが15−19章において具体的に展開する。シオンの山はエルサレムの別名でここでは天のシオン、上なるエルサレム (ヘブ12:22−24。ガラ4:26) を指す(S1、D0)と見るよりも地上における新天新地の光景を予見せるものと見るを可とす。そこには羔羊 立ち給い黙7:3、4に録されし十四万四千人すなわち全教会の聖徒が羔羊 キリストと偕にいる 。そしてその額には黙13:16、17の徽章 と正反対に神とキリストの御名をもって印(黙7:3)せられていることを見る。まことに美わしき光景で、21章以下の新しきエルサレムの光景が予じめヨハネに示されたのである。
辞解
[十四万四千人] 黙7:3、4のそれとは別の一団であると解し、理由として定冠詞無きこと、特別に潔き人なること(4節)、「初穂」なること等を掲げる学者(H0、S3)があるけれども充分なる理由とならない。また黙7:3、4の十四万四千人をユダヤ人中のキリスト者と解する説は本章に至りて差し支えを生ず(B3)。
[シオンの山] 本節においては地上に降れる天のエルサレムを予指す、終りの日にメシヤは救われし者と共にシオンの山に立つとの思想は旧約聖書に多く存在する (ヨエ3:5。詩2:6。詩78:54、詩78:68。イザ24:23) 。なお第一の獣は海より(黙13:1)第二の獣は地より(黙13:11)出で来れるに対し羔羊 は山に立ち給う事は良き対照をなす。
14章2節 われ
口語訳 | またわたしは、大水のとどろきのような、激しい雷鳴のような声が、天から出るのを聞いた。わたしの聞いたその声は、琴をひく人が立琴をひく音のようでもあった。 |
塚本訳 | (たちまち)私は大水の轟きのような、また大雷の轟きのような(大きな)声を天から聞いた。そして私が聞いたその声は(あたかも)竪琴を弾く竪琴弾きの声のようであった。 |
前田訳 | そしてわたしは天から声を聞いた。それは多くの水のひびきのよう、大きな雷のひびきのようであった。そして、わたしが聞いた声は竪琴をひく琴ひきの声のようであった。 |
新共同 | わたしは、大水のとどろくような音、また激しい雷のような音が天から響くのを聞いた。わたしが聞いたその音は、琴を弾く者たちが竪琴を弾いているようであった。 |
NIV | And I heard a sound from heaven like the roar of rushing waters and like a loud peal of thunder. The sound I heard was like that of harpists playing their harps. |
14章3節 かれら
口語訳 | 彼らは、御座の前、四つの生き物と長老たちとの前で、新しい歌を歌った。この歌は、地からあがなわれた十四万四千人のほかは、だれも学ぶことができなかった。 |
塚本訳 | 彼らは玉座の前と四つの活物と(二十四人の)長老の前とで新しい歌をうたう。そして(仔羊の血を以て)地(上の人々の中)から買われた(神を信ずる)十四万四千人(の者)の外、誰もこの歌を聞くことは出来なかった。 |
前田訳 | 彼らは新しい歌を王座の前と四つの生きものと長老たちの前でうたった。地上からあがなわれた十四万四千人のほかは、だれもこの歌を学びえなかった。 |
新共同 | 彼らは、玉座の前、また四つの生き物と長老たちの前で、新しい歌のたぐいをうたった。この歌は、地上から贖われた十四万四千人の者たちのほかは、覚えることができなかった。 |
NIV | And they sang a new song before the throne and before the four living creatures and the elders. No one could learn the song except the 144,000 who had been redeemed from the earth. |
註解:羔羊 と共に天の神の御座はシオンの山に下りそこにある十四万四千人すなわち全キリスト者の一団は天地に響き渡るごとき大なる声をもって立琴の音のごとく美わしく新しき世界を讃美する新しき歌を歌う。この天における勝利と歓喜とがやがて来るべきことを知るならば、荒野における教会は如何なる苦難の中にありてもこれに耐えることができる。この歌はかつて四つの活物 と二十四人の長老によりて歌われしもの(黙5:8、9註参照)と相類するものなるべく、今は彼らの前において十四万四千人の聖徒によって歌われる。そしてこの歌はキリストによりて贖われる者の外は何人もこれを学習し理解することができない。
辞解
[水、雷霆 ] 大なる響の例として本書中にしばしば用いられる。引照を見よ。
[彼ら] 何物を指すか不明なる故種々の異論あり、シオンの山を地上のエルサレムと解する学者はこれを十四万四千人に適用することができず、従ってこれを不定の声または天使たちの声と解し十四万四千人は地上においてこれを学び、天の声に伴って歌うと解す(B3、S3、E0、A1、Z0等大多数)。反対にシオンを天のエルサレムと解する学者はこの「彼ら」を当然十四万四千人と解す、この解の優っていることは当然である(B1、D0)。予はこれを天のエルサレムが地上に降れる光景の予見と解するが故に神の御座も共に地上に降つたものと見て差支えがない(黙21:3)。
[地より贖われたる] 天国の民たることを示す証拠となる。
[誰も学び得る者なかりき] ヨハ14:17。Tコリ2:14。霊に属する者のみ霊のことを学び知ることを得。
14章4節
口語訳 | 彼らは、女にふれたことのない者である。彼らは、純潔な者である。そして、小羊の行く所へは、どこへでもついて行く。彼らは、神と小羊とにささげられる初穂として、人間の中からあがなわれた者である。 |
塚本訳 | 彼らは(その身を)女に汚されなかった人達である。(皆)童貞であるからである。彼らは(地上にあった時、)仔羊の行く所には何処にでも随いて行く(のを常とした)人達である。彼らは人々の中から買われて、神と仔羊とのために初穂(の献げ物)となった(人達である)。 |
前田訳 | 彼らは女性に汚されぬ人々であった。彼らは童貞であった。彼らは小羊がどこへ行こうと従ったものであり、人々からあがなわれて神と小羊への初穂にされたものである。 |
新共同 | 彼らは、女に触れて身を汚したことのない者である。彼らは童貞だからである。この者たちは、小羊の行くところへは、どこへでも従って行く。この者たちは、神と小羊に献げられる初穂として、人々の中から贖われた者たちで、 |
NIV | These are those who did not defile themselves with women, for they kept themselves pure. They follow the Lamb wherever he goes. They were purchased from among men and offered as firstfruits to God and the Lamb. |
註解: 4、5節には十四万四千人の性質につきて録す。第一に彼らは純潔であって偶像と姦淫せず潔き処女として一人の夫なるキリストに許嫁せられしものである。第二に彼らは常にキリストとの霊の交りにおいて歩むものである。かくしてその性質も、その行為も共にキリストに相応しきものであった。
辞解
[女に汚されぬもの] (1)童貞未婚の生涯を終れるもの、(2)特に性的生活において純潔なりしもの、(3)キリスト者中の特に聖き選ばれたる人々、(4)偶像に汚されぬもの、すなわちその心を神とキリスト以外の何物にも向けざるもの等種々に解せられる。黙示録全体の構造より見て(4)を採る。ただし偶像を拝する心と淫行とは密接の関係あり。(4)の中にその他も含まれること勿論である。
[潔き者なり] 原語「そは童貞(処女)なればなり」と訳すべきで、男子にもこの童貞または処女に相当する parthenos なる文字はしばしば用いられている故差支えがない。ここでは上述のごとく独身の生涯を意味せず神に対する純潔なる生涯をいう。
[羔羊 の往き給うところに随う] (1)キリストに倣 うこと、(2)完全なる弟子たること、(3)殉教の死を遂ぐること等種々に解せられているけれども、(4)常に霊において彼と交わり彼のごとくに生きまた動くことと解す。
註解: 第三の点は彼らが初穂として神と羔羊 とにささげられるということである。彼らはイエスの血を代価として人間の中より買い取られしものである。ここに「初穂」はキリスト者の全体を指すが故に人類の中より選び別たれて神にささげられしものを意味す。
辞解
[初穂] 二つの意味に解することを得。その一はこの十四万四千を初穂として次々に多くの救われるものが神の御座の前に現われることを意味し、その二は十四万四千人をキリスト者の全体の表徴的数字と解し、この人々が初穂ですなわち全キリスト者を指し、人間全体の中より選別せられて神にささげられし人々の意味に解す。各ヤコ1:18辞解参照。
口語訳 | 彼らの口には偽りがなく、彼らは傷のない者であった。 |
塚本訳 | その口には虚偽がない。彼らは瑕なき者である。 |
前田訳 | 彼らの口にはいつわりがなく、純粋無垢であった。 |
新共同 | その口には偽りがなく、とがめられるところのない者たちである。 |
NIV | No lie was found in their mouths; they are blameless. |
註解: 第四に口に虚偽なきことで、彼らは神に対して生きるが故に、虚偽の生活に堪えない。第五に瑕 なき者であり、神にささげらるべき資格を有する者である。キリスト者はキリストの血によりて凡ての罪を洗い潔められるが故に神の前に瑕 なきものである (エペ1:4。コロ1:22。Uペテ3:14)。
附記 [十四万四千人について]7:1以下にある十四万四千人をユダヤ人中よリ選ばれしキリスト者と解するものは、本章の十四万四千人が全然ユダヤ人と無関係なることよりこの両者の同一なりや否やにつき疑義を生ず、またこの人々をキリスト者の一部と見るものはその他のキリスト者は新しき歌を学び得ざることとなり、彼らとは別の種類となる、かかることは有り得ない。またシオンの山を地上のエルサレムと解する者は、この新しき歌が何者によりて歌われしかにつき曲解を必要とし、かくして諸方面に解釈上の不統一を来す。もし上記のごとくに解するならば、かかる解釈上の困難や不統一は消失する。そして、この種の中間挿話は多く過去または未来の光景を現在に描かんと努力しているのであって、従って時の関係においての前後は当然のこととして受納れなければならない。すなわち7:1−8はキリスト者が選ばれる時の光景であり、7:9−17および14:1−5は未来において起こるべき光景の予示である。
註解: シオンの山には救われし者の全軍の讃歌の声が高く揚げられている間に他方中空には福音が声高く宣伝えられて地に住む者に呼びかけられる。
口語訳 | わたしは、もうひとりの御使が中空を飛ぶのを見た。彼は地に住む者、すなわち、あらゆる国民、部族、国語、民族に宣べ伝えるために、永遠の福音をたずさえてきて、 |
塚本訳 | また私はもう一人(他)の天使が、地に住む者、(すなわち)あらゆる国民と種族と国語と民とに宣べ伝うべき永遠の福音を携えて中空を飛ぶのを見た。 |
前田訳 | そしてわたしは見た。別の天使が中空高く飛び、地に住むものに、すなわちすべての国民と部族と国語と民族とに伝える永遠の福音をたずさえていた。 |
新共同 | わたしはまた、別の天使が空高く飛ぶのを見た。この天使は、地上に住む人々、あらゆる国民、種族、言葉の違う民、民族に告げ知らせるために、永遠の福音を携えて来て、 |
NIV | Then I saw another angel flying in midair, and he had the eternal gospel to proclaim to those who live on the earth--to every nation, tribe, language and people. |
註解: 中空を飛びて声を揚ぐるが故に何処よりも何人よりもこれを見聞することができる。
辞解
[他の] 新しく現われし天使のこと、6節以下本章に全体にあらわれるものはみな新なる登場人物である。場面の変化を与えて劇的光景を顕著ならしむる。
かれは
14章7節
口語訳 | 大声で言った、「神をおそれ、神に栄光を帰せよ。神のさばきの時がきたからである。天と地と海と水の源とを造られたかたを、伏し拝め」。 |
塚本訳 | 彼は大声に言うた、「神を畏れ、彼に栄光を帰せよ。(今や)その審判の時が来たのである。天と地と海と水の源とを造り給うた者を拝め。」 |
前田訳 | 大声にいわく、「神をおそれて栄光を帰せよ、彼の裁きの時は来た。天と地と海と水の源との造り主を拝め」と。 |
新共同 | 大声で言った。「神を畏れ、その栄光をたたえなさい。神の裁きの時が来たからである。天と地、海と水の源を創造した方を礼拝しなさい。」 |
NIV | He said in a loud voice, "Fear God and give him glory, because the hour of his judgment has come. Worship him who made the heavens, the earth, the sea and the springs of water." |
註解: この天使の宣伝える所は「永遠の福音」であり、宣伝えられる者は全世界の諸国民、諸民族であり、その命令の内容は審判の近接と神を畏 れてこれを拝しこれに栄光を帰することである。極めて当然のことであるけれども実際においてはこの命令が無視されている。何故キリストとその十字架を信ぜよと言われれなかったかについては、神を畏 れこれを拝し、栄光を彼に帰する者は、当然その御子をも敬うはずであるから。かくして世の終りの前に福音は全世界に宣伝えられる(マタ24:15)。
辞解
[地に住むもの] kathemenoi を用い、他の場合のごとく katoikeô を用いない理由は、多くの学者は同一の意味であると解しているけれども、おそらくヨハネは他の場合のごとく「神に反するもの」の意味を持たしめないためにこの語を用いたものであろう。▲kathêmai は「座する」kathemenoi はその複数分詞。katoikeô は「居住する」「住む」の意。
[国・族・国語・民] 黙5:9註参照。
[永遠の福音] 神の救いに関する経綸の福音は永遠の昔より永遠の未来に渡る処のものである。
[既に至りたればなり] 他の場合と同じく未来の事実をすでに起れるものと見て録せるもの。
[天、地、海、水の源] 第一乃至 第四のラッパおよび金の鉢の審判の行われる処 (黙8:7−12。黙16:2−9)。
註解: 次に起れる宣言はバビロンの壊滅である。
14章8節 ほかの
口語訳 | また、ほかの第二の御使が、続いてきて言った、「倒れた、大いなるバビロンは倒れた。その不品行に対する激しい怒りのぶどう酒を、あらゆる国民に飲ませた者」。 |
塚本訳 | するともう一人(他の)、第二の天使が(これに)続いて言うた、「倒れた、倒れた、大なるバビロンが!その淫行の憤怒の葡萄酒をあらゆる国民に飲ませた者!」 |
前田訳 | また、第二の天使が後についていう、「倒れた、倒れた、大いなるバビロンは。あれこそその不義ゆえのみ怒りの酒をすべての民に飲ませたもの」と。 |
新共同 | また、別の第二の天使が続いて来て、こう言った。「倒れた。大バビロンが倒れた。怒りを招くみだらな行いのぶどう酒を、諸国の民に飲ませたこの都が。」 |
NIV | A second angel followed and said, "Fallen! Fallen is Babylon the Great, which made all the nations drink the maddening wine of her adulteries." |
註解: ローマは当時往々にしてバビロンと呼ばれていた、その世界帝国の主都たる点、その奢侈 と腐敗、その神の民に対する敵対関係等において両者に共通なるものがあったからである(Tペテ5:13)。ヨハネはこのローマの滅亡を叫ぶ天使の声を聞いたのである。而してこのローマは世界各国民をその偶像崇拝と道徳的腐敗との葡萄酒をもって酔わしめ、その結果彼らは神の憤恚 の葡萄酒の杯を飲ましめられる。この際ローマを眼中に置きバビロンをその表徴として凡ての世界的文化、世界的権力を指せるものと解すべきである。
辞解
[▲▲従ひて] 口語訳の「続いて」の意。
[倒れたり、倒れたり] イザ21:9の語調によれるもの。
[大なる] バビロンの形容として常に用いらる (黙16:19。黙17:5。黙18:2、黙18:10、黙18:21。ダニ4:27)。
[バビロン] ローマを指し、従ってまたあらゆる世界的権力、世界的文化にして神を離れているものを指す。
[己が淫行より出づる憤恚 の葡萄酒] 「己が淫行の怒の葡萄酒」と訳すべきで(黙18:3参照)二つの観念を一つにまとめしものである。すなわちその一は「己が淫行の葡萄酒」その二は「神の怒の葡萄酒」である。前者はローマがその偶像崇拝と道徳的腐敗殊にその性道徳の紊乱 をもって諸国民に悪影響を与えしこと (黙17:2、黙17:4。エレ28:7。エレ51:7) 。後者はこの罪に対して神が憤恚 の葡萄酒の杯を飲ましむること(10節。黙16:19。イザ51:17。エレ25:15−17)。
14章9節 ほかの
口語訳 | ほかの第三の御使が彼らに続いてきて、大声で言った、「おおよそ、獣とその像とを拝み、額や手に刻印を受ける者は、 |
塚本訳 | するともう一人(他の)、第三の天使が彼らに続いて大声に言うた、「もし獣とその像とを拝み、額かあるいは手に(その獣の名の)印を受ける者があれば、 |
前田訳 | また、第三の天使がその後について、大声でいう、「獣とその像を拝み、しるしを額か手に受けるものも、 |
新共同 | また、別の第三の天使も続いて来て、大声でこう言った。「だれでも、獣とその像を拝み、額や手にこの獣の刻印を受ける者があれば、 |
NIV | A third angel followed them and said in a loud voice: "If anyone worships the beast and his image and receives his mark on the forehead or on the hand, |
14章10節
口語訳 | 神の怒りの杯に混ぜものなしに盛られた、神の激しい怒りのぶどう酒を飲み、聖なる御使たちと小羊との前で、火と硫黄とで苦しめられる。 |
塚本訳 | その人もまた神の怒りの酒杯に注がれた雑なき神の憤怒の葡萄酒を飲み、且つ聖なる天使の前と仔羊の前とにおいて、(永遠に)火と硫黄で苦しめられるであろう。 |
前田訳 | 同じく神の憤りの酒を飲まねばならない。それはみ怒りの杯に水を割らずにつがれたもの。彼は聖なるみ使いたちと、小羊の前で硫黄の火に苦しめられよう。 |
新共同 | その者自身も、神の怒りの杯に混ぜものなしに注がれた、神の怒りのぶどう酒を飲むことになり、また、聖なる天使たちと小羊の前で、火と硫黄で苦しめられることになる。 |
NIV | he, too, will drink of the wine of God's fury, which has been poured full strength into the cup of his wrath. He will be tormented with burning sulfur in the presence of the holy angels and of the Lamb. |
註解: 第一の御使(6節以下)は福音を宣伝え、第二の御使(8節)はローマの滅亡を示し、第三の御使(9節以下)は神に叛き福音を信ぜずして獣の像を拝しその徽章 を帯ぶるもの(黙13:16)に対する激しき神の怒と審判とを告示している。これ一面にこれらの不信の徒に対する警戒でもあるけれども、むしろそれよりも聖徒の苦難に対する忍耐の奨励である。
辞解
聖徒に対する迫害と相対応する審判が不信の徒に及ぶごとくに録されていることに注意すべし(ルカ12:9)。「獣とその像を拝するもの」は「神を拝する者」と対立し、「徽章 」は黙14:1の額に記されし「神及羔羊 の名」と対立し、「怒の酒杯」および「憤恚 の葡萄酒」は「姦淫の葡萄酒」と対立し、「聖なる御使たちおよび羔羊 の前」にて苦しめられることは当時のキリスト者が劇場等において多くの観衆の面前において迫害せられしことに対立する。
[怒] orgê は「憤恚 」thumos と異なり後者は一時に爆発する忿怒の情であり、前者は正義に基ける永続的公憤の情を意味する。
[火と硫黄] 審判の激しさを示し、最も重き処刑の場所を指す公式(黙19:20。黙20:10、黙20:14。黙21:8。イザ30:33。エゼ38:22)。
[混りなき] 水を混和せざること。
14章11節 その
口語訳 | その苦しみの煙は世々限りなく立ちのぼり、そして、獣とその像とを拝む者、また、だれでもその名の刻印を受けている者は、昼も夜も休みが得られない。 |
塚本訳 | 彼らの苦痛の煙は永遠より永遠に立ち上がって、獣とその像とを拝む者、また、誰でもその名の印を受ける者は(これに苦しめられ、彼らは)昼も夜も休息を得ることが無い。」 |
前田訳 | その苦しみの煙は永遠から永遠に上りゆく。獣とその像を拝むもの、その名のしるしを受けるものは昼も夜も休みを得まい。 |
新共同 | その苦しみの煙は、世々限りなく立ち上り、獣とその像を拝む者たち、また、だれでも獣の名の刻印を受ける者は、昼も夜も安らぐことはない。」 |
NIV | And the smoke of their torment rises for ever and ever. There is no rest day or night for those who worship the beast and his image, or for anyone who receives the mark of his name." |
14章12節
口語訳 | ここに、神の戒めを守り、イエスを信じる信仰を持ちつづける聖徒の忍耐がある」。 |
塚本訳 | ここに聖徒達、(すなわち)神の戒律とイエス(へ)の信仰を守る者の忍耐がある。 |
前田訳 | ここに、神のおきてとイエスのまことを守る聖徒らの忍耐がある」と。 |
新共同 | ここに、神の掟を守り、イエスに対する信仰を守り続ける聖なる者たちの忍耐が必要である。 |
NIV | This calls for patient endurance on the part of the saints who obey God's commandments and remain faithful to Jesus. |
註解: 10節の審判は一時的にあらず神に敵する者の上に永遠に留る、かつこの苦痛は連続的であって休息を得ることができない。然るに現在において迫害されるキリスト者の苦痛は一時的であり断続的である。このことを思うことによりてキリスト者は如何なる患難をも終りまで耐え忍ぶことができる。ここにも聖徒の慰めがある。
辞解
[苦痛の煙] ソドム、ゴモラの光景を偲ばしめられる(創19:28)。
[茲 にあり] ヨハネが特に信徒に暗示を与えてこれを力附けまたは慰めんとする場合に用いる語(黙13:10、黙13:18。黙17:9)。
14章13節
口語訳 | またわたしは、天からの声がこう言うのを聞いた、「書きしるせ、『今から後、主にあって死ぬ死人はさいわいである』」。御霊も言う、「しかり、彼らはその労苦を解かれて休み、そのわざは彼らについていく」。 |
塚本訳 | また私は天から声が(こう)言うのを聞いた、「書け、『今から後主にあって死ぬる死人は幸福である。』」御霊も言い給う、「然り、彼らはその労苦を休息む(ことが出来る)であろう。その(為した)業が彼らに随いて行くのであるから!」と。 |
前田訳 | またわたしは天からの声を聞いた。いわく、「書きしるせ、『さいわいなのは、今よりのち主にあって死ぬもの』と」。霊はいう、「然り、彼らはその労苦から休らおう。そして彼らのわざが後に従おう」と。 |
新共同 | また、わたしは天からこう告げる声を聞いた。「書き記せ。『今から後、主に結ばれて死ぬ人は幸いである』と。」“霊”も言う。「然り。彼らは労苦を解かれて、安らぎを得る。その行いが報われるからである。」 |
NIV | Then I heard a voice from heaven say, "Write: Blessed are the dead who die in the Lord from now on." "Yes," says the Spirit, "they will rest from their labor, for their deeds will follow them." |
註解: 迫害のために殉教の死を遂ぐる者は勿論のこと凡て主に在りて信仰をもって死んだ死人は11節の人々とは反対に、非常に幸福なる人々である。そはこの世に生存するために人皆の免れ得ざる労苦はその死と共に息 むからである。そしてその業すなわち主に在るものの信仰より出づる行為は死と共に消滅せず彼らに随 いて永遠に遺 るが故である(迫害に耐えて立派にその信仰を維持することもその業である)。この一節は殉教の死に遭わんとする信徒をなぐさめまた力づけんがために言われたものではあるが、しかしこれは一般の死人に妥当なる普遍的真理である。
辞解
[今よりのち] 以前に信仰を有ちて死ねる者を除外する意味ではない。これは神学論ではなく現実の社会に向って言われし言であることを注意すべきである。
[主に在りて] パウロの好んで用いし語。
[御霊も言ひ給ふ] 「御霊言い給う」とすべく、「随 うなり」は「随 えばなり」と訳すべきである。御霊が天よりの声を説明し給うたのである。
[労役] kopos はこの場合は「労苦」と訳する方が適当である(Tテサ1:3)。
[その業] erga は信仰の働きで、死後も消滅することは無い。
註解: 14−20は信者の救いと不信者の審判を示す(ヨエ4:13)
14章14節 また
口語訳 | また見ていると、見よ、白い雲があって、その雲の上に人の子のような者が座しており、頭には金の冠をいただき、手には鋭いかまを持っていた。 |
塚本訳 | また私は(一つの異象を)見た。すると視よ、真白な雲があって、雲の上に人の子のような者が坐し、頭には金の冠を戴き、手には利き鎌を持ち給うた。 |
前田訳 | そしてわたしは見た。見よ、白い雲がある。雲に人の子に似たものが座し、頭にかざすは金の冠、手にするは鋭い鎌である。 |
新共同 | また、わたしが見ていると、見よ、白い雲が現れて、人の子のような方がその雲の上に座っており、頭には金の冠をかぶり、手には鋭い鎌を持っておられた。 |
NIV | I looked, and there before me was a white cloud, and seated on the cloud was one "like a son of man" with a crown of gold on his head and a sharp sickle in his hand. |
註解: 14−16節は人の子イエスが世の終りに凡ての信徒を刈り集めて天の倉庫に収め給う光景を描写している。かく未だ来らざる世の終りの光景を預見することはこれは本書の全体に共通せる点である。この収穫を為さんとして来り給う者は人の子イエス・キリストである。首 に金の冠冕 をいただきてその尊貴と勝利とを表明し給い、手には利 き鎌を持ちてまさに行わんとする刈入れに備え給う。
辞解
[白き雲] 光明、祝福を示す。
14章15節
口語訳 | すると、もうひとりの御使が聖所から出てきて、雲の上に座している者にむかって大声で叫んだ、「かまを入れて刈り取りなさい。地の穀物は全く実り、刈り取るべき時がきた」。 |
塚本訳 | するともう一人(他の、第四)の天使が(天の)聖所から出て来て、雲の上に坐し給う者に大声で叫んだ、「汝の鎌を入れて刈り取れ。刈り取るべき時が来た、他の穀物は(既に)熟したのだから。」 |
前田訳 | 別の天使が宮を出、大声で雲に座すものに叫ぶ、「そなたの鎌を差し出してお刈り取りを。刈り入れの時は来ました。地の実りは熟しすぎています」と。 |
新共同 | すると、別の天使が神殿から出て来て、雲の上に座っておられる方に向かって大声で叫んだ。「鎌を入れて、刈り取ってください。刈り入れの時が来ました。地上の穀物は実っています。」 |
NIV | Then another angel came out of the temple and called in a loud voice to him who was sitting on the cloud, "Take your sickle and reap, because the time to reap has come, for the harvest of the earth is ripe." |
14章16節 かくて
口語訳 | 雲の上に座している者は、そのかまを地に投げ入れた。すると、地のものが刈り取られた。 |
塚本訳 | そこで雲の上に坐し給う者がその鎌を地上に投げ給うた。すると地(の穀物)は(たちまち)刈り取られた。 |
前田訳 | 雲に座すものはその鎌を地へと投げ、地は刈り取られた。 |
新共同 | そこで、雲の上に座っておられる方が、地に鎌を投げると、地上では刈り入れが行われた。 |
NIV | So he who was seated on the cloud swung his sickle over the earth, and the earth was harvested. |
註解: この刈入れは、マタ13:30のごとく毒麦と麦とを分つためではなく、専ら良き穀物の収穫と解すべきである。
辞解
[ほかの御使] 第四の御使で神より遣されてキリストに神の御旨を伝えんため聖所より出でしものである。キリストは神の命なしには何事をもなし給わない(ヨハ5:19)、ゆえに「雲の上に坐したまふ者」は御使の言に従う故にこの御使よりも以下の者で従ってキリストではないと解する説があるけれどもこれは誤っている。
[地は刈り取られたり] かくして地上に在る凡ての信徒はキリストの再臨によりて地の諸方より集められ、神の国の民として天国の倉に貯えられる。
[地に入れ] 原語「地に投げ入れ」というごとき強き意味。
註解: 17−20は葡萄の
酒槽 を踏む譬をもって不信者の審判を示す。たしかに葡萄は神の憤恚 の葡萄酒(黙14:10)を連想せしめ、イザ63:2−3のごとき思想を表顕するに相応しいからである。
14章17節
口語訳 | また、もうひとりの御使が、天の聖所から出てきたが、彼もまた鋭いかまを持っていた。 |
塚本訳 | またもう一人(他の、第五)の天使が天にある(神の)聖所から出て来た。彼もまた(その手に)利き鎌を持っていた。 |
前田訳 | すると別の天使が天の宮から出た。彼も鋭い鎌を持つ。 |
新共同 | また、別の天使が天にある神殿から出て来たが、この天使も手に鋭い鎌を持っていた。 |
NIV | Another angel came out of the temple in heaven, and he too had a sharp sickle. |
註解: これは第五の御使であり、聖所より出でしを見れば同じく神より遣されし御使に相違ない。ただし自ら葡萄を刈り取るために鎌を持つことは14節のメシヤが自ら鎌を持ち給うのと異なる(異ならない:編者)点であるが、信者の収穫にはキリスト自ら当り給い、不信者の審判には天使がこれに当ることは聖霊の智慧による微妙なる区別であることに注意すべきである。
14章18節
口語訳 | さらに、もうひとりの御使で、火を支配する権威を持っている者が、祭壇から出てきて、鋭いかまを持つ御使にむかい、大声で言った、「その鋭いかまを地に入れて、地のぶどうのふさを刈り集めなさい。ぶどうの実がすでに熟しているから」。 |
塚本訳 | すると火の支配権を有つもう一人(他の、第六)の天使が祭壇から出て来て、利き鎌を持つ天使に大声で叫んで言うた、「汝の利き鎌を入れて、地の葡萄樹の房を刈り集めよ。葡萄は(もうすっかり)熟し切ったのだから。」 |
前田訳 | また別の天使が祭壇から出た。彼は火をつかさどる力を持ち、大声で鋭い鎌を持つものに呼びかけた。いわく、「その鋭い鎌を差し出して、地のぶどうの木の房を取り入れよ。そのぶどうは熟したから」と。 |
新共同 | すると、祭壇のところから、火をつかさどる権威を持つ別の天使が出て来て、鋭い鎌を持つ天使に大声でこう言った。「その鋭い鎌を入れて、地上のぶどうの房を取り入れよ。ぶどうの実は既に熟している。」 |
NIV | Still another angel, who had charge of the fire, came from the altar and called in a loud voice to him who had the sharp sickle, "Take your sharp sickle and gather the clusters of grapes from the earth's vine, because its grapes are ripe." |
註解: ここに第六の御使が顕現する。火を掌 ることと祭壇より出て来ることより見て黙8:3−5に録されし御使に相当する。すなわち香を焼きて聖徒の祈りを神にささげ、その香炉の火を地に擲 ちて審判を行う。ゆえに葡萄の酒槽 を踏むことは審判を意味す。この御使が第五の御使に葡萄がすでに熟したる故これを刈り収 むべきことを言伝える。
辞解
[祭壇] 黙6:9の燔祭の壇と見るよりも黙8:3−5の香壇と見るを可とす。
14章19節
口語訳 | そこで、御使はそのかまを地に投げ入れて、地のぶどうを刈り集め、神の激しい怒りの大きな酒ぶねに投げ込んだ。 |
塚本訳 | そこで天使はその鎌を地に投げ入れて地の葡萄樹を刈り集め、(それを)神の憤怒の大きな酒槽に投げ込んだ。 |
前田訳 | 天使は鎌を地へと投げ、地のぶどうを取り入れ、神の怒りの大きな酒ぶねに投げ入れた。 |
新共同 | そこで、その天使は、地に鎌を投げ入れて地上のぶどうを取り入れ、これを神の怒りの大きな搾り桶に投げ入れた。 |
NIV | The angel swung his sickle on the earth, gathered its grapes and threw them into the great winepress of God's wrath. |
14章20節 かくて
口語訳 | そして、その酒ぶねが都の外で踏まれた。すると、血が酒ぶねから流れ出て、馬のくつわにとどくほどになり、一千六百丁にわたってひろがった。 |
塚本訳 | 酒槽は町の外で踏まれた。そして血が酒槽から(流れ)出て、(深さ)馬の轡に達し、(広さ)千六百町歩に及んだ。 |
前田訳 | 酒ぶねは都の外で踏まれた。すると酒ぶねから血が流れ出、馬の手綱にとどき、千六百スタデオにひろがった。 |
新共同 | 搾り桶は、都の外で踏まれた。すると、血が搾り桶から流れ出て、馬のくつわに届くほどになり、千六百スタディオンにわたって広がった。 |
NIV | They were trampled in the winepress outside the city, and blood flowed out of the press, rising as high as the horses' bridles for a distance of 1,600 stadia. |
註解:酒槽 を踏む時葡萄酒はあたかも血のごとくに流れ出でる、この光景は罪人が審 かれて血を流す時の姿に類似しているのでこれを審判の光景の表徴として用いたのである(イザ63:3−6参照)。そしてこの審判の血は神の民の住むべき新しきエルサレムの都の外において流され、非常なる広袤 に達している。神に背ける者の審判の恐るべき有様を髣髴 せしむ。
辞解
[馬の轡 ] エノク書の中にこれに類似する形容あり、血の流される分量の大なることを示す。
[一千六百町] 意味は多くの学者により非常に難解と称せられているけれども地を意味する数四と人間としての充分さを示す十との積四十を自乗して、地的人間的なるものの受くべき審判の範囲の全体を示したるものと解すべきことは明かである。すなわち神の怒の審判は神の民の住むべき新しきエルサレムには触れないけれどもその外において地の全体に及んでいる。なおこの千六百町は「パレスチナの延長」、「紅海の長さ」等と解されまたは漠然と「完全」を意味すと見られているけれども何れも不充分なる解釈である。
[都の外] 昔刑を受ける者は都の外においてこれを受けた(ヨエ4:12)。この思想をヨハネはここに援用したのである。
要義 [第14章の意義]第12、13章における教会とその迫害との光景の後を受けて本章はキリスト者に対する慰安の光景を示す。天のエルサレムにおける聖徒の大軍の讃美(1−5節)、福音の宣伝(6−7節)、バビロン覆滅 の宣言(8節)、獣を拝する者の審判(9−12節)、主にある死者の幸福(13節)、天の刈り入れ(14−16節)と酒槽の審判(17−20節)等七つの項目に別けて黙示文学の特徴を示し、何れも迫害と患難の中にある教会にとりて絶大の希望を供給し、深き慰安を与えるところの光景である。今日のキリスト者といえどもこれと同様であって、この世とこれを支配するサタンの力の下にありて本章の光景を思い浮べるならば、如何なる迫害の下においても希望を失わずにその信仰を保持することができる。
黙示録第15章
3-(3)-(ロ) 第二序曲
15:1 - 15:8
註解: 前章にて中間挿景は一段落を告げ、本章よりいよいよ最後の第七のラッパの展開とも見るべき七つの苦難を盛れる七つの金の鉢の審判が開始される。而して本章はその序曲とも見るべきものである。
15章1節
口語訳 | またわたしは、天に大いなる驚くべきほかのしるしを見た。七人の御使が、最後の七つの災害を携えていた。これらの災害で神の激しい怒りがその頂点に達するのである。 |
塚本訳 | また私はもう一つ(他)の大きな、驚くべき徴を天に見た──最後の災厄を持つ七人の天使。(最後というのは)この災厄によって神の(烈しい)憤怒は成就される(からである)。 |
前田訳 | そしてわたしは見た。偉大で驚くべき別の徴が天におこった。七人の天使が最後の七つのわざわいを持つ。それらで神の怒りがきわまる。 |
新共同 | わたしはまた、天にもう一つの大きな驚くべきしるしを見た。七人の天使が最後の七つの災いを携えていた。これらの災いで、神の怒りがその極みに達するのである。 |
NIV | I saw in heaven another great and marvelous sign: seven angels with the seven last plagues--last, because with them God's wrath is completed. |
註解: 本節は16−18章に録される最後の大苦難に関する表題または序曲のごときものである。
辞解
[他の] 黙12:1と相対応し教会の敵に対する審判の徴である。
[最後の七つの苦難] これは第七のラッパの展開であることについては附記を見よ。七は完全を示す。
[全うせらる] 神の憤恚 は17−19章のバビロンの滅亡によって完成される。それまでの凡ての災害や苦難はその前奏曲である。
15章2節
口語訳 | またわたしは、火のまじったガラスの海のようなものを見た。そして、このガラスの海のそばに、獣とその像とその名の数字とにうち勝った人々が、神の立琴を手にして立っているのを見た。 |
塚本訳 | また私は火の混じった(真赤な)玻璃の海のようなものを(天に)見た。(また)獣とその像とその名の数字とに勝った者が玻璃の海の辺に立ち、神の竪琴を持っている(のを見た)。 |
前田訳 | そしてわたしは見た。火の混ったガラスの海のようなものがある。獣とその像とその名の数とに勝った人々が神の竪琴を手にガラスの海に立っている。 |
新共同 | わたしはまた、火が混じったガラスの海のようなものを見た。更に、獣に勝ち、その像に勝ち、またその名の数字に勝った者たちを見た。彼らは神の竪琴を手にして、このガラスの海の岸に立っていた。 |
NIV | And I saw what looked like a sea of glass mixed with fire and, standing beside the sea, those who had been victorious over the beast and his image and over the number of his name. They held harps given them by God |
註解: 最後の苦難の起る前に、これに関する天上の動きがあることあたかも七つのラッパの前の黙8:1の光景のごとくである。黙8:1は沈黙の光景でありここでは聖徒の歌となってあらわれる。
辞解
[玻璃 の海] 黙4:6を見よ。
[火の混りたる] 審判の火をそこにたたえている貌。
[・・・・・・とに勝ちたる者] 「勝ちて・・・・・・の中より出でし者」というごとき意味で獣の偉大なる力に勝ちてその囲を突破せるごとき貌。
[神の立琴] 神を讃えるための立琴。
[海の辺] 「海の上」と訳す方宜しからん(B1、S3)。
15章3節
口語訳 | 彼らは、神の僕モーセの歌と小羊の歌とを歌って言った、「全能者にして主なる神よ。あなたのみわざは、大いなる、また驚くべきものであります。万民の王よ、あなたの道は正しく、かつ真実であります。 |
塚本訳 | 彼らは神の僕モーセの歌と仔羊の歌をうたって言う──主なる神よ、全能者よ、御業は大なるかな、驚くべきかな!諸々の国の王よ、なんじの道は義しきかな、真実なるかな! |
前田訳 | 彼らは神の僕モーセの歌と小羊の歌とをうたう。いわく−−全能の主なるみ神、みわざは偉大、また驚異、 万民の王、なんじの道は義、また真。 |
新共同 | 彼らは、神の僕モーセの歌と小羊の歌とをうたった。「全能者である神、主よ、/あなたの業は偉大で、/驚くべきもの。諸国の民の王よ、/あなたの道は正しく、また、真実なもの。 |
NIV | and sang the song of Moses the servant of God and the song of the Lamb: "Great and marvelous are your deeds, Lord God Almighty. Just and true are your ways, King of the ages. |
15章4節
口語訳 | 主よ、あなたをおそれず、御名をほめたたえない者が、ありましょうか。あなただけが聖なるかたであり、あらゆる国民はきて、あなたを伏し拝むでしょう。あなたの正しいさばきが、あらわれるに至ったからであります」。 |
塚本訳 | 主よ、誰が汝を畏れず、御名を崇めないであろう。(ただ)汝のみ聖にいまし給う。万国(の民)は来たって汝の前に跪くであろう。汝の(義しき)審判が(既に)顕れたから! |
前田訳 | 主よ、だれがなんじをおそれずに、み名をたたえずにいましょう。聖にいますはただひとり。すべての民は来て、み前にひれ伏しましょう。正しい摂理のお示しのゆえに。 |
新共同 | 主よ、だれがあなたの名を畏れず、/たたえずにおられましょうか。聖なる方は、あなただけ。すべての国民が、来て、/あなたの前にひれ伏すでしょう。あなたの正しい裁きが、/明らかになったからです。」 |
NIV | Who will not fear you, O Lord, and bring glory to your name? For you alone are holy. All nations will come and worship before you, for your righteous acts have been revealed." |
註解: 4節後半私訳「そは汝のみ聖に在し、凡ての国人来りて御前に拝し、汝の審判既に現れたればなり」出15:1以下に苦難の下にありしイスラエルが紅海を渡り神の力によりてエジプト王パロより救出されしことに対し、全民衆が声高らかに神を讃美するの歌を歌ったことが録されている。これが所謂モーセの歌である。3、4節に歌われる天上の歌もまたその性質においてこれに類似しており、イエスの十字架の贖いによって罪のエジプトより救出されて紅海を渡りしものがサタンの支配の下にあるバビロンの審判を見て歌う讃美の歌である。この意味においてこの歌は予表または型たりしモーセの歌と、その実現なる羔羊 の救いの歌との双方の性質を有し、従って旧約と新約の両経綸を打って一丸となせるものと見ることができる。これを「モーセの歌と羔羊 の歌」と称する所以はここにある。この讃美の内容は神の御業の至大絶妙なること、神の道の正義にして真正なること、そしてこの神を畏敬礼拝しない者はいないこととである。その以下はその理由の説明である。この讃美は旧約のモーセの歌(出15:1以下)の場合と同じく、自己の業に関する誇りは微塵もない。この歌も他の場合と同じく凡ての苦難が終りて聖徒たちが天に集められし時の光景を予見して言えるものと見るべきである。
辞解
[萬国の王] むしろ「萬民の王」と訳するを可とす。
[なんぢの審判] 直訳「なんぢの義しき所業」dikaiôma で罪に対する審判もその一つである。
15章5節 この
口語訳 | その後、わたしが見ていると、天にある、あかしの幕屋の聖所が開かれ、 |
塚本訳 | この後また私は見た。天にある証の天幕の聖所が開かれ、 |
前田訳 | その後わたしは見た。天にある証の幕屋の宮が開け、 |
新共同 | この後、わたしが見ていると、天にある証しの幕屋の神殿が開かれた。 |
NIV | After this I looked and in heaven the temple, that is, the tabernacle of the Testimony, was opened. |
15章6節 かの
口語訳 | その聖所から、七つの災害を携えている七人の御使が、汚れのない、光り輝く亜麻布を身にまとい、金の帯を胸にしめて、出てきた。 |
塚本訳 | 七つの災厄を持つ七人の天使が聖所(の中)から出て来た。(彼らは)輝いた潔い麻の衣を纏い、胸には金の帯を締めていた。 |
前田訳 | 七つのわざわいを持つ天使が宮から出た。彼らは純に輝く亜麻布を着、胸には金の帯をしている。 |
新共同 | そして、この神殿から、七つの災いを携えた七人の天使が出て来た。天使たちは、輝く清い亜麻布の衣を着て、胸に金の帯を締めていた。 |
NIV | Out of the temple came the seven angels with the seven plagues. They were dressed in clean, shining linen and wore golden sashes around their chests. |
註解: 七人の御使は金帯白衣すなわち祭司あるいは他の天的存在に相応しき装束をもって聖所より出で来るのをヨハネが見た。その聖所より出で来れるは神より直接に遣されしことを示す。
辞解
[証の幕屋] 沙漠における神の幕屋の別名で(出38:21。民9:15。民17:22以下、民18:2。旧約には「律法[新共同訳では掟]の幕屋」と訳さる、「証の幕屋」と訳すべきである)ここでは天における神の住み給う所を意味す。
[聖所] 神の在し給う処で祭司はこの処で神に見える。
[潔き輝ける亜麻布] 天に在る者の貌に最も相応し (黙19:8。マタ17:2。マタ28:3。使1:10)
[金の帯] 黙1:13註参照。
[聖所ひらけ] この時始めてヨハネは七人の御使を見しものとすれば第1節と重複するがごときも第1節はこれを表題のごときものと見れば差支えなし。
15章7節
口語訳 | そして、四つの生き物の一つが、世々限りなく生きておられる神の激しい怒りの満ちた七つの金の鉢を、七人の御使に渡した。 |
塚本訳 | すると四つの活物の一つが、永遠より永遠に活き給う神の憤怒の盛られた七つの金の鉢を(この)七人の天使に渡した。 |
前田訳 | 四つの生きもののひとつが、七人の天使に七つの鉢を渡した。それらは世々とこしえに生きたもう神の憤りで満ちていた。 |
新共同 | そして、四つの生き物の中の一つが、世々限りなく生きておられる神の怒りが盛られた七つの金の鉢を、この七人の天使に渡した。 |
NIV | Then one of the four living creatures gave to the seven angels seven golden bowls filled with the wrath of God, who lives for ever and ever. |
15章8節
口語訳 | すると、聖所は神の栄光とその力とから立ちのぼる煙で満たされ、七人の御使の七つの災害が終ってしまうまでは、だれも聖所にはいることができなかった。 |
塚本訳 | (たちまち)聖所は神の栄光とその権能からの煙で一杯になった。そして七人の天使の七つの災厄が終わるまでは、誰も聖所に入ることが出来なかった。 |
前田訳 | すると宮は神の栄光と力との煙で満たされた。七人の天使の七つのわざわいがきわまるまでは、だれも宮に入れなかった。 |
新共同 | この神殿は、神の栄光とその力とから立ち上る煙で満たされ、七人の天使の七つの災いが終わるまでは、だれも神殿の中に入ることができなかった。 |
NIV | And the temple was filled with smoke from the glory of God and from his power, and no one could enter the temple until the seven plagues of the seven angels were completed. |
註解: ここに苦難を持てる御使は神の憤恚 による審判としてこの苦難を注がんがために、この神の憤恚 の満てる金の鉢を与えらる。神怒り給う時人は神の御顔を瞻 ることができない。その栄光の輝きとその権力をもって行い給う審判が余りにも恐ろしいからである。このことはここで聖所に満つる煙をもって表徴されているのを見る(出19:18。詩18:8。イザ6:4。イザ65:5)。従って七つの苦難終るまでは聖所に入る人はない。それまでは神の最後の憤恚 が注がれる最も恐るべき時である。
附記 [第七のラッパと七つの金の鉢との関係]第七の封印が七つのラッパに展開したことは黙8:1によりて明かに示されているけれども、第七のラッパがさらに七つの金の鉢に展開せることは何処にも明示されていない。唯第五のラッパは「第一の禍害」(黙9:12)であり、第六、第七のラッパが第二、第三の禍害であることは黙8:13によりて明かである以上第七のラッパは第三の禍害でなければならない。然るに黙11:15−19は第三の禍害の序曲に過ぎず、未だ第三の禍害至れるがごとくに思われない。そして第12−14章は明かに挿景として教会とその迫害とを録し、黙12:1と黙15:1とに二つの大なる徴を見しことが録されている以上第11章の終と第16章とは密接の関係にある。そして黙11:15−19は黙8:18:1に黙15:5−8は黙8:2に相当し、黙8:1−5が七つのラッパの序曲であるごとく黙11:15−19および黙15:1−8は七つの金の鉢の序曲であると見得るのであって、これら諸種の点を綜合して、ヨハネは第七のラッパが七つの金の鉢に展開せるものとして録したものと見なければならない。かく解することによりて始めて黙示録の全構造が整頓する。