黒崎幸吉著 註解新約聖書 Web版黙示録

黙示録第18章

分類
3 この世の審判と救 4:1 - 18:24
3-(3) 第七のラッパ 11:14 - 18:24
3-(3)-(ホ) 第七の金の鉢の審判 16:17 - 18:24
3-(3)-(ホ)-(丙) バビロンの覆滅 18:1 - 18:24
3-(3)-(ホ)-(丙)-(a) 天よりの声 18:1 - 18:8

註解: 前章において一人の天使がローマの都の性質とローマの国権、すなわち皇帝と諸侯との関係を録し、やがて後者が前者を壊滅に帰せしむべきことを説明したのであるが、本章においてはこれが実現する。すなわち他の一人の天使あらわれ、いよいよバビロンの滅亡を宣言し(1−3)、これに伴い天より声ありて神の民がその滅ぶべき都を逃るべきことを警告し(4−5)、彼女(大淫婦なるローマ市)にその罪に応じて報復すべきこととその結果とを述べ(6−8)、これに次で王たちの歎き(9、10)、商人たちの歎き(11−17a)、海上商人の歎き(17b−19)、最後に天使の言葉あり(20)、そうして後他の御使あらわれてバビロン覆滅(ふくめつ)の有様を示してその惨状につき預言する(21−24)。かくしてバビロン覆滅(ふくめつ)の光景はありありとヨハネの眼前に展開した。ここに神に反する世界文化の終局の姿があり、今日の我らにとりても生ける教訓である。そしてこの文化を利用せしサタンと獣と偽預言者との審判は後に最後の審判に到って実現する(黙19:20黙21:10)。

18章1節 この(のち)また(ほか)一人(ひとり)御使(みつかひ)(おほい)なる權威(けんゐ)()ちて(てん)より(くだ)るを()しに、()はその榮光(えいくわう)によりて(てら)されたり。[引照]

口語訳この後、わたしは、もうひとりの御使が、大いなる権威を持って、天から降りて来るのを見た。地は彼の栄光によって明るくされた。
塚本訳この(異象の)後私はもう一人(他)の、大なる力を有つ天使が天から下りて来るのを見た。地はその栄光によって輝いた。
前田訳その後わたしは見た。別の天使が大きな権威を持って天から降り、地は彼の栄光で輝いた。
新共同その後、わたしは、大きな権威を持っている別の天使が、天から降って来るのを見た。地上はその栄光によって輝いた。
NIVAfter this I saw another angel coming down from heaven. He had great authority, and the earth was illuminated by his splendor.
註解: この御使がバビロンの壊滅を行ったのではなく、これを宣言している姿である。
辞解
[他の] 黙17:1に対す。
[権威] 御使は地の王をしてバビロンを滅させるべき使命と権威とを持つ故にその栄光は全地に輝く。この形容はエゼ43:2による。

18章2節 かれ(つよ)(こゑ)にて(よば)はりて()ふ『(おほい)なるバビロンは(たふ)れたり、(たふ)れたり、かつ惡魔(あくま)住家(すみか)、もろもろの(けが)れたる(れい)(をり)、もろもろの(けが)れたる(にく)むべき(とり)(をり)となれり。[引照]

口語訳彼は力強い声で叫んで言った、「倒れた、大いなるバビロンは倒れた。そして、それは悪魔の住む所、あらゆる汚れた霊の巣くつ、また、あらゆる汚れた憎むべき鳥の巣くつとなった。
塚本訳彼は強い声で叫んで言うた、「倒れた、倒れた、大バビロンが! そして悪鬼の住家、あらゆる穢れた霊の逃げ場、またあらゆる穢れた憎むべき鳥の逃げ場となった。
前田訳彼は強い声で叫んだ。いわく、「倒れた、倒れた、大バビロンは。それは悪鬼たちの住み家、すべての汚れた霊の巣、すべての汚れたいとわしい鳥の巣になった。
新共同天使は力強い声で叫んだ。「倒れた。大バビロンが倒れた。そして、そこは悪霊どもの住みか、/あらゆる汚れた霊の巣窟、/あらゆる汚れた鳥の巣窟、/あらゆる汚れた忌まわしい獣の巣窟となった。
NIVWith a mighty voice he shouted: "Fallen! Fallen is Babylon the Great! She has become a home for demons and a haunt for every evil spirit, a haunt for every unclean and detestable bird.
註解: 御使はここにローマが壊滅に帰せるものとしての叫びを挙げている。黙14:8にすでに予告された通りである。そしてバビロンが壊滅に帰せる後はあたかもイザ13:19−22。エレ50:39にあるバビロン滅亡の預言のごとく、人間の住み得ざる荒地と化してしまう。
辞解
[鳥] 往々悪魔的意味に用いられる(マタ13:32参照)故に「悪魔」「悪の霊」と共に凡て悪鬼を指し、華々しかった都が凡て魑魅魍魎(ちみもうりょう)の住家となること。
[(をり)] phulakê を物見(やぐら)の意味に取る説もあれどここでは(おり)と見る方可ならん。すなわち歓楽の都は牢獄のごとき陰欝の場所となること。

18章3節 (そは)もろもろの國人(くにびと)は、その淫行(いんかう)憤恚(いきどほり)葡萄酒(ぶだうしゅ)()み、()(わう)たちは(かれ)(いん)をおこなひ、()商人(あきうど)らは(かれ)(おごり)勢力(ちから)によりて()みたればなり』[引照]

口語訳すべての国民は、彼女の姦淫に対する激しい怒りのぶどう酒を飲み、地の王たちは彼女と姦淫を行い、地上の商人たちは、彼女の極度のぜいたくによって富を得たからである」。
塚本訳何故なら、万国の民は彼女の淫行の憤怒の葡萄酒を飲み、地の王達は(皆)彼女と淫行をなし、地の商人達は彼女の豪勢な奢侈(おごり)によって富んだからである。
前田訳すべての民が彼女の姦淫の憤りの酒を飲み、地の王たちが彼女と姦淫を行ない、地の商人が彼女の奢りの力で富んだからである」と。
新共同すべての国の民は、/怒りを招く彼女のみだらな行いのぶどう酒を飲み、/地上の王たちは、彼女とみだらなことをし、/地上の商人たちは、/彼女の豪勢なぜいたくによって/富を築いたからである。」
NIVFor all the nations have drunk the maddening wine of her adulteries. The kings of the earth committed adultery with her, and the merchants of the earth grew rich from her excessive luxuries."
註解: ローマ市が(さば)かれて壊廃する原因はその与えし悪影響のためであった。その悪影響は諸国民、国王、商人の三つの階級に及ぶ。これらは何れもローマの奢侈(おごり)と淫を行い共に奢侈(おごり)に陥りまたはこれを利用して自ら富めるが故であった。
辞解
[淫行の憤恚(いきどおり)の葡萄酒] 黙14:8辞解参照。
[王たち] 9節を見よ。
[(おごり)] strênos 非常なる(おご)りに耽溺(たんでき)しつつこれを誇っていること。
[勢力(ちから)] dunamis で力を意味す。奢侈(おごり)は一つの力である。今日の経済力は奢侈(おごり)の力に過ぎない。このハビロンの姿は今日の世界の姿に酷似す。今日世界万民の上に下っている審判もこのバビロンの滅亡の姿の一種である。

18章4節 また(てん)より(ほか)(こゑ)あるを()けり。(いは)く『わが(たみ)よ、かれの(つみ)(あづか)らず、(かれ)苦難(くるしみ)(とも)()けざらんため、その(うち)()でよ。[引照]

口語訳わたしはまた、もうひとつの声が天から出るのを聞いた、「わたしの民よ。彼女から離れ去って、その罪にあずからないようにし、その災害に巻き込まれないようにせよ。
塚本訳また私はもう一つ(他)の声が天から(こう)言うのを聞いた、「私の民よ、彼女(の所)から出て来い。その罪に干与らず、またその災厄の巻き添えを喰わないために!
前田訳そしてわたしは別の声が天からいうのを聞いた、「わが民よ、彼女を去れ、彼女と罪を共にせず、彼女のわざわいを受けないために。
新共同わたしはまた、天から別の声がこう言うのを聞いた。「わたしの民よ、彼女から離れ去れ。その罪に加わったり、/その災いに巻き込まれたりしないようにせよ。
NIVThen I heard another voice from heaven say: "Come out of her, my people, so that you will not share in her sins, so that you will not receive any of her plagues;

18章5節 かれの(つみ)(つも)りて(てん)にいたり、(かみ)その不義(ふぎ)(おぼ)(たま)ひたればなり。[引照]

口語訳彼女の罪は積り積って天に達しており、神はその不義の行いを覚えておられる。
塚本訳彼女の罪は天に達し、(今や)神はその悪事を思い出し給うたのである。
前田訳彼女の罪は天にまでとどき、神は彼女の不義をおぼえたもう。
新共同彼女の罪は積み重なって天にまで届き、/神はその不義を覚えておられるからである。
NIVfor her sins are piled up to heaven, and God has remembered her crimes.
註解: ローマに審判が下る前に神の民に勧告が発せられる。これ神の民の純潔を保ちその平安を守らんがためである。そはローマの罪の甚だしき積り積って天に達しているからである。
辞解
[他の声] 神、キリスト、天使等種々に解せられるけれども4節より見て天使と解すべきであろう。
[中を出でよ] イスラエルの信仰の表徴とも云うべき語でイザ48:20エレ50:8エレ51:6エレ51:45等のバビロンよりの脱出、アブラハムの故郷脱出(創12:1)。ロトのソドム脱出(創19:12)。その他 Uコリ6:17エペ5:11Tテモ5:22も同精神である。なおマコ13:14以下参照。
[積りて天に至り] 直訳「天まで密着し」で罪と罪とが次第に重畳(ちょうじょう)して天に到れる貌。

18章6節 (かれ)()しし(ごと)(かれ)()し、その行爲(おこなひ)(おう)じ、(ばい)して(これ)(むく)い、かれが()(あた)へし酒杯(さかづき)(ばい)して(これ)(くみ)(あた)へよ。[引照]

口語訳彼女がしたとおりに彼女にし返し、そのしわざに応じて二倍に報復をし、彼女が混ぜて入れた杯の中に、その倍の量を、入れてやれ。
塚本訳彼女が(自分で他人に)為たように彼女にもせよ。その行為に応じて(報復を)二倍にせよ。彼女が(他人に)注いだ酒杯に、倍にして彼女に注げ。
前田訳彼女も報いたように、彼女に報いよ。そのわざによる罰を二重にせよ。彼女が混ぜた杯に二倍混ぜよ。
新共同彼女がしたとおりに、/彼女に仕返しせよ、/彼女の仕業に応じ、倍にして返せ。彼女が注いだ杯に、/その倍も注いでやれ。
NIVGive back to her as she has given; pay her back double for what she has done. Mix her a double portion from her own cup.

18章7節 かれが(みづか)(たふと)び、みづから(おご)りしと(おな)じほどの苦難(くるしみ)悲歎(かなしみ)とを(これ)(あた)へよ。[引照]

口語訳彼女が自ら高ぶり、ぜいたくをほしいままにしたので、それに対して、同じほどの苦しみと悲しみとを味わわせてやれ。彼女は心の中で『わたしは女王の位についている者であって、やもめではないのだから、悲しみを知らない』と言っている。
塚本訳彼女が自分を誇り且つ奢っていただけの苦痛と悲歎とを彼女に与えよ。彼女は心の中で『私は女王として(王座に)坐っている。私は寡婦ではない。決して悲嘆に遭わないであろう』と言うからである。
前田訳彼女が飾り奢っただけ、悩みと悲しみを与えよ。心の中で彼女はいうから、『わたしは女王として座し、やもめではなく、悲しみを見ない』と。
新共同彼女がおごり高ぶって、/ぜいたくに暮らしていたのと、/同じだけの苦しみと悲しみを、/彼女に与えよ。彼女は心の中でこう言っているからである。『わたしは、女王の座に着いており、/やもめなどではない。決して悲しい目に遭いはしない。』
NIVGive her as much torture and grief as the glory and luxury she gave herself. In her heart she boasts, `I sit as queen; I am not a widow, and I will never mourn.'
註解: この命令は4節の神の民に与えられたものでなく、審判の行使に当る御使に与えられたと見るべきである(黙16:1)。行為の程度に従いて報いられるとの思想は旧約聖書を貫ける思想で幾分新約聖書にも及んでいる(マタ7:2)。神の正義は不公正を許容し給わないからである。この二節よりローマの罪は悪行(迫害等の)、淫行および奢侈(おごり)の三つであることがわかる。
辞解
lex talionis 復讐法につきてはイザ40:2エレ16:18エレ17:18出22:3出22:6出22:8詩137:8等参照。すなわち倍してまたは同一のことをもって受けし悪に報ゆることを当然と考えていた。
[自ら尊び] 「自ら栄光を帰し」でここでは悪しき意味に用いられている。

( 其故(そのゆえ)は)(かれ)(こころ)のうちに「われは女王(にょわう)(くらゐ)()する(もの)にして寡婦(やもめ)にあらず、(けっ)して悲歎(かなしみ)()ざるべし」と()[ふ](へばなり)。

註解: イザ47:8より取る。ローマの都の高慢なる心持が表わされている。文化はその殷盛(いんせい)時に当っては決してその没落を想像しない。人間の眼の暗さを示す一つの事実である。

18章8節 この(ゆゑ)に、さまざまの苦難(くるしみ)一日(いちにち)のうちに(かれ)()にきたらん、(すなは)()悲歎(かなしみ)饑饉(ききん)となり。(かれ)また()にて()(つく)されん、(かれ)(さば)きたまふ(しゅ)なる(かみ)(つよ)ければなり。[引照]

口語訳それゆえ、さまざまの災害が、死と悲しみとききんとが、一日のうちに彼女を襲い、そして、彼女は火で焼かれてしまう。彼女をさばく主なる神は、力強いかたなのである。
塚本訳だから(わずか)一日の中に(様々な)彼女の災厄、死と悲嘆と飢饉とが来、また火で焼かれるであろう。彼女を審き給うた主なる神は強くいまし給うからでる。
前田訳それゆえ彼女のわざわいが一日のうちに来よう−−疫病と悲しみと飢えが。そして彼女は火に焼かれよう。彼女を裁きたもう主なる神は強くいますから」と。
新共同それゆえ、一日のうちに、さまざまの災いが、/死と悲しみと飢えとが彼女を襲う。また、彼女は火で焼かれる。彼女を裁く神は、/力ある主だからである。」
NIVTherefore in one day her plagues will overtake her: death, mourning and famine. She will be consumed by fire, for mighty is the Lord God who judges her.
註解: ヨハネは前節より継続してイザ47:8以下を脳中に描きつつ筆を進める。すなわちローマなるバビロンは以上のごとく誇り、神を無視するが故に、力強き神は一朝にして彼を大なる禍害と破滅とに陥れ給うであろう。神に叛ける文化は思わざる時に神の審判を受ける。
辞解
[この故に] 前節のごとき理由ある故の意。
[一日のうちに] 「時の間に」(10、17、19節)と同じく一瞬にして、(たちまち)にしての意。二十四時間と限定する要なし。
[死、悲歎、饑饉、火] 四つを掲げたのは四の数によりたるもの。
[強ければなり] 人はその文化に誇っている間は神の力を無視する。しかしながら神は如何なる文化よりも力強く在し給う。▲原子爆弾の危険が迫っている今日、この予言は具体的に我らの心に響く。

3-(3)-(ホ)-(丙)-(b) 王たちの哀歌 18:9 - 18:10

18章9節 (かれ)(いん)をおこなひ、[(かれ)とともに](おご)りたる()(わう)たちは()()かるる(けむり)()()き、かつ(なげ)き、[引照]

口語訳彼女と姦淫を行い、ぜいたくをほしいままにしていた地の王たちは、彼女が焼かれる火の煙を見て、彼女のために胸を打って泣き悲しみ、
塚本訳そして彼女と淫行をなし、(共に)奢っていた地の王達は、彼女の焼かれる煙を見た時、彼女のために泣いて胸を打ち、
前田訳「彼女と姦淫して奢った地の王たちは、彼女の炎の煙を見て、彼女のために泣き悲しもう。
新共同彼女とみだらなことをし、ぜいたくに暮らした地上の王たちは、彼女が焼かれる煙を見て、そのために泣き悲しみ、
NIV"When the kings of the earth who committed adultery with her and shared her luxury see the smoke of her burning, they will weep and mourn over her.

18章10節 その苦難(くるしみ)(おそ)れ、(はるか)()ちて「禍害(わざはひ)なるかな、禍害(わざはひ)なるかな、(おほい)なる(みやこ)堅固(けんご)なる(みやこ)バビロンよ、(なんぢ)審判(さばき)(とき)()(きた)れり」と()[はん](ふ)、[引照]

口語訳彼女の苦しみに恐れをいだき、遠くに立って言うであろう、『ああ、わざわいだ、大いなる都、不落の都、バビロンは、わざわいだ。おまえに対するさばきは、一瞬にしてきた』。
塚本訳(且つ)彼女の呵責の恐ろしさのため遠くに立って言うであろう、『禍なる哉、禍なる哉、大なる都、堅固なる都バビロン! 一時の間にお前の刑罰は来たではないか!』
前田訳彼らは彼女の苦しみをおそれて、遠くに立っていう、『わざわい、わざわい、偉大な町、強い町バビロン。ひとときでなんじの裁きが来た』。
新共同彼女の苦しみを見て恐れ、遠くに立ってこう言う。「不幸だ、不幸だ、大いなる都、/強大な都バビロン、/お前は、ひとときの間に裁かれた。」
NIVTerrified at her torment, they will stand far off and cry: "`Woe! Woe, O great city, O Babylon, city of power! In one hour your doom has come!'
註解: 前節までの審判によりていよいよ壊滅に帰せんとするを見て地の王たち(9−10節)、陸上商人たち(11−17a)、海上関係の人々(17b−19)が各々これに対して哀悼の歌をうたう。彼らはみなこの大都市のために富み栄えたものであるから。地の王たちはかつて彼女(ローマの都)と共に淫を行いかつ奢侈(おごり) に耽っており、大都市の文化とその奢侈(おごり)とを彼らの偶像となし、またその遊女としていた。然るに一朝その滅亡が襲い来るに及んで、彼らは驚駭と恐怖とのためにこれに近付かず遙かに立ちてこれを悲しむ有様はまことにその卑しき心情を穿っている。
辞解
[彼と淫をおこない彼と共に(おご)りたる] 「彼とともに淫を行いかつ(おご)りたる」と訳すべきである。
[地の王たち] 黙17:2黙17:18黙18:3参照。
[堅固なる都] 直訳「強き都」で8節の「強き神」と対応す。なお9節以下の哀悼詞につきてはエゼ27章参照。

3-(3)-(ホ)-(丙)-(c) 商人の哀歌 18:11 - 18:17a

18章11節 ()商人(あきうど)かれが(ため)()(かな)し[まん](ふ)、(いま)より(のち)その商品(しゃうひん)()(もの)なければなり。[引照]

口語訳また、地の商人たちも彼女のために泣き悲しむ。もはや、彼らの商品を買う者が、ひとりもないからである。
塚本訳また地の商人達は彼女のために泣き悲しむ。最早誰もその商品を買う者がないからである──
前田訳地の商人も彼女のために泣き悲しもう、もはやだれも彼らの品を買わぬから。
新共同地上の商人たちは、彼女のために泣き悲しむ。もはやだれも彼らの商品を買う者がないからである。
NIV"The merchants of the earth will weep and mourn over her because no one buys their cargoes any more--
註解: 商人の悲しみも王たちの悲しみと同様全く利己的の動機に支配されているに過ぎない。この世の文化とその奢侈(おごり)とが滅ぼされる時、最大の苦痛を(こうむ)るものは、先に最大の利益を得ていた輩であるのは当然である。

18章12節 その商品(しゃうひん)(きん)(ぎん)寶石(はうせき)眞珠(しんじゅ)[引照]

口語訳その商品は、金、銀、宝石、真珠、麻布、紫布、絹、緋布、各種の香木、各種の象牙細工、高価な木材、銅、鉄、大理石などの器、
塚本訳すなわち金、銀、宝石、真珠(の商品も)、細布、紫色、絹、緋色の商品(も)、あらゆる(種類の)香木、あらゆる象牙の器(も)、究めて高価な木、青銅、鉄、大理石の器(も)、
前田訳品とは金、銀、宝石、真珠、麻布、紫の布、絹、緋の布で、またあらゆる香木、あらゆる象牙の器、あらゆる名木、銅、鉄、大理石の器、
新共同その商品とは、金、銀、宝石、真珠、麻の布、紫の布、絹地、赤い布、あらゆる香ばしい木と象牙細工、そして、高価な木材や、青銅、鉄、大理石などでできたあらゆる器、
NIVcargoes of gold, silver, precious stones and pearls; fine linen, purple, silk and scarlet cloth; every sort of citron wood, and articles of every kind made of ivory, costly wood, bronze, iron and marble;
註解: 12−14節はエゼ27章(なら)える商品の列挙であるが、これを七種類に区別し第七類を除きその各を四つづつに組合せることができる。その第一類は直訳すれば「金・銀・宝石・真珠の商品」で貴金属宝石類およびこれらより造れる品物を指す。古来最も普通の奢侈(しゃし)品。

細布(ほそぬの)紫色(むらさき)(きぬ)緋色(ひいろ)

註解: 第二類は直訳「細布・紫色・絹・緋色の商品」で高価なる衣類を指す。
辞解
[細布] bussinos は麻製の細糸にて織れる布 (黙19:8黙19:14)。
[紫色] porphura は高貴人の衣服、 マコ15:17マコ15:20ルカ16:19 に「紫色の衣」と訳されしもの。
[絹] 当時の贅沢品。
[緋色] kokkinos も紫色と同様高貴の衣服の材料(マタ27:28)。この二者相類似せるものであることにつきてはマタ27:28マコ15:17とを比較せよ。

および各樣(さまざま)香木(かうぼく)、また象牙(ざうげ)のさまざまの(うつは)(あたひ)(たか)()眞鍮(しんちゅう)(てつ)蝋石(らうせき)などの各樣(さまざま)(うつは)

18章13節 また肉桂(にくけい)[引照]

口語訳肉桂、香料、香、におい油、乳香、ぶどう酒、オリブ油、麦粉、麦、牛、羊、馬、車、奴隷、そして人身などである。
塚本訳肉桂、香料、香、香油、乳香、葡萄酒、油、麦粉、穀物(も)、家畜、羊、馬、馬車、奴隷、人の霊魂(も)、凡て最早買うことが出来ない。
前田訳肉桂、香料、香没薬、乳香、ぶどう酒、油、粉、小麦、牛、羊、馬、車、奴隷、人身。
新共同肉桂、香料、香、香油、乳香、ぶどう酒、オリーブ油、麦粉、小麦、家畜、羊、馬、馬車、奴隷、人間である。
NIVcargoes of cinnamon and spice, of incense, myrrh and frankincense, of wine and olive oil, of fine flour and wheat; cattle and sheep; horses and carriages; and bodies and souls of men.
註解: 第三類はまた四種よりなり、その中第三種はまた四つの材料(木、真鍮、鉄、蝋石)に分たれている。これらは凡て室内を装飾する贅沢品類である。
辞解
[香木] xulon thuinon は北アフリカに産する芳香を有しかつ種々の木目、色沢(いろつや)を有する木材で家屋内の建具や香料等として用いらる。
[肉柱] kinnamômon は種々の説あれど、やはりセイロン、南支那等を主産地とする肉桂樹のことでその皮より香料または香油を採る。香料の一種なるをもってこれを次の第四類の中に属せしめる方が普通であるけれども予は、これを室内の香料として用いるものと見て第三類の中に入れた。

香料(かうれう)(かう)(にほひ)(あぶら)乳香(にうかう)

註解: 第四類は香油類で祭事用その他上流婦人の必要品と目せられている種類のもの。
辞解
[香料] amômon 東方諸国に産する葡萄に類する植物でその種子より香料を採り頭髪用などに用いられる。
[香] thumiama は香壇に焼く場合に用いられる香。
[香油] myron は香料を加えたる油で化粧用に用いられる高貴なるもの、マリヤがイエスの御足に塗りしはこの香油であつた(マタ26:7その他)。
[乳香] libanos マタ2:11辞解参照。礼拝用その他に用いらる。

葡萄酒(ぶだうしゅ)・オリブ()麥粉(むぎこ)(むぎ)

註解: 第五類は食料品四種を列挙して凡てを代表する。
辞解
[麦粉] semidalis は非常に細く製したもので贅沢品、「麦」はエジプトよりローマに輸入された。

(うし)(ひつじ)(うま)(くるま)奴隷(どれい)および(ひと)靈魂(たましひ)なり。

註解: 第六類は当時の貴人のために使役または利用される動物および人間を指す。一見六種を列挙せるごときもこの中、馬・車・奴隷の三者のみ文法上の第二格が用いられており一括して貴人用の乗物を意味すと見ることができる(ただしこの格の変化を多くの学者は文章の単調を破るためと解す)。
辞解
[牛] ktênê は一般の家畜、「獣」と訳されるもの。
[車] rhedê は四輪の大車。
[奴隷] sômata すなわち「身体」なる文字の複数で奴隷の意味に用いられる(創36:6)。
[人の魂] psychai anthrôpôn は「人の身」で同じく奴隷の意味に用いられている(エゼ27:13T歴5:21)。従って前の奴隷 sômata と同義となるので「および」を「すなわち」と読む説(B3)あれど、むしろ前者を馬車の御者のごときものと見てこれを区別するか(B1)または後者をさらに一層深き意味に解し、商業の力は往々にして人間をしてその霊の自由を失わしめ、その奴隷とならしめ商人は金銭をもって人間の霊魂を売るごとき意味に解することもできる。遊女のごときその見易き例である。

18章14節 なんぢの靈魂(たましひ)(たし)みたる果物(くだもの)(なんぢ)()り、すべての美味(びみ)華美(はなやか)なる(もの)(ほろ)びて(なんぢ)(はな)れ[ん]、(いま)より(のち)(かれらは)これを()ること()かるべし。[引照]

口語訳おまえの心の喜びであったくだものはなくなり、あらゆるはでな、はなやかな物はおまえから消え去った。それらのものはもはや見られない。
塚本訳またお前の霊魂の欲しがる果物はお前から(逃げ)去った。あらゆる(お前の)華やかなもの、きらびやかなものもお前から消え失せた。それは最早決して(再び)見られないであろう。
前田訳なんじの心のよろこびの実は消え、あらゆる輝きとはなやかさは失せた。それらはもはや見られない。
新共同お前の望んでやまない果物は、/お前から遠のいて行き、/華美な物、きらびやかな物はみな、/お前のところから消えうせて、/もはや決して見られない。
NIV"They will say, `The fruit you longed for is gone from you. All your riches and splendor have vanished, never to be recovered.'
註解: 第七類は三つより成る。衣食住の贅沢品の概称と見るべきである。
辞解
[(たし)みたる] 貪り求めたるという意。
[果物] opôra は実りてまさに刈入れられんとする果物類。
[華美なる物] lampra は派手なる衣服調度品類。これらは凡て滅失して今後はもはやこれを見ることすらできないような有様となる。なお本節前半は第二人称をもって録され、前後と連絡宜しからず、その結果これを23節の後に置かんとする学者がある(B1、ローマイヤー)。けれどもこの種の文書においてはかかる不規則は少くない。

18章15節 これらの(もの)(あきな)ひ、バビロンに()りて(とみ)()たる商人(あきうど)らは()苦難(くるしみ)(おそ)れて(はるか)()ち、()(かな)しみて()[はん](ふ)、[引照]

口語訳これらの品々を売って、彼女から富を得た商人は、彼女の苦しみに恐れをいだいて遠くに立ち、泣き悲しんで言う、
塚本訳これらの(物を商う)商人、(すなわち)彼女によって富んだ者達は、彼女の呵責の恐ろしさのため遠くに立ち、泣き悲しみつつ
前田訳これらの品で富んだ商人は彼女の苦しみをおそれて遠く立ち、泣き悲しんで、
新共同このような商品を扱って、彼女から富を得ていた商人たちは、彼女の苦しみを見て恐れ、遠くに立って、泣き悲しんで、
NIVThe merchants who sold these things and gained their wealth from her will stand far off, terrified at her torment. They will weep and mourn

18章16節 禍害(わざはひ)なるかな、禍害(わざはひ)なるかな、細布(ほそぬの)紫色(むらさき)()とを()(きん)寶石(はうせき)眞珠(しんじゅ)をもて()(かざ)りたる(おほい)なる(みやこ)[引照]

口語訳『ああ、わざわいだ、麻布と紫布と緋布をまとい、金や宝石や真珠で身を飾っていた大いなる都は、わざわいだ。
塚本訳言うであろう、『禍なる哉、禍なる哉、大なる都、細布と紫と緋の衣を着、金と宝石と真珠とにて(身を)飾っている者、
前田訳いおう、『わざわい、わざわい、大きな町−−麻布、紫の布、緋の布を着、金と宝石と真珠で飾られた町。
新共同こう言う。「不幸だ、不幸だ、大いなる都、/麻の布、また、紫の布や赤い布をまとい、/金と宝石と真珠の飾りを着けた都。
NIVand cry out: "`Woe! Woe, O great city, dressed in fine linen, purple and scarlet, and glittering with gold, precious stones and pearls!

18章17節 ()ばかり(おほい)なる(とみ)(とき)()荒涼(あれすさ)ばんとは」[引照]

口語訳これほどの富が、一瞬にして無に帰してしまうとは』。また、すべての船長、航海者、水夫、すべて海で働いている人たちは、遠くに立ち、
塚本訳こんな(大きな)富が一時の間に荒れ果て(てしまっ)たではないか!』また凡ての船長、沿海を航海する凡ての人達、水夫達、海で働く人達も(悉く)遠くに立ち、
前田訳ひとときであれほどの富が無に帰した』と。すべての船長、舟びと、水夫、およそ海で働くものは、遠く立ち、
新共同あれほどの富が、ひとときの間に、/みな荒れ果ててしまうとは。」また、すべての船長、沿岸を航海するすべての者、船乗りたち、海で働いているすべての者たちは、遠くに立ち、
NIVIn one hour such great wealth has been brought to ruin!' "Every sea captain, and all who travel by ship, the sailors, and all who earn their living from the sea, will stand far off.
註解: 10節の王たちの悲嘆の詞に相当する商人の悲嘆の詞であって、苦難を懼れて遙かに立つ点は王たちの場合と同一であるけれども(10節)その悲嘆の理由は異なり、王たちの場合はローマの力に関し商人の場合はその富と奢侈(しゃし)とに関す。

3-(3)-(ホ)-(丙)-(d) 海上商人の哀歌 18:17b - 18:20

(しか)して(すべ)ての(ふね)(をさ)、すべて[の(うみ)を]わたる人々(ひとびと)舟子(かこ)および(うみ)によりて生活(なりはひ)()すもの(はるか)かに()ち、

18章18節 バビロンの()かるる(けむり)()(さけ)び「いづれの(みやこ)か、この(おほい)なる(みやこ)(くら)ぶべき」と()[はん](ふ)。[引照]

口語訳彼女が焼かれる火の煙を見て、叫んで言う、『これほどの大いなる都は、どこにあろう』。
塚本訳彼女の焼かれる煙を見て叫んで言うた、『(世界の)どの都が(かつて)この大なる都のようであったか!(しかしそれがあのように焼かれた!)』
前田訳彼女が燃える煙を見て叫んだ、『この大きな町にどれが比べられよう』と。
新共同彼女が焼かれる煙を見て、「これほど大きい都がほかにあっただろうか」と叫んだ。
NIVWhen they see the smoke of her burning, they will exclaim, `Was there ever a city like this great city?'
註解: 17b−19節は海上商人およびその関係者の悲嘆の詞である。ローマは直接の海港ではないけれどもローマに供給される物質の海路によるもの多きと、およびエゼ27章の模範とによりかく記したものであろう。
辞解
[すべての海をわたる人々] 原文やや不明、おそらく「各処を航海するすべての人」と訳するか(S3)または誤字ありと認むべきであろう(B3)。
[いづれの都か云々] 讃美に用いられる定形句黙13:4辞解参照。
[海によりて生活をなすもの] 原文、海仕事をなすものというごとき意。

18章19節 (かれ)()また(ちり)をおのが(こうべ)(かぶ)りて()(かな)しみ(さけ)びて「禍害(わざはひ)なるかな、禍害(わざはひ)なるかな、()(おほい)なる(みやこ)、その(おごり)によりて(うみ)(ふね)()てる人々(ひとびと)(とみ)()たる(みやこ)、かく(とき)()荒涼(あれすさ)ばんとは」と()[はん](ふ)。[引照]

口語訳彼らは頭にちりをかぶり、泣き悲しんで叫ぶ、『ああ、わざわいだ、この大いなる都は、わざわいだ。そのおごりによって、海に舟を持つすべての人が富を得ていたのに、この都も一瞬にして無に帰してしまった』。
塚本訳そして頭に塵を被り、泣き悲しみつつ叫んで言うた、『禍なる哉、禍なる哉、大なる都、海に船を有つ者は皆其処で彼女の(夥しい)珍宝によって富んだのに、(今)その都が一時の間に荒れ果て(てしまっ)たではないか!』」
前田訳彼らは頭にちりを被り、泣き悲しんで叫んだ、『わざわい、わざわい、大きな町、すべて海に舟を持つものが彼女の繁栄で富んだのに、町はひとときで無に帰した』と。
新共同彼らは頭に塵をかぶり、泣き悲しんで、こう叫んだ。「不幸だ、不幸だ、大いなる都、/海に船を持つ者が皆、/この都で、高価な物を取り引きし、/豊かになったのに、/ひとときの間に荒れ果ててしまうとは。」
NIVThey will throw dust on their heads, and with weeping and mourning cry out: "`Woe! Woe, O great city, where all who had ships on the sea became rich through her wealth! In one hour she has been brought to ruin!
註解: 船主やその関係者の富はバビロンの奢侈(おごり)のためであった。彼らはその富の源とその商売とを失ふ悲みのためにこの呻吟(うめき)の声を発している。
辞解
[塵を(こうべ)(かぶ)る] 灰を(かぶ)ると同じく悲みまたは懺悔のしるし(引照1参照)。

18章20節 (てん)よ、聖徒(せいと)使徒(しと)預言者(よげんしゃ)よ、この(みやこ)につきて(よろこ)べ、(かみ)なんぢらの(ため)(これ)(さば)(たま)ひたればなり』[引照]

口語訳天よ、聖徒たちよ、使徒たちよ、預言者たちよ。この都について大いに喜べ。神は、あなたがたのために、この都をさばかれたのである」。
塚本訳天よ(喜べ、)聖徒、使徒、預言者達よ、彼女について喜べ、お前達の(流した血の)ために神が彼女に罰を加え給うたのだ!
前田訳彼女のことをよろこべ、天よ、聖徒よ、使徒よ、預言者よ。神はおん身らの彼女への裁きを全うされたから」と。
新共同天よ、この都のゆえに喜べ。聖なる者たち、使徒たち、預言者たちよ、喜べ。神は、あなたがたのために/この都を裁かれたからである。
NIVRejoice over her, O heaven! Rejoice, saints and apostles and prophets! God has judged her for the way she treated you.'"
註解: 最後に天よりの声(4節)が自ら叫び天地に向って喜ぶべきことをすすめている。勿論この喜びは私的鬱憤を晴らせることを喜ぶ意味ではなく、不義がその正しき報いを受け、キリスト者はこれによりてその正義を証明することができたことに対する喜びである。現に迫害の下に苦痛を忍んでいる多くの人々はこの声を聴いて喜びに溢れることであろう。
辞解
[天よ] 詩69:34イザ44:23エレ51:48参照。地上に神の正義が成ることは天における喜びである。
[聖徒] 全キリスト教会。
[使徒、預言者] その中の特種の賜物を持てるもの。
[なんぢらの為にこれを(さば)き給ひたればなり] 直訳「彼より汝の(さば)き(または訴訟、B3)を(さば)き給いたればなり」で汝らのための審判を彼の上に下し彼を処罰したとの意味である。

3-(3)-(ホ)-(丙)-(e) バビロン覆滅の姿 18:21 - 18:24

18章21節 (ここ)一人(ひとり)(つよ)御使(みつかひ)(おほい)なる碾臼(ひきうす)のごとき(いし)(もた)(うみ)()げて()ふ『おほいなる(みやこ)バビロンは(かく)のごとく(はげ)しく()(たふ)されて、(いま)より(のち、)()えざるべし。[引照]

口語訳すると、ひとりの力強い御使が、大きなひきうすのような石を持ちあげ、それを海に投げ込んで言った、「大いなる都バビロンは、このように激しく打ち倒され、そして、全く姿を消してしまう。
塚本訳すると一人の強い天使が大きな碾臼のような石を持ち上げ、海に投げ込んで言うた、「大なる都バビロンは(丁度)このように烈しい力で投げ倒され、最早決して(再び)見られないであろう。
前田訳ひとりの強い天使が大きな臼のような石を持ちあげ、海に投げていう、「このような激しさで大きなバビロンの町は倒され、もはや見られまい。
新共同すると、ある力強い天使が、大きいひき臼のような石を取り上げ、それを海に投げ込んで、こう言った。「大いなる都、バビロンは、/このように荒々しく投げ出され、/もはや決して見られない。
NIVThen a mighty angel picked up a boulder the size of a large millstone and threw it into the sea, and said: "With such violence the great city of Babylon will be thrown down, never to be found again.
註解: 1−20節の御使の言が21節において具体的に、実例をもって実演せられ22−23a節にその状況が説明せられ、23b−24節にその理由が述べられる。そしてこの理由は1−20節の場合と異なり宗教的方面に関連する。そしてバビロンの滅亡はあたかも大なる碾臼(ひきうす)が海に投げ入れられるごとく(たちま)ちにして人間社会よりその姿を消してしまうであろう。この譬はエレ51:63によりたるもの。
辞解
[大なる碾臼(ひきうす)] 驢馬に引かせる石臼は非常に大きい。
[烈しく] 石を投げる時の勢いのごとき烈しき衝動をいう。
[撃ち倒されて] 直訳「投げ付けられて」。

18章22節 (いま)よりのち立琴(たてごと)()くもの、(がく)(そう)するもの、(ふえ)()(もの)、ラッパを(なら)(もの)(こゑ)なんぢの(うち)(きこ)えず、[引照]

口語訳また、おまえの中では、立琴をひく者、歌を歌う者、笛を吹く者、ラッパを吹き鳴らす者の楽の音は全く聞かれず、あらゆる仕事の職人たちも全く姿を消し、また、ひきうすの音も、全く聞かれない。
塚本訳また竪琴を弾く者、歌うたう者、笛を吹く者、ラッパを吹く者達の声は最早決してお前の中にて聞かれず、凡ての細工をする凡ての細工人も最早決してお前の中にて見られず、また碾臼の音も最早決してお前の中にて聞かれないであろう。
前田訳琴ひき、楽人、笛吹き、ラッパ吹きの音は、もはやそこで聞かれず、あらゆる技術の職人がもはやそこで見られず、臼の音はもはやそこで聞かれまい。
新共同竪琴を弾く者の奏でる音、歌をうたう者の声、/笛を吹く者やラッパを鳴らす者の楽の音は、/もはや決してお前のうちには聞かれない。あらゆる技術を身に着けた者たちもだれ一人、/もはや決してお前のうちには見られない。ひき臼の音もまた、/もはや決してお前のうちには聞かれない。
NIVThe music of harpists and musicians, flute players and trumpeters, will never be heard in you again. No workman of any trade will ever be found in you again. The sound of a millstone will never be heard in you again.
註解: 凡ての音楽はバビロン(ローマ)の中より絶えて今日までの歓楽郷は全く死の(ちまた)と化す。神の審判の前にあるゆる人間文化の快楽は破壊される時が来る。
辞解
[楽を奏するもの] 肉声をもって歌うもの、または立琴、笛、ラッパ以外の楽器をもって楽を奏する者を指したのであろう。
[声] 「音」

(いま)より(のち)さまざまの細工(さいく)をなす細工人(さいくにん)なんぢの(うち)()えず、碾臼(ひきうす)(おと)なんぢの(うち)(きこ)えず、

註解: 衣食住の必要品を生産する人々は全くその影をひそめ、粉ひく碾臼(ひきうす)の音すら絶えてバビロン(ローマ)の大都市は狐狸(こり)の住家となる。
辞解
[細工人] 金属工、木材工、職工等の何れにも用いられる。

18章23節 (いま)よりのち燈火(ともしび)(ひかり)なんぢの(うち)(かがや)かず、[引照]

口語訳また、おまえの中では、あかりもともされず、花婿、花嫁の声も聞かれない。というのは、おまえの商人たちは地上で勢力を張る者となり、すべての国民はおまえのまじないでだまされ、
塚本訳また燈火の光は最早決してお前の中にて(照り)輝かず、新郎新婦の(喜ばしい)声も最早決してお前の中にて聞かれないであろう。何故なら、お前の商人は地の権力者となり(て奢り楽しみ)、万国の民はお前の(淫行の)呪術によって誑かされ、
前田訳ともしびの光はもはやそこで輝かず、花むこ花よめの声はもはやそこで聞かれまい。なんじの商人は地の有力者であったし、なんじの魔術ですべての国民があざむかれ、
新共同ともし火の明かりも、/もはや決してお前のうちには輝かない。花婿や花嫁の声も、/もはや決してお前のうちには聞かれない。なぜなら、お前の商人たちが/地上の権力者となったからであり、/また、お前の魔術によって/すべての国の民が惑わされ、
NIVThe light of a lamp will never shine in you again. The voice of bridegroom and bride will never be heard in you again. Your merchants were the world's great men. By your magic spell all the nations were led astray.
註解: 日常生活のための燈火のみならず饗宴、夜会等の歓楽のための燈火すらみな消え去って蕭條(しょうじょう)たる光景と化す。

(いま)よりのち新郎(はなむこ)新婦(はなよめ)(こゑ)なんぢの(うち)(きこ)えざるべし。

註解: 人生の最も潔きよろこびすらもこれを失いたる荒蕪(こうぶ)に帰せる土地の有様を録す場合にこの形容はしばしば用いられている(エレ7:34エレ16:9エレ25:10エレ33:11)。

そは(なんぢ)商人(あきうど)()大臣(だいじん)となり、諸種(もろもろ)國人(くにびと)は、なんぢの咒術(まじわざ)(まどは)され、

註解: 「大臣」は最有力者の意味で(黙6:15)地の商人がその富をもって地上に最高の勢力を振いしことがバビロン(ローマ)の(さば)かれる原因の第一として数えられている。その故は、富の力は多くの人をして正義の道を踏み迷わしめるからである。第二の原因としては、諸国民がバビロン(ローマ)の呪術に迷わされたことを掲げている。すなわちその文化と享楽のために心は高ぶり、良心は麻痺して神を無視し肉慾に支配される生活に陥ったからである。

18章24節 また預言者(よげんしゃ)聖徒(せいと)および(すべ)()(うへ)(ころ)されし(もの)()は、この(みやこ)(うち)見出(みいだ)されたればなり』[引照]

口語訳また、預言者や聖徒の血、さらに、地上で殺されたすべての者の血が、この都で流されたからである」。
塚本訳また預言者、聖徒達の血と、地上で屠られた凡ての(殉教)者の血が彼女の中にて見られたからである。」
前田訳預言者と聖徒とすべて地上で殺されたものの血がそこで流されたから」と。
新共同預言者たちと聖なる者たちの血、/地上で殺されたすべての者の血が、/この都で流されたからである。」
NIVIn her was found the blood of prophets and of the saints, and of all who have been killed on the earth."
註解: バビロン(ローマ)滅亡の第三の原因はそれが多くの殉教者の血を流したということである。神を信ぜざる者は神の民を迫害する。そしてその迫害の血は再び彼らの上に還って来る(マタ23:35)。勿論キリスト教徒の血はローマの都の中にのみ流されたのではない。ヨハネが「この都の中に見出された」ということをもって見ても、バビロンもローマも何れも表徴に過ぎず、実は神を離れしこの世の文化とその有する力を指したのであることが判明(わか)る。
要義1 [バビロソ滅亡の姿]我らは今日の世界苦の中にこのバビロンの覆滅(ふくめつ)に類する姿をさながらに見ることができる。第十九世紀の終りまでは文化の華咲き乱れ、この世界がまさに天国の美しさに化せんとしているもののごとくであった。然るに一朝にして欧洲の文化に夕の鐘の音が響き渡るにおよび、地上の王は欧洲文化の没落を悲しみ、その商人は過去の栄華を夢みて現在の不況を嘆き、その海上商人は海上貿易の頓挫によりて悲痛の呻吟(うめき)をあげている。この有様がさらに永続し、一層強き程度において起るならば世界の文化は全く壊滅に帰し、22−23節のごとき有様が文字通りに実現するであろう。ヨハネがこの世の文化に対してかかる判断を持つことができるのは神の黙示によることである。
要義2 [バビロンの滅亡と今日の文化]バビロン(ローマ)の滅亡の原因はその罪悪(2、3、5節)その奢侈(おごり)(16節)、その物質的勢力(3、23節)、その偶像崇拝(23節)および聖徒の迫害殺戮である(24節)。そしてこれらの凡ては今日の文明もまた同じく陥っている処のものであって、凡ての国および時代の人間的文化の共通の性質であると見なければならない。それ故にバビロン(ローマ)の滅亡に関する黙示録の預言は単にローマのみを指したのではなく、凡ての人間的文化の末路を指摘したものであることは明かである(24節の終りおよび、黙11:8註参照)。人間的文化の進歩に対する楽観的の見方と聖書の見方とは、かくのごとく全く正反対の立場にあることに注意しなければならない。そしてこの神の言は(すた)ることなく必ず成就するであろう。
要義3 [文明、文化の意味]文明とか文化とかが何を意味するかを定義することは困難であるが、もしそれが人間の知識、智慧、才能、思想より生れ出たものであるとするならば、それ自身としては感謝して受くべきものであって決して棄つべきものでもなく、また詛わるべきものでないけれども、これらは多くの場合サタンの使役の下に置かれるのであって(例えば今日の物質文明と科学的発明の凡てがその精華を殺人機械の製造に用いられるごとき)、かかる文明や文化はすなわちバビロンであって必ず神の審判を受けなければならない。かかる文化はそれ自身が自己の破壊者となる。その個人主義文化たると社会主義文化たるとを問わず、資本主義社会たると共産主義社会たるとを問わない。

黙示録第19章

分類
4 サタンの滅亡 19:1 - 20:10
4-(1) 序曲 19:1 - 19:10
4-(1)-(イ) 天の群衆の讃美 19:1 - 19:3

註解: 前章において第七の金の鉢の審判、すなわち第三の禍害は終りを告げこれによりて七つの封印は全部終った。かくして地上のあらゆるものの上に審判が臨んだけれども、サタンおよびその臣僕たる獣および偽預言者たちは未だ(さば)かれずして残っていた。これらはキリスト御自身の出馬によって審判(さば)かれることとなるのであって本章11節以下および20:10までそのことにつき録されている。そして本章1−10節はこの最後の大審判の序曲であってその中1−5節は全部の審判の結末を讃美し6−10節は来るべき新なる世界の予告的讃美をなしているのである。その点に注意してこれを読むことが必要である。

19章1節 この(のち)われ(てん)(おほい)なる群衆(ぐんじゅう)大聲(おほごゑ)のごとき(もの)ありて、()()ふを()けり。(いは)く『ハレルヤ、(すくひ)榮光(えいくわう)權力(ちから)とは、(われ)らの(かみ)のものなり。[引照]

口語訳この後、わたしは天の大群衆が大声で唱えるような声を聞いた、「ハレルヤ、救と栄光と力とは、われらの神のものであり、
塚本訳この後私は多くの群衆の大声のようなものを天に聞いた、曰く、ハレルヤ! 救いと栄光と権能とは我らの神のものである。
前田訳その後、わたしは天に多くの群衆の大声のようなものを聞いた。いわく、「ハレルヤ、救いと栄光と力とはわれらの神のもの、
新共同その後、わたしは、大群衆の大声のようなものが、天でこう言うのを聞いた。「ハレルヤ。救いと栄光と力とは、わたしたちの神のもの。
NIVAfter this I heard what sounded like the roar of a great multitude in heaven shouting: "Hallelujah! Salvation and glory and power belong to our God,
註解: 地上の審判は終りを告げて光景は天に移る。キリスト御自身が来給いサタンの(さば)きを行い給う前には天に讃美の声が挙がるのは当然である。あたかも七つの封印の開かれる前の4、5章の光景のごとくである。そして前章の終りまでの審判はキリスト再臨の準備であるのでまずそれにつきて讃美をかなでる。この讃美が黙4:11の讃美に類似していることに注意すべし。
▲1945年原子爆弾は広島に投下され、その後全世界がこの原子爆弾の審判の下に立たされる脅威に不安を禁じ得ない状態にある。千八百年前にヨハネに啓示された神の御告がこの予言となったのであった。
辞解
[大なる群衆] 多分天の御使を指しているのであろう(5節参照)。
[ハレルヤ] 「神を讃めよ」の意味のヘブル語で、これがキリスト教に入りギリシャ語となり、ついには全世界中にこのままで行われる結果となつた。新約聖書にはこの部分にあるのみであるが旧約詩篇にはしばしば用いられた(詩104篇詩105篇詩116篇詩117篇の終り、詩111篇詩112篇の始め、詩106篇詩113篇詩135篇詩146篇−150篇の始めと終り)。

19章2節 (そは)その御審(みさばき)(まこと)にして()なるなり、(そは)(おの)淫行(いんかう)をもて()(けが)したる大淫婦(だいいんぷ)(さば)き、(かみ)(しもべ)らの()復讐(ふくしゅう)(かれ)になし(たま)ひし((ゆえ))なり』[引照]

口語訳そのさばきは、真実で正しい。神は、姦淫で地を汚した大淫婦をさばき、神の僕たちの血の報復を彼女になさったからである」。
塚本訳その審判は真実にして義しく、彼は淫行によって地(の人々)を滅ぼした大淫婦を審き、彼の(忠実な)僕達の(流した)血を彼女の手に復讐し給うたからである。
前田訳彼の裁きは真また義であるゆえに。姦淫で地を荒らした大きな淫婦を裁き、彼の僕らの血を彼女に復讐なさったゆえに」と。
新共同その裁きは真実で正しいからである。みだらな行いで/地上を堕落させたあの大淫婦を裁き、/御自分の僕たちの流した血の復讐を、/彼女になさったからである。」
NIVfor true and just are his judgments. He has condemned the great prostitute who corrupted the earth by her adulteries. He has avenged on her the blood of his servants."
註解: 前節のごとき讃美を神にささぐる理由は(第一の hoti)神の審判が真正でありかつ正義に叶うが故であり、そして神の審判がかくも誤りなくかつ義しき所以は(第二の hoti)当然(さば)かるべき大淫婦バビロンを(さば)き給い、かつ不義を受けし神の僕の復讐を為し給いし故である。
辞解
[真にして義なる故なり] 黙15:3黙16:7参照。
[復讐] 黙6:10註参照。

19章3節 また(ふたた)()ふ『ハレルヤ、(かれ)()かるる(けむり)世々(よよ)(かぎ)りなく()(のぼ)るなり』[引照]

口語訳再び声があって、「ハレルヤ、彼女が焼かれる火の煙は、世々限りなく立ちのぼる」と言った。
塚本訳再び彼らは(繰り返して)言うた、「ハレルヤ! 彼女の(焼かれる)煙は永遠より永遠に立ち上る(であろう)。」
前田訳そしてふたたび彼らはいった、「ハレルヤ。彼女の煙は世々とこしえに立ちのぼる」と。
新共同また、こうも言った。「ハレルヤ。大淫婦が焼かれる煙は、世々限りなく立ち上る。」
NIVAnd again they shouted: "Hallelujah! The smoke from her goes up for ever and ever."
註解: 神に叛ける文化は永遠の審判の下に苦しまなければならない。ここに御使はバビロン(ローマ)の焼かれる有様を見て深き感嘆を洩している貌。ローマの焼かれることについては 黙17:16黙18:8

4-(1)-(ロ) 長老と活物(いきもの)平伏す、天の讃美 19:4 - 19:8

19章4節 (ここ)二十四人(にじふよにん)長老(ちゃうらう)()つの活物(いきもの)平伏(ひれふ)して御座(みくら)()したまふ(かみ)(はい)し『アァメン、ハレルヤ』と()へり。[引照]

口語訳すると、二十四人の長老と四つの生き物とがひれ伏し、御座にいます神を拝して言った、「アァメン、ハレルヤ」。
塚本訳すると二十四人の長老と四つの活物とが平伏し、玉座に坐し給う神を拝んで言うた、「アーメン、ハレルヤ!」
前田訳すると二十四人の長老と四つの生きものがひれ伏し、王座に座したもう神を拝んで、「アーメン、ハレルヤ」といった。
新共同そこで、二十四人の長老と四つの生き物とはひれ伏して、玉座に座っておられる神を礼拝して言った。「アーメン、ハレルヤ。」
NIVThe twenty-four elders and the four living creatures fell down and worshiped God, who was seated on the throne. And they cried: "Amen, Hallelujah!"
註解: 神の御座の周囲にいる二十四人の長老と四つの活物(いきもの)とが自ら神の御前に平伏して讃美を唱えることは、黙5:8以来全く無かった( 黙4:10黙5:14黙11:16 には長老のみ平伏している)。各々黙示録中の最も重大なる場合である。それを見ても今ささげつつある讃美が重大なる性質を有っていることが判明(わか)る。すなわち19:1−5は19:11以下にサタンがまさに(さば)かれんとする場合の前であり、4、5章は6章以下にキリストによりて七つの封印が(ひら)かれんとする直前であり、何れも最も重大なる場合と見なければならない。アアメン、ハレルヤは1−3節の大群衆の讃美に共鳴して共に神を拝する意味である。教会と自然界とを代表するこれらのものの讃美はこの際まことに相応(ふさわ)しい。

19章5節 また御座(みくら)より(こゑ)()でて()ふ『すべて(かみ)(しもべ)たるもの、(かみ)(おそ)るる(もの)よ、(せう)なるも(だい)なるも、(われ)らの(かみ)()(まつ)れ』[引照]

口語訳その時、御座から声が出て言った、「すべての神の僕たちよ、神をおそれる者たちよ。小さき者も大いなる者も、共に、われらの神をさんびせよ」。
塚本訳すると玉座から(一つの)声が出て言うた──(汝ら)凡て神の僕達、神を懼れる者達、小なる者も大なる者も(皆)我らの神を讃美せよ!
前田訳すると王座から声がした。いわく、「われらの神をたたえよ、彼をおそれるすべての僕らよ、小なるものも大なるものも」と。
新共同また、玉座から声がして、こう言った。「すべて神の僕たちよ、/神を畏れる者たちよ、/小さな者も大きな者も、/わたしたちの神をたたえよ。」
NIVThen a voice came from the throne, saying: "Praise our God, all you his servants, you who fear him, both small and great!"
註解: 御座(みくら)よりの声は「我らの神」とある以上神の声にもあらず羔羊(こひつじ)の声にもあらず、御使または長老あるいは生物の中の一つより出でしものであって、全教会、神の国の凡ての民に神を讃美すべきことをすすめる声である。このすすめに応じて6−8節の讃美がささげられる。これは来らんとする羔羊(こひつじ)の婚姻に対する讃美である。
辞解
[僕] 全聖徒を指す使徒、預言者もその中にある。「神を畏れる者」はその説明として附加されしもの。
[小なるも大なるも] 神の民全体という意味、羔羊(こひつじ)の婚姻は全教会の歓喜でなければならない。
[神を讃め奉れ] ハレルヤの訳語。

19章6節 われ(おほい)なる群衆(ぐんじゅう)(こゑ)(の(ごと)く)おほくの(みづ)(おと)のごとく、(はげ)しき雷霆(いかづち)(こゑ)(ごと)きものを()けり。(いは)く『ハレルヤ全能(ぜんのう)(しゅ)、われらの(かみ)統治(すべしら)[すなり](し(たま)へり)、[引照]

口語訳わたしはまた、大群衆の声、多くの水の音、また激しい雷鳴のようなものを聞いた。それはこう言った、「ハレルヤ、全能者にして主なるわれらの神は、王なる支配者であられる。
塚本訳また私は多くの群衆の声のような、また大水の轟きのような、また烈しい雷の轟きのようなものを聞いた、曰く、ハレルヤ(今や)主なる我らの神、全能者が王となり給うた(から)!
前田訳そしてわたしは多くの群衆の声のようなものと、多くの水の音のようなものと、強い雷のひびきのようなものを聞いた。いわく、「ハレルヤ、主なるわれらの全能の神が王となりたもうたゆえに。
新共同わたしはまた、大群衆の声のようなもの、多くの水のとどろきや、激しい雷のようなものが、こう言うのを聞いた。「ハレルヤ、/全能者であり、/わたしたちの神である主が王となられた。
NIVThen I heard what sounded like a great multitude, like the roar of rushing waters and like loud peals of thunder, shouting: "Hallelujah! For our Lord God Almighty reigns.

19章7節 われら(よろこ)(たの)しみて(これ)榮光(えいくわう)()(まつ)らん。そは羔羊(こひつじ)婚姻(こんいん)[の(とき)]いたり、(すで)にその新婦(はなよめ)みづから準備(そなへ)したればなり。[引照]

口語訳わたしたちは喜び楽しみ、神をあがめまつろう。小羊の婚姻の時がきて、花嫁はその用意をしたからである。
塚本訳(さあ、)喜ぼうではないか、小躍りしようではないか。彼に栄光を帰し奉ろうではないか。仔羊の婚姻の時が来、その(新)妻は(既に)身支度をしたのだから!
前田訳いざ、よろこび、歓呼し、栄光を彼にささげよう。小羊の結婚は成り、花よめは身仕度をし終えた。
新共同わたしたちは喜び、大いに喜び、/神の栄光をたたえよう。小羊の婚礼の日が来て、/花嫁は用意を整えた。
NIVLet us rejoice and be glad and give him glory! For the wedding of the Lamb has come, and his bride has made herself ready.
註解: この讃美も 黙11:15黙14:8 等の場合と同じく未来に実現すべき光景を今眼前に髣髴して、すでに実現せるもののごとくにこれに関して神を讃美する。群衆の声は全教会、全神の国の声である。讃美の理由は、神が統治し給えることと羔羊(こひつじ)の婚姻とである。これまでこの世はサタンとその臣僕たりし獣とに従って神に叛きつつあったが、サタンがキリストの軍勢に亡ぼされるに及んでこの世の支配は凡て神に帰してしまった。これほど喜ばしき事実は他に有り得ない。「我ら喜び楽しまん」ということは至当である。また神の国における最も喜ばしき事実として羔羊(こひつじ)の婚姻がまさに行われんとしているのであって、これまた全教会の歓喜でなければならない。黙11:15−19と対照して観察するならばその間の関係が明かとなる。
辞解
[大なる群衆] 全聖徒が天に集える姿を予見したものである。
[統治すなり] 原文「統治し給えり」不定過去形で、すでにサタンを亡ぼして統治権を把握し給いし事実を指す。その後もこれを継続し給うことは勿論である。
[新婦] 原語は「妻」とあり、妻たるべき婦人をもかくいうことがある(黙21:9参照。なお創29:21申22:24マタ1:20)。
[婚姻] 旧約時代以来神とその民との関係が婚姻関係に譬えられ、これが新約に継承された(ホセ2:21イザ51:1−6。エレ31:32エゼ16:8マタ25:1−10。マコ2:19ヨハ3:29Uコリ11:2エペ5:22 以下)。羔羊(こひつじ)の婚姻により神の国は完成し神と人との家族関係が成立し、キリストとキリスト者との一体の関係が実現する。

19章8節 (かれ)(かがや)ける(きよ)細布(ほそぬの)()ることを(ゆる)されたり、()細布(ほそぬの)聖徒(せいと)たちの(ただ)しき行爲(おこなひ)なり』[引照]

口語訳彼女は、光り輝く、汚れのない麻布の衣を着ることを許された。この麻布の衣は、聖徒たちの正しい行いである」。
塚本訳そして彼女は輝いた細布の衣を与えられて(これを)纏うた。──細布は聖徒達の義しい行為である。
前田訳彼女は輝く清い麻布を着せられた。麻布は聖徒らの正しい行ないである」と。
新共同花嫁は、輝く清い麻の衣を着せられた。この麻の衣とは、/聖なる者たちの正しい行いである。」
NIVFine linen, bright and clean, was given her to wear." (Fine linen stands for the righteous acts of the saints.)
註解: 羔羊(こひつじ)の新婦の装いは天の教会の姿であり、その貞潔と勝利とに相応しきものであった。白く輝ける細布は天的の姿である (黙3:4黙4:4黙6:11黙7:9黙7:13マコ16:5ルカ9:29使1:10)。 そしてこの輝ける細布は取りもなおさず聖徒の義しき業績であって、聖徒を義とするその信仰やまたこの信仰より出づる行為等である。
辞解
[細布] 黙3:4註参照。主としてエジプトより産する麻の細糸をもって織れる布。
[正しき行為] dikaiômata 正しき事柄、義しくあることの表顕されし種々の事柄の意味で、行為もその中にあるけれどもそれよりも一層広い意味である。これを単にパウロの所謂神により与えられる義と同一視することができない。
要義1 [三人の女]黙示録には三人の女性が現われている。その一は黙12:1の女であって旧約新約を貫ける神の国または神の教会の姿である。ゆえに「日を()、その足の下に月あり、その頭に十二の星の冠冕(かんむり)」をいただく荘厳無比の姿である。その二は黙17:1−6の大淫婦でローマの都市とその文化とを示す。その三は19:8の新婦の姿でこの白き美しく輝ける姿を大淫婦の姿と比較して見るならば、この二者の著しき差別を見ることができる。羔羊(こひつじ)の花嫁たる我らとこの世の民との間にかかる大なる差別があることを注意しなければならない。
要義2 羔羊(こひつじ)の婚姻]キリストと教会との関係は最もよく婚姻関係をもって表示される(エペ5:22以下)ことあたかも旧約時代においてイスラエルと神との関係が夫婦関係をもって譬えられしと同様である。キリストはその妻たる教会を選び、これを贖い取らんがために己が宝血を注ぎ、己の生命をも棄て給うた。この愛に感じて教会はその凡てをキリストにささげ、キリストのために貞潔を守り、キリストがやがて再び来り給い羔羊(こひつじ)の婚姻が成立つ時を待っているのである。ゆえにこの世において教会はキリストに対して許嫁(いいなずけ)の関係にある(Uコリ11:2)。従って羔羊(こひつじ)の婚姻によりて神の選びが完成し、キリストの十字架の贖いの目的が達成せられ、人類の罪によりて起りし神に対する反逆の関係は全く消失してここに新天新地が実現するに至るのである。

4-(1)-(ハ) 御使とヨハネ 19:9 - 19:10

19章9節 [御使(みつかひ)]また(われ)()ふ『なんぢ()(しる)せ、羔羊(こひつじ)婚姻(こんいん)宴席(ふるまひ)(まね)かれたる(もの)幸福(さいはひ)なり』と。[引照]

口語訳それから、御使はわたしに言った、「書きしるせ。小羊の婚宴に招かれた者は、さいわいである」。またわたしに言った、「これらは、神の真実の言葉である」。
塚本訳するとかの天使が私に言う、「書け『幸福なる哉、仔羊の婚宴に招かれた者!』と。」また私に言う、「これらの(異象における凡ての)言は神の真実の言である。」
前田訳天使はわたしにいう、「書きしるせ。さいわいなのは小羊の婚宴に招かれたもの」と。さらにいう、「これらは神の真実のことばである」と。
新共同それから天使はわたしに、「書き記せ。小羊の婚宴に招かれている者たちは幸いだ」と言い、また、「これは、神の真実の言葉である」とも言った。
NIVThen the angel said to me, "Write: `Blessed are those who are invited to the wedding supper of the Lamb!'" And he added, "These are the true words of God."
註解: 黙示録中の七福の第四である(黙1:3註参照)。羔羊(こひつじ)の宴席に招かれたる者は、黙17:14の「召されたるもの、選ばれたるもの、忠実なるもの」と同一であって全キリスト者である。従って羔羊(こひつじ)の新婦と同一物であることとなる。殊に「書き記せ」との命を与えたのはこの事柄が特に重大なることを示すためである。そしてこの御使は黙17:1の御使でこれまでの長き説明を終えてここにその結尾を与えているのである。

また(われ)()ふ『これ(かみ)(まこと)(ことば)なり』

註解: 黙17:1以下に語れる凡ての言は御使の言ではあるが実は真正なる神の言であって、(すこし)も疑いを挿むべきものではなく、そのまま信ぜらるべきものである。かく言いてその語りし処に千鈞(せんきん)の重さを加えている。
辞解
[これ神の真の言なり] 原文に文法的疑問あり、種々に訳を試み得るけれども意味に重要なる差異がない。

19章10節 (われ)その足下(あしもと)平伏(ひれふ)して(はい)せんとしたれば、(かれ)われに()ふ『(つつし)みて(しか)すな、(われ)(なんぢ)およびイエスの(あかし)(たも)(なんぢ)兄弟(きゃうだい)とともに(しもべ)たるなり。なんぢ(かみ)(はい)せよ、イエスの(あかし)(すなは)預言(よげん)(れい)なり』[引照]

口語訳そこで、わたしは彼の足もとにひれ伏して、彼を拝そうとした。すると、彼は言った、「そのようなことをしてはいけない。わたしは、あなたと同じ僕仲間であり、またイエスのあかしびとであるあなたの兄弟たちと同じ僕仲間である。ただ神だけを拝しなさい。イエスのあかしは、すなわち預言の霊である」。
塚本訳私はその足下に平伏して彼を拝もうとした。すると彼は(それを遮って)私に言う、「(いけない)するな! 私はお前やイエスの証明を立てているお前の兄弟達と同輩である。(私を拝んではならぬ。)神を拝め。──イエスの証明とは預言の霊で(あり、お前も私も共にこれを有っているので)ある(から)!」
前田訳そこでわたしは彼を拝もうとその足もとにひれ伏した。しかし彼はいう、「それはやめよ。わたしもイエスの証を守るなんじとなんじの兄弟と同じ僕仲間である。神を拝め。イエスの証とは預言の霊である」と。
新共同わたしは天使を拝もうとしてその足もとにひれ伏した。すると、天使はわたしにこう言った。「やめよ。わたしは、あなたやイエスの証しを守っているあなたの兄弟たちと共に、仕える者である。神を礼拝せよ。イエスの証しは預言の霊なのだ。」
NIVAt this I fell at his feet to worship him. But he said to me, "Do not do it! I am a fellow servant with you and with your brothers who hold to the testimony of Jesus. Worship God! For the testimony of Jesus is the spirit of prophecy."
註解: この一節(および黙22:9も同様)によりて御使によりて示されし黙示の実に宏大無辺にしてヨハネをして思わず御使の前に平伏せさせることを示すと同時に、この黙示を与え給う神のさらに遙かに偉大なることを知らしめんために我らの拝すべきは唯神のみに在し給うことを示す。そして凡ての天使は神の僕たる点においてキリスト者と同じくまた凡てのキリスト者は結局みな預言の霊を有つ預言者である点において、天の御使との間に何らの径庭(けいてい)(=へだだり:広辞苑)なきことを示してキリスト者の偉大さを示しその自重を促している。あるいは当時小アジア地方においてキリスト者の中にも行われ、その信仰を害しつつあった天使礼拝の不可なる所以を風刺したものとも見ることができる(L3)。
辞解
[イエスの証を保つ汝の兄弟] この場合イエスの証は黙1:2の場合と異なり、イエスを証する証、すなわちイエスを信じ、彼を告白する者でキリスト者の全体を指す。「イエスの証はすなわち預言の霊なり」は前文に「イエスの証を保つ者」につきて述べしことの説明であって、イエスの証を保つことすなわち彼を証することは預言の霊を持つことであり、従って御使と同一であることをここに附加して前文の説明とすると同時に、さらに進んでキリスト者の偉大さと御使を拝することの無意味なる所以を教えている。

4-(2) 獣と偽預言者審かる 19:11 - 19:21
4-(2)-(イ) イエスの出馬 19:11 - 19:16

註解: 序曲終っていよいよキリストの出馬となる。キリスト凡てのサタンを滅ぼしてそこに新天新地が生じ、やがて羔羊(こひつじ)の婚姻とならんがためである。この世の審判、バビロンの審判は神直接に行い給わず神の命によりサタンの軍勢がこれを行うように仕向けられた。しかしサタンそのものをばキリストの軍勢が直接にこれを滅ぼすに至るのである。

19章11節 (われ)また(てん)(ひら)けたるを()しに、()よ、(しろ)(うま)あり、(これ)()りたまふ(もの)は「忠實(ちゅうじつ)また(まこと)」と(とな)へられ、()をもて(さば)き、かつ(たたか)ひたまふ。[引照]

口語訳またわたしが見ていると、天が開かれ、見よ、そこに白い馬がいた。それに乗っているかたは、「忠実で真実な者」と呼ばれ、義によってさばき、また、戦うかたである。
塚本訳また私は天が開いているのを見た。すると視よ、白い馬が顕れて、それに乗り給う者は「忠実且つ真実なる者」と呼ばれ、義をもって審きまた戦い給う。
前田訳そしてわたしは天が開けるのを見た。すると見よ、白い馬がいる。それに乗るものは「忠また真」と呼ばれ、義で裁き、また戦いたもう。
新共同そして、わたしは天が開かれているのを見た。すると、見よ、白い馬が現れた。それに乗っている方は、「誠実」および「真実」と呼ばれて、正義をもって裁き、また戦われる。
NIVI saw heaven standing open and there before me was a white horse, whose rider is called Faithful and True. With justice he judges and makes war.
註解: 第1章において輝ける姿においてヨハネに現われ、第5章において屠られ給える羔羊(こひつじ)として現われ給えるイエスは、ここには万軍の主、天の軍勢の将軍として顕れ給う。その中間における顕現 (黙14:1黙14:14) は何れも挿景の場合であって、未来を予想せる光景である。白き馬は勝利を示す。「忠実また真」なる名称はすでに 黙1:5黙3:7黙3:14 においてもイエスを指していることを知った。また「義をもて(さば)きかつ戦う」ことはメシヤの来り給う場合の主要の特質であり、メシヤの預言として有名なるイザ11:4、5においてメシヤすなわちキリストの特質として掲げられている処である。この騎士がキリストであることは疑うの余地はない。
辞解
[審き、戦ふ] 現在動詞を用いたのはこれがすでに開始せられし姿において彼を見たこととして録したのである(S3)。

19章12節 (かれ)()(ほのほ)のごとく、[引照]

口語訳その目は燃える炎であり、その頭には多くの冠があった。また、彼以外にはだれも知らない名がその身にしるされていた。
塚本訳その目は焔(のようであり)、頭には多くの冠があり、自分でなければ、誰も(その意味を)知らない名が(それに)書いてある。
前田訳その目は火の炎で、その頭には多くの王冠がある。彼には彼のほかだれも知らぬ名が書かれている。
新共同その目は燃え盛る炎のようで、頭には多くの王冠があった。この方には、自分のほかはだれも知らない名が記されていた。
NIVHis eyes are like blazing fire, and on his head are many crowns. He has a name written on him that no one knows but he himself.
註解: 黙1:14註及辞解参照。

その(かうべ)には(おほ)くの冠冕(かんむり)あり、

註解: この冠冕(かんむり)は diadêma すなわち王者の冠で彼は「諸王の王」(16節)として王冠をいただき、またその数の多いことは世界の諸国を統治し給うからである。なおサタンもこの点において自己をキリストに似せており頭に王冠を戴いていることについては 黙12:3黙13:1 を見よ。

また(しる)せる()あり、(これ)()(もの)(かれ)(ほか)になし。

註解: 神との直接の交りにおける状態は各人特有の境地であって他よりこれを窺い知ることができない(黙2:17参照)。イエスの場合においてはなおさらこの神との交りの本質を知る者は人間の中には無い。彼はかくも高く在し給う。マタ11:27には父のみ知り給うことが記されているのもこれがためである。なお黙2:17黙3:12参照。神秘なる名称は力の源であるとの思想が当時行われていたこともこの記載の形式に影響を及ぼしたものであろう

19章13節 (かれ)()に染みたる(ころも)(まと)へり、その()は「(かみ)(ことば)」と(とな)ふ。[引照]

口語訳彼は血染めの衣をまとい、その名は「神の言」と呼ばれた。
塚本訳彼は血で染められた(真赤な)衣を纏い、その名は「神の言」と呼ばれる。
前田訳彼は血染めの衣をまとい、その名は「神のことば」と呼ばれる。
新共同また、血に染まった衣を身にまとっており、その名は「神の言葉」と呼ばれた。
NIVHe is dressed in a robe dipped in blood, and his name is the Word of God.
註解: この血は十字架上に流されし彼の血であるともまたはイザ63:1−3によれば彼が打破れる敵の血であるとも見られる。前後の数節より判断すれば後者と解すべきであろう。「神の言」をイエスに適用するはヨハネ独特の思想である。また本節後半を前節と矛盾するがごとくに考える学者があるけれども皮相の(けん)である。

19章14節 (てん)()軍勢(ぐんぜい)(しろ)(きよ)細布(ほそぬの)()(うま)()りて(かれ)にしたがふ。[引照]

口語訳そして、天の軍勢が、純白で、汚れのない麻布の衣を着て、白い馬に乗り、彼に従った。
塚本訳そして天の軍勢が真白な潔い細布の衣を着、白い馬に乗って彼に従っていた。
前田訳天の軍勢は白く清い麻布を着、白い馬に乗って彼に従った。
新共同そして、天の軍勢が白い馬に乗り、白く清い麻の布をまとってこの方に従っていた。
NIVThe armies of heaven were following him, riding on white horses and dressed in fine linen, white and clean.
註解: 黙17:14に記されるごとき聖徒の大軍はキリストに従ってキリストの敵と戦う、しかしながらその武装は鉄の鎧ではなく聖徒の義しき信仰や徳行を示す美わしき細布であり(8節)、その色は白くして勝利を示し、潔くして罪より洗われしことを示す。花婿たるべき聖徒はそれまでは主の兵卒である。なおこの軍勢を主の護衛としての天使の一軍と見(B3、S3)または聖徒と天使との混合軍(A1)と見る説等あれどむしろ上記のごとくに解するを可とする。

19章15節 (かれ)(くち)より()(つるぎ)いづ、(これ)をもて諸國(しょこく)(たみ)をうち、((みづか)ら)(てつ)(つゑ)をもて(これ)(をさ)(たま)はん。[引照]

口語訳その口からは、諸国民を打つために、鋭いつるぎが出ていた。彼は、鉄のつえをもって諸国民を治め、また、全能者なる神の激しい怒りの酒ぶねを踏む。
塚本訳彼の口からは、諸国の民を撃つために鋭い剣が突き出ている。彼自ら鉄の杖を以て彼らを牧し給うであろう。且つ彼自ら全能者なる神の怒りの憤怒酒の酒槽を踏み給う。
前田訳彼の口から鋭い剣が出ている。諸国民を打つためである。彼は鉄の杖で彼らを牧しよう。彼は全能の神の怒りの酒ぶねを踏む。
新共同この方の口からは、鋭い剣が出ている。諸国の民をそれで打ち倒すのである。また、自ら鉄の杖で彼らを治める。この方はぶどう酒の搾り桶を踏むが、これには全能者である神の激しい怒りが込められている。
NIVOut of his mouth comes a sharp sword with which to strike down the nations. "He will rule them with an iron scepter." He treads the winepress of the fury of the wrath of God Almighty.
註解: キリストの審判とその支配を示す。そして諸国の民を打つには鉄の剣をもってせずしてその口より出づる剣すなわち神の言 (黙1:16ヘブ4:12) をもってし、また詩2:9のメシヤ預言のごとく鉄の杖をもってもろもろの民を牧し給う。すなわち彼は牧者のその羊に対するごとくに諸々の民を牧し、しかも鉄の杖をもってその羊の敵を打ち砕き給う。
辞解
[諸国の民] 「もろもろの民」と訳すべし。
[治め] 原語「牧する」(黙2:27辞解参照)。

また(みづか)全能(ぜんのう)(かみ)(はげ)しき(いかり)酒槽(さかぶね)()みたまふ。

註解: 黙14:20註参照、キリストは神の怒の審判を実行し給う。キリストの再臨はこれを実行せんがためである。

19章16節 その(ころも)(もも)とに『(わう)(わう)(しゅ)(しゅ)』と(しる)せる()あり。[引照]

口語訳その着物にも、そのももにも、「王の王、主の主」という名がしるされていた。
塚本訳そして彼の衣と股とには「王の王、主の主」と書いた名がある。
前田訳その衣と腰に「王の王、主の主」との名が書かれている。
新共同この方の衣と腿のあたりには、「王の王、主の主」という名が記されていた。
NIVOn his robe and on his thigh he has this name written: KING OF KINGS AND LORD OF LORDS.
註解: キリストは諸王の王、諸主の主に在し給うが故に彼来りてもろもろの民を支配し給うことは当然である。彼の再臨の時はこの名は何人にも見得る処に記され、何人にも明かにせられる故何人もこれを認めずにいることができない。
辞解
[衣と股とに] 直訳「衣の上に而して股の上に」でイエスの乗馬姿の「股の上を掩ふ部分の衣に」というごとき意味である(B3、S3)。
要義 [再臨のキリスト]黙示録はキリストの再臨を録せる書であるにかかわらず、どの部分よりキリストの再臨を録しているかは必ずしも明瞭ではない。しかしよく注意して本書を読むならば4−18章は一大区分をなし、この部分において七つの封印が開かれるのであって、これを開く者はイエスに在し給うが故にイエスの再臨は未だ実現せず、19章に至りその1−10節にキリスト再臨の準備の宣言あり、11節以下において始めてキリストの再臨の光景が描かれているものと見るのが最も当を得ている見方であろう。すなわち19:11以下においていよいよキリストの再臨があり、その結果全世界の上に一大変化が起らんとしているのである。ただし19:11乃至(ないし)20章の終りまでの光景は天と地とが交錯せる光景であって何れとも定め難い。キリストの再臨というもおそらくかかるものであろう。そしてこの最後の決戦を経過してそこに新天新地が実現するに至るのである(21章以下)。

4-(2)-(ロ) 肉の饗宴 19:17 - 19:18

19章17節 (われ)また一人(ひとり)御使(みつかひ)太陽(たいやう)のなかに()てるを()たり。[引照]

口語訳また見ていると、ひとりの御使が太陽の中に立っていた。彼は、中空を飛んでいるすべての鳥にむかって、大声で叫んだ、「さあ、神の大宴会に集まってこい。
塚本訳また私は一人の天使が太陽の中に立っているのを見た。彼は中空を飛んでいる凡ての鳥に大声で叫んで言うた、「さあ、神の大宴会に集まって来い。
前田訳そしてわたしは見た。ひとりの天使が太陽の中に立ち、大声で叫んで中空に飛ぶすべての鳥にいう、「来たれ、神の大饗宴に集まれ、
新共同わたしはまた、一人の天使が太陽の中に立っているのを見た。この天使は、大声で叫び、空高く飛んでいるすべての鳥にこう言った。「さあ、神の大宴会に集まれ。
NIVAnd I saw an angel standing in the sun, who cried in a loud voice to all the birds flying in midair, "Come, gather together for the great supper of God,
註解: この御使も黙15:1の七人の一人ならん(黙17:1参照)。「太陽のなか」は「中空」よりも一層高き処の意ならん(黙8:13黙14:6)。

大聲(おほごゑ)(よば)はりて、中空(なかぞら)()(すべ)ての(とり)()ふ『いざ(かみ)(おほい)なる宴席(ふるまひ)(つど)ひきたりて、

19章18節 (わう)たちの(にく)將校(しゃうこう)(にく)(つよ)(もの)(にく)(うま)(これ)()(もの)との(にく)、すべての自主(じしゅ)および奴隷(どれい)(せう)なるもの(おほい)なる(もの)(にく)(くら)へ』[引照]

口語訳そして、王たちの肉、将軍の肉、勇者の肉、馬の肉、馬に乗っている者の肉、また、すべての自由人と奴隷との肉、小さき者と大いなる者との肉をくらえ」。
塚本訳そして(死んだ)王達の肉、将軍の肉、権力者の肉、馬とそれに乗る者との肉、また凡ての自由人と奴隷と、小なる者と大なる者との肉を(悉く)食え。」
前田訳王たちの肉、将軍の肉、勇士の肉、馬とそれに乗るものの肉、小なるもの大なるものすべての自由人と奴隷の肉を食べるために」と。
新共同王の肉、千人隊長の肉、権力者の肉を食べよ。また、馬とそれに乗る者の肉、あらゆる自由な身分の者、奴隷、小さな者や大きな者たちの肉を食べよ。」
NIVso that you may eat the flesh of kings, generals, and mighty men, of horses and their riders, and the flesh of all people, free and slave, small and great."
註解: 19−21節のハルマゲドンの戦(黙16:16にその予告を見しもの)の序言でその戦において死ぬべき人々の肉をもってする大宴席(大ふるまい)に対する招集の号令である。これはエゼ39:17−20よりその想を取ったものであって、神の民に敵するものはついに神の審判を受けて空の鳥の餌食となることの形容である。神に敵する者の末路の如何に惨憺たる有様なるかを示す、ここではこれを表徴的に解すべきこと勿論である。
辞解
「王たち」以下はイエスの軍に敗られる凡ての人々を指す(エゼ39:17黙16:15註参照)。殊に高位高官等の権力者を多く挙げたのは、現在その権勢に誇っているこれらの人々の末路の憐むべき姿を示さんがためである。なおサタンを征服する場合に同時にその部下の残れるものをも征服することとなる。

4-(2)-(ハ) ハルマゲドンの戦、獣と偽預言者審かる 19:19 - 19:21

19章19節 (われ)また(けもの)()(わう)たちと(かれ)らの軍勢(ぐんぜい)とが(あひ)(あつま)りて、(うま)()りたまふ(もの)および()軍勢(ぐんぜい)(むか)ひて戰鬪(たたかひ)(いど)むを()たり。[引照]

口語訳なお見ていると、獣と地の王たちと彼らの軍勢とが集まり、馬に乗っているかたとその軍勢とに対して、戦いをいどんだ。
塚本訳また私は獣と地の王達とその軍勢とが、(かの白い)馬に乗り給う者とその軍勢とに対し戦争をするために集まって来るのを見た。
前田訳そしてわたしは見た。獣と地の王たちとその軍勢とが、馬に乗るものとその軍勢と戦うために集められた。
新共同わたしはまた、あの獣と、地上の王たちとその軍勢とが、馬に乗っている方とその軍勢に対して戦うために、集まっているのを見た。
NIVThen I saw the beast and the kings of the earth and their armies gathered together to make war against the rider on the horse and his army.
註解: すでに黙16:13−16に録されしごとき三つの悪霊の働きにより王たちとその軍勢(複数)がハルマゲドンと称える処に集められキリストとその軍勢(単数、聖徒の一隊)に向いて戦わんとしているのである。これは神とサタンとの戦闘なる故、霊的事実として考えるべきであろう。これが如何なる形において実現するかにつきては要義三を見よ。
辞解
[相集りて・・・・・戦闘を挑むを見たり] 「戦闘を為さんとて集められしを見たり」。

19章20節 かくて(けもの)(とら)へられ、(また)その(まへ)不思議(ふしぎ)(おこな)ひて(けもの)徽章(しるし)()けたる(もの)と、その(ざう)(はい)する(もの)とを(まどは)したる(にせ)預言者(よげんしゃ)も、(これ)とともに(とら)へられ、(ふた)つながら()きたるまま硫黄(いわう)()ゆる()(いけ)()()れられたり。[引照]

口語訳しかし、獣は捕えられ、また、この獣の前でしるしを行って、獣の刻印を受けた者とその像を拝む者とを惑わしたにせ預言者も、獣と共に捕えられた。そして、この両者とも、生きながら、硫黄の燃えている火の池に投げ込まれた。
塚本訳すると(たちまち)その獣は捕えられ(た。また)彼の前で(不思議な)徴を行って、獣の印を帯ぶる者、その像を拝む者達を惑わした偽預言者も(また)彼と共に捕らえられ、二人とも活きながら硫黄の燃えている火の池に放り込まれ(てしまっ)た。
前田訳獣は偽預書者とともに捕えられた。彼は獣の前で徴を行ない、それによって獣のしるしを受けて獣の像を拝んだものを惑わしたのである。両方とも生きたまま硫黄で燃える火の池に投げ込まれた。
新共同しかし、獣は捕らえられ、また、獣の前でしるしを行った偽預言者も、一緒に捕らえられた。このしるしによって、獣の刻印を受けた者や、獣の像を拝んでいた者どもは、惑わされていたのであった。獣と偽預言者の両者は、生きたまま硫黄の燃えている火の池に投げ込まれた。
NIVBut the beast was captured, and with him the false prophet who had performed the miraculous signs on his behalf. With these signs he had deluded those who had received the mark of the beast and worshiped his image. The two of them were thrown alive into the fiery lake of burning sulfur.
註解: 黙12:3の赤き龍(サタン)、黙13:1の第一の獣、黙13:11の第二の獣すなわち偽預言者の三つは神の敵の三位一体である。この中獣と偽預言者とがまず捕えられて火と硫黄の池の中に永遠の苦痛を受ける。すなわち神に敵する地上の権力と、神を拝するごとくに見せてサタンを拝せしむる偽宗教とは遂にキリストによりて根本的に打砕かれる。
辞解
[その前に不思議を行ひ云々] 黙13:13-14の反覆。
[硫黄の燃ゆる火の池] 「底なき所」とは異なる。後者は (黙9:1黙11:7黙20:1) サタンおよびその配下の一時の寓居(すまい)で前者はその永遠の苦痛を受ける場所である (黙20:10黙20:14黙21:8マタ25:41) 。おそらく創19:24より来れる思想なるべく旧約聖書にも神の審判の具としてしばしば火と硫黄とが用いられる (詩11:6イザ30:33エゼ38:22) 。

19章21節 その(ほか)(もの)(うま)()りたまふ(もの)(くち)より()づる(つるぎ)にて(ころ)され、(すべ)ての(とり)その(にく)(くら)ひて()きたり。[引照]

口語訳それ以外の者たちは、馬に乗っておられるかたの口から出るつるぎで切り殺され、その肉を、すべての鳥が飽きるまで食べた。
塚本訳そして残る者は(かの白い)馬に乗り給う者の口から出ている剣にて殺された。そして凡ての鳥は彼らの肉によって満腹した。
前田訳残りのものは馬に乗るものの口から出る剣で殺された。そしてすべての鳥が彼らの肉で食べ飽きた。
新共同残りの者どもは、馬に乗っている方の口から出ている剣で殺され、すべての鳥は、彼らの肉を飽きるほど食べた。
NIVThe rest of them were killed with the sword that came out of the mouth of the rider on the horse, and all the birds gorged themselves on their flesh.
註解: 獣と偽預言者以外のものは神の言によりて殺され、鳥の餌食となる。すなわち最も憫むべき状態に陥る。そしてこれらもやがては火と硫黄の燃ゆる池に投入れられる時が来るのである(黙20:14)。ハルマゲドンの戦においてはかくしてキリストとその白衣の軍勢の大勝に帰し、その敵将は火の池に投ぜられその軍勢は鳥の餌食となる。キリスト再臨し給う時、この世界の姿は一変してサタンの力は敗れ神の栄光があがる時が来るというのである。
要義1 [キリスト再臨の第一の結果]この世は多くの人々の考えるごとく、次第に進歩発達して神の国となるのではない。否むしろサタンの力が次第に増し加わリ遂に大淫婦バビロンとなりて聖徒の血に酔うに至り獣と偽預言者、すなわちこの世の権力とその宗教すらも、みな神の民に敵対する偉大なる力となる。しかしながら神この憤恚の鉢を傾け給うに及び、この獣はかえって大淫婦を殺し、サタンの僕らは互に相殺戮して自己の破滅を招き、世は益々暗黒と化するに至る。この時キリストの再臨ありてサタンとその一味を火の池に投じ給うに及びて、ここに始めてこの世が神の国となるに至り、遂にそれが完成して新天新地を生ずるに至る。
要義2 [ハルマゲドンの戦]この世の王たちの連合軍とキリストを主将とするキリスト者の軍勢とがハルマゲドンなる地において具体的の決戦を為すものと考えられるべきではない。唯キリストの力によってサタンの凡ての力が敗られる時が必ず有ることの信仰をもって希望を保つべきことを示したに過ぎない。これが如何なる具体的形式において実現するかは黙示録の文字の通りに決定し得ざること、他の部分と同様である。
要義3 [サタンの滅亡の実際の姿]黙示録の諸表徴は何れも難解ではあるが、殊にキリストとサタンとの戦はこれを具体的に表現することは困難である。大体次のごとくに想像することが可能である。
(1)文字通りキリストの軍とサタンの軍とがハルマゲドンにて会戦する。
(2)全然霊的の出来事と解し一方にサタンの力が強くなると同時に他方にキリストに対する信仰の力が強くなり、この両者の間の無形の戦が行われ後者の勝利に帰すること。
(1)のごとくに解することは霊の国がこの世の戦争によって成立すと考えるごとき大錯誤に陥るのみならずキリストの敵を殺すことは「その口より出づる剣」すなわち神の言によること故、この戦争は霊の戦争であって、(2)のごとく時至りてキリスト自ら来り給い彼に対する信仰勃然として起り、サタンに対する臣従の心をことごとく打滅す時が来ると考えるべきであろう。鳥来りて肉を食うことのごときも滅ぶべきものの滅ぶことを言えるものと解すべきであろう。